求人票作成を23%効率化――AIエージェント開発が導いた、「何を伝え、何を省くか」を見極める業務改革

Profile

Masanori Nakayama

パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
CX BX事業部 DX統括部
DS部 データコンサル
エキスパート

2005年に旧インテリジェンスに入社。人材サービスのオペレーション改革を起点に、BPR、BPO、テクノロジー活用支援、DXコンサルティングに従事。マーケティング、セールス、HR領域に加え、CX/UX、戦略、新規事業開発まで幅広く支援してきた。構想だけで終わらせず、現場実装と成果創出まで伴走するスタイルを強みとし、直近はAI活用を軸に、お客様のDX・業務変革の実装と成果創出を支援している。

Yuko Tanaka

パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
CX BX事業部 DX統括部 DS部
データコンサル

2023年にパーソルプロセス&テクノロジーへ新卒入社。その後2024年に生成 AI ツールの開発や、開発ツールの教育事業を行っている企業へ転職し、2025年にパーソルビジネスプロセスデザインへ中途入社。現在に至る。

パーソルビジネスプロセスデザインは、コンサルティングから開発、BPOまでを一貫して担い、企業の業務改革を伴走支援しています。業務を高度化するうえで、テクノロジーをどう活用するか――その問いに向き合い続けてきました。

その一例が、社内専用GPT「CHASSU(ちゃっす)に搭載した、グループ共通のAIエージェント開発機能「CHASSU CRE8(ちゃっすクリエイト)」を活用した、求人票作成AIエージェントの開発です。CHASSUやCHASSU CRE8は社内ツールながら、社外顧客支援に先立ち、自社の中で実践を行うツールとして活用されています。試行錯誤を重ねながら、「最適な業務のあり方」を問い直すプロセスは、支援の質そのものを変えつつあります。

今回は、このプロジェクトを推進した中山と田中に、AIエージェント開発の舞台裏や、業務を本質から見直す考え方、そしてAIとともに描く業務変革の可能性について話を聞きました。

CHASSU CRE8を活用し、求人票作成の標準化と効率化を実現したAIエージェント開発

まずは、お二人の自己紹介をお願いします。

中山

2005年に旧インテリジェンスへ入社。人材サービスのオペレーション改革を起点に、BPR、BPO、テクノロジー活用を通じた業務改革に携わってきました。現在はAI活用を軸に、DXや業務変革に取り組むお客さまを支援しています。

田中

2023年に新卒でパーソルプロセス&テクノロジー(現パーソルビジネスプロセスデザイン)へ入社し、ウェビナーを活用したコンサルティングを担当しました。その時に出会った生成AIの可能性に惹かれ、翌年にはプロンプト設計を専門とする企業に転職し、現在はパーソルビジネスプロセスデザインに戻り、AIエージェントの構築に携わっています。

CHASSU CRE8の活用前は、どのようにAIを活用されていましたか?

田中

以前は、CHASSUを使い、要望に合わせてプロンプトを設計・提供していました。ただ、毎回手動でプロンプトを入力するため、運用が負担になることで定着しにくいケースもあります。

中山

当時のAIは、今より思考の深さや情報の保持力も限定的でした。また、CHASSUはパーソルグループ内で提供されている環境のため、お客さまの社内ナレッジにアクセスする機能がなく、要望に応えることが難しい場面も多かったんです。そのため、「どこまでならAIで支援できるか」を説明しながら、現場に合った活用方法を模索していました。

実際にCHASSU CRE8で開発したAIエージェントについて、教えてください。

田中

人事部門向けに、「求人票を作成するAIエージェント」を開発しました。このエージェントは、求人要件を入力すると、チャット形式でAIが内容の作成や調整をサポートしてくれます。人の判断を反映しやすいよう、ステップごとに修正できる設計にしました。

これにより、ベテラン社員でなくても一定の品質で求人票を作成できるようになりました。また、ゼロから人がつくる場合と比べて作業効率が約23%向上することを見込んでおり、標準化と効率化の両立を実現しています。

判断の背景にある意図をひも解き、暗黙知をAIが扱えるルールへ変えるエージェント設計

AIエージェントの開発で、なぜ「求人票の作成」を選んだのでしょうか?

