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新任データサイエンス室長が語る――HRデータの複雑性に挑む、パーソルグループのAI活用の“今”と“これから”

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指す、パーソルグループ。同じ志をもつテクノロジー人材が次々とジョインしています。 今回は、経験者採用で入社した小畑に、現在の仕事とパーソルホールディングスではたらく魅力について聞きました。
データサイエンス室は、AI活用を軸とした事業の変革・推進に取り組む「グループAI・DX本部 グループAI推進部」傘下の組織で、私を含めて8人が所属しています。
主なミッションは2つで、1つはCoE(Center of Excellence)としてパーソルテンプスタッフをはじめとしたグループ各社のDX推進を後押しすること。企画組織などと協力して各社のプロジェクトの支援に入り、AI・データサイエンスの観点から業務課題に対する解決策を提示して分析や開発を行います。
もう1つは、グループ横断の課題解決にAI技術を用いて寄与することです。具体的には、グループ内の業務で活用できるAIエージェントの開発に2025年4月から取り組んでいます。
私の主なミッションは、後者のグループ横断の課題解決です。現在はAIエージェントの開発・実用化に向けて、論文などを対象にした技術調査や設計、検証に携わっています。
ファーストキャリアは商社の営業職で、自社商品の販売や、顧客の店舗・ECサイトに対する改善提案などに携わりました。その後デジタル・ITの領域へ転職し、デジタルマーケティング業界でコンサルティング業務とエンジニアリング業務を経験しています。デジタルマーケティング業界にデータマイニングやAI/ディープラーニングが浸透しはじめたのをきっかけにこの領域に興味を持ち、本格的にスキルを身につけはじめました。
AIを専門に携わり始めたのは前職からで、AIエンジニアチームのプレイングマネージャーとしてAIプロジェクトの企画からモデルの構築、アプリケーション開発まで一気通貫で担ったのち、2024年6月にデータアナリストとしてパーソルホールディングスに入社しました。
顧客店舗への売り上げ改善提案に際してデータ分析を行う中で「目的や課題が明確でないままデータを見て迷路に迷い込んでしまう」という躓きを目の当たりにし、マーケティングやデータ分析にあらためて興味を持ったことがきっかけです。これらの分野に踏み込んで、しっかりとスキルを身につけたいな、と。
当時はスマートフォンが普及していったタイミングで、デジタルやITに可能性を感じていました。それも踏まえて「データ分析×デジタル」を軸に新たなキャリアを模索していたのもありますね。
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を立て直したマーケティング会社・刀の森岡毅さんが書いた『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(今西聖貴氏との共著、KADOKAWA/角川書店、2016年)を読んで、目の前の事象や問題をモデル化して確率として考える視点に感銘を受けたことが大きかったですね。私もこれを実践してみたいなと。
少し毛色は違いますが、こうした考えは当時AlphaGoをきっかけにブームになっていたディープラーニングとリンクする印象もあり、これらを大きく捉えて「AI・データサイエンス」の領域にチャレンジしてみたいと、本格的な勉強を始めました。
これまで、デジタルマーケティング業界でコンサルタントとエンジニアの役割を経験し、現場・ビジネスと技術を両方知れたこと、それらを紐づけるという「得た知識の使い方」を知れたことは、技術活用の基礎力として今に活きている感触がありますね。
ビジネスの現場やユーザーをイメージする、いわゆる「顧客視点」や「ユーザー視点」は、データ分析やAIを活用したアウトプットにおいて役立つんです。問題解決の手段となる技術について知識を得ることももちろん重要ですが、それだけでなくユーザーの動きも知ってそれらを互いに紐づけなければ、アウトプットが「現場で使えるツール」にはなりませんからね。

AIの企画・開発プロセスの推進やマネジメント、社長との対話を通じた全社的な方針策定や戦略設計、そしてGAFAの米国本社の一流のデータサイエンティストから継続的に教わる機会があり、非常に恵まれた環境で成長できたと思っています。正直言って、かなり実力がついたという自分なりの手応えがありましたね。
だからこそというか、自分の力を試すという意味で、次のステップとして新しいことをやってみたいという気持ちが芽生え、再びキャリアチェンジを考えるようになりました。
パーソルホールディングスの中でも、グループ全体の事業やサービスでITの実装・活用を強化することをミッションにしているCoEがベンチャーらしい組織であると聞き、興味を持ちました。パーソルホールディングスという大規模な会社の中にあるにも関わらず、縦割りで限定的な役割を担うのではなく、幅広く新しいことに挑戦できる環境や文化があると思えたことが決め手です。
手前味噌ですが、企画・開発からデータサイエンスまでを幅広く経験してきた人はあまりいないと思っており、その強みを失いたくない気持ちが強かったので、役割に閉じずに横断的に活躍できる点には特に魅力的に感じましたね。
昨今、さまざまな業界でDX推進が注目される中で、パーソルグループの取り組みのスピード感や姿勢は際立っているなとリスペクトしていたことも、決断の後押しになったポイントです。
HR業界における人と企業のマッチングは、顧客企業から見た「求める人材」と転職希望者から見た「入りたい会社」を集約・統合するという点で、一般的な一方向のレコメンドよりも難度が相当高いものと言えます。その点で、本当に的確なマッチングに基づくレコメンドはまだ実現しているとはいえず、この領域には新しい挑戦の余地がまだまだたくさんあると感じていました。

