方針転換で大幅なコスト削減を実現。クラウド推進室が挑んだ「AWSコスト削減プロジェクト」の舞台裏

Profile

Takeshi Momotomi

パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 ビジネスコアインフラ部
クラウド推進室
シニアコンサルタント

2004年3月にインテリジェンス転職後、特定派遣で色々な企業に配属し、主にインフラ業務を携わる。2018年4月にキャリアチャレンジを利用し、パーソルホールディングスへ転籍し、インフラのプロジェクト担当。Exadata運用やデータセンタ管理業務を実施する。2023年10月からAWS基盤の運用業務を担当し、運用改善や品質向上を推進している。

Moeka Obara

パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 ビジネスコアインフラ部
クラウド推進室
リードコンサルタント

2019年4月パーソルホールディングスに新卒入社。主にインフラ業務に携わり、データセンタ管理業務をし、現在はクラウド基盤の管理業務を担う。

2016年以来、IT基盤のクラウド化を推進してきたパーソルグループ。AWSを主軸としたクラウド活用が普及するに従ってクラウド利用料の増大が顕著になりつつありました。活用の幅を広げつつ、コストを抑制するには、累積した無駄の解消は避けて通れません。

今回は数々の困難をはね除け、AWSコスト最適化プロジェクトを推進したパーソルホールディングス グループIT本部の百富と尾原に、大幅なコスト削減を実現した取り組みの舞台裏を聞きました。

コスト削減の最初の壁

まずは、おふたりが所属するグループIT本部 ビジネスコアインフラ部クラウド推進室について教えてください。

百富

ビジネスコアインフラ部はパーソルグループ各社が利用する業務システムやサービスの基盤を提供する部署です。そのなかでわれわれクラウド推進室は、その名が示す通り、クラウド基盤の活用をサポートする組織として、主にAWSによるインフラの設計や運用、改善などに携わっています。

おふたりはどんなお仕事をされているのでしょう?

百富

パーソルグループのクラウド環境は、グループ各社に委譲する管理権限レベルに応じて「G-MAC」「C-MAC」「P-MAC」の3つに分かれており、いま挙げた順に、利用者に委ねる権限が増す構造になっています。このなかで私がクラウド推進室で担っているのは「G-MAC」「C-MAC」の管理・運営と関連プロジェクトの推進、メンバーマネジメントなどです。

尾原

私はクラウド推進室のいちメンバーとして、2024年からG-MACの運用全般に携わるようになり、2022年からはC-MACの運用と運用改善にもかかわるようになりました。現在はグループ各社からの問い合わせ業務の効率化を目指して、AIエージェントの開発プロジェクトに携わっています。

では、本題に入ります。なぜ「AWSコスト最適化プロジェクト」を発足させる必要があったのでしょうか? プロジェクト立ち上げの背景を教えてください。

百富

ここ5年ほど、AWSに支払う利用料が毎月1パーセントずつ増え続ける状況が続いていました。
われわれもパーソルグループのクラウド活用を推進する立場として、長期契約や利用料の前払いなどによって、AWS利用料の抑制に努めてきましたが、ホールディングスとして取れる手段には限界があります。そこで、グループ各社のシステム担当に協力してもらい、運用コストの削減に取り組むことになりました。事前に行った分析調査を通じて、従来の取り組みに匹敵するコスト削減が見込めたからです。

実際にはどのようなプロセスでプロジェクトを進めたのでしょう?

百富

分析結果を見ると、古すぎて利用価値があまりなさそうなデータがディスクスペースを占有していたり、要件に対して過剰なリソースが割り当てられたりしているとおぼしきシステムの存在が浮かび上がりました。そこで、2024年8月にAWSの利用状況をまとめた分析レポートを各社に配布し対応を促したものの、状況は芳しくありませんでした。定期的にリソースの消費状況をモニタリングしていたのですが、半年以上、微々たる動きしかなかったのです。

なぜ、削減がうまく進まなかったと思われますか?

百富

われわれも不思議に思い、アンケートを取ってみたところ人員不足のほか、何を基準に要・不要を判断すべきかわからないといった理由で先送りにしているケースがかなりありました。もちろんすぐに対応していただけた担当者もいたものの、グループ各社のクラウド運用に関する知識やAWSに対する習熟度にバラツキがあることをあまり認識してなかったのが、主な要因だったと思います。

尾原

コスト削減はグループ各社のIT予算の執行を適正化する動きでもあるので、状況を周知すればある程度、自律的に動いてもらえるとばかり思っていたので、確かに少しうかつだったかもしれません。そこで、アンケート結果をもとにクラウド推進室で検討を重ね、グループの各社のシステム担当者の悩みに寄り添ったサポートを提供することに決めました。

現場に寄り添うサポートでプロジェクトの停滞を打破

システム担当者に寄り添ったサポートとは?

