【前編】パーソルキャリアのシステム・プロダクトを段階的に磨き、時代や事業の変化に追随できる新たな仕組みをつくる
転職サービス「doda」をはじめとした多様な人材サービスを通じて、転職・就職支援や採用・経営支援を手がけるパーソルキャリア。
今回は同社のCIO(Chief Information Officer)として、テクノロジー活用推進の取り組みを牽引する片山にインタビュー。これまでの経験や現在担う役割と、テクノロジー活用推進をめぐる施策や組織づくりの歩みについて聞きました。
【後編】はこちら→”【後編】全体最適”の視点で、テクノロジー活用によって生み出されるパーソルキャリアの価値を最大化する
中長期的な視点を持って、ITで事業の成長に貢献したい
―前半は、片山さんがCIOの役割を担われるに至るまでの過程にフォーカスしてお話を伺います。まずはこれまでの経歴から聞かせていただけますか。
片山:新卒入社以来14年にわたってITコンサルティング会社に勤め、システムの開発・運用保守から、業務プロセスの変革に伴うシステムの導入、IT化構想策定をはじめとした上流案件の提案など、幅広い業務を経験しました。
その後パーソルキャリア(旧:インテリジェンス)に転職し、人材紹介・転職メディア事業でのIT責任者の経験を経て、IT組織を管掌する立場を任せていただくようになって今に至ります。
―前職からのキャリアチェンジを考えられたのはなぜですか?
片山:お客さまとのリレーション構築を主体となって進めたある案件を完遂したのを機に、新たなチャレンジをしようと転職活動を始めました。
前職では事業の当事者ではない立場上、どうしても自身の仕事が“スポットの支援”に終始してしまうことにもどかしさを感じていたため、「これまでの経験を活かしながら中長期的な視点を持って事業の成長に貢献したい」という思いで新たなキャリアを模索していましたね。
―転職先としてパーソルキャリアを選ばれたのはなぜですか?
片山:転職活動中に「doda」を利用しており、キャリアアドバイザーの方からインテリジェンスをご紹介いただいたのがきっかけです。
当時はBITA*組織の立ち上げ期で、この組織の「事業から依頼を受けて取り組みを進めるのではなく、事業に入り込んでテクノロジー活用を積極的に進めていく」という考えに深く共感したことが決め手として大きかったと思います。
また実際に「doda」を利用する中でその社会的な価値の高さを感じたこと、インテリジェンスのベンチャー気質な風土に惹かれたことも、決断の後押しになりました。
*BITA:Business IT Architectの略称。ビジネスを理解し、IT知識を持ち、IT施策を推進する組織として2012年に設置された。
事業とIT組織の距離が縮まり、ともに事業成長を目指す空気が生まれた
―入社後はBITA組織の立ち上げ・強化をどのように進めてこられたのでしょうか。
片山:まずは、事業とIT組織の距離を近づけるための取り組みからスタートしました。例えば、「BITAのメンバーが事業の組織も兼務する」「事業の企画組織のメンバー数名をBITAに迎える」といった組織体制の変更を行ったり、情報共有のための会議体を設けてコミュニケーションを促進したり、といったアプローチです。
その後はBITAの組織強化に注力するとともに、2017年ごろからは開発組織の内製化の取り組みも併せて進めてきました。アプリケーションとインフラの内製化から着手し、インフラの部分を組織として切り出し、エンタープライズ系のエンジニア組織でも内製化を進めて組織を拡大して、と少しずつ取り組みの幅を広げてきた感覚ですね。
―BITAが価値発揮することによる成果や変化として、当時どのようなものを実感されていましたか?
片山:初めは事業側の皆さんからの要望に能力的・工数的な理由で応えられないこともありましたが、事業に入り込んでさまざまな調整を行いながらひとつひとつ結果を出していくことで、「ITを分かっている人が近くに相談相手としていると取り組みが進めやすい」と実感してもらえたのかなと。結果として互いの距離が縮まり、「一緒にやっていこう」という空気が醸成されたのだろうと思っています。
またIT投資を拡大していける状況ができあがったことで、より責任を持ってシステムを管理できるようになりました。その結果、システムの安定性が高まるといった変化も見られ、少しずつ事業の成長を実感できるようになっていった手応えがありました。
事業を継続しながら、変えられる部分から少しずつシステムやプロダクトを良くしていく
―改めて、現在の役割について聞かせてください。
片山:現在はCIOとして、テクノロジー活用の推進をリードする役割を担っています。
ミッションとして、インフラを中心としたシステムの安定性やITセキュリティなど重要な守りの部分をしっかりと維持しながら、複雑化するテクノロジーを積極的に活用して高い価値を発揮していくことを期待されているのだと自覚しています。
―そうしたミッションの実現に向けて、どのような取り組みが必要だとお考えですか?
片山:システムやプロダクトを、今ある資産を有効活用しながら少しずつリニューアルしていくことが必要だと考え
ています。
例えばこれまでにも、データの領域では既存の資産をうまく活用しながらアプリケーションの領域でマイクロサービス化やインフラ領域でクラウド活用を進めるなど、最新のトレンドを捉えた段階的な改善に取り組んできました。
やはり事業を継続しながらシステムを良くしていくにあたっては“ビッグバン”的なアプローチは難しいので、変えられる部分から変えて時代や事業の変化に追随できるような新たな仕組みに変化していくことが重要になるのかなと思います。
―現時点での成果や手応えとしてはいかがですか?
片山:システムの段階的なリニューアルについては 例えばエージェント事業の基幹システムを大きく作り替えたり、他にもアーキテクチャを継続的に改善するための内製化と組織づくりを行ったりと、仕組みの改善が進んでいます。実際に取り組んでみると難しいことも多く、想定していたよりも時間がかかってはいますが、やりたかったことが実現できてきている手応えがありますね。
―今後に向けた思いをお聞かせください。
片山:システムやプロダクトの改善、組織の強化など、新たな仕組みづくりはまだ途上にあります。課題を根本的に解決するためにものごとの本質を深く考え抜き、それをふまえてどのようなアプローチが必要か見極めることを大切にしながら、納得して“自分ごと化”できる形で取り組みを前に進めていきたいと思っています。
またパーソルキャリアとして先進的なテクノロジー活用の取り組みに率先して挑戦し、そこで得られたナレッジをパーソルグループ全体に波及させていければと思います。
―ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年6月時点の情報です。)
- 片山健太郎Kentaro Katayama
- パーソルキャリア株式会社
CIO(Chief Information Officer)
兼 テクノロジー本部 BITA 統括部
エグゼクティブマネジャー - 1998年にITコンサルティング会社でシステムの開発、運用保守、BPRに伴うパッケージシステムの導入を実施。IT化構想策定など、上流案件も実施し、14年間務める。一つの企業の経営にもっとしっかり携わりたいと考え、2012年2月にパーソルキャリアに入社。人材紹介・転職メディア事業のIT責任者を務め、2015年からIT組織(BITA統括部)を管掌。