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グループ社員6万人の人事データ活用を目指して―データ基盤構築プロジェクトの裏側

グループ社員6万人の人事データ活用を目指して―データ基盤構築プロジェクトの裏側

今回ご紹介するのは、ボトムアップ型でニーズの発掘や企画、そして設計も全てゼロから取り組んだ人事データ基盤構築プロジェクト。
原点となったのは、社内の課題を見つけ出し、解決しようとするポジティブな動き。
人事データのデジタル化に向けてどのように踏み切ったのか、そこから生まれた効果や見えてきた未来とは。

人事データ基盤構築プロジェクト概要
これまで人事部門が手作業で集計していた、社員約6万名分ものグループ各社の人事関連データを、IT部門が主導してデジタル化。データ基盤をスクラッチで構築するには、投資対効果や人的リソースの観点から難しい状況の中、SaaS製品を活用することで実現に至る。
さらに、社員に関する機密性の高いデータを取り扱うためのガイドラインも策定し、安心・安全なデータ運用ができる環境を整備。
<成果>
  • グループ各社の人事部門間でのデータの即時共有と、データを用いた意思決定が可能な状態を実現
  • エンドユーザーである人事部門のセルフ分析によるデータ利用の高度化・新たなインサイトの獲得
  • デジタル化を推進するパートナーとして、IT部門のプレゼンスが向上

1、やるべきことを“探る”がスタート地点

DX企画部 部長の中桐は、もともと「テクノロジーの活用によって会社をよりよくしたい」という思いを持ってパーソルホールディングスに入社。入社後に、社内の各部署へのヒアリングを重ねていくと、“人事部門の深い悩み”にたどり着いたと言います。

パーソルグループには、6万人を超える社員がいます。これらの人数に対して、用途が異なる36の人事データに関連した帳票が存在していました。
パーソルホールディングスの人事部門では、グループ社員から適切なデータを得た上で、グループ各社の人事データを取り扱うシーンが多くあります。帳票の種類の多さに加えて、個社ごとに項目が異なるなど、手作業で集計を強いられるものもありました。年間にして約900時間がデータ集計作業に使われており、人事部門は非効率的な状況に頭を悩ませていました。

パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 DX企画部 部長 / SBUデジタル企画室 室長 兼グループテクノロジー推進本部 テクノロジー横断部 DX横断室 室長 中桐 亮

2、グループ全体、約6万人分の人事データをデジタル化する意味

人事部門が扱うデータは、会社にとって最も大切な“社員”の情報です。このデータを適切に扱うことで、よりよい制度改善や働き方改革につながっていく可能性を秘めています。

また、このような集計・分析をグループ全体で取り組むことができれば、グループ全体の生産性向上やよりよい働き方につながっていく可能性が大きくなります。

「パーソルグループ全体にメリットが生まれるため、会社も前向きなスタンスで受け止めてくれると考えました。また、早く成果を出して取り組みを拡大するためには、小さくスタートすることが最適解だと考えました。(中桐)」

実際、人事データ基盤の構築は年間計画には入っていなかったため、予算や開発リソースは確保できていませんでした。しかし、人事データ基盤を作ることで生み出せるメリットは大きいと考え、少ない人数で投資コストを最小限に抑える形で、プロジェクトがスタートしました。

パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 DX企画部 部長 / SBUデジタル企画室 室長 兼グループテクノロジー推進本部 テクノロジー横断部 DX横断室 室長 中桐 亮

3、大規模&高難易度のプロジェクトが、約3カ月で基盤構築できた理由

「2名でスタートさせたプロジェクトでしたが、2022年4月にシステム構築を開始し、3カ月後の7月には、実際に人事部門にデータを活用してもらうまでになりました。影響範囲が大きく、少ない人数で取り組むことが困難にも思えましたが、工夫しながら内製で進めることでスピード感を持って構築できました。このスピード感が今回のポイントだと思います。(中桐)」

開発上、浮かび上がってきたのは4つの課題でした。

  1. 低予算
  2. 少人数でのスモールスタート
  3. 開始時点では少ない知見・スキル
  4. データマネジメントの課題

これらの課題を解決するために、プロジェクトメンバーで決定したのはSaaS製品の導入でした。既存の手段を活用することで、コストや構築・運用の負荷を抑えることができ、①低予算、②少人数、③知見・スキルのそれぞれの課題への対策にもなります。