尾原

コスト最適化の難易度を「低・中・高」の3段階に分け、まずはグループ各社にとって比較的負担が少ない「低」に相当する、不要リソースの削除に注力することにしました。具体的には、作業に伴う問い合わせ対応に加え、より大きな削減額が見込まれるグループ会社に対しては、一緒に管理画面を見ながらアドバイスしたり、不要リソースの削除を手伝ったりするなど、現場のみなさんの悩みを直接解決するサポートが中心です。

百富

プロジェクトを前に進めるため、われわれ自身の体制も改めました。当初は本プロジェクトの対象となる「G-MAC」と「C-MAC」で担当を分け、分析レポートを配布したり、問い合わせに対応していたのですが、2025年度からは窓口を一本化しました。

コミュニケーションロスの解消に努めたほか、提供する分析レポートもわかりやすさ、見やすさにこだわった体裁に改めるなど、プロジェクトの進行を阻む要素を一つひとつ潰していきました。あくまでもコスト最適化の当事者はグループ各社のみなさんです。われわれは、みなさんの伴走者として、現場の意思決定を支える環境を整えることに力を注ぎました。

尾原

こうした取り組みは、担当者を心理的に支える効果もあったようです。グループ会社によっては、忙しい業務の合間にひとりで対応せざるを得ないケースもあり、私たちが壁打ち相手となったことで「不安が解消された」「取り組みの糸口が掴めた」といっていただけたこともあったからです。

取り組みの結果を教えてください。どのような成果がありましたか?

尾原

2025年度の年間削減目標を早期に達成し、4000万円分の不要リソースを削減できました。これはグループ全体で想定される不要リソースのおよそ半分にあたる額です。私たちとグループ各社のみなさんが組織を越え、取り組んだからこその成果だと思います。

グループIT本部主催の2025年度上期優秀案件の運用部門で表彰されたそうですね。

百富

はい。クラウド基盤の運用は「問題なく利用できて当たり前」といわれがちな領域です。コスト削減額の大きさもさることながら、これまでにない前向きな取り組みを評価してもらえたのはうれしかったですね。

尾原

私は選考に先立ってプロジェクトの概要をプレゼンしたのですが、受賞後、私たちと同じくインフラの運用に携わる方々から褒めていただけたのもうれしかったですね。

コスト削減は新規事業の立ち上げなどと違って地味な印象がありますが、今回の受賞は普段なかなかスポットが当たらない私たちの取り組みを多くの方に知っていただく機会にもなりました。このプロジェクトを通してグループ各社に対する私たちの理解も深まったので、今後の取り組みにも弾みがつくのではないかと期待しています。

来期はさらに難易度の高いコスト削減にチャレンジ

改めて聞かせてください。このプロジェクトを通して何を得たと思いますか?

尾原

企画側の動き方ひとつで、プロジェクトの結果が大きく変わるということですね。また、クラウドの利用が浸透した一方、コスト最適化については、まだまだ努力が必要なこともよくわかりました。

百富

グループ各社の状況をつぶさに見ていくと、担当者の異動や退職などに伴って、引き継ぎがうまくいかなかったり、見直しのタイミングが失われてしまったりしたケースもあります。クラウド活用をさらに高度化させるためにも、定期的にコストを見直すプロセスをいかに日々の業務に組み込むか、ルールづくりの必要性を痛感しました。

尾原

現在G-MACを基盤とする新規システムの受付は終えており、G-MAC上で運用されているシステムの多くが、G-MACよりもさらに自由度の高いC-MACに移行していくことになるはずです。今後は各社の事情にどう折り合いをつけながら、難易度の高い施策を実施していくか。きめ細かなサポートを提供するとともに、どのようにコスト意識を自分事化していくのかが、今後の課題になると思います。

最後に、来期の取り組みを聞かせてください。

百富

来期も引き続き不要リソースの削除に取り組みながら、今後はシステムの停止を伴うボリュームタイプやインスタンスタイプの変更、メモリーサイズの最適化に着手することになります。今期よりも難易度が数段上がるので、むしろ来期からがこのプロジェクトの本番と言えそうです。試算では、オーバースペックの最適化が進みダウンサイジングを実現すると、今期の2倍にあたる削減効果が期待できると見込んでいます。

来期は、グループ各社におけるAWSの運用や管理手法の見直しに加え、データのライフサイクルを定義するのに必要な支援を提供しながら、影響範囲が限定される社内向けのサービスの見直しから進め、よりステークホルダーが多く、かつ綿密な検証作業が欠かせない外部向けサービスのコスト最適化に取り組む計画です。AWSの協力も得つつ、知見の蓄積に努め、さらなるコスト削減を目指します。

取材・文=武田敏則(グレタケ)/撮影=山口修司(ファーストブリッジ)
※所属組織および取材内容は2025年12月時点の情報です。
※略歴内の情報は2025年12月時点での内容です。

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