データとAIに注力する新組織で、パーソルグループはどう変わるのか? データサイエンス室長が見据える未来

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指す、パーソルグループ。同じ志をもつテクノロジー人材が次々とジョインしています。 今回は、経験者採用で入社した高久に、現在の仕事とパーソルホールディングスではたらく魅力について聞きました。

現場との「協創」で本当に使えるプロダクト開発を

高久さんの現在の役割について教えてください。

パーソルグループにおけるAI活用の支援を担う「データサイエンス室」で、室長を務めています。

データサイエンス室では2023年7月の発足以来、人材派遣事業などを手がける「Staffing SBU*」を中心にAI実装を推進するべく「事業活用・業務活用できるAI」の企画・開発を行ってきました。

もう一つの役割として、具体的なプロジェクトに依らず新たな技術活用の探求にも取り組んでいます。

*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

データサイエンス室のミッションをどのように捉えていますか?

グループ各社の現場に寄り添い、業務で役に立つプロダクトを作ることがデータサイエンス室のミッションです。私たちのプロダクトは、実際に業務で使ってもらって初めて価値を発揮するものですから、現場の皆さんの感覚を理解して「協創」することを常に大切にできる組織でありたいと考えています。

より現場に近い環境で思いっきり力を発揮したい

パーソルホールディングスに入社する以前のキャリアについて教えてください。

前職はメーカー系のSIerで、新卒入社から14年勤めました。その後、2023年5月にパーソルホールディングスに入社して今に至ります。

キャリアの当初はSEとして、データウェアハウスやBIツールといった、データの可視化にまつわるシステム開発に携わりました。ビッグデータが注目を集め始めた頃からは、データの受託分析やAIを使ったシステム開発など、いわゆるデータサイエンティストとしての役割を多く経験しています。

どのようなきっかけから、キャリアチェンジを考えたのでしょうか。

マネジャーとして組織やプロジェクトのマネジメントを担う中で「まだもう少し、現場で『手触り感』を感じながら仕事をしたい」と思うようになったのがきっかけです。

データサイエンティストの面白さは、何より高度な専門スキルを武器に仕事ができること。勘と経験でうまくいっていた業務を、データとロジックによってもっと良くできますし、その結果、多くの人に喜んでもらい、胸を張れる。これを味わうには、やっぱり現場が一番なんですよね。そこで、キャリアチェンジを決めました。

前職では受託でのデータ分析が多く、PoCなどプロジェクトの早期段階までしか携われない点にも、少々物足りなさを感じていました。次の環境では、データサイエンスに関するプロジェクトに最初から最後まで携わりたい、という思いもありましたね。

なかでもパーソルホールディングスを選ばれたのはなぜですか?

「現場に寄り添ってデータサイエンスを手がけられる環境」を軸にさまざまな業界を見ており、エージェントから紹介してもらった1社がパーソルホールディングスでした。

面接で聞いた「HR業界をさらに良くするためにどんなことができるか」「新たな業界標準になり得るものをいかに生み出すか」という言葉に、視座の高さや事業会社ならではのスケールの大きさを感じたことが印象に残っています。

初めての転職活動でさまざまなことを経験したのも大きかったと感じています。自分の経験や能力が生かせるポイントがいくつも見つかり、より解像度が高まったことでHR業界への興味も強まっていき、トップランナーであるパーソルホールディングスではたらきたいと考えるようになっていきました。

現場と徹底的にひざを突き合わせることをモットーに!

入社後はどのような経験をしてきたのでしょうか。

データサイエンティスト(アナリスト)として入社し、グループ各社、中でもパーソルテンプスタッフへの技術支援を行ってきました。

当初はCoE(Center of Excellence)の企画組織に所属するメンバーとして、デジタル企画やビジネス企画の皆さんと一緒に取り組んでいましたが、2023年7月にデータ領域を切り出して「データサイエンス室」が発足してからは、同室で室長を務めています。

データサイエンス室の取り組みとして、具体的な事例を教えてください。

主なテーマの一つは、生成AIを活用したプロダクト開発です。2024年度までに、派遣スタッフのスキルシートを自動生成するもの、クライアント企業による派遣スタッフの評価をサポートするものなど、4〜5つのプロダクトをリリースしました。

現在は、エントリーがあった求職者から、クライアント企業の「思い」との親和性が高い方を推薦する「マッチング」の領域で、機械学習やAIによるスコアリングを活用したプロダクトの開発に取り組んでいます。

プロダクト開発において、データサイエンス室として大切にしているのはどのような点ですか?

冒頭でもお話しましたが、何より現場の皆さんとのコミュニケーションですね。

プロダクトを開発する際、現場のマネジメント層と対話をして方向性を定めるだけでなく、リリースに先行してユーザーとなる皆さんには実際にプロダクトを触ってもらっています。ここで「現場目線で、このプロダクトはどうあるべきか」と「技術の目線で、業務効率を上げるためにはどうすべきか」をすり合わせるのが、特に意識して慎重に進めている点です。

初めから満点の精度でAIをお届けするというわけにはいきませんが、ありがたいことに現場の皆さんは「業務をより良く変えていきたい」「その中でどうAIを使えるか」というモチベーションが高く、主体的に関わり対話してくれていることが、活動の後押しになっている感覚があります。

現場のアイデアを最大化し、グループ全体に波及させる

―2025年4月の組織再編により、データサイエンス室は新たに「グループAI・DX推進本部 グループAI推進部」の一員となりました。この新しい組織体制をどのように捉えていますか?

