組織間をつなぎ、ステークホルダーへの提供価値を最大化できる基盤を作る――パーソルテンプスタッフが新設した「デジタル横断企画本部」の意義

2025年4月の組織再編により、パーソルテンプスタッフではDX推進本部・テクノロジー本部・デジタル横断企画本部の3本部からなるデジタル管掌組織が新たに始動しました。今回は、デジタル横断企画本部で本部長を務める數野にインタビューを実施。これまでの経験や現在の役割、デジタル横断企画本部として掲げるミッションや展望について話を聞きました。

「人の成長」と「学び」にまつわる領域で、ビジネスサイドからデジタルまで幅広く経験

まずは、數野さんのキャリアについて聞かせてください。

大学を出て就職したのが、IT商材を扱う商社です。営業職として、ERPパッケージをはじめとした商品の販売に3年ほど携わりました。ここでe-ラーニングシステムを導入いただいたお客さまから「e-ラーニングのお陰でスキルが身について、業務を効率化できた」と感謝の言葉をいただいたことが、のちの私のキャリアに大きな影響を与える経験になったのかもしれません。結果的に、「人の成長と学び」に密接に関わるキャリアを歩むきっかけになりました。

2社目では「学び」への興味から教育の業界へキャリアチェンジし、この会社を含めて複数社で幼児~社会人教育にまつわるコンサルティング営業をはじめ、事業開発やDX推進、さらにジョイントベンチャーの設立など幅広く経験しています。その後、2024年10月にパーソルホールディングスへと入社しました。

もともと仕事の上で重視していたのは「人の成長」とそれを実現する「学び」だったそうですが、テクノロジーと深く向き合うようになったきっかけは何でしたか。

2社目でグローバル事業の新規開発を任されたことです。海外から日本の大学にオンライン出願する仕組みを構築するとともに、営業も担当するなどビジネスサイドから開発・保守に携わる一連の経験をしました。

ここでの経験が、テクノロジーやDXというテーマに興味を持つきっかけになったことはもちろん、事業開発やDX推進の責任者など、その後のキャリアにおける礎になったと感じています。

その中でも、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

デジタル事業の責任者として、全国約100万人に及ぶ高校生を対象とするサービスに携わったことです。

生徒が進路学習や模擬試験の結果を確認するようなWEBサービスで「年間で予定している模擬試験のスケジュールに対する遅延が許されない」「試験結果の開示時に発生するアクセス集中に耐えうる安定稼働が求められる」など、品質の担保において特に大きな緊張感がありました。

また、扱うのは生徒一人ひとりの試験結果や志望校など、非常にセンシティブな個人情報になります。当時起こった教育業界での情報漏えい事故を受け、システムの安全性を懸念するステークホルダーもたくさんいましたから、セキュリティやレピュテーションも重要な課題でした。 そんな中、不整合の発生を防ぐテストや脆弱(ぜいじゃく)性診断などの対策にも徹底的に取り組み、多くのユーザーに安定したサービスをスピーディーに提供できた過程は、とてもインパクトのあるプロジェクトとして心に残っています。

「教育」で培ったキャリアから「HR×デジタル」という新たな領域に飛び込んだワケ

前職まで教育業界を中心にキャリアを歩んできた中で、新たな活躍の場としてパーソルホールディングスを選んだ理由について聞かせてください。

営業職としてキャリアをスタートして、その後は事業やDX推進の責任者、さらに経営とキャリアを積み重ねた中で、ふと「自分がやりたかったこととは何だろう」とあらためて問い直した瞬間があったんです。

というのも、当時は学校教育に関わり、GIGAスクール構想によって教材やツールがデジタル化していく様子や、生徒たちがデジタルを使いこなす姿を目の当たりにしていたタイミングでした。そうした社会の変化に直面して「これから、『人の成長』にまつわる領域で、必ずテクノロジーがカギを握る」という直感があったんです。

そこで「DX」を軸にしたキャリアチェンジを考えるようになり、「人の成長」といった観点では「はたらく」も学びや教育に通ずるものがありますから「HR業界 × DX」を強力に推し進めていたパーソルホールディングスに興味を持ちました。

數野さんから見て、当時のパーソルグループはどのようなイメージがありましたか。

「はたらいて、笑おう。」という非常に強いメッセージや、若い人材が役員として活躍していることを中心に柔軟な経営方針があるのだろうと感じ、とても魅力的でしたね。

前職では経営の立場で学校教育の支援に携わっていたのですが、そこで「事業をスピーディーに成長させるには積極的に投資できる企業体力も重要だ」と痛感していました。この点で、パーソルグループはテクノロジー活用を掲げて積極的に投資を行っていた点も魅力に感じました。

パーソルホールディングスへの入社後は、どのような業務・役割を担当してきましたか。

パーソルグループのDXをリードするグループデジタル変革推進本部(当時)において、組織の運営基盤を整備する「本部企画部」の部長を半年間務めました。

当時は組織が急速に拡大していくタイミングで、予算の管理やナレッジ共有など、組織運営にまつわる仕組みも相応のスケール感へとアップデートしていく必要がありました。山積する課題を可視化して計画を立てながら、後任に引き継いで現職に着任した――という流れです。

