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グループ社員の“はたらく体験”向上を目指して―グループ共通経費精算システム導入プロジェクト 

グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部 ファイナンスBITA室 リードコンサルタント 宇野祐太の写真

2023年4月、パーソルグループ共通の経費精算システムとして『SAP Concur』が導入されました。 

今回は、プロジェクトマネジャーとして本プロジェクトを牽引したリードコンサルタントの宇野にインタビュー。取り組みの始動背景から推進過程において苦労したこと、得られた成果まで、詳しく話を聞きました。

プロジェクト概要
経費精算のペーパーレス化を目指し、経費精算システムをグループ共通化するプロジェクト。2023年4月に全社導入が完了した。

経費精算のペーパーレス化で、自由な“はたらく場所の選択”を可能に

―まずはプロジェクトが始動した背景からお聞かせください。 

始動の大きなきっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染症の拡大です。 

従来の仕組みでは、システムを活用してオンラインでの経費精算が行われているものの、請求書や領収書については台紙に貼付し、出社の上で提出しなければなりませんでした。そのためコロナ禍においてリモートワークが促進されるようになっても、社員に出社が求められるケースが生じてしまっていたのです。 

2020年10月の人事制度改定によって、オフィス出社を前提とするこれまでのはたらき方が見直されたこともふまえ、一人ひとりが“はたらく場所”をより自由に選択できるよう、経費精算の仕組みを変えようとプロジェクトが始動しました。 

―“はたらく場所の選択”の実現に向けた「ペーパーレス化」を目的として取り組みがスタートしたと。 

そうですね。 

また他に、「各個社によって異なるシステムが利用されており、規定や運用フローも標準化されていない」「手入力の必要な箇所が多く、申請する従業員や確認・承認する経理担当に大きな業務負荷がかかる」といった課題もありました。 

これらもふまえて、グループ内共通の経費精算システムに移行し、 

  • ペーパーレス化によって“はたらく場所の選択”を促進すること 
  • 従業員の業務負荷を軽減し、生産性を高めること 
  • 誤入力による差戻しを減少させるすること 

をプロジェクトのゴールとして掲げています。 

グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部 ファイナンスBITA室 リードコンサルタント 宇野祐太の写真

環境も思いも異なる30社以上のグループ各社と対話を重ね、プロジェクトを推進 

―パーソルグループ全体でのシステム導入という大きなプロジェクトですが、どのように取り組みを進めていかれたのでしょうか。 

いくつかの製品を比較検討して、課題の解消が期待でき、国内外で導入実績が豊富な『SAP Concur』を選択しました。並行して、ホールディングスのプロジェクトメンバーと、各個社の経理担当者の方々とで連携し、システムの導入や規定・基準の標準化、規定変さらにもとづく運用フローの変更などについて各社の現場へ話を展開していきました。 

―プロジェクトを進める中で特に苦労された点などがあればお聞かせください。 

30社以上の会社が集まるグループで、各社業種もさまざまですから、当然それぞれの現場によって前提となる条件、環境などは異なるわけです。あらかじめ各社の経営層には話を通した上でプロジェクトが始動していますが、より内容が具体化していく中で、現場の方々にご納得いただいて取り組みを進めることには難しさを感じました。 

それぞれの現場の方々に「どのような点が課題になっているのか」「どのようなサポートや対応があればご協力いただけるか」をヒアリングしながら、それに対する対処やご説明の機会を重ねたことで、なんとか導入に漕ぎ着けられたかなと振り返ります。 

―プロジェクトの効果として現段階で見えているものはありますか? 

プロジェクト始動の背景にあった3つの課題について、効果測定の結果としては以下の通りになっています。 

  • ペーパーレス化 
    目標値:領収書の80%以上が電子データ化できている 
    実績値:電子データ化割合 95.1% → 達成 
     
  • 生産性の向上 
    目標値:1件あたりの所要時間が35%以上削減できている 
    実績値:所要時間 15.9%減少 → 未達 
     
  • 誤入力の撲滅 
    目標値:経理確認で差戻しの発生割合が3.5%以上減少している 
    実績値:差戻し発生割合 4.8%減少 → 達成 

ペーパーレス化と誤入力の撲滅については目標値を達成できたものの、システムへの入力における業務負荷を削減し生産性を高める、という点ではあと一歩という結果になりました。 

グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部 ファイナンスBITA室 リードコンサルタント 宇野祐太の写真

―残課題に対しては、どのように取り組もうとお考えですか? 

