レビューの「AI化」でシステム開発はどう変わる? パーソルテンプスタッフ×バルテス“異色コラボ”の現在地

Profile

Toshiaki Saito

バルテス株式会社
R&D部 部長 兼 AI技術推進部
部長

SIerにてWebアプリケーション、組み込み、スマートフォンなど多様な開発業務を経験。その後、2019年にバルテスへ入社後、テスト事業部で多数のテストおよび自動化案件に従事。現在はR&D事業部(R&D部/AI技術推進部)の兼任部長として、テスト自動化ツール「T-DASH」、AIテスト設計ツール「TestScape」、AI仕様書ドキュメントインスペクションツール「QuintSpect®」の企画・開発・管理を主導し、AI技術の研究開発および社内推進を担っている。

Jun Ishida

パーソルテンプスタッフ株式会社
テクノロジー本部 サイト推進部 スタッフサイト二室
シニアコンサルタント

通信事業会社にて、Webサービスのインフラ設計・構築案件およびポイント系アプリ開発などに携わり、プロジェクトリーダーとして複数案件の推進を経験。2025年5月にパーソルホールディングスに入社し、パーソルテンプスタッフと兼務。ITコンサルタントとして、開発業務効率化ソリューションの社内展開および本部全体の開発標準プロセスの策定を担当している。

Chihiro Amai

パーソルテンプスタッフ株式会社
テクノロジー本部 サイト推進部 スタッフサイト二室
リードコンサルタント

カード事業会社の社内SEを経て、2024年パーソルホールディングスに入社。2025年4月よりテンプスタッフと兼務。ITコンサルタントとして開発業務効率化ソリューションの社内導入の他、開発標準プロセスの作成に携わっている。

2025年から、パーソルテンプスタッフではサービス開発においてバルテス社と協業し、AIを活用したレビュープロセスの効率化に取り組んでいます。バルテス社が開発しているAIドキュメントレビューツール「QuintSpect®」*の共同評価に参画し、最終的な導入を見据えながらこれまで機能改善の提案などを実施してきました。

その共同評価・フィジビリティ検証が一段落し、2026年1月からは本格導入に向けたPoC導入が開始しています。パーソルテンプスタッフでは、これまで100時間超も発生していたレビュー業務の省力化への期待が高まっており、バルテス社としても、システム開発にとどまらないユースケースが見えてきたなど、双方にとって実り多いものとなった今回のプロジェクト。

これまでの取り組み内容や、これからのAIと人間のかかわり方などについて、バルテス社の齋藤俊彰氏と、パーソルテンプスタッフのシニアコンサルタント石田、リードコンサルタント天井に話を聞きました。

*QuintSpect®はバルテス・ホールディングス株式会社の登録商標

「現場で活用できるAIツールを!」両者の思惑が合致し、協業がスタート

まずは、プロジェクトの概要から教えてください。

齋藤

開発途上にある当社のAIドキュメントレビューツール「QuintSpect®」に対する共同評価をパーソルテンプスタッフとともに行い、実用化に向けた改善に取り組んでいます。具体的には、ツールの企画・開発全般を担当している私がプロジェクトマネジャーとして皆さんからの要望や指摘を受け取り、当社のメンバーで改修や機能追加を進めています。

石田

パーソルテンプスタッフからは、プロジェクトリーダーの私と、天井をはじめとしたメンバーの計6人体制で臨んでいます。社内のシステム担当者とも連携しながら、機能改善や機能追加に関するご提案をしたり、担当者からのフィードバックをお伝えし、次の打ち手を検討してきました。

どのような経緯から協業が始まったのでしょうか。

石田

パーソルテンプスタッフではAIドリブンな開発プロセスの検討を進めており、その過程でバルテスさまの開発中のツールについて伺う機会がありました。このツールにテクノロジー本部 本部長の中桐 が強い関心を抱き、バルテスさまの役員の皆さまへアライアンスを積極的に提案した結果、ご快諾を賜り、両社によるAIチャレンジが正式にスタートいたしました。

お話を受けて、率直な印象としてはいかがでしたか?

