いかに一人ひとりの選択肢の幅を広げるか―スキマバイトアプリ「シェアフル」とその開発組織が大切にすること
「スキマ時間を価値に変える」を掲げ、「スキマ時間にはたらきたい個人」と「この日・この時間だけはたらいて欲しい企業」をつなぐ短期人材活用プラットフォーム、シェアフル。
今回はそんなシェアフルの魅力と、その成長を支える開発組織の魅力について、シェアフル株式会社 代表取締役社長の横井に話を聞きました。
いかに一人ひとりの選択肢の幅を広げるか
―まずは、横井さんのこれまでのご経歴からお聞かせいただけますか。
Webデザイナーとしてキャリアをスタートした後にプログラミングも手がけるようになり、そこからバックエンド、フロントエンド領域をそれぞれ担当したり、新規Webサービスの企画から開発、運用までを担ったりと、幅広く経験を積んできました。
2015年にランサーズ株式会社にジョインし、CTOやプラットフォーム責任者としてサービス運営に携わった後、パーソルホールディングスとのジョイントベンチャーとして「シェアフル」の立ち上げに参画。2023年4月に代表に就任して今に至ります。
―人材業界ではたらき始めたきっかけがあれば教えてください。
さまざまな経験をしてスキルを身につけ、明日会社に何かあっても途方に暮れることはないだろうとある程度自信がついたタイミングで「次は何を原動力としてやっていこうか」と見つめ直し、出会ったのが前職でした。
まだリモートワークが普及していなかった当時、時間や場所に囚われずにはたらけるクラウドソーシングという仕組みに魅力を感じたのを覚えています。例えば、都内ではたらいていたエンジニアが家庭の事情で地元に戻らなければならないとき、地元にITの仕事がなければ望まない職に就くしかないけれど、クラウドソーシングなら東京の仕事をオンラインで受けられますよね。
このように “一度閉じられた選択肢が開く”、その人の “選択肢の幅が広がる” 状態を実現したいなと入社を決め、この思いは今でも私の軸の一つになっています。
既存の人材サービスとは全く異なる、新しい“出会い方”を提供する
―改めて、「シェアフル」の概要について教えてください。
シェアフルは、一日単位からお仕事の紹介と採用を行うマッチングプラットフォームです。数時間から一日単位での単発の採用はもちろん、一日から数十日にわたる短期の採用、さらにレギュラーバイトとしての長期採用を前提としたお試しの採用まで、さまざまな形で人材不足の解決をサポートしてきました。
現在550万以上のユーザーと4.4万社以上の企業にご利用いただいております。(※2024年3月時点)
―「シェアフル」の魅力はどのようなところにあるのでしょうか。
まず一つは、ユーザーにとっての圧倒的な利便性です。スキマバイトでは、履歴書・職務経歴書や面接は不要で、応募したら企業の確認を待つことなく自動ですぐに仕事が決まり、はたらいた分のお給料は全額、手数料なしで最短即日に受け取れます。応募した後に不安な気持ちで連絡を待つことも、やりとりや面接に時間をかけて臨んだ結果不採用となってしまうこともありません。
また雇用までのすべてのやりとりはデジタル化されており、ユーザーから応募があれば自動で採用が決まり、契約書の発行も給与計算も自動で行われるほか、勤怠もQRコードによる管理で手間がかかりません。企業にとっては、スムーズかつスピーディな採用活動で、本当に必要としているときにユーザーにはたらいてもらうことができるのです。
―新しい“はたらく”の形を提供されている印象ですが、受け止められ方としてはいかがですか?
