IT人材の新しいはたらき方。地方在住を選んだ2人に聞く「居住地フリー」のリアル
2023年4月からパーソルホールディングスが導入した「もっと新しいはたらき方」。すでに多くの社員が完全リモートワークではたらく中、さらにIT人材については、日本国内のどこでも居住可能な「居住地フリー」を選択できるという制度です。
今回は、「居住地フリー」を活用している、グループデジタル変革推進本部の社員2人に話を聞きました。地方で暮らしながらの業務の生産性やメリットなど、「居住地フリー」のリアルをご紹介します。
- 「居住地フリー」とは
- パーソルホールディングスでは、2020年10月に人事制度改定を行いました。
この人事制度改定によって、社員は一つのオフィスに出社することを前提とするのではなく、一人ひとりが自律的にはたらく場所を選択する「新しいはたらき方」に移行しています。
その中で、オフィスに出社する必要がない業務で自立的に業務遂行ができるIT人材を対象に、2023年4月より「もっと新しいはたらき方」として「居住地フリー」を導入することにしました。
「居住地フリー」を活用することで、「自律的に業務が可能」という条件を満たした方は理由を問わず、日本国内のどこでも居住可能となります。
場所の制約を受けない新しいはたらき方。「居住地フリー」を選んだ理由
―お2人ともグループ会社出身とのことですが、パーソルホールディングスに転籍された理由は何ですか?
相生)私はパーソルキャリアに企画職として入社し、プロダクト開発に従事していました。パーソルホールディングスで新しいプロダクトを開発するという話を聞いて興味を持ち、キャリアチャレンジ*を活用してパーソルホールディングスに転籍したんです。
早川)私もキャリアチャレンジでパーソルホールディングスに転籍しました。もともとパーソルテクノロジースタッフのエンジニアで、自動車メーカーに常駐していました。パーソル内部のことを全然知らなかったので、これからは社内のことを深掘りしていきたいと思ったのが転籍の理由です。
*キャリアチャレンジ:社員のキャリアプラン実現支援を目的とした、グループ全社員を対象にした公募型の異動制度。選考に合格すればグループ会社に異動が可能。
―現在の担当業務を教えてください。
相生)私が所属するビジネスITアーキテクト部は、グループ全体の共通システムの導入・運用に従事する部署です。人事領域・セールスマーケティング領域・ファイナンス領域で担当を区分していますが、私はそれらの区分でカバーできない部分をサポートしていく役割です。最近では、全社共通のワークフローシステムの導入や、情報資産・システムを管理する台帳の見直しなどを進めています。
早川)サービスや開発を行う各部の業務をサポートする、デジタル戦略部の本部企画室に所属しています。私の主な担当はAdobeやGoogleのライセンス管理で、見積もりや契約関連、集中購買などの業務に従事しています。また、部で使用するツールの整理や移行業務にも携わっています。
―相生さんは兵庫県、早川さんは愛知県にお住まいですね。お2人が居住地フリーを選んだ理由は何ですか?
相生)コロナ禍以前は東京のオフィスまで通勤していましたが、2020年からリモートワークになり、まったく出社しなくなって3年近くが経過。すでにリモートで支障なく働けることはわかっていたので「一度、地元の兵庫県で働いてみよう」と思ったんです。
早川)私は前職のエンジニア時代から地元の愛知県で働いています。当初は名古屋にあるオフィスに出社していたのですが、2020年からはフルリモートでした。家庭の事情があり転居できないため、パーソルホールディングス転籍後も引き続き愛知県で働きたいということが理由です。
居住地フリーでの業務の課題と成功のポイント
―居住地フリーを利用することで、仕事の生産性やアウトプットに影響はありましたか?
相生)すでに3年近くリモートワークをしていましたので、地元に戻ってからも、アウトプットの質も量も変わっていません。私の業務で比重が大きいのは「課題を明確にする」「企画書を作る」という作業です。作業する場所が東京ではないからといって、生産性が落ちることはないですね。オフィスワークと比べると雑談がなくなった分、業務に集中して短時間でアウトプットを出せているかもしれません。減った雑談は組織内のコミュニケーション施策で別途補われたりしていますね。
早川)オフィスで仕事していた時も、周囲と雑談するよりは業務に集中していたいタイプなので、今の働き方が合っていると感じます。オフィスに出社する機会がないリモートワークになっても、生産性はまったく変わらないですね。
―パーソルホールディングスは、居住地フリーに関わらずリモートワークをしている方が多いそうですね。リモートワークを成功させるポイントはなんでしょうか?