齋藤

「QuintSpect®」の開発では、現場目線に即したAIツールを実現したいと考えており、ユーザーの声を聞きながら機能改善がしたいなと思っていました。そんななか、もともとサービス開発のテスト工程で、第三者検証による品質管理を2014年頃からサポートしていてお付き合いのあるパーソルテンプスタッフさまからのお声がけは、弊社としてもとても良いタイミングでしたね。

具体的に、どのような業務において効率化・自動化の必要性を感じていたのでしょうか。AI活用によって解決したいと思われた当初の課題について教えてください。

天井

課題となっていたのは、開発プロセスの中でも特に基本設計のレビュー工程です。

従来の業務では、基本的には設計書や仕様書を1人の担当者が1〜2時間かけてレビューし、さらに多角的な視点でチェックを行うために、3~4人のメンバーによる会議を数時間ほど行っていました。大規模なプロジェクトではそれが計100時間ほどにもおよぶ場合もあり、この工数をなんとか削減したいなと思っていたんです。

AIツールを導入して「正確性や妥当性を多角的にAIで確認した上で、人間が最終的なチェックを行う」という仕組みにできれば、業務を大幅に効率化できますし、ヒューマンエラーのリスクを減らしてレビュー精度もより高めていけるのではという期待がありましたね。

隔週で意見交換しながら、実際の運用に近い形で製品評価・フィジビリ検証を実施

2025年6月に両社の協業がスタートし、翌7月から6カ月にわたり、実際の設計書・仕様書を用いてフィジビリティ検証を実施しています。具体的には、どのような内容で検証を進めたのでしょうか。

齋藤

パーソルテンプスタッフのサービスに関する設計書や仕様書を、実際に「QuintSpect®」に投入し、AIによるレビュー結果を確認していただきました。

検証期間中は隔週で定例会議を設け、開発状況や現在見えている課題、今後の予定などをお伝えするのはもちろん、実際のレビュー結果をもとに改善点の提案などもいただいています。

検証の過程で、具体的にどのような提案をされたのでしょうか。

石田

AIがアウトプットした指摘のうち、ユーザーが不要と判断したものを以降は指摘しないようにする機能や、追加開発の案件において仕様書の差分を検知し、その差分に対する指摘のみを出す機能などをご提案しました。

協業に際して、コミュニケーションにおいて意識されていたことがあれば教えてください。

齋藤

開発にご協力いただいているという建付けですから、オンラインであってもしっかりと不明点や改善のご要望を汲み取って、できる限りお応えしたいという気持ちで臨みました。オンラインだと少し固くなってしまう部分もあるかと思い、なるべく丁寧にお聞きするように心がけていましたね。そして、実は対面でお会いするのは今回が初めてでして(笑)。

天井

オンラインだからこそ、いつも以上に気を配るというのはありましたよね(笑)。

私たちが特に意識していたのは、なるべく無理を言わないこと、細かな気になる点はできる限りまとめて打ち合わせで聞くこと、スケジュールを決め過ぎないことなどです。発注者とベンダーの関係ではなく、あくまで「協業」ですから、大きな負担をおかけしないよう気をつけたいという思いがありました。

機能追加だけではない、フィジビリ検証で得た「収穫」

6カ月間のフィジビリティ検証を経て、成果や手応えとしてはいかがでしたか?