面接をせずに採用を決めるという点で、企業が不安を感じることも想像されますよね。こうした観点から、当初はスキマバイトの方に任せられる業務だけを切り出す、という形も多く見られていました。
しかし、サービスの進化に伴って非常に多くのユーザーに利用いただけるようになったことで、そうした採用における不安を超えて “はたらきたいと思っている方と出会える場” と捉えていただけるようになってきたなと、市場の変化を感じています。
求人媒体やエージェントサービスと並ぶ、人材不足の課題を解決するための一つの選択肢として、そしてそうした既存のサービスとは全く異なる新しい出会い方として、受け止めていただけている手応えがありますね。
―「サービスの進化」を支える開発組織についても、特徴を教えてください。
シェアフルの開発組織は現在40名ほどで、機能開発はすべて内製で手がけてきました。
開発組織は “一日で入れて一日で出られる” というコンセプトを掲げており、メンバーの人数が流動的なこと、何度も面接を重ねることなく良さそうな方にはすぐにジョインしてもらうことが特徴です。
―その狙いとは?
まずは一日単位での就業を可能にするサービスをやっているからには、このプロダクトで叶えたい世界観を自分たちも体現したい、というのが一つです。
もう一つは、やめたいと思ったときにすぐにやめられる組織にしたいという思いがあります。入社する段階でたくさんの時間をかけると、退社するときに引き留めが生じてお互いに辛い思いをしてしまいますから。まずはお試しで入ってもらい、もし他のキャリアに挑戦したとしても、後にまた戻る選択もしやすい状態をつくれたらと考えています。
―このコンセプトを実現するために、開発体制づくりにおいて工夫されていることはありますか。
すぐにやめられる状態とは引き継ぎを必要としない状態だと思うので、その人しか分からない暗黙知や、限られた人にしかできない属人化した業務をなくすことを重視しています。ドキュメンテーションや、ナレッジベースの整理を細やかに行うなど、入ったその日から開発にコミットできる環境づくりを行っています。
“光の当て方”を変えることで、広がる選択肢がある
―「シェアフル」の今後の展望についてお聞かせください。
人材不足というキーワードをよく耳にしますが、光の当て方を変えれば、個人にとっても企業にとってもマッチングできる余地がまだまだあるのではないかと考えています。
例えば、「履歴書や職務経歴書に書かれる経歴に囚われずに一日単位ではたらいてもらったところ、とても素敵な人と出会えた」「自分が知らなかった企業にスキマバイトで入ってみたら、思っていた以上に自分に合う職場だった」など、先入観によらない形で出会うことで広がる選択肢があるのではないかなと。
こうした、既存の採用や “はたらく” のあり方とはまた異なる視点や仕組みから、さらに一人ひとりの選択肢の幅を広げることにチャレンジしていきたいと思います。
―具体的な構想や取り組みなどがあれば教えてください。
ユーザーの中で長期就業の意向がある方について、ご本人へのヒアリング内容とシェアフルでの就業実績をもとに企業に直接ご紹介する新機能「シェアフルエージェント」を、2024年2月からスタートしました。
シェアフルでの就業実績やAIを活用することで、履歴書や職務経歴書には込めきれない その方の持つ幅の広さや可能性に光を当て、新たな出会い方や選択肢をご提供していければと考えています。
―パーソルグループにおいて、こんな位置付け、役割の組織になっていきたい、という思いはありますか?
私たちは、パーソルホールディングスの中でもR&D FU(Function Unit)という、新しいことにどんどんトライしていくことをミッションとするセグメントに属しています。これからもシェアフルというサービスを通じて、選択肢を切り拓く役割を担っていきたいと思います。
―ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年3月時点の情報です。)
- 横井聡Satoshi Yokoi
- シェアフル株式会社
代表取締役社長 - 1985年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、WebデザイナーとしてWebサイトの開発に携わった後、SIerにて証券会社のシステムのバックエンドを担当。その後フロントエンドエンジニアに転向し、Adobe AIRを中心にアプリ開発を行う。Webサービス事業部長を務め、新規Webサービスの企画/開発/運用の全てに携わった後、2015年6月よりランサーズ株式会社にジョインし同年8月よりCTO。企画部長等も歴任し、2018年4月より開発執行役員を務める。
2019年1月、ランサーズとパーソルの合弁会社であるシェアフル株式会社を立ち上げ、取締役に就任。2020年4月よりシェアフル社の副社長に就任し全体の執行責任を担う。2023年4月より現職。