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174拠点、約1万人の社員の”はたらく場所の制約”を開放する「脱固定電話プロジェクト」 

174拠点、約1万人の社員の”はたらく場所の制約”を開放する上で、最後の課題であった電話対応。必要となったのは、これまで頼ってきた固定電話からの卒業とソフトフォンへのリプレースでした。 

今回は、「脱固定電話プロジェクト」の推進を担当するグループIT本部の小宮に話を聞きました。 

ソフトフォンに一本化し、柔軟なはたらき方促進へ 

ー「脱固定電話プロジェクト」を実施することになった理由を教えてください。 

これまでパーソルグループでは、社員は業務中に固定電話やオンライン電話ツールを利用していました。その中で、固定電話を利用するグループ会社のうち、約83%を占める59拠点では回線のサポートが終了していただけでなく、利用中の音声電話ツールもサポート終了の案内が発表されていました。こういった状況下でシステム障害が発生した場合、サービス復旧が難しく、業務に多大な影響を及ぼしかねません。 

また、これまでパーソルグループ内で事業再編を行ってきているという背景に加え、国内だけで38社ものグループ会社があることから(2023年11月1日時点)、同じグループ内でありながら、3種類の固定電話回線が利用されていました。音声電話ツールも合わせるとその数は5種類にも上り、管理・運用面でもシンプルにすることが求められていました。 

ーシステムのサポート終了と、電話ツールの統一化という 2つの理由背景があったわけですね。 

それ以外にも、COVID-19の蔓延も大きな影響がありました。パーソルグループ、特にパーソルホールディングスでは、リモートワークを積極的に推進する動きが加速したんです。 

そんな中、「社員をはたらく場所の制限から解放する」ために最後の課題として立ちはだかったのが電話対応でした。COVID-19の流行以前からリモートワークができるようVPN環境の整備は進めていたため、リモートワークへの移行は容易でしたが、電話対応だけは出社するほかなかったんです。 

そこで、リモートワークでも市外局番(東京なら「03」)から始まる会社の固定電話番号から発信可能にすることで、社員がオフィスに出社することなく仕事ができるようにするために、「脱固定電話プロジェクト」は本格化に始動しました。 

3つのフェーズに分けた進行管理 

ー今回のプロジェクトは、具体的にどのようなスケジュールで進んでいるのでしょうか? 

2020年に始まり、26年の3月に完了予定という、およそ6年に及ぶビッグプロジェクトです。既存の固定電話・音声電話ツールを導入する174拠点、約1万人のユーザーがソフトフォンを利用している状態にすることをゴールに設定しています。 

大きなプロジェクトなので、フェーズを3つに区切って進行管理をしています。最初の2年間は、ソフトフォンの選定・検討フェーズ、その後は移行・設計フェーズです。システムを導入し、初期設定が完了したら、パーソルグループでの活用方法を検討して基本設計を構築し、従来のシステムからデータを移行し、利用できる状態にします。 

最後は、設計・データ移行が完了したソフトフォンを順次稼働させるフェーズです。ここでは、移行設計後に生じる想定外の事象発生やトラブルに対応しながら、ソフトフォンを問題なく通常稼働できるように日々対応しているところです。 

課題が解決し、ソフトフォンへのリプレースが完了後、旧サーバーからのデータ削除やハードウェアの撤去などを行い、プロジェクトそのものをクロージングさせるスケジュールです。 

ーソフトフォン導入へ向けて、具体的にどのような作業が発生するのですか? 

ソフトフォン導入に際して、まずは現状調査を行います。どの回線を使っていて、電話番号やシステムがどのように構成されているのかを確認したあと、その情報をもとに電話番号の振り分け方法などをグループ各社の担当者と共に細かくチェックします。番号の振り分け方法と、ソフトフォンを利用する人数が確定した段階で、キャリアへライセンス発行を依頼。発行されたライセンスをシステムに流し込み、社員が利用を開始できる状態にします。 

ソフトフォンを適切に使ってもらうため、稼働初期は現地に立ち会ってサポートしたり、ネットワークやLAN工事が必要となる場合には調整を行います。これらの内容に現在12名のチームで取り組んでいます。 

現状把握を適切に行うために、各社との丁寧なコミュニケーションが不可欠 

ープロジェクトを進める上で難しいポイントはどこでしょう?  