天井

実際のプロジェクトの仕様書とレビュー管理表をもとに、「QuintSpect®」のアウトプットと人によるレビュー内容を比較する形で評価を実施した結果、人によるレビューでは、仕様書の品質に影響する重要な指摘が約3割、軽微な確認や質問が7割ほどの割合で見られるのですが、「QuintSpect®」によるレビューでも修正することでシステムの保守性向上を見込める改善提案が約3割得られ、人によるレビューをサポートし得るツールなのではないかという結論に至っています。

これは想定以上の効果を得られたという印象で、今後が楽しみですね。

検証の中で「QuintSpect®」にはさまざまなアップデートが施されたかと思いますが、あらためてツールとしての魅力はどんな点にあると感じていますか。

石田

「指摘の一覧を見ながらドキュメント上で該当箇所を探し、修正方法を考える」「たくさんの指摘の中で対応の優先度を判断する」といった、人が行うと大変な作業をサポートしてくれる機能が備わっている印象を受けました。

「QuintSpect®」にドキュメントを読み込ませるだけで、「正確性」・「理解性」・「視覚性」・「深層性」・「信頼性」の5つの観点で分析して指摘点を出してもらえるのですが、問題点だけでなく「どう改善すればいいのか」までが提示されるところが非常に便利だなと思います。

▲実際の画面イメージ

石田

Excelの仕様書であれば、メモ機能を使って「どこに問題があるのか」を実際のドキュメント上で明示してくれたり、各指摘内容に重要度も表示されていたりと、こまやかな配慮があるのもありがたいです。

天井

ドキュメント内容をチェックする通常分析のほか、複数ドキュメント間の不整合・矛盾を検知してくれる「矛盾分析」の機能も便利ですね!特に大規模なプロジェクトでは、各仕様書の差分を一つひとつチェックしていくのは大変なんです。AIが差分を検知して認識の相違を未然に防いでくれるという点でも、レビュー工程を楽にしてもらえると感じました。

齋藤さんとしては、今回の検証期間を振り返ってどんなメリットがありましたか。

齋藤

社内ではなかなか気付けなかったような現場目線での核心をつく指摘や提案をいただけたのは、本当に大きな収穫でしたね!石田さんからお話のあった、除外設定機能や追加開発案件における指摘抽出機能のほか、追加指示によってレビュー観点をカスタマイズできる機能も加えて査読的な使い方にも対応できるようにしたり、レポートの履歴やアップしたファイルを残せるような仕様に改善したりと、協業のお陰でさまざまなアップデートが実現しています。

これまではExcelファイルのみの対応でしたが、ご要望を受けてPDFへの対応も開始しており、現在はPowerPoint・Wordファイルへの適用に向けても準備を進めています。「システム開発の仕様書のレビュー」に閉じず、使い方次第でリーガルチェックをはじめとしたさまざまなシーンで役立つツールへ、可能性が広がったと思います。

1月からPoCが開始、最終的に目指すのは「人とAIの共存」

2026年1月から、いよいよパーソルテンプスタッフで「QuintSpect®」のPoC導入が始まりました。PoCにおいてはどのような点をチェックしていくのでしょうか。

石田

PoCで見ていくのは「コスト」と「品質」の、大きく2つの観点です。

コスト面では「業務工数をどれだけ削減できるか(目標値:20%)」を評価軸として効率性の検証を行います。品質面では、「AIによる指摘のうち有効なものはどれだけあるか(目標値:30%)」「いくつかのレビュー観点において人の指摘を上回ることができるか」を指標として、正確で的確なレビューの可否を見たいと考えています。

天井

ドキュメント間の不整合という課題は現場の困りごととして耳にするので、矛盾分析機能の有効性についてもPoCで確認していく予定です。

また、これまでは仕様書をお渡しして出力結果を連携いただいていましたが、PoCでは実際に当社でツールに触れられるようになることから、資料のアップロードや調整などのシステム挙動についても確認していきます。

プロジェクトの今後の展望を、バルテス社とパーソルテンプスタッフそれぞれの視点からお聞かせください。

齋藤

指摘の精度を高めること、ユーザーが求める視点を反映したパーソナライズを可能にしていくこと、ドキュメント間の整合性がとれるトレーサビリティの高いツールにしていくことなど、「QuintSpect®」にはまだ課題がいくつもあります。これらの課題に取り組みながら、ユーザーの皆さんにとって「これがなければレビューが行えない」というようなツールを実現したいと思っています。

