【前編】未来の“はたらく”を変革する——パーソルホールディングス×パーソルクロステクノロジー 両本部長が語る、AI戦略と共創の最前線

Profile

Masayuki Okada

パーソルホールディングス株式会社
グループAI・DX本部
本部長

2009年、関西学院大学を卒業後、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。人材紹介事業の法人営業を経て、営業企画、新規事業の立ち上げ、M&A先の成長支援などに従事。2021年、人材紹介事業の企画部門責任者として事業戦略の策定やDXの推進などに携わる。その後、新規サービス開発統括部エグゼクティブマネージャー、子会社取締役、はたらく未来図構想統括部 エグゼクティブマネージャーなどを歴任。2024年10月、パーソルホールディングスに転籍後は、グループデジタル変革推進本部DX企画部部長を務める。2025年4月より現職。

Takuya Kodera

パーソルクロステクノロジー株式会社
コンサルティング本部
本部長

大手SIerでITエンジニアとしてキャリア開始後、海外M&A・PMIを経験し、外資系コンサルティングファームで新規事業・事業戦略・DX構想策定支援等に従事。その後、戦略コンサルティングとAI事業を展開するスタートアップ企業に創業メンバーとして参画。2023年よりパーソルクロステクノロジーのコンサルティング本部立ち上げ責任者として着任し、現在はコンサルティング本部の本部長として組織運営と事業拡大を担っている。

「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を掲げ、パーソルグループは今、AIをはじめとする先端技術を軸に、グループ全体の変革を加速させています。その中心的役割を担うべく、パーソルホールディングスでは2025年4月、新たに「グループAI・DX本部」を発足しました。

一方、ITからものづくりまで幅広い領域で技術支援を行うパーソルクロステクノロジーでは、DX戦略策定やAI導入を担う「コンサルティング本部」が、グループ内外での実装をリードしています。

今回の前後編インタビューでは、パーソルホールディングス グループAI・DX本部 本部長の岡田と、パーソルクロステクノロジー コンサルティング本部 本部長の小寺に、協業によって生まれる価値や、AIによって“はたらく”はどう変わるのか、その最前線を語っていただきます。

前編となる今回は、両部門の協業の狙いや、AIが変えるHR業界の姿、そしてDXの先に見据える事業変革について話を聞きました。

グループDXの中核を担う両本部が描く、変革と協業の全体像

まずは、お二人が管掌する組織の役割について教えてください。

岡田

パーソルホールディングスのグループAI・DX本部は、AIをはじめとする先端技術を活用して、国内外合わせて約150社あるグループ会社のDXを推進する役割を担っています。テクノロジーによる新たな価値を創出する中核組織として、「事業そのものを変革すること」と「社員一人ひとりのはたらき方を進化させること」を目指しています。

小寺

パーソルクロステクノロジーのコンサルティング本部は、DX/IT戦略策定やAI導入支援といった、いわゆる「上流工程」に特化した組織です。顧客企業の課題解決をリードする一方で、その高度な技術力と知見をパーソルグループ内にも還元しています。現在は、パーソルホールディングスが描くグループ横断のDXとテクノロジー戦略を現場に実装し、事業の変革を加速させていくことが大きなミッションです。

今回、なぜグループ内での協業に至ったのでしょうか?

岡田

パーソルグループでは、各SBU*がAI活用を個別に進めており、取り組みやノウハウが点在していました。しかし現在は、私たちグループAI・DX本部がハブとなり、統一された戦略のもと、グループ全体で推進する体制へと移行しています。

ただ、戦略を描くだけでは変革は起きません。構想を確実に現場で実装し、成果へつなげるには、実行力のあるパートナーが必要です。そこで今回、上流から下流まで一気通貫で支援でき、すでにグループ各社とも関わりのあるパーソルクロステクノロジーとの協業に至りました。

実際、基幹システムの改修といった深いレイヤーにまで関与してもらっているため、構想が現場にフィットするかを見極め、ときには「それは現場には合わないですよ」と率直に伝えてくれる、そんな理想的なパートナーシップが築けています。

*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

協業で得られるシナジーについては、どのように捉えていますか?

小寺

岡田さんが率いるグループAI・DX本部は、グループ全体を俯瞰した戦略立案と、多様な人材による強い推進力、そして実行を支えるガバナンス体制を備えています。これは単体の企業ではなかなか持ち得ない大きな価値です。一方、私たちは、幅広い業界で得た技術的な知見をもとに「構想をどう現場で機能させるか」を徹底的に考え、現場に根差した実装に強みを持っています。

パーソルホールディングスが描く構想と、パーソルクロステクノロジーの実装が「歯車のように」噛み合うことで、変革はより速く、より深く進んでいく。この補完関係こそが、パーソルグループの事業変革を本質的な成功へ導くカギだと感じています。

効率化から価値創出へ。AIが変えるHRサービスとはたらく体験

今後、HR業界はテクノロジーを活用することでどう変わっていくと考えますか?

