【後編】テクノロジー戦略に掲げる4つの挑戦――顧客と社員によりよい“はたらく体験”を
2023年5月パーソルグループではグループ中期経営計画2026を策定し、2030年に日本とAPACにおいて「はたらいて、笑おう。」を実現するために今後3カ年で行う成長投資と、事業規模拡大の方針を提示しました。
今回は、パーソルホールディングス執行役員CIO(Chief Information Officer)/CDO(Chief Digital Officer)の柘植にインタビュー。パーソルグループのテクノロジー部門が今掲げる中期的な方針・戦略と、その実現に向けて描く具体的な取り組みについて話を聞きました。
【前編】はこちら→パーソルホールディングスCIO/CDOに聞く、データ・テクノロジー活用の推進にかける思い
中長期的にテクノロジー活用に注力し「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を目指す
――グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、パーソルグループはどのような経営方針や戦略を掲げているのか、2023年5月に発表された中期経営計画をふまえてお聞かせください。
今回の中期経営計画では、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」「テクノロジードリブンの人材サービス企業」という二つのキーワードを掲げました。
まず「“はたらくWell-being”創造カンパニー」について。パーソルグループでは“はたらくWell-being”を「一人ひとりの可能性を広げ、はたらく自由を広げ、個人と社会の幸せを広げる」と定義しており、一人ひとりのはたらくことへの満足度を高めることにグループとして向き合っていきたいと考えています。
もう少し具体的に表現すると、“はたらく個人の可能性を広げる”ことに力を入れていくということ。もちろんこれまでも「よりよいはたらき先をいかに見つけるか」という意味でこのテーマに挑戦してきましたが、これから中期的には「いかに理想の自分に近づくか」という観点で、はたらく個人の可能性を広げることに注力します。
そのために、例えば社会人に学びの機会を提供することなどを目指して、新しいサービスの提供や既存事業の強化に取り組んでいきます。
「テクノロジードリブンの人材サービス企業」については、昨今サービスの成長にテクノロジーの力が必須となっている中、グループ全体で見るとまだその活用に課題が多い状況であることをふまえ、中長期的にこのテクノロジー活用に注力し“テクノロジーが使える会社”を目指していくという方針です。
ここで大切なのが“人材サービス企業”というキーワードで、テクノロジーを起点にはするものの、決してテクノロジーカンパニーを目指している訳ではなく、私たちはあくまで人材サービス企業であるということを強く意識しています。“人の価値発揮”というこれまでパーソルグループが大切にしてきたものを私たちらしく変わらず追い続けながら、そこにテクノロジーをかけ合わせてさらに成長していきたいと思っています。
テクノロジー活用による“顧客と社員のはたらく体験の良化”に挑む
――掲げた二つのキーワードのもと、テクノロジーを活用しながら具体的にどのような取り組みを進めていこうとお考えですか?
テクノロジー戦略としては「顧客のはたらく体験の良化(CX)」と「社員のはたらく体験の良化(EX)」の2つを軸として置き、それぞれに対して「デジタイゼーション(デジタル化)」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の観点で取り組みを進めていこうと考えています。
CXについては、これからデジタル化を進めていくSBU*と一体となって事業のデジタル化戦略を考え、サービス価値の向上を目指して協働していくことを計画しています(図中③)。
* SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位を指す
一方で大きくデジタル化が進んでいるSBUに対しては、人材・資金・ノウハウなどの面でサポートをしながら、R&D領域などより未来を見た取り組みにともにチャレンジします(図中④)。これら2つを通して、事業のDXをグループ全体で推進していきます。
EXについては、まず「グループの社員の方々が気持ちよくはたらける環境をいかに作るか」を考え、デジタル化によって不便の解消と生産性の向上に取り組みます(図中②)。
例えば、はたらく場所や使うデバイスによるシステムの利用制限を取り払ったり、長く使っているコーポレート系システムを更新したりすることで、よりよいはたらく環境を作っていきたいと考えています。
そして最後に、これまでお話ししたような取り組みを進めるには“人”が必要ですから、各SBUに対して人材面でのサポートを行うために、ホールディングス内に専門人材による新組織を組成します(図中①)。ホールディングスで組織を組成することで、制度や報酬といったグループ全体の環境整備が行いやすくなるほか、スムーズにテクノロジー人材を採用できるようになることを期待しています。このように、新組織を通じてテクノロジー人材がより前向きにはたらけるよう尽力していきます。
――新組織を立ち上げ各SBUを支援するという体制をとられた背景について教えてください。
一社一社の採用力を強化する形での支援も考えられますが、それ以上に、ホールディングスの立ち位置やブランド力を活かして採用を行うことで、スピード感を持った支援ができると考えました。
またこのような体制をとることで、テクノロジー人材の方にとっても、特定のサービスのみでなくグループ内のさまざまな事業・サービスに携われる可能性があるという点を魅力に感じていただけるのではないかと捉えています。
これまでの私の経験も活かしながら、各SBUの組織・環境づくりに貢献していければと思います。
――採用・はたらく環境の整備と並んで重要な“テクノロジー人材の育成”については、どのように取り組んでいこうとお考えですか?
