パーソルテンプスタッフが未来を見据えて取り組む、テクノロジー領域における3つの注力施策
今回は、人材派遣・アウトソーシング事業を手がけるパーソルテンプスタッフで、テクノロジー本部 本部長、CIO/CTOを務める高橋にインタビュー。これまでの経験や現在担う役割と、テクノロジー本部として取り組む3つの注力施策、そして今後の展望について詳しく話を聞きました。
モチベーションの源泉は、“人”のためにはたらくこと
―まずは、高橋さんのこれまでのご経歴から聞かせていただけますか。
ファーストキャリアは大手SIerで、SEとしてオープン系システムの提案、導入、プロジェクトマネジメントなどを8年半ほど担当しました。その後は、ITコンサルタントとして企画からものづくりまでの全工程に携わったり、外資系ハードウェアベンダーのプリセールスコンサルタントとしてプロダクトの提案、販売を行ったり、事業会社の取締役としてITビジネスをリードしたりと多様な経験を積んで、パーソルテンプスタッフへの入社に至っています。
―幅広い業務や役割を経験されていますが、どのような軸でキャリアを選択してこられたのでしょうか。
学生時代に専攻していた情報処理領域の知識を活かせる仕事としてSEを選び、当初は最先端のプロダクトに触れて技術力を高めることに注力していましたが、困難を伴うプロジェクトをさまざま経験する中で、こうした自分自身の成長を主眼に置く考え方は変化していきました。
プロジェクトメンバーやお客さま、ともに仕事をするパートナーの方も含めて“人”のためにはたらくことが自分にとってのモチベーションの源泉であり、彼らに「ありがとう」「おかげで成長できた」と言ってもらうことで困難な局面を乗り越えられているなと。そんな思いから、より“人”への貢献を意識してコンサルティングの力を磨く方向に進んでいった感覚です。
―パーソルテンプスタッフに転職するきっかけとはどのようなものでしたか?
事業会社で任されていたITビジネスを黒字化できたことを一つの区切りとして取締役を退任し、キャリアチェンジを考え始めました。新たなキャリアを模索しながらフリーランスとして活動していた当時、パーソルテンプスタッフの基幹システム刷新プロジェクトにPMOとして参画したご縁で、後に改めて転職活動を始めた頃にお声がけいただいたことが入社のきっかけです。
メンバーがやりがいや成長の手応えを感じ、気持ちよくはたらける環境をつくる
―パーソルテンプスタッフではどのような経験をされてきたのでしょうか。
基幹システムを担当するIT部門の部長として入社し、まずは社内の担当者や外部コンサルタントとコミュニケーションを図りながら基幹システム刷新プロジェクトを推進してリリースまで漕ぎ着けました。
その後、全社的にIT投資を強めることを背景に、IT部門の組織体制強化に取り組んできました。当初、PMやPLを担える人材の不足によってプロジェクトを一つしか推進できなかったところから、現在は複数のプロジェクトを同時に回すことができ、またいくつもの組織で連携して大きなプロジェクトも進められるような体制にまで成長してきています。
―改めて、現在の役割について聞かせていただけますか。
まずテクノロジー本部の本部長として、クラウド化や内製化をはじめとしたパーソルテンプスタッフのテクノロジー領域における取り組みや、その推進のための組織づくりを担っています。
CIO/CTOとしては、そういったパーソルテンプスタッフとして築いた仕組みをStaffing SBU*に展開していく、Staffing SBUの中核会社としての動きをリードしています。テクノロジー人材の不足というリスクが高まる中、SBU内のグループ各社がIT部門を維持できるようにパーソルテンプスタッフとして後押ししていくというイメージです。
* SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位
―パーソルテンプスタッフやStaffing SBUのテクノロジー領域をリードする中で、大切にされていることがあれば教えてください。
大切にしているのは、メンバーのコンディションです。辛いはたらき方によってメンバーのコンディションが崩れて退職に繋がり、それによって他のメンバーの負荷が高まってまたコンディションが崩れてしまう…そんな負の連鎖を生まないためにも、まずはチームの皆を大切にしなければいけないなと。一人ひとりが「成長できている」とやりがいや手応えを感じながら、気持ちよくはたらけるような環境をつくりたいと考えています。
体制強化で取り組みの幅が広がり、新たな経験がさらなる体制強化に繋がる
―テクノロジー本部として、今後どのような取り組みを進めていこうと考えていますか?掲げている目標や戦略について教えてください。
今期テクノロジー本部として取り組む注力施策を3つ掲げています。
まず最も力を入れているのが「デリバリー体制の強化」です。“いかにスピーディにプロジェクトを推進し、より便利な環境を社員や派遣スタッフの皆さんに提供できるか”を何より大切にし、実行待ちの状態になっているプロジェクトを少しでも減らすべく体制強化に取り組みます。
二つ目は、「クラウド化」です。パーソルグループとして、現在データセンターで稼働中のシステムをクラウド環境に移行する方針を掲げていることや、ビジネス環境の変化が加速する中でシステムの機動性向上が求められることをふまえ、クラウド化を進めていきます。
三つ目は「はたらく環境のデジタル化と、内製化」です。テクノロジーの活用によって、はたらきやすく、はたらきがいの感じられる環境をつくること、さらにそれを外部パートナーに頼らず内製で進めて早期に実現させることを目指します。
