【前編】「はたらいて、笑おう。」の実現に向けて“安心してはたらける環境”で取り組むこと
パーソルグループとして掲げる「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化に向け、テクノロジー活用に取り組むグループ各社をインフラ整備やガバナンス強化の観点から支援しているのが、グループIT本部です。
今回は、そんなグループIT本部を率いる渡辺にインタビュー。組織として目指すあり方と、組織づくりにおける渡辺の考え方について話を聞きました。
【後編】はこちら→テクノロジーの力で心地よく、楽しくはたらける環境を作る
プレイヤーとして蓄えたITの知見を活かし、全社戦略に携わりたい
―前半は、渡辺さんがグループIT本部 本部長の役割を担うまでにフォーカスしてお話を伺います。まずはこれまでの経歴から聞かせていただけますか。
米系投資銀行のIT部門からキャリアをスタートさせ、15年ほど勤める中でシステムアドミニストレーターやエンジニア、プロジェクトマネジャー、テックリードなど、テクノロジーに関わる役割を幅広く経験しました。
その後組織体制が大きく変わるタイミングで、このまま技術者の道を極めるのではなく、蓄えてきたITの知見を活かして全社的な戦略に関わりたいと思うようになり、転職を決断して。そこから、日系証券会社のIT戦略を担う部門での業務経験を経て、2017年にパーソルホールディングスに入社し今に至ります。
―技術者の道もある中、事業会社の中で戦略や方針に関わることを選ばれたのですね。
当初はコンサルタントの職に就き、外からさまざまな企業を助けにいくことに憧れた時期もありました。でも、1社目の会社は私が在籍していた15年の間に、業績や組織、はたらく環境がどんどん成長していきました。その様子を目の当たりにしたことをきっかけに、事業会社の中に腰を据え、自分で戦略を作って自分で実行し、会社を成長させていくことに関わりたいと思うようになったのかもしれません。
―前職からのキャリアチェンジを考えられたのはなぜですか?
2社目に入社してからは、IT戦略を立て、企画を考えて会社の未来を作っていくというやりがいのある仕事ができていました。しかし入社後しばらくして組織の体制が変わり、それに伴って組織文化も大きく変わってしまったのです。
上意下達でただ言われた通りに取り組むという流れが私の肌には合わず、「なぜやるのか」「どんな価値を出して、どんな世界を作りたいのか」を考えて能動的に動ける環境を求めて転職活動を始めました。
―次のステージとしてパーソルホールディングスを選ばれたのはなぜですか?
きっかけは、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンです。偶然見かけたこのフレーズに「はたらくってそんなに生き生きしたもの?」「なんだ、この会社は」とポジティブな驚きがあり、面接を受けてみることにしました。 初回の面接は、私の経歴を受け、面接官は日本人でしたが英語で行われました。
面白い会社だと思うと同時に、英語を使って仕事ができる強みを活かす機会も得られそうだなと。またグループIT本部 IT企画部というポジションでなら自分がやりたいことができそうだという感覚もあり、これらの要素をふまえて入社を決めました。

パーソルグループの社員の皆さんが顧客価値を提供するために、私たちにできることは何か――
―パーソルホールディングスでは、どのような役割や業務を経験されてきたのでしょうか。
入社当初のIT企画部にはまだIT組織として未成熟な部分があり、まずは作業やそのレビューにおけるプロセスをデザインするなど土台の整備を中心に進めました。以来、IT戦略やIT予算、グループ全体のITガバナンスの設計などを幅広く担当してきました。
2019年には、グループIT本部としてのMission/Vision/Value/Style(以下、MVVS)の策定を行ったほか、アジャイルマインドを浸透させること、そのマインドを実践するためのプロセスを構築することなど、組織づくりにも携わってきました。
その後、2022年からは中期経営計画2026に向けた取り組みを始め、2023年7月にグループIT本部 本部長に着任したという流れです。
―どのような背景でMVVSを策定されたのですか?
当時のグループIT本部は組織として成熟しておらず、退職率が高い状態でした。このことを課題と捉え、アンケートをもとに原因分析を行いながら組織変革を行う中で思い至ったのが、戦略をベースに組織としての軸を作っていかなければいけないだろうという考えでした。
そこから「私たちのミッションとは何で、提供価値とは何か」「私たちが大切にしたいものは何か」を整理するべく議論を重ね、作り上げたのがグループIT本部のMVVSです。
Mission:
テクノロジーの力でパーソルグループみんなの「はたらいて、笑おう。」を実現する
Vision:
グループIT本部のリードによって、パーソルグループみんなが安心して自分らしくはたらけている
Value:
「成長マインド」「プロフェッショナリズム」「心理的安全の保証」を向上させることで、
「スピーディーな組織運営」を加速させる
私が描きたいと考えるIT戦略は、組織の土台があり、その上に事業戦略があって初めて成り立つものであるはずですから、組織の根本的な意味を捉えて強い土台を築こうという思いで、皆さんと一緒に取り組んでいましたね。
―MVVSには、どのような思いが込められているのでしょうか。
事業会社のいわゆる“情シス”は、システムのメンテナンスを担う組織だと認識されることもありますが、価値はその部分ではないはずだと思っていて。コンサルタントやSIerの方々にお願いするのではなく、事業会社の中にIT組織が存在する意義は、事業理解がしっかりあることだと思うんです。
だからこそ私たちが考えるべきは、「パーソルグループの社員の皆さんが顧客価値を提供するために、私たちに何ができるか」だろうと。そんな思いで、「顧客価値創造へ貢献する」や「グループの課題を本質的に解決するサービスを届け続ける」というValueを掲げています。
―その思いは、渡辺さんがその後携わられる中期経営計画2026の策定にも通じているのでしょうか?
そうですね。このMVVSが原点になっていると思います。言葉はブラッシュアップされているものの、本当に大切なものは変わらず「はたらいて、笑おう。」の実現であり、顧客価値の提供であり、それらに“安心してはたらける環境”で取り組むことです。そのことをMVVSを拠りどころとして考えながら、中期経営計画を書いていきました。

