未経験から100億円規模のIT予算を守る室長へ――メンバーの力を信じ、組織を支える側へ

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指すパーソルグループ。今回は、文系出身からITの道へ進み、未経験領域への挑戦を経て室長に就任した中道に、これまでのキャリアと管理職としての現在地について聞きました。

文系出身からITへ。高稼働の現場を経てたどり着いた、“長く続けられるキャリア”という軸

まずは、中道さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

学生時代は文系でしたが、長くはたらけるスキルを持ちたいと思っていました。当時はIT業界が伸びている時期で、専門性を身につければ自分の可能性を広げられるのではないかと考え、SIerへ入社しました。

子どもの頃から何かをつくることが好きだったこともあり、プログラミングならモノづくりに近い仕事だと思ったんです。ただ、SEとしてシステム開発に携わったものの、入社してすぐに「開発はあまり向いていない」と言われ、設計工程を担当することになりました。

新卒で経験もなかったので、会社が必要としている場所で役に立とうと素直に受け止めていました。当時は目の前の仕事を覚えることで精一杯でしたね。

IT業界に進まれて仕事の環境はどうでしたか?

その会社では、さまざまな企業のプロジェクトに参画し、完了したら次の案件へ移るというはたらき方でした。多様な経験を積める環境でしたが、高稼働のプロジェクトも多く、立ち止まって仕事の面白さを味わう余裕はあまりなかったように思います。

携帯電話の料金システムに関する大規模プロジェクトでは、修正やトラブル対応が重なり、月の残業時間が100時間を超える状態が数カ月続きました。

仲間と一緒にリリースに向けて取り組むことにやりがいはありましたが、このはたらき方では身体がもたないと思い、退職を決意しました。

退職後はどんな道を選択されたのでしょうか?

まずは心身を整える時間が必要だと感じ、派遣社員としてはたらく道を選びました。家電メーカーの宣伝部で、データを集計・分析する業務を担当しました。以前と比べると落ち着いた環境で、気持ちにも余裕がありましたね。

そこで出会った方たちの中には、「自分のやりたいことを優先するために、派遣社員を選んでいる」と話す人も多く、さまざまな考え方や価値観に触れ、視野が広がった時期でもあります。

派遣期間を経て、次はどのようにキャリアを進めましたか?

2年ほど経った頃に、改めて正社員としてキャリアを築いていこうと思い、これまで培ってきたITスキルを活かせるセキュリティソフトのメーカーへ転職しました。しかしその会社では、急な対応や長時間労働も多く、はたらき方を見直したはずが、気づけば同じ状況になっていたんです。また限界が来るのではないかという危機感がありました。

当時は結婚していたこともあり、次は定時で帰れる環境を求め、20名ほどの小規模なSIerに転職しました。そこでは、営業事務や総務、人事などバックオフィス全般を担い、役員も経験しました。経営に近い立場で組織を見る機会を得られたことは、大きな学びでした。

ただ残念ながら、評価制度が定まっておらず、長期的にキャリアを築いていくのは難しい環境だったんです。将来を見据え、より評価制度や仕組みが整った環境に身を置きたいと考え、2018年にパーソルプロセス&テクノロジー(現・パーソルビジネスプロセスデザイン)へ入社しました。

安心して挑戦できる環境を土台に、未経験領域へ踏み出したキャリアの転機

パーソルプロセス&テクノロジーへ入社を決めた理由を教えてください。

これまでの転職経験を通してはっきりしていたのは、「長く続けられる環境」が何よりも大切だということでした。その点、パーソルプロセス&テクノロジーは一定の企業規模があり、評価制度や残業時間についても具体的に説明を受け、「ここなら無理なくはたらき続けられるかもしれない」と感じました。

これまでの経験を活かしながら、はたらき方も見直せる。そうした前向きなイメージを持てたことが、入社を決めた理由です。

入社後はどのようなキャリアを歩みましたか?

客先常駐型で、プロジェクトごとに現場へ入り業務を進めるスタイルでした。最初に任されたのは、パーソルホールディングスの案件です。当時の組織は若手メンバーが多く、2、3年単位でチームを入れ替えながら、次のリーダーを育成していく方針でした。私もリーダーとして後任を育て、2022年には別のシステム会社のプロジェクトへ移りました。

ただ、その会社では毎日出社が前提のはたらき方だったんです。コロナ禍を経て月に数回の出社というスタイルに慣れていたこともあり、生活とのバランスを改めて考えるようになりました。

そんな中、以前一緒にはたらいていた方から、予算業務の人員が不足していることを聞いたんです。予算領域は未経験でしたが、まさに求めている環境だったので、「キャリアチャレンジ制度*」を活用して、2023年にパーソルホールディングスへ転籍しました。

*キャリアチャレンジ制度:グループ全社の社員を対象にした、グループ会社間での公募型異動制度

未経験の領域に挑戦する不安はありませんでしたか?

もちろん不安はありました。ただ、業務の中心はデータの集計で、Excelのスキルがあれば対応できると聞いていたため、それほど心配はしていませんでした。何よりリモートワークが前提の環境であることや、信頼関係のある方と一緒にはたらけることが、大きな後押しになりました。役割を期待してくれる環境があるなら、挑戦してみよう。そう考え転籍を決めました。

グループ100億円規模の予算管理を“止めない”ために、属人化を解消し持続可能な体制へ

現在の業務について詳しく教えてください。

大きく分けて、「IT予算の策定」「策定した予算の運営」「契約・発注業務」の三つがあります。

中核となるのは、グループ全体にかかわるIT予算の策定です。毎年夏頃から翌年度の検討を開始し、各部署からの要望や利用計画を精査しながら概算を組み立てます。その後、財務部門ともすり合わせながら、数カ月かけて精度を高めていきます。複数回の会議を経てようやく翌年度のIT予算が固まりますが、そこに至るまでには多くの前提と調整があります。

対象となるのは、パーソルグループ各社で利用しているシステムやIT環境です。ライセンス費用も年々上昇しており、予算規模は100億円を超えます。

もし計算の誤りや請求漏れがあれば、グループ各社にも影響します。そのため、単なる数値管理ではなく、組織全体のIT基盤を支える責任ある業務だという認識を持ち、日々慎重に向き合っています。

実際に業務を進める中で、とくに苦労された点はありますか?

