テクノロジー戦略で事業価値を高める。グループテクノロジー部門が描く、パーソルの未来

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指す、パーソルグループ。

今回は、経験者採用で入社した道家に、パーソルホールディングスでテクノロジー戦略を手がける面白さ、AI活用でひらく未来の展望を聞きました。

「当事者」としてグループ横断のテクノロジー戦略に携わる環境に惹かれ、パーソルホールディングスへ

はじめに、パーソルホールディングス入社以前のキャリアについて教えてください。

新卒で入社したのは、人材業界の会社でした。学生時代は化学を専攻していたのですが、社会の多様な仕事に触れてみたいという思いがあったんです。その後、やはり化学に関わる仕事をしたいと考え、化学メーカーに転じました。ルート営業や事業開発を担当した後、28歳でリクルートに転職しています。

リクルートでは、どんな仕事を担当したのでしょう。

営業現場の効率化に携わり、中古車販売や住まい領域での営業企画や事業企画、金融サービスのプロダクトマネジャーも経験しました。リクルートでの6年間で、企画の仕事の面白さに目覚めたことがひとつの転機になったと思います。

本格的にものづくりを経験してみたいと考えて転職したのが、香水などのフレグランス商品を扱う中規模の消費財メーカーです。シニアマネジャーとして営業推進や事業戦略を担当した後、DX推進の責任者を務めました。並行して、自身が企画した入浴剤ブランドの開発もリードしました。

多様な業界で経験を積まれたのですね。

キャリアを通じて、「自分が役に立てるか」「やりたいと思えているか」という軸を大切にしてきました。

中小企業では、経営層の近くで大きな案件を進められるというメリットがありますが、一方で大企業に比べると、どうしてもリソースに制約があります。アウトプットが多い反面、インプットが少ないという感覚もあって。40代を迎える前に、より大きなインパクトと難易度の高いミッションに挑みたいと考えるようになりました。

また、前職までは事業企画や戦略立案、組織設計など、どちらかと言えばテクノロジー領域からは遠い分野に関わっていました。生成AIが登場し、テクノロジーが飛躍な進歩を遂げる時代において、自分の価値を維持するために、テクノロジーに触れられるポジションに就きたいという思いもあり、転職活動を始めたんです。

数ある選択肢の中で、パーソルホールディングスを選んだ決め手は?

初めはHR業界に絞らず、大手企業を中心に広く情報収集をしていました。

コンサルティングファームからもオファーをもらっていたのですが、パーソルホールディングスは、グループ内に複数のサービスがあり、「当事者」として自分たちのサービスに向き合える点がとても魅力に感じました。1兆円規模の売上高を持つグループを横断してテクノロジー戦略に携われる機会は、ほかでは得られない、大きなチャンスだと思ったんです。

多くの人にとって、はたらいている時間は、人生の大部分を占めます。テクノロジーを通じて、「はたらく体験」の満足度を上げることができれば、QOLも上がるはずです。

HR業界でテクノロジー戦略に携わるのは、社会的意義の大きい仕事だと感じました。グループテクノロジー推進本部はCIO/CDO直下の組織であり、スピード感を持って業務を進められそうだったことにも背中を押され、入社を決めました。

テクノロジーをグループの成長にどう活かすか、真正面から考える

テクノロジー戦略企画室は、グループの中でどんな位置付けの組織なのでしょうか。

パーソルグループでは、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」という経営方針を掲げています。労働人口の減少やAIの進化により市況が変化する中、最新のテクノロジーを事業にどう活かすかを真正面から考えるのが、テクノロジー戦略企画室の役割です。

たとえば人材紹介事業なら、AIを活用することで、24時間365日、いつでも転職希望者からの問い合わせに応えることができるようになります。転職希望者に向き合う社員にとっては、より条件に合った求人案件を紹介したり、レジュメの改善提案をしたりする上でもAIの力が役立つでしょう。顧客体験の質を上げ、はたらく個人や企業の選択肢や可能性を広げるため、テクノロジー活用は欠かせない条件だと考えています。

そのような前提のもと、私たちはグループ全体のテクノロジー戦略を立案し、推進する仕事をしています。パーソルホールディングスの中だけで完結させるのではなく、グループ内のSBU*とも連携し、議論を重ねながら方針を決めて、投資の配分やモニタリングなども行っています。

*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

チームの中で、道家さんのミッションは?