アジャイル組織運営で、変化に適応しながらMVVSを体現できる組織へ
―改めて、現在の役割について聞かせてください。
現在は、インフラの整備やガバナンス強化によってグループ各社の「安心してはたらける環境づくり」と「経営リスクの低減」に取り組む、グループIT本部で本部長を務めています。
私が思う本部長の役割は、ビジョンを作ることが一つ。そして“お膳立て”をすること、つまりグループIT本部の“プロダクトオーナー”として、その価値を広く発信していくことです。実際に、着任以降さまざまな会議体で「私たちの仕事にどれだけの難しさがあり、価値があるのか」を伝えることに取り組んできました。
―本部長として、どのような組織づくり、組織運営をしていきたいと考えていますか?
IT企画部で組織設計を担っていた頃から「アジャイル組織運営」を作ってリードしてきており、これがグループIT本部としての土台になると考えています。
「顧客に対してどんな価値をいかに提供するか」を第一に考える、“価値ドリブン”の組織であること。そして各個人がアジャイルマインドを持って業務に取り組み、現場への権限委譲を進めてスピーディーな運営を目指すこと。これらを重視し、変化に適応しながらMVVSを体現できる組織になっていきたいですね。

―そうした組織運営や価値提供に取り組む渡辺さんにとって、パーソルホールディングスとはどんな場所ですか。
総じて面白い環境だと思っています。組織の成長に関わるようなダイナミックな経験は、他ではなかなか得られないものだと思いますし、これまでを振り返っても、さまざまなことをやらせてもらってきたなと。
また「こんな世界を作りたい」と掲げたビジョンの実現に向けて、一緒に取り組める仲間がいて、環境も揃っていて、裁量の幅も大きくて……これまでのキャリアで求めてきたものが今ある感覚です。
―それでは最後に、渡辺さんが今後チャレンジしたいことを聞かせてください。
まずはやはり「自分たちの提供価値とは何か」を考え、会話できる組織を作りたいです。システムを一つ導入するにあたっても「それによって何がよくなるのか」の視点を持ち、価値提供のロードマップを描くことにこだわり続けていきたいと思っています。
また個人的には、ホールディングスにおけるIT・ガバナンスの他社が参考にしたくなるような理想のモデルの一つを、パーソルホールディングス発で作ってみたいという思いがあります。本社とグループ各社でどのように役割分担していくのか、いかにスピード感を持って取り組みを進めていくのか、国内外でどのように協力関係を作るのか。考えることはたくさんありますが、きっと面白いモデルが作れるはずだと思いますし、少しずつその実現に近づきつつあるのではとワクワクしています。
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2023年10月時点の情報です。)

- 渡辺良夫Yoshio Watanabe
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
本部長 - 2000年早稲田大学大学院を卒業、米系投資銀行のIT部門でキャリアをスタート。日系の証券会社を経て、2017年11月にパーソルホールディングスに入社。IT戦略やIT予算、海外子会社を含むグループ全体のITガバナンスの設計など幅広く担当。2020年より、システム・スキル軸の組織から価値ドリブンの組織への変革を目指し、アジャイルマインドの浸透や、アジャイル組織運営を実現するためのプロセスの構築に取り組んでいる。2023年7月より現職。