岡田

HR業界は、企業と個人をつなぐ「仲介機能」を軸に発展してきましたが、生成AI、とりわけAIエージェントの進化によって、この「仲介機能」自体がテクノロジーに代替される可能性が高まっています。人材ビジネスはもともと労働集約型であり、AIの導入による構造的な変化は避けられません。私は、これは脅威であると同時に、新しい人材サービスのあり方を創っていく「機会」でもあると捉えています。

小寺

私も、まさに「効率化」から「価値創出」へと、テクノロジー活用のフェーズが大きく変わってきたと感じています。これまでのHRテックは、定型業務の自動化やコスト削減が中心でしたが、これからは「人の可能性の拡張」や「はたらく体験の質的変化」が主軸になると考えています。

たとえば、企画領域をAIが支援することで新たなアイデアや戦略が生まれたり、AIによって応募者の潜在的な可能性を引き出すことが当たり前になる、そうした変革こそ、これからのHR業界に求められているのではないでしょうか。

そのうえで、どのような取り組みが必要だと考えますか?

岡田

AIを単なる業務支援ツールではなく、ユーザーに信頼される「血の通ったAIエージェント」として進化させることが重要です。そのためには、HR領域で培ってきた豊富な顧客接点や、そこから養われる言語化しにくい「行間」のようなものを、AIに融合させる必要があります。テクノロジーと共存しながら、AI時代のより豊かなはたらき方を社会に体現していく。その先陣を切る存在として、私たち自身が変革のモデルとなるような取り組みを進めていきます。

小寺

従来の延長ではない「非連続な変革」を実現するためには、構想力や技術力に加え、課題の本質を捉える力が欠かせません。グループ内外の多様なプロジェクトを通じて得た知見を活かし、現場の課題に即した形で実装と価値提供をしていきます。

グループ横断で知見を還流し、価値を最大化するパーソル独自の強み

非連続な変革を進めるうえで、グループ間での連携だからこそ築ける強みを教えてください。

小寺

目指しているのは、同じ目線や同じ熱量で課題に向き合う「One Team」の関係です。パーソルホールディングスの戦略チームに深く入り込み、失敗を恐れずアジャイルに試行錯誤を重ねながら、変革をともに推進していきたいと考えています。

外部パートナーとの協業では、契約や情報共有の壁からスピード感が鈍ることもありますが、グループ内である私たちなら「阿吽の呼吸」で動けます。この柔軟さと機動力は大きな強みです。そして、最先端の技術や深い知識を内部に蓄積させていくこの構造こそ、他社には真似できないパーソルグループならではの競争優位性を生み出すのです。そんな最強のタッグを目指して、これからも連携を深化させていきたいですね。

グループ横断のDX戦略を推進するために意識していることはありますか?

岡田

パーソルグループは多様な事業展開をしているため、共通基盤となる仕組みやナレッジを整備しつつ、各事業の特性に応じて柔軟にカスタマイズしていく必要があります。この両立によって、一つの事業で得た知見や成果を他の事業にも還元でき、グループ全体にシナジーが生まれます。さらに、事業単位では見えなかった課題や気づきも、全体最適の視点を持つことで新たに浮かび上がってくる。そこにグループ全体で進める意義があると考えています。

小寺

私たちもまさに、現場ごとの最適化とグループ全体への展開の両立を意識しています。事業の規模や性質が異なるため、同じアプローチが常に通用するわけではありません。しかし、フィードバックを受けて再設計し、改善する中で、より高い成果につながることもあります。このグループの多様性こそが、新たなシナジーと付加価値を生みだす源泉だと感じています。

AIをコア業務に浸透させ、事業モデル自体を再構築する未来へ

グループ各社のDXを進めるなかで、どのような変革を実現していきたいと考えていますか?

小寺

AI活用は、今や多くの企業が取り組む当たり前のテーマとなり、業務の効率化を目的とした導入は広く浸透しています。しかし、パーソルグループが挑んでいるのは、「本質的な事業の進化」です。すでに、AIを活用した人材育成支援といった新たな取り組みも動き始めていますが、業界に大きな変革を起こすような挑戦を実装面からしっかりと後押ししていきます。

岡田

そうですね、まさに私たちが目指すのは事業そのもののトランスフォーメーションです。だからこそ、デジタルやAIをいかにしてグループの「コア業務」に深く入り込ませるかが、もっとも重要だと捉えています。この大きな変化を実現するために、グループ一体となって新たな取り組みにも積極的に挑戦していきます。(後編へ続く)

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=長坂佳宣(PalmTrees)
※所属組織および取材内容は2025年12月時点の情報です。
※略歴内の情報は2025年12月時点での内容です。

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