ストラテジストとして、おもに戦略の企画立案を担っています。具体的には、中期経営計画の策定や、事業説明会に向けた報告資料の作成、各SBUのテックリードが集まって議論する「テクノロジー合宿」の運営など、業務内容は多岐にわたります。

ストラテジストに求められる「IQ×EQ」のバランス

入社後の業務の中で大変だったこと、印象的だった業務があれば教えてください。

パーソルグループは5つのSBU、約150社の事業会社を有する大企業です。単一の事業を成長させるための戦略と、グループ全体の価値を高めるための戦略では、立案のために使う頭の「筋肉」が違います。

パーソルグループという大きな船を前に進めるためには、今、どこに投資をするべきなのかを見極め、その理由を筋立てて伝える必要があります。同時に各SBUのみなさんや役員の方々に何を伝え、どんな議論をしてもらうかをコーディネートする役割も担っているので、「IQ(intelligence quotient)」と「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」の両方が求められるんです。その部分のアジャストには苦労しましたね。

最近携わった業務の中では、投資家をはじめとするステークホルダーや第三者の方々に対してパーソルグループの事業内容をお伝えする「IR DAY」の準備業務、特に報告資料作成が印象に残っています。

日頃、社内の経営会議に向けて資料を作成する際も、各SBUのみなさんががんばっていることをどう経営陣に伝えるか、全体のストーリーやわかりやすさ、デザインを意識しながら作り込んでいますが、外部に向けた説明会では、さらなるわかりやすさが求められます。

パーソルグループが市場から期待されているのはどんな取り組みなのか。私たちが伝えたいことと、社外の方が知りたいことの間に「ズレ」があるのではないか。部内で何度もレビューを重ねながら、1枚ずつスライドを作り上げていきました。

広報チームや各SBUの担当者など、多くの方に協力してもらい、文字通りグループ横断で成し遂げたプロジェクトだと感じています。当日参加した方々からも前向きなコメントをいただき、ほっとしました。

資料を作り上げるまでの社内調整や確認のプロセスでは、ご苦労も多かったのではないでしょうか。

もちろん大変なこともありましたが、パーソルグループの社員は本当に協力的で前向きな方が多いんです。情報収集や確認の際も、快く応じてもらいました。

たとえば「シェアフル」に事例取材のお願いをしたときには、社長自ら、多忙な業務の合間を縫って説明してくださったんです。自分の会社だけでなく、「グループ全体を良くしたい」という思いが各社に浸透しているのも、パーソルグループの素敵な文化だと思います。

AI活用で2030年問題に挑む、パーソルグループのこれから

パーソルホールディングスに入社して、魅力を感じていることはありますか?

入社前からスピーディに業務を進められそうだと思っていましたが、実際に入社してみたら、予想以上に意思決定が早かったのが印象的でしたね(笑)。

直近の例を挙げると、戦略の変更にともない、組織を変える必要が生じたことがありました。さすがに時間がかかるだろうと思いながら経営会議に提案したところ、意外なほど迅速に承認されたんです。もちろん私たちとしても、しっかりと事前の準備を整えるのですが、ロジックが通っていれば、「正論で仕事ができる」点は大きな魅力ではないでしょうか。

テクノロジー戦略という最先端の領域を扱う組織だからかもしれませんが、大企業のスケールと、ベンチャー的なスピード感をあわせ持ったカルチャーだと思います。

日本の人口の約3割が高齢者となることでさまざまな問題が起こる「2030年問題」が耳目を集める中、これからパーソルグループが目指す方向性について、あらためて教えてください。

パーソルグループは、これまで順調に事業を拡大してきました。ただ、労働人口が減少し続ける中、従来のやり方を続けるだけでは、特に人材事業の持続的な成長は難しくなると考えています。AIをはじめとするテクノロジーを活用することで顧客体験の質を上げ、事業を進化させることがますます重要になるでしょう。

今年度は、現行の「中期経営計画2026」の最終年度にあたります。次期経営計画の策定に取り組む中で、私たちは、AIを十分に活用するためのシステム基盤やデータ環境、組織についての検討を進めています。

転職支援や人材派遣、新卒採用など、人材にまつわる多様な領域にまたがる膨大なデータ資産を持っていることは、他社にはないパーソルグループの大きな強みです。ただ、そのデータをどう活用するかという点においては、正直、まだ発展途上です。原石をどう磨いていくのかが、これからの課題だと思っています。

パーソルグループは「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンを掲げています。道家さんにとって、「はたらく」とはどういうことですか?

もちろん忙しい時期もありますが、大変なことも、やり遂げれば笑い話になります。私は、仕事で「楽」をしたいとは思っていないんです。少し苦しくても、自分がやったことのない領域、まだできないことに挑戦して乗り越えたときに人は成長できるものですし、仕事が「面白い」と感じるのではないでしょうか。

パーソルグループには、挑戦する人を応援する環境があります。「縁の下の力持ち」としてテクノロジー戦略に携わり、さらに自身がハブとなって、戦略を実行するための仕組みづくりまで主体的に関わりたい。そんな方と一緒にはたらけることを、楽しみにしています。

取材・文=高橋三保子/撮影=西村法正
※所属組織および取材内容は2025年9月時点の情報です。
※略歴内の情報は2025年4月時点での内容です。

Profile

道家俊輔

パーソルホールディングス株式会社
グループテクノロジー推進本部 
テクノロジー戦略企画部 テクノロジー戦略企画室
シニアストラテジスト

人材会社での企画営業を経て、化学メーカーで営業・事業開発、リクルートで営業企画・事業企画・金融サービスPMを担当。のちに消費財メーカーでDX推進・ブランド開発、ロコガイドで小売×ITの研究所責任者を務め、2025年1月にパーソルホールディングス入社。グループ全体のテクノロジー戦略立案と合意形成を担う。

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