「アップスキル」と「リスキル」の2軸で、テクノロジー職種に限らずグループ内のすべての社員の方々がテクノロジーを武器にできるような状態を目指していきます。
アップスキルについては、テクノロジーのリテラシー向上によって業務の幅を広げ、またレベルを高めることを目的とした育成プログラムを実施したいと考えています。
例えば、日常業務の中で営業支援システムを使いこなすことが求められる営業職や、IT系プロジェクトへの参画機会が多く、一定の専門知識が求められる企画職の方々などにアプローチしていく想定です。
もう一方のリスキルは、ご自身の職掌とは異なる新たな知識を獲得し、これまでの経験を活かしながらテクノロジー職種に挑戦されることを、プログラムやプロジェクトを通して支援するものです。すでに、営業出身の方がセキュリティ職種やIT系コンサルタントに転向されるというリスキルの取り組みが始まっており、一定の成果も出てきているため、今後より加速させていきたいと考えています。
“はたらく”が変化の時を迎える今
グループの変化に向け、熱意と主体性を持った仲間とともに挑戦したい
――掲げた戦略や取り組みが形になったその先で、パーソルグループはどのような価値を発揮できるグループになっているのでしょうか。柘植さんが描くゴールについてお聞かせください。
前提として、パーソルグループの一番の魅力であり強みであるのは、正社員から派遣、アルバイト・パートまで日本全体の“はたらく”に対してサービスをご提供し、さらにアジアを中心にグローバルにもビジネスを展開している、この幅広さだと思っています。
この強みを活かしながら顧客と社員のはたらく体験の良化を進めたその先では、一人ひとりがはたらき続ける限り、仕事選びや学びといったさまざまな場面で、常にそばにいる存在となることが理想なのだろうと考えています。そういった、“はたらく”を誰よりも理解し一人ひとりに寄り添い続けられる企業でありたいですね。
――その実現に向け、どのような方に入社してほしいとお考えですか?
“はたらく”を取り巻く社会は大きな変化の時を迎えており、その中でパーソルグループもチャレンジし、変わっていかなければなりません。デジタル化の推進によって事業や環境を変革したり、新たな組織を作ってSBUの支援を行ったりと、さまざまな挑戦が待っています。
そういった過程においては、“やったことがない、やれるかどうかも分からないけれど、思いを持って成功させていく”ということが大切になるはずですから。一つひとつの課題に対して「よし、やってやるぞ」と熱意や主体性を持って一緒に取り組んでいただける方を、仲間として迎えられれば嬉しく思います。
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈
(2023年5月時点の情報です。)
- 柘植悠太Yuta Tsuge
- パーソルホールディングス株式会社
執行役員 CIO/CDO - 2006年同志社大学を卒業、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に新卒入社。法人営業を経て、事業企画部門にて人材紹介、dodaなどの主要事業の事業戦略を担当。
その後、事業におけるデザイン活用・デジタル技術活用に積極的に取り組み、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの三位一体で事業開発に臨む新鋭的な組織編成に注力。時代に先駆けた体制で既存事業・新規事業の開発に挑む。
現在はホールディングスで執行役員CIO/CDOとして、グループ経営およびグループ全体のIT/デジタル化の推進を担当。
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)