マーケティング関連のプロジェクトにおけるデータ分析・施策評価や、「因果推論」と呼ばれる考え方を用いたツール導入後の効果推定など、分析系の取り組みからスタートし、その後は生成AI系プロダクトやモデル開発に主軸を移していきました。
データサイエンス室内では、当初期待していた通りに幅広くさまざまな業務に携われる一方、もちろん他の組織との役割分担もありますから、プロジェクトの上流からすべてを担っていた以前とは仕事への臨み方が変わりましたね。いかに周りの皆さんを巻き込んで進めるか、その難しさを知るとともに、1人ではできなかったことを周りと協力して実現していく楽しさややりがいを発見しながら日々取り組んでいます。
はい。社内業務において、たとえば新人研修や面談などを代わりに担えるようなAIエージェントの開発・実用化について、研究や検証を進めています。管理職や育成担当の負荷を軽減したり、人材不足によって実施が難しい業務の一部をAIがカバーできるような世界観をイメージしています。
そのためには、「人と自然なコミュニケーションを取りながら、ある程度想定されたシナリオに沿って制御できる」エージェントの実現が必要です。AIエージェントとは本来、目標達成に向けて自律駆動するものを指しますが、完全に自由に振る舞ってしまっては業務での活用が難しくなります。そこで、一定の流れから外れずに物事を進められるものを形にするべく、現在は「タスク指向型対話モデル」という技術の適用に挑戦しています。
実務におけるAI導入と活用には、パーソルグループに限らず世界中の多くの企業が苦戦を強いられていますが、その難しさの要因は主に「既成のAIが、ローカルな商習慣や業務ルールを知らない」ところにあると考えています。つまり、「一般知識は持つものの、パーソルグループの現場のことは知らないAI」をいかに現場の業務に適応させるかが大きな課題ではないかと思うのです。
これまでは、暗黙知化された業務知識を現場にヒアリングして言語化し、AIにプロンプトとしてインプットすることで実現しようとしてきました。しかし、この方法には限界があります。かなり工数がかかる上にカバーできるパターンは少なく、プロンプトの量が増えるとやがてモデルが言うことを聞かなくなってしまうんですよね。あと、ファインチューニングをはじめとしたモデルを再学習させるアプローチもありますが、膨大なコストがかかるので現実的ではないことが多いです。
そこで現在は、業務に特化した知識や振る舞い方をLLMで生成し、外部から与えるという別のアプローチを、最新の論文をもとに検証しています。
世界中の企業が直面している課題を克服して新しい未来を作るために、最先端の領域での研究や開発に挑戦できていることは、本当に恵まれているなと感じます。CoEとしてプロジェクトの支援に入り、成果を出すことも重要ですが、そこだけに終始せず、基礎的な技術研究にも取り組ませてもらえることは本当にありがたいですね。
AIという進化がとても速い領域で、新しい技術をキャッチアップし続けてアイデアを出していく難しさはありますが、言われたことについて手を動かすだけでなくスキルの幅を広げていける、そして私の提案を受け止めて「ぜひやろう!」と体制を作ってもらえる今の環境は、とても楽しいと感じています。
これまで長く「技術」に携わってきた経験をふまえ、技術力をもってAI活用の課題を克服し、新しいものを作っていくことに挑戦したいと考えています。
今その最初のステージには立てたと思っており、ここからは業務にまつわるテーマで「AIを活用すればここまでできるんだ!」「技術ってこんなに面白いのか!」と、皆さんがあっと驚くようなアウトプットを出すことに取り組みたいと思います。
そして、現場の皆さんと私たちデータサイエンス室が対話して互いにアイデアを出し合い、ともに新しいものづくりや課題解決を推進していく体制を作っていければと思います。
業務で使えるAIを形にするには、基礎研究や現場の課題をもとにベースとなるものを作り、さらにキャッチアップした最新の技術をもって育てていくことが不可欠です。そのために、データサイエンスだけでなくシステムやアプリケーションの開発も得意とするAIエンジニアを必要としています。
データサイエンス室では最新の知見を共有する勉強会もおこなっていますが、そういった技術的な進歩のキャッチアップを楽しめる方にはピッタリですね。最先端の領域で新しいものを作ることに前向きな方を仲間に迎え、協力して新しい道を切り開いていければうれしいです。

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年1月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年1月時点での内容です。

パーソルホールディングス株式会社
グループAI・DX本部
グループAI推進部 データサイエンス室
リードデータアナリスト
商社の法人営業職からキャリアをスタート。その後、デジタルマーケティング領域におけるコンサルティングやエンジニアリング、AIプロジェクトの企画・開発からデータサイエンスまで幅広い業務経験を経て、2024年6月にパーソルホールディングスへ入社する。
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STRATEGY
【後編】未来の“はたらく”を変革する——パーソルホールディングス×パーソルクロステクノロジー 両本部長が語る、AI戦略と共創の最前線
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PROJECT
わずか10カ月で開発・導入を実現。データドリブンなタレントマネジメント基盤を形にした舞台裏
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PROJECT
課題の本質をとらえ、伴走型の支援を―コンサルティング×テクノロジーで拓く、地域共創の最前線
4
PROJECT
生成AIによって「女性のはたらき方」が変わり始めた―クラフター小島氏×パーソルテンプスタッフ朝比奈対談
5
PROJECT
30を超える基幹システムを“無風”でクラウドに。パーソルテンプスタッフが挑むアプリリフト