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数百万行のコード刷新×自動生成で業務効率を向上―基幹システムの大規模リファクタリングプロジェクト

パーソルキャリアの2024年上期の社内表彰イベントにて、doda企画本部からは「基幹システムARCSのリファクタリングプロジェクト」が選ばれました。受賞のポイントは、数百万行ものコードをリビルドに近い規模で刷新し、ドキュメントの自動生成やAPI開発における工数削減を実現した点が高く評価されてのことです。内製エンジニアチームが主体となり、テクノロジーの活用を含めて改修を進めるこのプロジェクトは、数年かけて成果を積み上げてきました。

テクノロジーと挑戦を推進する文化で事業を支える―そんなパーソルキャリアのカラーを体現するマネジャーの宮澤、リードエンジニアの舘、そして若手ながらリーダーポジションを担った都筑の3名に話を聞きました。

全社に影響を与えるARCSの大規模リファクタリングの始まりは、「現実的じゃない」と言われた挑戦から

―まずは、ARCSというシステムはどのような役割を担っていて、どのような課題を抱えていたのか教えてください。

都筑:ARCSは、dodaのエージェントサービスを支える基幹システムです。転職希望者や顧客企業情報、各選考の進捗状況などを社内で一元管理するシステムで、多様な情報を長年扱っていることで機能も多くなっています。RA(法人営業)やCA(キャリアアドバイザー)などの多くの社員が毎日使用するため、事業を支える非常に重要なシステムです。

宮澤:当初は、数百万行にもなるコードを長年積み重ねて運用してきたことで、新たな機能を追加する際にはかなりの工数がかかってしまい、開発効率が下がっていました。さらにフレームワーク更新の遅延も発生しており、運用はできているものの、どこかで手を加えないと扱いづらさは解消されない状況でした。

―どのような経緯でリファクタリングプロジェクトがスタートしたのでしょうか?

宮澤:2020年にパーソルキャリアへ入社してARCSに関わった際、コードの複雑さに衝撃を受けたのがきっかけでしたね。内製チームとして、これから長く関わっていくシステムなので、「何とかして整備したい」という気持ちが強かったです。とはいえ対象となる範囲があまりにも広く、「その改善活動は現実的じゃない」と周囲に言われることもありました。ただ、逆にそのような言葉を受けてリファクタリングに取り組む意欲がいっそう強まりましたね(笑)。

舘:私も宮澤さんと同じ時期に入社し、最初は「この量を本当にリファクタリングできるのか…」という不安がありました。ただ、システムを整えて開発効率を上げたいという思いは同じだったので、宮澤さんの取り組みに参加したんです。結果的に、少しずつでも改善を進めるうちに、周囲の協力を得られるようになりました。

周囲を巻き込み、コード整理から自動生成まで――工数削減と効率化に大きく貢献し、事業部表彰へ

―実際はどのようにリファクタリングを進めていったのか教えてください。

宮澤:リファクタリングと言っても最初は業務の合間を使って地道に進めていた小規模な改善活動でしたが、同じ問題意識を持つ人が次第に集まり、気づけば十数名での取り組みになっていました。その後、事業部としての活動となってからは、1週間に2時間ほど集まってリファクタリングを行う時間を確保し、舘さんを中心に進めていきました。

もともと改善活動は私たち以外の部署でも行われていたので、正式な業務として活動する許可は取りやすかったですね。ただ、「リファクタリングをメイン業務にします」と申請していたら、難しかったと思います。通常の開発タスクをしっかりこなしつつ、周りを巻き込みながら、時間を決めて少しずつ進めたことが良かったと考えています。

舘:そうですね。改善活動に共感してくれる人が多かったのでやりやすかったですね。みんな「コードをきれいにして開発効率を上げたい」という思いがあるので、積極的に参加してくれました。宮澤さんが「まずはここを直そう、次はここを直そう」と計画を立て、大きなタスクを分解しながら一歩ずつ着実に進めてくれたのも、やりやすかった理由の一つですね。

―都筑さんはプロジェクトに途中参画されたと伺いましたが、その経緯と、具体的にどのような役割を担われたのか教えてください。

都筑:私は2022年に新卒で入社し、当時はC#に触れた経験もなかったので、最初にARCSを見たときは独自のコードなのかな…と思いました。ただ、改善活動が進むにつれて理解できるようになったことで、この地道な改善活動に対しての感謝の気持ちも大きくなり、途中からプロジェクトに参加したんです。

その後、リファクタリングによりコードが整理されたことで、ツールを用いて手書きの設計書を自動で読みとれるようになりました。そのことをきっかけに、設計書自体を自動生成する仕組みをつくる話が出てきたんです。そこで、「やりたいです!」と自ら手を挙げ、リーダーポジションとして自動生成機能の構築を任せてもらうことになりました。以前、自動生成に必要な仕組みづくりに携わったことがあり、その経験を活かせることに魅力を感じましたね。

―リファクタリングを行ったことで得られた具体的な成果と、その理由を、どのように考えていますか?

都筑:まず、数年かけてコードが整備されたことで、エンジニアとしての経験が少ない人でも理解しやすくなり、開発やレビューの効率が向上しました。さらに、設計書の自動生成化が実現したことで、ARCSの開発に関わる人たちの工数削減につながったことが大きな成果です。

舘:そうですね。コードが整ったおかげで、大規模なフレームワークの刷新も推進しやすくなりました。中途入社者の取り組みが事業全体の貢献につながったことは嬉しかったですし、これから入社する方にも活躍の機会があると、ぜひお伝えしたいですね!また、システムを改修していくなかで、他の改善につながるプロセスを体験できたこともとても良い経験でした。

宮澤:私たちは事業本部の内製エンジニアとして、「このシステムに長く関わっていく」という意識を持っています。だからこそ、取り組みを進めるうちにシステムへの理解が深まるだけではなく、だんだんと愛着も湧いてくるんです。そんな想いを持つエンジニアが集まっているおかげで、長い年月をかけながらリファクタリングを進められているんだと思います。

さらに、doda事業本部は、エンジニアへの信頼が厚く、ARCSが事業にもたらす影響力を十分に理解したうえで、課題解決を任せるという意思のある組織です。エンジニアが「システムを良くしたい」という思いを持ち、組織も信頼して任せてくれたからこそ、成果につながったのだと感じます。

―リファクタリングプロジェクトが事業部から表彰を受けましたが、どのような点が評価されたと思いますか?