SnowflakeなどいくつかのSaaS製品を選定の説明図

今回は、SnowflakeなどいくつかのSaaS製品を選定しました。

「Snowflakeを用いることで、パーティショニングやチューニングなどのインフラレイヤーは自動で最適化されるので、ジョブの設計といったアプリレイヤーに集中する体制で進めていきました。しかし、アプリケーションの連携において、理論上は合っているのに、なかなか繋げられず苦戦を強いられる部分もありました。このような課題を乗り越えながら、途中からプロジェクトに協力してくれるメンバーを増やすことができ、最終的に6人体制で取り組みました。(中桐)」

また、社外のクラウドに機密性の高いデータを保管するため、④データマネジメントの課題にも向き合う必要がありました。

今回の設計ではロール設計を最小限にするため、開発とユーザー利用のデータをアカウントごと分断。ネットワークを合わせて分断することで、セキュアな環境を実現しています。

また、DMBOK2を参考に、データマネジメントのルールや運用手順を作成しました。クイックに進めるために必要な知識領域に絞って構築し、セキュリティ部門へのレビューも実施することで、安全なデータ運用ができる状態を目指しました。

「社内セキュリティメンバーとは、本件を実現するためにどのように工夫するかという話ができましたし、人事部門にもどうリスク回避をしていくか説明すると理解を示してくれました。社員みんながテクノロジーを使って前に進めたい、良くしたいと、すごく前向きな姿勢でした。(中桐)」

4、「どうテクノロジーを活用するか?」会社全体でうねりが生まれた

データ基盤完成後、グループ各社の人事部門間でのデータの即時共有が可能になりました。また、ダッシュボードを活用してデータを視覚的に確認できるようになり、人事部門のセルフ分析の高度化や、新たなインサイトの獲得にもつながりました。今後は、AIによるデータ分析も検討されていて、活用の幅はますます広がっていくと予想されます。

「今回のプロジェクトは、自分たちで課題を見つけるところから始まりました。課題を解決するために、自分たちでソリューションを選定して、トライアンドエラーで経験を積みながら進めることができたと思います。私にとっても大きな挑戦でしたが、クリエイティブにチャレンジできたので、楽しみながら取り組むことができました。(中桐)」

日々の仕事の中で生まれる課題は、現場ではたらく人たちが一番理解しています。
課題解決のためにテクノロジーを活用しようとしたとき、最初から大規模開発に舵を切るとなると、大きな予算や時間がかかってしまいます。しかし、今回のように小さくスタートすると、スピーディーな課題解決につながり、エンドユーザーにも受け入れてもらいやすいという側面もありました。

「実際の業務を行っている現場のメンバーは、業務の大変さや煩雑さを知っていて、効率化するためにもっとテクノロジーを活用したいという思いをすごく持っているんですよね。そこにIT部門のメンバーがうまく合流すると、解決への流れがどんどん進んでいくんだなという学びがありました。(中桐)」

ボトムアップで小さくスタートした人事データ基盤構築プロジェクトがきっかけになり、他の部門からの提案も複数上がってきています。パーソルグループ全体に、新たなテクノロジー活用のうねりが生まれ始めています。

(2023年4月時点の情報です。)

中桐亮Ryo Nakagiri
パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 DX企画部 部長
SBUデジタル企画室 室長 兼
グループテクノロジー推進本部 テクノロジー横断部
DX横断室
室長
2006年ベネッセコーポレーション入社。BtoC通信教育を支える販売管理システムやマーケティングシステムの責任者、顧客データ分析のための分散処理技術を用いたデータ基盤開発PMなどを経て、2020年よりパーソルホールディングスに入社。コロナ禍でのデジタル化推進やコーポレートシステムの刷新企画プロジェクトに従事。グループ全体の基幹システム管掌部門部門長を経て、2022年より現職。テクノロジードリブンな人材企業を目指してグループ各社のDXやデータ利活用を推進。
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