本部としては、前身のグループデジタル変革推進本部から名称が変わるものの、構成や役割としては変わらず、グループのDXやデータ活用をリードしていくことが求められます。

新設されたグループAI推進部は、AIを活用した事業変革や施策の推進を「グループ横断」で担う組織です。ここに属するデータサイエンス室としては、これまで通りStaffing SBUへの支援に注力していくのはもちろん、より先にあるグループ横断での技術支援を見越し「いかにグループ全体に展開できるものを作るか」を意識していく必要があると考えています。

「AIの利活用」について、どんなビジョンを描いていますか。

この2年弱でいくつかのプロダクトをリリースでき、AIやデータサイエンス室の存在も受け入れてもらえてきたと感じていますが、まだ現場に導入できるAIを形にしたという「スタートライン」の段階です。これから、プロダクトを本格的に業務に取り入れるとともに、デジタルに合わせた業務プロセスに変革していくことを目指したいと思っています。

そのビジョンを追うに当たり、新たな組織体制に期待されることはありますか?

組織再編では本部の刷新以外に、パーソルホールディングスでグループのデジタル変革を主導してきたメンバーがStaffing SBUにジョインするのも大きなトピックです。これによって、リソースが限られる中で「優先順位を見極めて『今やるべき取り組み』に力を注ぎやすくなること」を期待しています。

私たちのカウンターパートであるStaffing SBUには、現場から「ここを改善したい」「これをやってみたい」という案や声を持ち寄って、実際に試してみる仕組みがあります。ここから業務をより良くするアイデアや取り組みの「種」が、さまざま生まれています。ただ、データサイエンス室の限られたリソースでは、それら全てに対応することは難しい現状がありました。

組織再編によって、この辺りの意思疎通がこれまで以上にスムーズになり「現場を見つめる視点」と「グループ全体を見渡す視点」のかけ合わせがしやすくなるのではないでしょうか。現場から生まれた数あるアイデアのうち効果が特に高いものを見定め、優先順位付けしやすくなるはずです。

その結果として、たくさんのプロダクトをリリースして終わりではなく、今まさに作るべきプロダクトの開発・リリースから、実際に業務で使う中での継続的なエンハンス、そしてグループ全体の業務変革までを一貫して推進していけるようになればと考えています。

プロダクトの継続的な改善や、プロダクトを生かした業務プロセスの変革のほかに、取り組みたいテーマがあれば教えてください。

これまでは「今あるデータを使って何ができるか」に重点を置いていましたが、今後は「データをいかに作り、溜めていくか」の視点も強化していきたいですね。

パーソルグループでは、顧客企業の担当者や転職希望者はもちろん、営業やキャリアアドバイザーをはじめ、多くの対話を通じてさまざまな情報がやりとりされています。それらをしっかりと「使える」形で蓄積し、人と仕事の関係に迫り、より良くしていければと考えています。

グループ一丸となって「一人のキャリア・人生」に寄り添い続けたい

最後に、データサイエンス室の「はたらく環境」を教えてください。

さまざまなフィールドでデータサイエンスに携わってきた、10人のメンバーからなる組織です。私のようにベンダー出身の人もいれば、メーカー出身のメンバーや、営業としてのキャリアを歩んだ後にデータ分析の領域に入って活躍しているメンバーもいます。

ときにデータを交えて「こういったやり方もあるのでは?」と建設的に意見を交換しながら、基本的には1プロジェクト1サイエンティストという形で、一人ひとりが独立してプロジェクトを推進しています。

データサイエンス室の新たな仲間として、どのような方を求めていますか?

今後は、アイデアや企画を生み出すだけでなく、その先のシステム実装を力強く推進していくフェーズに入ります。データサイエンティストとしての能力に加え、プロダクトの開発や実際に作ったものの運用保守を手がけられるような、AIエンジニアとしての力を持った方がいると心強いですね。

また「こうした方がよいのでは?」「自分はこうしたい」という熱い思いを持ちながら、メンバー同士や現場の皆さんとの協働を大切にする、私たちの組織の文化にフィットする方を迎えられればうれしく思います。

そんな仲間とともに、どのような組織や世界観を目指していきたいですか? 

パーソルホールディングスのデータサイエンティストチームとして、グループ内でAIにまつわるアイデアや課題が生まれた際に、「まずはデータサイエンス室に相談してみよう!」と真っ先に名前が挙がるような組織を目指したいと考えています。

そのためには、データサイエンティスト同士の連携をさらに強化し、ノウハウや知識、事例を共有していくことも必要でしょうし、視野を広げてより良いプロダクト、より良いAIを作れる可能性を高める必要がありますから、取り組んでいきたいですね。

私個人として描くのは「パーソルグループが、各社の手がける多様な事業・サービスを通じて一人の転職希望者のキャリアに寄り添い続けられる」という世界観です。

どんな入り口でも良いのですが、私たちのサービスに登録いただくと、人生やキャリアのさまざまな局面でフォローできるようになれば良いなと。パーソルグループをいつでも身近に感じてもらい、その時々に必要なサービスにお繋ぎしながら、キャリアコーディネートをトータルで支援できるようにしたいですね。

そのためにAIは欠かせませんから、各社を繋ぐグループ横断の視点で技術支援を続け、人の力とAIの力をうまくかけ合わせていくことに挑戦していければと思います。

ありがとうございました!

取材・文・撮影:合同会社ヒトグラム
(2025年4月時点の情報です。)

高久 大輔Daisuke Takaku
パーソルホールディングス株式会社
グループAI・DX推進本部
グループAI推進部
データサイエンス室
室長
メーカー系SIerで、BIやデータの可視化にまつわるシステム開発やデータの受託分析、AIを使ったシステム開発を経験した後、2023年5月にパーソルホールディングスへ入社。AIを活用したプロダクトの企画・開発や、R&Dを手がけるとともに、2023年7月よりデータサイエンス室 室長を務める。

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