“誰もが自分らしくはたらける環境”を設計する―IT企画部が描く未来戦略

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指す、パーソルグループ。今回は、経験者採用で入社した藤井に、現在の仕事や今後の構想、パーソルホールディングスではたらく魅力について聞きました。

全体最適を実現する、ITマネジメントの中枢。組織を動かすIT企画部の役割

まずは、藤井さんが率いるIT企画部の役割について教えてください。

IT企画部では、中期経営計画の策定と推進に加え、年間予算の編成や月次収支の管理といった財務マネジメントを担っています。また、ITサービスやプロジェクトが円滑に進むよう、標準ルールや運用プロセスといった共通の指針を整備することも、重要な役割のひとつです。

さらに、どの部門にも属しにくい横断的な課題が発生した際には、IT企画部が受け皿となり、関係部門と連携しながら全体最適を図る「ハブ」のような機能も果たしています。

IT企画部のミッションや役割について、どのように捉えていますか?

私たちIT企画部のミッションは、「継続的に提供価値を高められるIT組織を実現するために、組織のマネジメント力を向上させ続けること」です。その実現には、限られた予算や人員といったリソースを適切に配分し、組織全体が計画に沿って機能する状態をつくる必要があります。

そのため、現場の課題や要望を丁寧にすくい上げながら、経営からの期待とも適切にすり合わせる。そうした全体最適の視点から、仕組みを設計していくことこそが、私たちに求められる本質的な役割だと考えています。

2023年4月にIT企画部の部長に就任されてからは、どのようなテーマに取り組んできたのでしょうか?

まず、IT企画部の業務方針を再定義し、中期経営計画の策定を推進しました。あわせて、ここ1年ほどは「組織内のコミュニケーション強化」にも注力しています。

かつては約50名規模だったグループIT本部ですが、現在は3本部に拡大し、総勢約400名の組織へと成長しました。その一方で、リモート勤務の定着や縦割り構造の進行により、「誰がどのような業務を担っているのかが見えにくい」という課題が顕在化してきました。

そうした背景を受け、昨年度からは部長やエキスパート層を対象に、年に数回、半日以上かけてミーティングを実施しています。そこで中期経営計画の方針をしっかりと共有し、部門を超えた認識の統一と連携体制の強化を図っています。

部長という立場になってから、ご自身の視点や考え方に変化はありましたか?

部長に就任して以降、CIOや本部長といった経営層との対話が増え、それまで見えていなかった視座や意思決定の背景に触れるようになりました。

以前は、整理された方針を受けて「どう実行するか(How)」を考える立場でしたが、今は「なぜそれをやるのか(Why)」から考え、取捨選択しながら進めていく責任を担っています。

「進めるべきか、見送るべきか」といった意思決定を自ら下す場面が多く、責任の重さを感じる一方で、自分の判断で物事を動かせることに大きなやりがいも感じています。

長年のSIer経験を活かして、事業を動かすIT領域へ。迷いを成長に変えたキャリアの選択

どのような経験が、現在の仕事につながっているのでしょうか。藤井さんのこれまでの経歴について教えてください。

新卒でSIerに入社し、最初に配属されたのは新規事業を推進する部署でした。営業職を志望していましたが、面接時に「新しいことに挑戦したい」という想いを伝えたことが、配属の決め手になったのだと思います。

その後は約20年にわたり、事業企画・研究開発・営業など幅広い領域を経験し、上流から下流まで一通りの工程に携わってきました。中でも印象的だったのは、1年目から経営幹部と直接やりとりする機会に恵まれたことです。

経営と現場、両方の視点で物事を考える経験は、現在の「全体を見渡して組織を動かす」IT企画部の仕事にもつながっていると感じています。

長年勤めた会社を離れ、パーソルホールディングスへの転職を決めたきっかけを教えてください。

前職では、管理職として収益責任を担いながら、特定のサービスや領域に特化した“専門家”として、一つの武器を磨き続けていました。ただ、取り扱っているサービスが廃れれば、また次のサービスへ。そんなサイクルの中で、「今の知識や経験がこの先も通用するのか」といった不安を抱くようになったんです。

そこで、「ソリューションを提供して終わり」ではなく、「事業会社の中で、ITをどう活かしていくか」という視点ではたらきたいと考えるようになりました。そんな時に出会ったのが、パーソルホールディングスです。

転職エージェントからは、「グループ統合を終え、今まさにITの整備が進んでいる」と聞き、ゼロから仕組みをつくるフェーズに携われる絶好の機会だと感じて、2018年に入社を決めました。

入社時、パーソルホールディングスにどのような印象を持ちましたか?

想像以上に「本気でITに向き合っている会社だ」と感じました。前職で多くの企業と関わる中、IT部門が「社内の下請け」のような扱いを受けている場面を数多く見てきました。特に大手企業ほど、そうした傾向が強いという印象を持っていたんです。

しかし、パーソルホールディングスでは、経営層がITを「戦略の軸」として捉えていました。表面的な理解ではなく、事業を動かす中核として本質的にITを重視する姿勢に触れ、「この会社は本当に変化を起こそうとしている」と感じました。

実際の業務を通じて、どのような気づきがありましたか?

