【後編】生成AIで変革を加速せよ——パーソル各社の事業をアップデートするグループAI・DX本部の挑戦

前編は、本部長を務める岡田のキャリア観に触れながら、2025年4月に発足した「グループAI・DX本部」の成り立ちやミッションについて語ってもらいました。後編となる今回も引き続き岡田に登場していただき、グループAI・DX本部が目指す理想やグループ各社の現状と課題、今後の展望やグループAI・DX本部が求める人材像について語っていただきます。

【前編】はこちら→【前編】生成AIで変革を加速せよ——パーソル各社の事業をアップデートするグループAI・DX本部の挑戦

生成AI活用に必要な機能を網羅する新体制

—2025年度スタートの新組織の大きな特徴はどこでしょうか?

前身となる「グループデジタル変革推進本部」と4月から名称変更した「グループAI・DX本部」との大きな違いは、AI活用に必要な組織を細分化して専門性を持たせた点です。

グループAI・DX本部は、大きく3つの部署で構成されています。社内向けの人事システムや財務システムなど共通業務基盤の企画開発を担う部と、グループ各社の事業変革を横断的に支援する部、人材派遣の事業変革支援に特化した部です。パーソルの主要事業のうち人材派遣事業だけ専任組織を設けているのは、グループ全体の売上の約4割を占めており、DXによる伸び代が大きくビジネスインパクトが期待できるためです。いずれにしても非連続的で抜本的なチャレンジをするために必要な機能を網羅したのが、2025年度の新体制といえます。

同じAI活用でも事業変革や事業創出は、生産性向上や付加価値向上と比べるとその難しさは数段上といわれますが、どんな点が難しいですか?

われわれがやろうとしているのは、生成AIをフル活用した事業変革、事業創出の実現です。本気で取り組めば取り組むほど、既存の業務プロセスやビジネスモデルのディスラプト、つまり自己否定につながるので、当然「痛み」が伴います。これまでの成功体験を捨て、新たな成功体験をつくり出すには相応の覚悟と努力が必要です。また、生成AIの進化は文字通り、まさに日進月歩で、雨後の筍のように次々と登場するソリューションのなかから、将来性のある技術をピックアップするのも容易ではありません。ベクトルや質の異なる難しさをいかに克服するか、日々問われています。

前例のない取り組みである以上、試行錯誤が欠かせません。答えを模索しながら走り続ける難しさもあるのでは?

もちろんそれもありますね。ただ、私自身は過去にいくつもの新規事業の立ち上げを経験するなかで、不確実をコントロールしていく術を身につけてきました。失敗から学ぶ価値も心得ているので、厳しさを感じても不安はありません。なので、一緒に取り組むメンバーには、決して失敗を恐れないでほしいと思っています。メンバーには「場当たり的で次への展開が見込めない『仮説なき失敗』でなく、考えを尽くした上での失敗なら、それは単なる失敗ではなく次につながる前進だ」と日ごろから伝えています。

改めて、パーソルグループにおけるDXの進捗状況を教えてください。

パーソルグループには多くのグループ会社があり、デジタル化やDXにはまだ多くの課題があります。グループ全体のボトムアップはある程度できているので、それぞれの事業に寄り添いながら取り組むことと、明確な指針を示してトップダウンで取り組むこと、その両面が必要だと思っています。

なかでも主力事業である人材派遣事業と転職支援事業、BPO事業などを並べると、それぞれの事業内容やその特徴は違いますが、「人と仕事をマッチングする」という基本の部分は同じです。それゆえ、ある事業で成功したテクノロジー活用の事例が、他の事業で応用できる可能性は極めて高いと思っています。各事業が持つテクノロジー活用のノウハウを活かし、成果を一気に横展開できるような体制づくりにも挑戦していきます。

効率化、自動化の先にある、生計のためではないはたらき方

—具体的な取り組みとしてはどんな構想がありますか?

共通汎用業務AIを基盤に対話型自動マッチングや面談スケジュールの調整など、個別業務ごとに開発されたアプリケーションの利用を突破口に、いくつかのアプリケーションを組み合わせ、いずれ事業全体をAIで賄えるような世界を目指します。

▲パーソルグループのAI活用の目指す方向性について

大胆かつ野心的な展望ですね。

前編でもお話した通り、われわれが目指すのは「はたらくにまつわる負」を解消し、「はたらきがいのある社会を実現する」ことにあります。それがパーソルグループの掲げる「はたらいて、笑おう。」を実現することであり、テクノロジードリブンを標榜するわれわれにしかできない取り組みだからです。

道のりは決して平坦ではありませんが、私は今ここで取り組むべき価値があると信じています。たとえば、自分に代わってAIがはたらいてくれるような時代がくれば、人間は生計を立てるためにはたらくのではなく、自己実現や社会のためにはたらくことが常識になるかもしれません。全くはたらかないという人が出てきてもおかしくないでしょう。近い未来には、こうした世界が実現できるのではないかと思っていますし、AI協働時代に向けて「はたらくを問い直す」ことも、われわれの使命だと思っています。

私には5歳と2歳の子がいます。この子たちを笑顔で送り出せる社会にすることが、親として人材サービス業界の一員として、もっとも手掛けたいことですし、やらねばならないことだと思っています。 パーソルグループのなかでも、その実現に一番近い場所にいる以上、ぜひ責任を果たしたいと思います。生成AIの活用を通じて「はたらく」をたのしめる世の中をつくる。それが私の目標です。

子たちを笑顔で送り出せる社会にしたい

グループAI・DX本部が必要とするのはどんな人材ですか?

われわれが必要としているのは、「正解を探す人」ではなく、「正解にする人」です。そもそもビジネスには「正解」などありません。もちろん正しく考えることも大事ですが、それだけではビジネスは成り立ちません。私は、本部長として事業運営に必要なことや正しいと思うことはもちろん強く発信していきますが、関わり合う方々との信頼関係の構築や、目の前の取り組みに粘り強くチャレンジし続け「正解にしていく姿勢」を何よりも大事にしたいと思っています。

決して変革に乗り気ではない人や消極的な人がいたとしても、事業変革に参画したいという気持ちになれるよう、私ができることがあれば何でもするつもりです。そして、そんな私の変革に対する思いに賛同していただける方を積極的に迎えたいですね。

どんなにテクノロジーを駆使しデータとロジックを積み上げても、それは仮説でしかありません。仮説を正解にするためにあらゆる行動ができる人がいなければ、絵に描いた餅に過ぎません。もちろん生成AIにまつわる知見やスキルは必要ですが、粘り強く挑戦し続ける情熱と胆力がある人なら、必ず壁は乗り越えられるはずです。こうしたマインドセットで仕事に取り組める人材を求めています。

取材・文=グレタケ 武田敏則
(2025年4月時点の情報です。)

岡田将幸Masayuki Okada
パーソルホールディングス株式会社
グループAI・DX本部
本部長
2009年、関西学院大学を卒業後、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。人材紹介事業の法人営業を経て、営業企画、新規事業の立ち上げ、M&A先の成長支援などに従事。2021年、人材紹介事業の企画部門責任者として事業戦略の策定やDXの推進などに携わる。その後、新規サービス開発統括部エグゼクティブマネージャー、子会社取締役、はたらく未来図構想統括部 エグゼクティブマネージャーなどを歴任。2024年10月、パーソルホールディングスに転籍後は、グループデジタル変革推進本部DX企画部部長を務める。2025年4月より現職。

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