パーソルグループがビジネスモデル変革を視野に狙う、AI活用の未来予想図

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指す、パーソルグループ。同じ志をもつテクノロジー人材が次々とジョインしています。今回は、2025年4月に新設されたグループAI推進部の部長に就任した鰐部に、AIに特化した組織が発足した背景や今後の展望などについて話を聞きました。

なぜいまAIに特化した支援組織を立ち上げたのか?

—4月に新設されたグループAI・DX本部 グループAI推進部は、どういう使命を負う組織ですか?

私が管掌するグループAI推進部は、パーソルグループ各社のビジネスを横断的に支援するために新設された部署です。その名の通り、AI活用をメインに事業変革と事業推進に取り組む組織として、2025年4月に立ち上げました。

—なぜ、AIに特化した支援組織が必要なのですか?

AIの進化には目覚ましいものがあり、市場規模も拡大しています。単純作業の効率化に留まらず、創造的なタスクを自動的に処理することも可能になりはじめています。一方で、社内の活用状況を見渡すと2023年から社内版GPTモデルの導入により社員自らが業務効率アップを目指して積極的に活用することが増え、また各事業会社でのサービスや業務プロセスへの活用事例も増えてきました。

同時に、AIの導入にあたっては実行体制の確保の難しさなどもあり、グループ会社間で活用進捗にばらつきが目立ちはじめたのも事実です。そこでグループ全体のAI活用の底上げとレベルアップを目的に、パーソルホールディングスがグループ各社を支援する体制を整えることになりました。

—現状ではどのような使われ方が多いのでしょうか?

特定の業務やタスクの自動化などによる生産性の向上がメインです。今後は適用範囲を拡大するため、各社の事業プロセス共通の課題解決として、AI実装を進めていきます。将来的にはビジネスモデルの変革など中期的なビジネス成長にインパクトを与えるようなAIの活用を目指します。

情報の宝庫であり、DXの伸び代が期待できる人材ビジネス

—改めて、鰐部さんがこれまで歩んだキャリアを聞かせてください。どのような経験を積んで現在の立場になったのですか?

2023年5月にパーソルホールディングスに入社するまで、広告会社や通信会社、エンターテインメント会社でデジタルマーケティングを軸に事業企画や事業統括、営業推進、マーケティング組織の立ち上げなどに携わってきました。

入社後、現在のポストに就くまで、事業会社のデジタル活用を企画・推進する組織のマネジャーとして、主に人材派遣業のパーソルテンプスタッフのDX支援を担当してきました。今後は、特定のグループ会社に依らず、人材派遣以外にも、人材紹介やBPOサービスなどを手がける各社に対し、AI活用を中心とした支援活動を展開していきます。

—入社から約2年。グループAI推進部を率いることになってどんな気持ちですか?

AIは数あるテクノロジーのなかでも成長が著しく、ビジネスを激変させる可能性がある分野です。AI活用の成否が与える影響の大きさを考えると、身が引き締まる思いもありつつ、専門組織を率いるワクワク感があります。ぜひチャレンジしたいと思いました。

—デジタルマーケティングを軸に複数の事業会社で経験を積まれたそうですが、入社前、パーソルグループに対してどのような印象を持っていましたか?

パーソルグループ各社には、企業がもつ採用ニーズや人事戦略などの情報に加え、信頼と実績に基づいた分厚い顧客基盤があります。さらに個人に対しては、経歴やスキル、志向など、就職や転職にまつわる膨大な情報の蓄積があり、企業と人をマッチングさせるノウハウも豊富です。

しかし、その一方で、一連の業務に多大な労働力を要するのも事実。私はここに大きな可能性を感じました。豊富な資産にデジタルテクノロジーを掛け合わせることで、さらなる事業成長が期待できると感じたからです。その秘められたポテンシャルの大きさがとても印象的でしたね。それが入社前の印象でした。

—それが入社の決め手になったわけですか?

それ以外にも決め手はあります。社会における人材サービス会社の重要性がますます高まっており、そこに貢献したいという思いがありました。すでに日本の労働市場は、年功序列や終身雇用が過去のものとなり、少子高齢化による労働力不足の問題は待ったなしの状況です。企業と人との関係は大きく変わり、これからも変化し続けることでしょう。こうした変化を受けて自らのキャリアに対して悩みを深めている方も少なくありません。事実、以前の私もそのひとりでした。

個人に対しては、自分らしいキャリアを築くためのお手伝いを、企業に対しては未来を見据えた人材戦略の実現をサポートする。こうした社会的意義のある領域にこれまで培った経験やスキルを注ぎ込みたくて、私はパーソルを選びました。

共通業務の効率化を手はじめに、サービス品質向上を目指す

—今後どのような用途に生成AIを適用していく計画ですか?

