【登壇レポート】TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける”わたし式”のエンジニアリング

2025年9月24日に開催されたTECH PLAY主催『TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける”わたし式”のエンジニアリング』に、パーソルホールディングスの山田麻弥が登壇しました。

IT業界において「身近にロールモデルがいない」 「将来のスキルアップの方向性が見えない」といった悩みを抱える女性は少なくなりません。そのような女性IT人材へ向けて、キャリアを見つめ直し、新たな一歩を踏み出すためのヒントとして、本イベントは開催されました。

今回は当日お話しした内容から一部抜粋・編集の上でご紹介します。

※本記事に記載している情報は、2025年9月時点のものです。

未経験からセキュリティの部署に配属。最初の3年間は転職を考える日々

山田

将来に向けて現状を変えたい、やってみたいけど、自分にはできないかもと思っている人にとって、自身と向き合ったり、未来に一歩踏み出す勇気につながったら嬉しいです。

こう前置きし、山田のセッションは始まった。

山田は新卒でBtoBの運輸や倉庫をメインに事業展開している物流会社に入社。そこでは営業事務や内部統制に幅広く携わっていた。その後2017年にパーソルホールディングスに転職。組織や人など物理面でのセキュリティ施策を企画・運用する情報管理室に所属し、パーソルグループ各社が取り扱っている個人情報を適切に管理運用するための体制づくりに携わったという。

2025年4月からはSBUセキュリティ支援室でシニアコンサルタントとして活躍する傍ら、チームリーダーとしてチームメンバーのサブマネジメントも行っている。

山田が所属するSBUセキュリティ支援室は、2024年4月に発足。

山田

現在は室長と私を含め、7人のメンバーで活動しています。

SBUセキュリティ支援室のミッションは、グループ会社がセキュリティ面でより一層の自立・自走ができるように支援すること。そのためSBUセキュリティ支援室がすべての業務を代行するのではなく、共に考え、共に作業し、力を合わせてセキュリティの施策を形にするための活動をしている。

「自分のキャリアを話すと、『順調だね』と言われることが多いが、そんなことはない」と言う。パーソルホールディングスに転職してからの3年間は「もう一度転職しようかな」と、毎日のように思っていたと明かす。それでも未経験ながらセキュリティの仕事に取り組んで行った山田。

それを図に表すと次のようになる。

2017年にパーソルに転職し、成長度が大きくマイナスに触れている。2つの理由があり、1つ目は社会人としては5年目だが、未経験だったことからパーソルホールディングスでの職位としては新卒2年目と同じレイヤーからのスタートだったこと。2つ目は、想像以上に自分にできることが少なかったことである。

周囲を見渡すと、山田と同様に中途採用でありながらも、経験豊富でバリバリと実務をこなせる人ばかり。そういう状況になることを覚悟して入社した山田だったが、「周りと自分の差が想像を超えすぎていたという事実に驚愕した。何もわからない、できない自分に焦るしかなかった」と振り返る。

物流会社では企画職ではなかったため、ゼロからイチを生み出す企画職という点でも戸惑ったという。「毎日、どうしようと頭を抱えていたが、とにかく自分ができる仕事を取りに行って、それをやりきることから始めた」と言う。

具体的には議事録作成、数字の集計、他部署への依頼や調整、交渉作業。セキュリティとは直接関係のない細かな作業も多く担当したという。

一方、ITインフラやセキュリティ、攻撃手法、防御の技術、個人情報保護、マイナンバー法などの知識は独学しつつ、実務は上長や経験のあるメンバーから教えてもらい、業務経験を積んでいったという。パーソルに入社して3年目を迎えた時に、「自分のできること、わかることが増えていて、ふと視座も少し高くなった感覚があった」と山田。そこから成長曲線は上向きに変わっていったのだ。

専門性を生かすためにも重要になるソフトスキル

社会に出ると、「専門性が大事」という言葉をよく耳にする。ここで言う専門性とは、「その道のプロであり、一般の人には難しい知識を持っていること」を指す。専門性は高ければ高いほど、その道に詳しいことになるので、専門性が高いと、市場価値は高くなる。

だが山田は以下のように話す。

山田

大前提、ITの専門性が高いことは非常に価値があることなので高めるに越したことはないと思いますが、それだけではなく、すべてのベースとなるソフトスキルを同時進行で鍛えることが非常に大事だと思います。

なぜなら、いくらITの知識が豊富でも、ソフトスキルがないと、宝の持ち腐れになってしまうことがあるからだ。ソフトスキルとは具体的に、課題や問題を発見・設定する力、対話力、調整力、仕事の段取り力などを指す。

山田

これらソフトスキルの土台があるからこそ、専門的な知識をより一層輝かせることができると思います。

山田がソフトスキルの重要性に気づいたのは数年前。グループ会社のシステムが外部攻撃を受け、情報漏えいした可能性があるというインシデントが発生したことだ。

一般的にセキュリティインシデントの対応フローは、次の図のようになる。

山田

初動のフェーズでこれ以上の攻撃の被害を拡大させないために、システムの停止の判断をしたり、攻撃を受けた時点でのシステムのログの保全をしたりなど、対応の順番がかなり大事になってきます。