田中

きっかけは、人事部門から「AIで効率化できる業務はないか」という相談でした。そこからヒアリングを重ねると、求人票の作成に大きな課題があることが見えてきました。

一つは、求人票のフォーマット自体は統一されていたものの、各部門が載せたい情報や重視するポイントにはばらつきがあり、情報を整理するだけでも時間がかかっていたんです。もう一つは、掲載媒体ごとに表現ルールが異なるため、それぞれ調整する必要がありました。

これらはまさに、生成AIが得意とする領域で、業務の標準化・効率化との親和性が非常に高いと感じました。そこで、柔軟な業務設計に対応可能なCHASSU CRE8を活用し、求人票作成に特化したAIエージェントの開発に着手したんです。

中山

従来の対話型AIでは、都度プロンプトの入力が必要でしたが、AIエージェントはそれらを裏側に組み込み、処理全体を設計できます。利用者は細かな指示を意識することなく、一度操作するだけでAIが順序立てて処理を進めてくれる。これは非常に画期的な変化でした。CHASSU CRE8の導入を境に、AIで扱える業務の幅が大きく広がったと感じています。

AIエージェントを開発する具体的な流れを教えてください。

田中

まずは、対象業務の工程や業務フローを可視化し、課題や判断ポイントを整理します。そのうえで、AIが担える部分と人の判断が必要な部分を切り分けながら、どこにAIを活用するかを見極めていきます。

次に行うのが、AIが正しく動作するためのルール設計です。過去の成果物や現場へのヒアリングをもとに、業務に含まれる暗黙知を言語化し、AIが理解可能な形式へと落とし込みます。そこまで設計できた段階で要件定義を行い、AIエージェントの構築に移ります。

その中で、とくに苦労するポイントはどこですか?

田中

もっとも時間と労力を要するのは「暗黙知」の言語化です。業務の手順は皆さん説明できても、「どう判断しているか」「どんな配慮をしているか」といった部分は、熟練者ほど無意識に行っています。

そこで私たちは、実際の成果物をもとに分析を進めています。たとえば求人票であれば、過去の事例から表現の意図や傾向を抽出し、さらに反応が良かったものとそうでないものを現場の方と一緒に比較・分析することで、成果につながる要素を可視化する。そうして明らかになった属人化していた判断や感覚を、AIが扱えるルールに落とし込んでいきます。

求人票作成のAIエージェントを開発した際も、全体で約1カ月半を要しましたが、その大半はこの設計・整理フェーズに充てられました。構築自体は、およそ2週間で完了しています。

暗黙知をうまく言語化するために必要な視点とは何でしょうか?

中山

大事なのは、「その成果物をなぜつくるのか」という目的です。求人票なら応募数の最大化、Webコンテンツなら申し込みや問い合わせ数の向上――目的によって、重視すべき要素や判断基準は異なります。

成果物の目的を明確にすることで、言語化すべき知見や評価軸が自然と見えてきます。目的から逆算して考えることは、業務を進めるうえでごく自然なことですが、AIエージェント開発でも同じように大切です。

AI導入は手段にすぎない。問いを重ね、業務を再定義することが変革のカギ

ルールや暗黙知を言語化できれば、最適なAIエージェントは作成できるのでしょうか?

中山

暗黙知の言語化はもちろん必要です。ただ、「すべてを言語化すること」がゴールではありません。

実際、webコンテンツの作成を支援するAIエージェントを構築した際、文体や校正ルールなどの情報と、べテラン社員の知見を余すところなく反映しました。しかし、実際に現場で活用してもらうと、「AIからの指摘が多すぎて、どれが重要かわからない」「判断に迷う」といった戸惑いの声が上がったんです。これは、暗黙知をすべて盛り込むことが、必ずしも実用的ではないことを示しています。

重要なのは、現場のルールや知見の中から、本当に価値のあるエッセンスを見極め、「何を伝え、何はあえて省くか」を研ぎ澄ましていくプロセスにあります。そして、その過程にこそ、私たちの役割と意義があると考えています。

AI活用によって視点が変わった今、どのような変化が生まれていますか?