まずは、従来キャリアアドバイザーやコーディネーターが多くの時間を費やして行っている顧客企業や転職希望者との調整やマッチング業務、その他の業務作業の効率化を皮切りに、採用プロセスの迅速化を目指します。この取り組みは、優秀な人材を求める企業、よりよいキャリアを求める個人、そして両者を取り持つ法人営業、キャリアアドバイザーやコーディネーター、そして彼らの活動を支えるバックオフィス部門のスタッフにとっても、大きなメリットを提供できる取り組みだからです。

▲パーソルグループのAI活用の目指す方向性について

—いずれ人が介在しない人材サービスが生まれる可能性もあるのでしょうか?

一足飛びにその段階に到達できるわけではないですが、人が司ってきた業務のうちAIに任せる領域が増えていくのは確かだと思っています。AIに任せる業務と人が担うべき業務や提供できる価値を切り分け、全体最適になるようなバランスを探していくべきだと考えています。

—今後は、どのようなスタンスでAIの活用に取り組みますか?

マッチング業務を例に挙げると、一次マッチングはAIに任せ、その結果を人が精査するような役割分担からスタートし、各社共通の業務の洗い出しを進めながら、汎用的に利用できるAI基盤を整えていくことになるでしょう。具体的な取り組みについては、各社から課題や要望をヒアリングしている段階なので、それを踏まえ、これから具体的な施策に落とし込むことになりますが、いずれにしてもテクノロジー活用の底上げと投資対効果が高く競争優位性を発揮しやすい取り組みの両軸でプロジェクトを選択し、推進していくことになるはずです。

AIの活用レベルを引き上げるために必要な要件とは?

—組織を率いるうえで大事にしていることを教えてください。

AI活用の理想を掲げたり指針を示したりするのも大切なのですが、机上の空論では意味がありません。われわれが目指すのはAIを用いたビジネスの成長です。せっかくの施策が機能しないような不幸を避けるためにも、グループ会社で事業に携わる社員のみなさんが価値を感じてもらえるよう「現場のリアル」を踏まえた支援を大切にしていきます。今後も引き続きニーズの把握に努めるとともに、事業価値や顧客体験価値の向上から目を逸らさず、現実に即したアップデートを重ねていくつもりです。

—グループAI推進部にはどんな人材が必要ですか?

グループAI推進部には、ビジネス企画や事業戦略に長けたメンバーに加え、デジタル施策の遂行になくてはならないシステム企画、データ活用の核となるデータサイエンティスト、テクノロジーのビジネス実装に携わるエンジニアなど、さまざまな領域の専門家が在籍しています。われわれは、グループ会社横断で施策を立ち上げ、各事業に伴走しながらAI活用を推進していく立場。今後ジョインしていただく方にも、AIのビジネス活用に不可欠な経験や専門性に加え、協調性やチームワークを大切にする方であってほしいです。

現実と理想のギャップを埋める努力をいとわない方、物事を前に進めることにやりがいを見出せる方、そして何よりもAIという新しい領域に携わるため、常に新しいアイデアを生み出すことが好きで、チャレンジ精神の旺盛な方であれば申し分ありません。

—生成AIによる事業変革と事業創造に関心のある読者のみなさんにメッセージをお願いします。

スキルや経験、マインド以上に大切なものがあるとすれば、それは、グループ各社の事業とその先にいるお客さまに価値を届けるという強い目的意識です。そんな方にジョインいただけたら、これ以上の喜びはありませんね!

―ありがとうございました!

取材・文=グレタケ 武田敏則
(2025年4月時点の情報です。)

鰐部直生Naoki Wanibe
パーソルホールディングス株式会社
グループAI・DX推進本部
グループAI推進部
部長
新卒で広告会社へ入社し企画営業を経験したのち、大手通信会社においてデジタル広告メディア事業統括やマーケティングサービスの企画を担当。エンターテインメント企業でマーケティング全般に携わったのち再び大手通信会社へ入社し、法人事業部門で新規ビジネス企画やマーケティング領域の組織マネジメントを担う。2023年5月、パーソルホールディングスに入社。SBUビジネス企画室室長を経て、2025年4月から現職。

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