しかもインシデント対応は、経営判断が必要な場面も多い。そのため経営層に状況を完結かつ明確にわかりやすく説明しなければならない。また何を判断してほしいのかについても説明する必要がある。

山田

セキュリティに関して知見のない人でも判断できるように、今の状況についてリスクを含めて重要な情報を余すことなく、かみ砕いて説明をしなければなりません。こういうスキルが求められます。

情報を収集する調査の段階でも、何を優先して調べるかなど、ITの技術や知識以外にも先を見据える力や段取りする力が求められるという。

さらにインシデントに関わるのはシステムの担当部署だけではない。社外対応の面で法務や広報なども関わってくる。そういう人たちをすべて巻き込んで、インシデント対応を最優先してもらえるようリーダーシップをもって調整する必要がある。

山田

セキュリティの知識や技術も大事だが、業務を進めるためのソフトスキルが圧倒的に問われると思いました。

キャリアの本質は自分の人生を自由に描き、強みを生かしながらチャレンジすること

ソフトスキルはセキュリティの仕事だけに生かされるスキルではないと山田は言う。

山田は副業で小学校や中学校での行事を撮影するカメラマンの仕事をしている。例えばクラスごとの集合写真を撮るとする。カメラマンとしては自分の撮りたい写真が頭の中にある。それを決められた工程の中で撮るためには、事前に学校の先生に「ここで撮りたい」ということを伝えておく必要がある。外で撮ることを想定している場合には、天候にも左右される。そのため雨の場合のプランも考え、事前に先生に伝えておかなければならない。このように段取りが非常に重要になる仕事なのだ。

撮影の準備をしていた際、山田は普段の仕事と本質的にやっていることが変わらないことに気づいたのだという。

山田

セキュリティや個人情報に関するスキルが撮影という技術に置き換わっただけで、ソフトスキルの大事さは、どの仕事でも必要なことなんだと改めて気づかされました。おそらくほとんどの仕事は、ソフトスキルがあれば最初は大変でも進めていけると思います。

つまり仕事選びの観点として、専門的な知識が磨けるかだけではなく、「どんなソフトスキルが磨けるかという観点でも、次のチャレンジを考えてみるのでもいいのでは」と山田はアドバイスする。

新しい一歩を踏み出すことを考えているのであれば、まずは自分の気持ちに素直になってみること。「仕事はあくまでも自分のありたい状態を実現するための手段」と山田は言う。自分の状況や環境に囚われすぎることなく、自由に自分の人生の理想の状態を描いてみる。それを実現するためにチャレンジしていく。つまりキャリアの本質は状況や環境に囚われすぎず、自由に自分の人生を描いて強みを生かしながらチャレンジすることだと山田は言うのだ。

「私のチャレンジをサポートしてくれた上司や会社に感謝しながら、これからも後悔のないように自分らしくチャレンジし続けたい」と山田は宣言し、セッションを締めた。

多様な質問にあふれたQ&Aセッション

個人セッション終了後のQ&Aセッションでは、山田がイベント参加者からの多様な質問に回答した。

Q.

異業種から未経験でセキュリティの仕事に就き転職しようかなと思いながらも継続されてきた。どのようにモチベーションを保っていたのか?

山田

過去の自分と比べてこんなことができるようになったなど、どんなに小さな成果でも自分で褒めることを、大事にしてきました。また周りにいるチームの人たちがみんな優しくていい人なんです。だから周りの人とランチに行ったりしてコミュニケーションを取り、1人で抱え込まないようにしました。

Q.

ソフトスキルを会得した瞬間は理解できたが、どんな時に専門性を磨けたと実感できたのか。

山田

入社した時はIT用語すら一切わからなかったので、まずは「ネットワークインフラの理解」をテーマに自分で勉強を始めました。最初は会議の中で分からない言葉が出てくると、その場でネット検索をしていました。それを繰り返していると、気づいたらシステム側の人たちと普通に話せるようになっていたんです。自分ができなかったことができるようになっていた。専門性も磨けているんだと感じました。

まとめ

山田のキャリア観に共感や質問が多く寄せられ、参加者満足度も非常に高いイベントとなりました。今後もイベントやTECH DOORにて、パーソルグループのプロジェクト推進について紹介していく予定です。

※レポート内容は開催日時点の情報です。

Profile

山田麻弥 Maya Yamada

パーソルホールディングス株式会社
グループ IT 本部 情報セキュリティ部 SBU セキュリティ支援室
シニアコンサルタント

2017 年にパーソルホールディングスへ中途入社。実務未経験から、情報セキュリティ・個人情報保護の領域における組織的・人的・物理的なリスクへの対策を企画・運用。その他、複数の社内部署と連携する大規模なセキュリティインシデントのハンドリングも担当。2024 年に SBU セキュリティ支援室に異動。現在はグループ会社のセキュリティ担当部門とともに情報セキュリティリスク対策の企画・効率化を実施。

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