グループ各社の情報を的確に漏れなく把握することです。単純な作業に思えるのですが、これが大変難しいのです。データ移行を終えて稼働するタイミングになってから、想定し得なかったトラブルや事象が起こることも少なくありません。 

パーソルグループならではだと思いますが、国内だけで38社ものグループ会社があるので、それぞれに独自のルールや設計・運用方法があります。そのため、各社からのリクエストの内容も多岐にわたります。たとえば「ソフトフォンを導入しつつ、固定電話も1人1台設置したい」であったり、「1人が複数の電話番号を切り替えて使用したい」であったり。 

なかにはカスタマイズするとほかの部分に影響が出るものや、運用設計そのものを見直さなければならないものもあります。そのため、私たち運営側が標準化すべきところと、要望を聞いて取り入れるべき箇所のバランスをとりつつ、社員の満足度を高めていく必要があり、これもなかなか難しいですね。 

グループ各社でソフトフォン切り替えへのモチベーションが異なるのも難題の一つでしょうか。ソフトフォン導入に慎重で、丁寧に検証を進めたい会社もあれば、すぐにでもリモートワークをできるよう、できるだけ早期に導入したい会社もあり、スピード感に対する要望もバラバラなんです。 

ーそういった難しいポイントがあるなかで工夫していることはありますか? 

現場の声をしっかり聞くことですね。グループ各社の協力が必要な場面が多いからこそ、要望や質問に対しては、それがどんなに一部の小さな声であったとしても耳を傾けるよう心がけています。なかにはリクエストに応えられないケースもありますが、その場合は納得してもらえるよう、より丁寧に説明するようにしています。 

私自身、パーソルホールディングスに転籍したのは2022年ですが、2012年からグループ会社に在籍し、複数の拠点で音声電話システムの運用・保守を担当してきました。複数の異動を経験してきたからこそのネットワークや、各社のはたらき方に対する知識の豊富さは私の強みだと考えています。そういった意味で、グループ各社とパーソルホールディングスとのパイプ役を担えれば、プロジェクトに貢献できるのではないかと思っています。 

もう一つ、解決できない事象が生じた際、チームのメンバーだけで悩むのではなく、専門家や有識者に頼ることも大切にしています。プロジェクトチームのメンバー全員が音声通話領域での経験が豊富なわけではありません。だからこそ、不安点や相談ごとが浮上した場合はチームのみで悩まず、助けを求めることも時には必要だと考えていますね。 

ソフトフォンの導入でグループ全体に好循環を 

ーソフトフォンの導入は、パーソルグループにどのような変化をもたらすのでしょうか? 

電話でのやり取りがすべてパソコンやスマートフォンからできるようになり、オフィスに出社しなくとも市外局番から始まる会社の電話番号から電話がかけられるようになります。実際にソフトフォンに切り替わったグループ会社では、どこからでも電話対応ができる点で利便性の向上を実感しているという声をもらっています。 

またソフトフォン1本に統一されることは、運営側である私たち音声チームにとってのメリットも大きいです。運用・管理対象の音声通話ツールが1種類になるため、音声・ネットワーク関連の問い合わせにより丁寧に対応できるようになります。 

このようにソフトフォン導入はさまざまな観点から好循環を生み出し、グループ全体のさらなる成長につながると考えています。 

ー「脱固定電話プロジェクト」は、今後どのように進める予定ですか? 

直近では、初期導入・稼働開始時のサポートを丁寧に行おうと思っています。マニュアルを制作し、それを配布するだけでなく、現地にメンバーを配置して直接質問に対応できる環境を整備し、不安をできるかぎり払拭してもらえるようチームで一丸となってサポートする予定です。 

と言うのも、ソフトフォンのようなIT寄りの音声通話システムとなると、ネットワークやアプリケーションの知識が豊富な専門部隊に任せたいという要望をよく耳にします。将来的には、より多くのグループ会社にソフトフォンの導入提案をしたいと目論んでいます。 

ー最後に、長期的な目線で、ソフトフォン導入に期待していることを教えてください。 

将来的には、ソフトフォン活用によって見えてきた事例をもとに、社員の生産性を向上させるような取り組みが提案できればと思っています。たとえば、電話に割いている時間を可視化し、業務効率化のためのヒントを得るなど、さまざまなプランを検討中です。 

取材・文=ファーストブリッジ 宮口佑香
(2023年11月時点の情報です。)

小宮孝久Takahisa Komiya
パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 ワークスタイルインフラ部
コミュニケーションインフラ室 音声チーム
PO/リードコンサルタント
2012年にパーソルグループへ入社して以降、複数のグループ各社・拠点で音声通話システムの運用・保守を担当。2022年にパーソルホールディングスに転籍し、現在は「脱固定電話プロジェクト」のプロジェクトマネージャーを務める。

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