相生)自分の動きが周囲に見えない分、口頭だけで終わらずアウトプットすることが大切だと思います。たとえば、プロジェクトにおいて、「いつ何を・どういった段取りでやるか」を上司から尋ねられて、口頭で説明するだけだと覚えてもらうのは難しいと思うんです。自分の頭の中にある段取りを、具体的な計画に落とし込んで文書化し、上司やメンバーから自分の動きが見えるようにしています。
「計画を立てる」ことに関しては、オフィスワークの頃より綿密にやるようになりました。その結果、タスクが予定通りに終わらなかった時にスケジュールを見直して、すぐに軌道修正できるようになりましたね。
早川)リモートワークでは、自分だけで対応できないことや、想定外のことが起こります。その時に、ちゃんと上司に報告すること。そして、上司がそれを受け止めてくれるという信頼関係が不可欠だと思います。どのような環境でも信頼関係は大切ですが、ほとんど相手に会うことのない居住地フリーにおいては特に重要ではないでしょうか。
面識のない新しい相手と信頼関係を築くには時間がかかりますが、キックオフとして1on1でビデオ通話をしておくとよいですね。会話を通して「こういう人なんだ」と掴んでおくことで、その後のコミュニケーションがスムーズにいくと思います。
はたらき方も、生き方も選べる。居住地フリーのメリット
―居住地フリーを選択して感じた一番のメリットはなんでしょうか?
相生)はたらく場所を自由に選べる喜びを実感しています。私は居住地フリーで20年近く住んだ東京を離れ兵庫県に戻りましたが、また東京に行ってもいいし、ほかの土地に住むことだってできる。仕事によって、自分の生き方を制限する必要がないんです。
また、メンタル面のメリットも大きいと感じています。もともと、私は短気なところがあったのですが、田舎に戻ってからは気持ちに余裕ができて、穏やかになったと感じています。オフィスへの出社がなくなって自由時間が増えたので、新しい情報のインプットや勉強ができるようになりました。煮詰まってきたら散歩するなど、時間をうまく調整してリフレッシュできるようになりましたね。
早川)家庭の事情で地元を離れられないものの、パーソルホールディングスではたらきたい気持ちがありましたので、居住地フリーがあって本当によかったと思っています。最近、友人や知人から、その人が勤務する会社がリモートワークを廃止するため辞めざるを得ないという話を耳にします。また、想定外の転勤で人生設計の変更を余儀なくされる方もいるでしょう。そういった不安を感じることなく、安心して仕事に集中できるのが居住地フリーのメリットだと感じています。
―「居住地フリー」について、今後の見通しや期待することを教えてください。
相生)すぐに出社できない遠隔地勤務での心理的安全性が課題に挙げられますが、パーソルホールディングスでは居住地フリーの社員をサポートする施策に注力しています。その1つとして月1回、交通費補助を使ってオフィスに出社できる制度も導入されました。これによって、リアルで開催されたキックオフなどにも気軽に参加することができました。
居住地フリー活用の広がりが期待できるのではないでしょうか。
早川)パーソルには、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンがあり、「一人ひとりの多様なはたらき方・生き方を応援したい」という想いがあります。その一環が、居住地フリー制度です。これまで、パーソルの理念に共感しながらも居住地が制約となって入社できなかったIT人材が、この制度を活用して入社されるよう期待しています。
取材・文=ファーストブリッジ 宮本智美
(2023年7月時点の情報です。)
- 相生大輔Daisuke Aioi
- パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部
ホールディングスBITA室
リードコンサルタント - 2017年、パーソルキャリアへ中途入社。dodaキャンパスの立ち上げプロジェクトに参画後、パーソルホールディングスへ転籍。社員エンゲージメント向上をテーマにシステムの企画・開発・導入プロジェクトの推進を担当。
- 早川俊昭Toshiaki Hayakawa
- パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 デジタル戦略部 本部企画室 - 2018年、パーソルテクノロジースタッフへ中途入社。東海グループに配属となり、インフラエンジニアとして自動車基幹システムの保守やインフラ構築を担当後、パーソルホールディングスへ転籍。