―それぞれの施策について、具体的な取り組み内容を教えていただけますか。
デリバリー体制の強化については、先にお伝えした通りかねて取り組んできた重要なテーマです。PMやPLを担える人材の不足を背景に、社内での異動や新卒入社者の育成を中心に組織づくりを行い、20名ほどだったメンバーが60名超にまで増えました。当初一つのプロジェクトしか進められなかったものが、今では複数プロジェクトを並行して進められるようになり、開発量も3倍に成長しています。
この成長を加速させるために今期もさらなる体制強化に取り組む方針を掲げ、具体的には
- 引き続きPMやPLを担える人材の育成を行うこと
- パーソルホールディングスのCoE*1にもプロジェクトに参画してもらい、ともに取り組みを進めること
- PM以外のスキルやクラウド化に伴う必要スキルを定義し、それに関連する研修を実施すること
を進めていきます。
*1 CoE(Center of Excellence):組織を横断して、パーソルグループの各事業でのテクノロジーの実装・活用を強化する組織。優秀なテクノロジー人材の採用やノウハウをパーソルホールディングスに集約して組成
―「クラウド化」は、2026年度中を目処に実現を目指されていると。
はい。もとはもう少し時間をかけて実現する予定でしたが、COVID-19が落ち着きを見せる中で世の中や技術の変容が加速したことを受け、イノベーションの効果をしっかりと享受するためにもプラットフォームの進化を急ぐべきだと判断し計画を早めました。
最終的にはアプリケーションをクラウドネイティブな形にする“クラウドシフト”を目指しますが、まずは現在の複雑化したオンプレミス環境をグループ標準クラウド環境に移行する“クラウドリフト”から取り組んでいきます。
―「はたらく環境のデジタル化と、内製化」についてはいかがですか。
テクノロジー本部としては、これまでは基幹システムをはじめサービスに関連する箇所の改善を中心に取り組んできましたが、組織が成長してきたことでようやく社員の業務環境をより良くすることにも力を注げるようになりました。
例えば、社内の申請にまつわるプロセスをツールによって仮想的に統合することで、申請のために都度各システムへログインする手間を省いたり、Excelを用いた煩雑な手作業をRPAの活用で自動化し、人が介在すべき業務に注力しやすい環境をつくったり・・・テクノロジーを活用して、ボトルネックを解消しはたらきやすいデジタル環境を整えていきます。
またこうしたデジタル化を内製で行うことが、メンバーの育成に大きな意味を持つのではないかなと。最終的にフロント系のプロジェクトで活躍してもらうための第一歩として、まずは間接部門を対象にしたプロジェクトで要件定義、企画からリリースまでを経験してスキルを身につけてもらえたらと期待しています。
取り組みから得られたことを共有し、グループ各社をテクノロジーで繋ぐ
―これまでお聞きしてきた取り組みについて、現段階での手応えとしてはいかがですか?
社内異動による体制強化は、もともとIT領域に関わりのなかった社員がリスキリングすることによってITスキルを身につけ、デジタル化プロジェクトを担当してもらうというものでした。デジタルに慣れていない中でプロジェクトを推進していくという状況には、きっとメンバーの苦労も多いはずです。
それでも、メンバーたちは課題が発生した際にも「楽しい」「どうやったら実現できるか」とポジティブにモチベーション高く取り組み、やりがいを感じながら急速に成長してくれており、そういった「はたらいて、笑おう。」を体現するような組織が築けていることを誇りに感じています。
―思い描く目標や戦略が実現した先で、パーソルテンプスタッフがどのような状態になっていることを目指していますか?長期的なゴールを教えてください。
目指すのは、世の中やテクノロジーの進化に追随し、最新のプロダクトやサービスをご提供できるようになること、事業だけでなくシステムにおいても常に人材派遣業界をリードできる存在になることです。今取り組んでいる組織づくりや、システムや環境の整備が、そのための準備になると捉えています。
―最後に、パーソルグループの中でどのような役割を果たしていきたいか、高橋さんの思いを聞かせてください。
私たちの経験をグループに共有し、また他のグループ会社で先行している取り組みやノウハウを共有してもらうなど、テクノロジーという軸でグループ各社を繋げていくことができると考えています。
事業も状況もさまざまな各SBU*2がテクノロジーという共通のベースを持つことは、一見なかなか難しいようにも思われますが、しっかりと精査すれば互いに力を貸し合える部分、共通して必要となる部分がたくさんあるはずですから。他のSBUの力を借りながら、私たちが得たものを伝えることで連携に貢献していければと思います。
*2 SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位
―ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年9月時点の情報です。)
- 高橋奨Susumu Takahashi
- パーソルテンプスタッフ株式会社 テクノロジー本部 本部長
CIO/CTO - 大手SIerへ新卒入社し、SEとしてオープン系システムの提案、導入、プロジェクトマネジメントなどを8年半ほど担当。その後、ITコンサル会社で上流工程を経験し、外資系ハードウェアベンダーでプリセールスコンサルタントとしてプロダクトの提案、販売といった経験を積みながら、事業会社の取締役としてITビジネスをリード。
2017年にパーソルテンプスタッフへ入社し、2022年より現職。