効果測定時に実施した全従業員向けアンケートによって 

  1. 『SAP Concur』をPCで利用している方とスマートフォンやタブレットで利用している方とでは、後者の方が「体験が向上した」の回答割合が高い 
  1. 全体の70%近くの従業員が、スマートフォンやタブレットではなくPCで『SAP Concur』を利用している 

と分かったことから、残課題「生産性の向上」についてKPIを達成するには、スマートフォンやタブレットによる利用を促進することが有効であろうと仮説を立てました。 

そこで、PCからシステムを利用されている方には、「スマートフォンやタブレットで利用するとこのようなメリットがあります」という訴求の文言を追加する方針を立てています。 

―今回のプロジェクトに対する反響としてはいかがですか? 

「便利になりました」「ICカード利用履歴を連携したことで、入力箇所が減って楽になりました」といった嬉しいお声をいただけています。 

従業員の“はたらく体験”を向上させる第一歩に 

―ここまでのプロジェクトを振り返って、率直な思いをお聞かせください。 

まだ一部課題は残るものの、『SAP Concur』を導入したことで当初掲げていたペーパーレス化・生産性の向上・誤入力を減らしていく点について前進が見られ、社員のはたらく体験(EX)の向上に寄与できたのではないかと捉えています。 

またこれまでモノリシックな基幹系システム一つでさまざまな仕組みの運用を行っていたところから、経費精算の仕組みを切り出す形で別途『SAP Concur』を導入したことで、また新たによいサービスが登場した際にも柔軟にアップデートが行えるようになりました。 

大きなシステム全体を刷新する必要があるとなると、各仕組みのアップデートに向けたアクションは取りづらくなりますから、今回のプロジェクトは今後EXをさらに向上させていくにあたり大きな一歩になったのかなと思いますね。 

―今回のプロジェクトを通して得られた気づきや学びなどはありましたか? 

グループ横断の取り組みを進めるためには、お話を通すべきキーマンがどなたかをしっかりと押さえて、正しい順序でご説明して理解を得ていくことが大切だなと改めて実感したプロジェクトでした。 

現在も別で新たなプロジェクトが走っていますが、目標を達成するために力強く推進する部分と、キーマンに対して時間をかけてご説明していく部分の両立をより意識するようになったかなと感じます。 

―ありがとうございます。それでは、今後挑戦したいことをお聞かせください。 

ステークホルダーが多い分取り組みを進める難しさはありますが、目指すものを同じくするグループの方々だからこそ、しっかりと言葉を尽くし周りを巻き込んでいくことで、時間はかかったとしてもよい方向に進んでいけると思っています。 

今後も皆さんの思いや求めるものを考え、自分の立場に置き換えて学びを得ながら、さまざまなプロジェクトを推進していければと思います。 

グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部 ファイナンスBITA室 リードコンサルタント 宇野祐太の写真

上司・木村さんから見た『SAP Concur』導入プロジェクト

―宇野さんの上司にあたる木村さんから見た、今回のプロジェクトにおける”学び”を教えてください。

この『SAP Concur』導入プロジェクトは、私や宇野が所属するグループデジタル変革推進本部が新設されてから初となるグループ全体へのシステム導入プロジェクトでした。そのため、グループ全体を巻き込む際のノウハウを一から創り上げる必要があったほか、「このプロジェクトは失敗してはならない」という大きなプレッシャーがありました。

今回のようなグループ全体でDXを推し進めるプロジェクトは、目的や達成したいことに加え、そのためのアプローチ方法や協力いただきたいことをきちんと言語化し、キーマンに理解してもらうことに加え、些細な相談を気軽にできるような関係性構築が重要だと考えていました。

今回のプロジェクトを通じて、宇野の話にもあるように、キーマンを見つけながら理解を得ていく難しさを強く実感した一方で、今後もコミュニケーションの肝となるグループ各社のキーマンとの関係性を構築できたと感じています。これは今回のプロジェクトに留まらず、今後のプロジェクトでも非常に重要なポイントとなるのではないでしょうか。

―プロジェクトを通じて、宇野さんの成長を感じたポイントなどがあれば教えてください。

今回のプロジェクトは、パーソルグループ全体の各グループ会社とコミュニケーションを行う必要性がありました。各社が担う役割や体制が異なる中で、新たなシステムを導入するためには、プロジェクトを全体俯瞰して推進していく力と、相手の懐に入ってバランスよくコミュニケーションする力が求められると考えています。今回のプロジェクトでは、元々備わっていた彼の素養が十分に発揮されたのではないでしょうか。

また、グループ各社に宇野さんという人物を広く認知してもらうきっかけにもなりました。今後は『SAP Concur』導入プロジェクトで得た経験や、各社との関係性を活かして、引き続き活躍してもらいたいです。


(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム) 

(2023年8月時点の情報です。)

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宇野祐太 Yuta Uno
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ファイナンスBITA室
リードコンサルタント

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