宮澤:やはり長年積み重なったコードを地道に整備し、若手も含めて全員が主体的に関わった点が大きいと感じています。リファクタリングは金額ベースでの成果が見えにくいため、周囲の理解を得ることが難しい側面もあります。しかし、「この取り組みが将来の開発効率を上げ、新しい挑戦を生む」という意義もあわせて評価されたのではないでしょうか。

挑戦を推進する企業風土と“自分ゴト化”が生み出す事業成長の可能性

―パーソルキャリアの魅力やはたらきやすさについて、それぞれの考えを教えてください。

都筑:パーソルキャリアは、若手でも「こういうことをやりたい」と言えば任せてもらえる風土があります。リーダーポジションとして設計書の自動生成に取り組んだ時も、分からないことがあれば先輩が丁寧にサポートしてくれたので、安心してチャレンジできました。そのため、主体的にどんどん挑戦しやすい環境だと感じています。

また、リモート環境ではたらける点も大きな魅力です。入社当初は不安もありましたが、実際には出社せずに進められる業務が多く、移動の手間や余計な時間を抑えられるため業務に集中できます。さらに、休みが柔軟に調整できるためプライベートが充実しやすく、そのおかげで社内には余裕のある人が多い印象ですね。居心地の良さにもつながっていると思います。

舘:そうですね。人間関係の良さやワークライフバランスの取りやすさは、私も強く感じます。仕事だけにならず、プライベートも楽しんでいる人が多いので、全社的に雰囲気が明るいんです。飲み会でも気軽に話せるので人となりが分かりやすく、そのぶん仕事のやり取りもしやすいですね。

宮澤:PE(プロダクトエンジニア)制度という人事制度があり、エンジニアとしての評価軸がしっかり用意されています。特に、エンジニアの市場価値にあわせて評価軸が定義されているため、自分の価値を客観的に見ることができ、キャリアパスをより具体的に考えられることが大きなメリットです。

また、一般的にエンジニアは下請けのような立場になることも多いですが、パーソルキャリアは組織運営に現場の声を取り入れる風土が根付いています。エンジニアも対等な立場で、どうやってサービス・プロダクトを成長させていくと良いか、そのためにはシステムをどのように改善していくと良いかを追求できることは強みですね。

―最後に、それぞれの将来の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

舘:内製エンジニアとして、要件定義からモノづくりまで深く関われるのは、パーソルキャリアの大きな魅力だと思います。今後はその部分をさらに磨き、リーダーシップを発揮していきたいですね。また、組織には「キャリアの多様性を高める」という考えがあり、新しい領域に挑戦しやすい環境なので、エンジニアとしての技術をもっと高めていきたいと考えています。

宮澤:私たちのチームは、事業面とエンジニアリング面の両輪の性質を持っています。その特性を活かして幅広い知見を積みながら、それぞれの得意な領域を伸ばし合うことでチーム全体の力を高めていきたいです。将来的には、テクノロジーを活かして事業を成長させるために、先陣を切るチームでありたいですね。

都筑:挑戦できる機会がたくさんある会社なので、自ら手を挙げて取り組んだときの達成感や、周囲から褒めてもらえる喜びを多く味わえると感じています。今回の設計書の自動生成機能にも、まだ改善の余地があるので、自分が納得するところまで進めていきたいです。

私自身まだ若手ですが後輩も増えており、頼られる領域をもっと広げるため、これからも積極的に挑戦していきます。ARCSにはまだまだのびしろがあるので、私たちと一緒に成長させたいという方は、ぜひチャレンジしてほしいですね。

―ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一
(2025年3月時点の情報です。)

宮澤 武志Takeshi Miyazawa(写真中央)
パーソルキャリア株式会社
doda事業本部 doda企画本部
エージェント企画統括部
エージェントプロセス&システムデザイン部
システムデザイングループ
マネジャー
新卒で総合家電メーカーに入社し、調剤薬局向けのパッケージソフト開発に従事。製品の設計、実装、プロジェクトマネジメント等を行う。ソフトウェア開発を外に発注するのではなく、自分たちで開発を行うスタイルに共感し、2020年にパーソルキャリアへ入社。事業も分かるエンジニアチームを目指し、チームをまとめている。
都筑 律玖Riku Tuzuki(写真左)
パーソルキャリア株式会社
doda事業本部 doda企画本部
エージェント企画統括部
エージェントプロセス&システムデザイン部
システムデザイングループ
学生時代は高専、大学と情報系の学部・学科に所属。2022年4月にパーソルキャリアに新卒入社。社内システムであるARCSの開発、改修業務を担当。
舘 寛行Hiroyuki Tachi(写真右)
パーソルキャリア株式会社
doda事業本部 doda企画本部
エージェント企画統括部
エージェントプロセス&システムデザイン部
システムデザイングループ
リードエンジニア
パーソルキャリアへ2020年に中途入社。前職はECサイト等を構築するWeb開発会社にて、ECパッケージの開発・保守を担当。現在は内製開発チームにて、社内基幹システムのアプリケーション開発を担当。

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