実は、転籍して1年ほどで前任者が退職してしまったんです。その方は長年にわたり、ほぼ一人で予算業務を担っていたため、体制は私と育休から復帰した社員の二名のみとなりました。

しかし、いずれも十分な経験があるとは言えず、このままでは安定的に業務を継続することが難しいという強い危機感があり、思い切って上司に体制の見直しを提案しました。結果として、中途採用で新たなメンバーを迎え、現在は三名体制で業務を推進しています。

こうした現場の提案に対して、組織としてきちんと向き合ってくれる点は、パーソルホールディングスの大きな強みだと感じています。

昨年10月に室長へ就任されていますが、不安はありませんでしたか?

正直に言うと、最初に声をかけられたときは前向きな気持ちよりも「大変そうだ」という印象のほうが強かったですね。通常の業務を続けながらマネジメントを担うため、業務量も増えますし、判断や調整の範囲も広がります。

それでも最終的に引き受けたのは、会社から必要とされているのであれば、自分なりに貢献したいという気持ちがあったからです。振り返れば、これまでのキャリアも求められた場所で応えてきた積み重ねでした。

チームの運用において、具体的に取り組まれたことはありますか?

最初に向き合ったのは「属人化の解消」です。誰か一人に業務が集中してしまうと、業務停止のリスクが高まります。とくに予算業務は経営にも直結するため、リスクを抱えたままにしておくわけにはいきません。

そこで、まずは業務の棚卸しを行い、手順を明文化しました。作業の流れや判断基準を文書化し、画面共有をしながら説明する機会も増やしました。その結果、今では誰かが急に休んでも業務が止まらない体制が築けています。

パーソルホールディングスでは女性管理職の比率向上にも取り組んでいますが、そのような環境の中で、中道さんご自身はどのような管理職を目指したいと考えていますか?

これまで女性管理職と近い距離ではたらく機会がなく、当初は明確な理想像を持っていたわけではありません。ただ、ある女性マネジャーから「メンバーには専門性を活かしてもらいたいから、私は室長を担っている」と聞いたことが、私の考え方を大きく変えました。メンバーの強みを活かすマネジメントもあるのだと気づかされたんです。

現在の室には、私よりも予算業務の経験が豊富なメンバーがいます。一方で、パーソルホールディングスでの在籍年数は私がもっとも長く、組織の背景や意思決定の流れについて共有できる知見があります。だからこそ、強みを掛け合わせることがチームにとって最善だと考え直しました。

私自身は全体を整え、方向性を示す役割を担う。そしてメンバーには、それぞれの専門性を存分に発揮してもらう。お互いを補完し合いながら前に進んでいくことが、いま私が目指しているマネジメントのかたちです。

“求められるなら応えたい”という姿勢が拓く、人を支える管理職という選択肢

IT予算を取り巻く環境が変化する中で、今後どのように進化させていきたいと考えていますか?

まず取り組みたいのは、IT予算の透明性をより高めることです。年々、予算に対する説明の粒度が細かくなっており、グループ各社からも、より具体的な質問が増えてきました。

そのため、単に数字をまとめるだけではなく、データを分かりやすく管理し、誰が見ても理解できる形で提供できる仕組みに変えたいと考えています。そして将来的には、システムの高度化やAIの活用も視野に入れながら、皆さんの業務負担を軽減できるような仕組みも導入していきたいですね。

中道さんが感じている、パーソルホールディングスの魅力は何ですか?

一番は、はたらき方の裁量が大きいことです。リモートワークやフレックス制、裁量労働制などによって、時間の使い方をある程度コントロールできます。

特に子どもがいる方は、急な体調不良といった予測できない出来事は必ず起こります。そうした状況でもキャリアを止めずに続けられるのは、制度が形だけでなく、実際に活用できている点が大きいと感じています。

また、意見をきちんと受け止めてくれる風土も魅力の一つです。上司に対して日頃から意見を伝えやすく、必要に応じて上のレイヤーにもきちんと共有してくれるため、安心して相談できる環境があります。

最後に、管理職に対して不安を抱えている方へメッセージをお願いします。

実際に室長になって感じるのは、確かに簡単な役割ではないということです。しかし、チームの体制や業務の進め方を工夫することで、無理なく続けられる環境はつくれます。

正直に言えば、私自身、管理職を目指していたわけではありません。特別な才能があったわけでもなく、不安や迷いもありました。それでも、目の前の役割に向き合い続けてきた結果として、いまこの立場に立っています。

チームの状況を見ながら、誰もが安心してはたらける環境を整えていく。その役割に少しでも関心があるなら、ぜひ一歩踏み出してみてほしいと思います。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=長坂佳宣(PalmTrees)
※所属組織および取材内容は2026年2月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年2月時点での内容です。

Profile

中道綾子 Ayako Nakamichi

パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 IT企画部
オペレーションマネジメント室 室長

新卒でSIerに入社し、IT領域の基礎を築く。その後、バックオフィス業務や役員も経験しながら、ITと組織運営の両面でキャリアを重ねる。2018年にパーソルプロセス&テクノロジーへ入社、2023年にパーソルホールディングスへ転籍。現在はグループ全体のIT予算の策定・運営を担い、2025年10月より室長を務める。

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