正直なところ、入社した時点では、まだまだ多くの課題が残っていました。そのため、最初の1〜2年は、プロジェクトの進め方やサービス運営の仕組みなど、IT基盤の見直しに注力しました。

ただ、そうした状況だったからこそ、前職で培った研究開発や障害対応の経験を活かせる場面が多く、手応えも大きかったのを覚えています。

そして入社3年目には、中期経営計画の策定をリードする立場を任され、「自分のやりたいことにチャレンジできる環境だ」と強く実感しました。

日常業務×AIで実現する。一人ひとりが“自分らしくはたらける環境”へのアップデート

現在のIT本部の取り組みが、次の中期経営計画にどのように反映されていくと考えていますか?

今期の中期経営計画では、グループ全体のIT基盤を刷新するため、大規模なクラウド環境への移行を推進してきました。基盤整備が完了しつつある今、次のフェーズでは「クラウド上でいかに効率的かつ安全にサービスを構築するか」がテーマとなります。

また、グループIT本部のミッションは、「パーソルグループの人たちが安心して、自分らしくはたらける環境をつくる」ことです。その実現に向け、業務の選択肢を広げたり、AIによって負担の大きい業務を補完したりすることで、一人ひとりの強みが発揮される仕組みづくりを進めていきたいと考えています。

そのため、次の中期経営計画では「everyday work × AI(日常業務×AI)」をキーワードに、業務負担の軽減と生産性の向上を同時に実現していくことが、重要な取り組みになると捉えています。

「自分らしくはたらける環境」を実現するために、どのような取り組みを進めているのでしょうか?

まず大切なのは、「どのような業務があるか」を正しく把握することです。人によって得意なことや志向はさまざまで、企画を考えることにやりがいを感じる方もいれば、ルーチン業務を着実にこなすことを好む方もいます。

そうした個々の特性を踏まえた業務マッチングや、AI活用による効率化の可能性を見える化する取り組みを進めています。

私たちが目指すのは、業務を一方的に“割り当てられる”のではなく、一人ひとりが“選べる”ような環境の実現です。ただ、個人の希望と会社の生産性を両立させる必要があるため、両者のバランスをとった「ベストミックス」の設計が欠かせません。

そのため、「小さく試しながら効果を検証し、有効性の高い取り組みを展開していく」というアプローチを推進しています。

最近では、部長以上を対象に、日常業務の中でAI活用の余地がある業務を洗い出しました。集まったアイデアは200件以上にのぼり、今後はその中から効果の高いものを優先的にトライアルし、再現性のあるものから段階的に展開していきます。

前例のない取り組みを進める際、藤井さんはどのように判断していますか?

たとえ前例がなくても、構造や目的が似た型は必ず存在すると考えています。例えば、アジャイル開発には、複雑な状況を整理しながら前進するための実践的なフレームワークが豊富にあります。

状況が異なっても、そうした知見をベースに課題を分解し、道筋を描くことは十分に可能です。重要なのは、「使える型」を見つけ、自分たちの課題に合う形で柔軟に応用していく姿勢だと思います。

対話と共感を重ねながら、組織の変革を導く―グループ全体の戦略と未来を支える挑戦

藤井さんが考える、IT企画部で得られる成長機会やキャリアについて、教えてください。

IT企画部は、組織全体に関わるテーマを担う部門として、関係各所とのハブとなりながら、多様な部門と連携できることが特長です。さらに、経営層と対話する機会も多く、戦略立案や予算管理といった経営企画に近い業務にも携われます。

そのため、ITを経営の視点で捉えたい方や将来的にCIOを目指す方にとって、実践的な経験を積める、非常に価値ある環境だと思います。

これまでの知見を活かしながら、新たな仕組みや価値を自らの手で創り出したいという意欲を持つ方にこそ、挑戦してもらいたいですね。

多様な関係者と物事を進めていく際に、意識されていることはありますか?

企画の領域は“人”を中心に関わるため、「誰が、どのような課題や想いを持っているのか」を正しく捉え、そのうえで納得感のある提案をしていくことが重要だと考えています。

もちろん、一人で全体を把握するには限界があります。そのため、周囲との対話を重ねながら、多様な視点を取り入れていくことが大切です。そうした積み重ねが、結果的に組織全体の課題発見や解決力の向上にもつながっていると感じています。

最後に、個人の力がますます重要になるこれからの社会で、藤井さんが目指すビジョンを教えてください。

私は、これから社会に出ていく子どもたちが、少しでも安心して暮らせる未来をつくりたいと願っています。

これからは、個人が時間や知識といった“資産”を活かして、新たな価値や収益を生み出す。そんな柔軟なはたらき方がより広がっていくと思います。一方で、情報があふれる今の時代、「どう動けばいいのか」が見えにくくなっています。だからこそ、正しい努力につながるようなインフラが必要です。

パーソルが展開する人材紹介や人材派遣、教育といったサービスを、「はたらく未来図構想」として一体化し広げていくことが、“自分らしくはたらける社会”を実現するための一歩になると信じています。私自身、その実現を少しでも早められるよう、これまでの知見を活かしながら貢献していきます。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=鳴嶋由紀
※所属組織および取材内容は2025年9月時点の情報です。
※略歴内の情報は2025年4月時点での内容です。

Profile

藤井裕士 Hiroshi Fujii

パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 IT企画部
部長

新卒からSIerに入社し、約20年にわたり事業企画、研究開発、営業など幅広い領域を経験。経営層との折衝や、上流から下流までの業務経験を積んだのち、2018年にパーソルホールディングスへ入社。現在はIT企画部の部長として、中期経営計画の推進やグループ全体のマネジメント力強化、業務基盤の最適化に取り組む。

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