中山

AI活用には、従来の「お客さまの要望に応える」だけでは捉えきれない、本質的な価値があることに気づきました。というのも、AIを業務に取り入れる過程で、「仕事のあり方そのものを問い直す」ことができるんです。

そうした問い直しを重ねることで、「良いアウトプットとは何か」「何を基準に判断すべきか」といった共通の価値基準が、関係者の間に自然と共有されていきます。その結果、誰もが納得したルールに基づく成果物が生まれる。これは単なる業務改善にとどまらず、組織の成熟にもつながる変化だと捉えています。

さらに意外だったのは、AIが「対話の緩衝材」として機能したことです。ベテラン社員に対して直接「この工程は本当に必要ですか?」と問いかけるのは難しくても、AIの出力を起点にすれば、立場に関係なくフラットな議論ができます。こうした役割も、AIを使うことで初めて見えてきた大きな発見でした。

そうした新たな気づきは、お客さまとの向き合い方にも影響を与えていますか?

中山

当初の目標は、人間と同等レベルのアウトプットをAIで出すことでした。しかし今は、「本当に必要な要素は何か」という、より本質的な問いへとシフトしています。「伴走」という形で対話を重ねることで、お客さま自身が「最適な業務のあり方」を再定義できるようになる。こうして得られた気づきや知見は、組織を変革させる土台にもなります。

そして将来、AIがさらに進化したとしても、こうした経験を積んだ人たちこそが、AIを本当の意味で使いこなし、成果を出していける存在になると感じています。

一般的なAI導入
(効率化)
私たちが取り組む業務変革
(再定義)
目指すもの人間の作業をAIに「模倣」させる業務を解体し、「本質」を再定義する
言語化の範囲ルールや知見を「すべて」反映する成果に直結する「エッセンス」を絞り込む
現場の反応「使いにくい」「指摘が多すぎる」「自分たちの仕事の基準」が明確になる
副次効果作業時間の短縮組織の成熟(フラットな議論の活性化)
真の成果物便利なツールAIを使いこなし、変化し続けられる「人」

テクノロジーを活かすのは「人」。その意思が、組織の未来をかたちづくる

AI活用を通じて得た知見は、どのようにサービスに活かされていますか?

中山

AIを活用する中で私たちが強く実感しているのは、「業務そのものを見直し、必要なプロセスを見極めること」の重要性です。この考え方は、パーソルビジネスプロセスデザインのサービス全体にも反映されています。

その代表例が、業務変革サービス「ゼロ化」です。これは、マーケティングやセールス、採用、請求業務など多様な領域において、人の工数を限りなくゼロに近づけることを目指す取り組みです。業務構造を見直し、AIで代替できる部分は置き換え、場合によってはプロセスそのものを削除する。そうして、人が本来注力すべき業務に集中できる環境を整えていきます。

この「ゼロ化」を成功させるには、業務の目的や価値を深く理解することが欠かせません。だからこそ、これまで培ったAI活用の知見を活かし、業務全体の最適化を支援しています。

AIの活用が進む一方で、さまざまな制約から導入が難しい企業も多いのではないでしょうか。

中山

そうですね。特に大企業になるほど、機密情報の扱いや社内規定の制約から、外部のAIサービスにデータを渡せないという課題を抱えています。

そうした企業に向けて提供しているのが、「プライベートAI」です。これは、AIを組み込んだ専用端末を用い、ネットワークから完全に切り離された環境で活用できます。データを外部に出すことなく、社内情報をもとに分析や業務改善を行えるため、セキュリティ要件の厳しい企業でも安心して導入いただけます。

AIの活用領域が広がる中、「使いたくても使えない」という企業も少なくありません。私たちは、利用環境の制限にも柔軟に対応し、AIの可能性を最大限引き出せる環境を提供しています。

最後に、テクノロジー支援の最前線にいるお二人が、これから目指したい未来について教えてください。

田中

AIは業務を効率化するツールであると同時に、「こんな視点もあったのか」と気づきを与えてくれる存在でもあります。その面白さをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。楽しさをきっかけに興味を持ち、やがて業務に活かしていく。そんな前向きなAI活用が当たり前になる未来をつくっていきたいと思います。

中山

AIは万能ではありません。しかし、人の知恵と組み合わせることで、これまでにない価値を生み出せます。私たちの役割は、現場の知見や経験を引き出し、それをテクノロジーと結びつけて成果へとつなげることです。

誰もが自分の仕事に対して固有の視点を持っています。だからこそ、その強みをテクノロジーと融合させ、さらに価値を高めてほしい。私たちはその挑戦に伴走しながら、より本質的な組織変革を支援していきます。

――ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=山口修司(ファーストブリッジ)
※所属組織および取材内容は2026年3月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年1月時点での内容です。

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