また、長期的な視点では、「QuintSpect®」によるレビューを起点として、挙がった指摘の反映や仕様書を基にしたテストケースの作成・実行まで、テスト工程すべてをAI活用によって効率化・自動化できるようにする構想の実現を思い描いています。

石田

今回のプロジェクトが進んでレビュー業務の高速化が実現すれば、もっと現場の声を反映した業務改善やサービス開発が実現できると思うので、その点にとても期待しています。

また、AIを活用した業務効率化は全社的にも重要なテーマの一つであり、レビュー業務のみにとどまらず、他の業務や開発プロセスでもAI活用を推進していこうと取り組んでいます。まずはPoCで「QuintSpect®」の有効性を示して社内展開を進め、いずれは他の業務・システムへの複合的な活用へと広げていきたい、という思いがありますね。

天井

運用保守など、ビジネスを継続させる上で発生するコスト削減をどう解決するかは非常に重要なテーマで、このプロジェクトは大きな一歩になると考えています。この課題に対して他にどのような取り組みができるか、バルテス社の知見を踏まえて、新たなご提案がいただけると嬉しいですね。

ビジネスにおけるAI活用が進んだ先で、どのような業務の在り方が実現されそうでしょうか。最後に、理想として描く世界についてお聞かせください。

石田

AIにすべてを任せるのではなく、AIが得意とする領域で業務の一部を担い、人がAIのアウトプットをチェックし見極める役割を分担していくと良いのではないでしょうか。

レビュー業務を例にとれば、用語の曖昧さやドキュメントの不整合など、論理的な観点からのチェックはAIの得意領域であり、従来のレビューの一部についてAIが人に取って代わることは可能です。代わりに、AIが出力した指摘を精査して修正点を判断すること、AIには分からない現場ならではのルールなどの暗黙知を反映したチェックを行うことが、人に求められるようになるのだろうと思います。

「AIがあれば人の仕事がなくなるか」という問いに対して答えは明確に「NO」であり、AIに頼りすぎず、人が価値を発揮していく必要があると考えています。今後は、AI活用によって浮いた時間を、人がビジネスの方向性や戦略の決定、課題検討などに使えるようになることが理想ではないかと思います。

齋藤

そうですね。現時点では、AIは「最低限必要な仕事を担ってくれるメンバーの1人」というような捉え方をしてもいいのかなと思いますが、今後は、「信頼できるパートナーの1人」として業務の各工程にAIが関与し、それによって開発品質が高まっていく状態が実現すればいいなと思っています。

最後に、パーソルテンプスタッフがAI活用を通して目指す未来について教えてください。

天井

パーソルテンプスタッフでは、AIを積極的に取り入れることで開発・保守運用の生産性を高めていきます。具体的には、作業の自動化やテストの効率化、そして運用工程の省力化などといった開発・保守運用の現場の効率化を目指しています。

石田

現場の生産性の向上ももちろんですが、事業のさらなる成果創出にも注力しています。サービスの品質向上や社員の業務スピードの加速、そしてコストの最適化といった観点で、よりインパクトのある成果を生み出していきたいと考えています。

人が意思決定と価値創造に集中できる環境を整えるために、現場ユースケースの迅速な実装、効果測定、そして再現性ある標準化を推進し、AIと人の協働による持続的な成長を実現していきたいですね。

ありがとうございました!

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年2月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年2月時点での内容です。

ほかの記事を読む

new

2026.01.28

30を超える基幹システムを“無風”でクラウドに。パーソルテンプスタッフが挑むアプリリフト

2025.10.08

「価値ある仕事に集中できる状態」を目指す―業務改善を文化へと育むプロジェクト

2025.11.18

わずか10カ月で開発・導入を実現。データドリブンなタレントマネジメント基盤を形にした舞台裏

2025.09.11

派遣スタッフのスキルシート生成・要約を高速化。「スキシの達人」が示した、AI時代における人間が果たす役割とは?

  • TOP
  • CONTENTS
  • レビューの「AI化」でシステム開発はどう変わる? パーソルテンプスタッフ×バルテス“異色コラボ”の現在地