当時はホールディングスから、パーソルテンプスタッフの強みや課題についてどのように見ていましたか。

「個性豊かなメンバーの営業力」が圧倒的な強みとしてありながら、その裏返しとして「組織としての営業力」や「営業活動におけるDX」といった部分に伸び代がありそうだと感じていました。

これから必要なのは、この強みをさらに伸ばすために課題を補完していくことではないかなと。特に、社員によるテクノロジーの受け取り方の差を縮め、「新たなテクノロジーの活用にチャレンジしてみよう」「ツールを使って業務を効率化していこう」といった発想を共有していく必要があるという印象を持っています。

ビジネスとテクノロジーをつなぎ、成長を推進する基盤を構築していく

あらためて、2025年4月からの新体制で數野さんが担う役割やミッションについて聞かせてください。

パーソルホールディングスのグループデジタル変革推進本部から、パーソルテンプスタッフのデジタル管掌組織へと立場は変わりましたが、変わらず「組織運営基盤の整備・改善」というテーマに取り組みます。

DXをさらに推進する中で、デジタル管掌組織に属するDX推進本部とテクノロジー本部は、より一層拡大していくことが予想されます。その発展的な成長を支えるために、事業のフェーズや時代感に合致した基盤を整え、さらに堅牢にしていくことが私のミッションです。

デジタル横断企画本部としては、どのようなテーマに取り組んでいくのでしょうか。

前段として、私たちの事業におけるDXの取り組みの全体像からお話しするのが良いかもしれません。

パーソルテンプスタッフにおけるDXで重要なポイントは「①派遣スタッフとのデジタル接点の強化」と「②派遣先企業とのデジタル接点の強化」をいかに推進するか、です。そしてそれらを効率的かつ円滑に行うために、「③就業確定の迅速化・最大化」「④標準オペレーション・セキュリティの強化」「⑤デジタルプラットフォームの強化」に高速化・省力化・AI・データの観点から取り組んでいく――これらがデジタル管掌組織として掲げているDX戦略の概要です。

そして、5つのテーマで成果を出す上でハブとなるのが、デジタル横断企画本部といえるでしょう。特にわれわれが重要な役割を担うのは「標準オペレーション・セキュリティ強化」と考えています。その他、デジタル管掌組織を横断する取り組みの強化や、経営や他の部門を巻き込んだ全社的なIT施策の推進、IT投資ポートフォリオの最適化、ITガバナンスの強化なども私たちの取り組むべきテーマです。

中でも重点的に取り組みたいと考えているテーマはありますか。

デジタル管掌組織内の連携を推進するのが最も重要なポイントだと考えていて、すでにいくつものアイデアが浮かんでいます。

これまで「DX推進本部は戦略寄り」「テクノロジー本部は技術寄り」と、それぞれの強みを生かして独立していたような部分がありました。今後は両者が互いの領域に少しずつ染み出すように連携できれば、変革を効率的に進められるだけでなく、これまでにない発想も生まれるはずです。

私たちとしては、そうしたシナジーを生み出せるようにデジタル管掌組織の横串を刺すような動きを積極的に進めたいなと考えています。前年度まで同様の役割を担ってきた「デジタル横断企画部」が、さらにその影響力を高めるべく今回「本部格」に昇格した背景にはこのような期待感もあるはずですから。

デジタル管掌組織内の連携を強化するに当たり、方針や施策として描いているアイデアにはどのようなものがありますか。

現在は両組織が個別に行っている予算管理や事務などの業務を統一して効率化するとともに、オペレーショナルエクセレンスにつなげていくことが、まず初めに取り組むべきテーマです。

テクノロジー人材の育成や採用面での施策も、今後はもっと考えるべきでしょうね。すでに組織を横断した育成プログラムもありますが、より効果的なものに改善していく必要があると考えています。

ホールディングスとの連携についてはどう考えていますか?

連携の可能性を見据えている組織として、テクノロジー人材の採用や採用広報などを担う「グループテクノロジー推進本部」が挙げられます。

今回の記事が掲載される自社メディア『TECH DOOR』を通じた情報発信もそうですし、ホールディングスが持つ人材採用のノウハウをパーソルテンプスタッフでも生かしたり、人材交流を促進する仕組みを作ったりと、さまざまな連携の在り方を検討しています。

ゼロベースへの「価値ある逆行」を恐れず、柔軟な発想と判断力でプロジェクトを推進していく

ビジネスとテクノロジーをつなぐ組織としてデジタル横断企画本部が価値を発揮した先に、どのような世界観を期待していますか。

テクノロジーをあくまで起点・手段として「ステークホルダーに与えられる価値」「人による介在価値」を一番に尊重する企業――でしょうか。

私たちには派遣スタッフや顧客企業、そして従業員といったたくさんのステークホルダーが存在します。そのみなさんに対して提供できる価値を最大化する上で、常にテクノロジーを中心に据えて考えられる――そうした状態が理想です。

理想の姿の実現に向けて、ご自身の強みや経験をどう生かしていきたいと考えていますか。

営業から経営まで幅広い職種と役割を経験し、多くのステークホルダーを巻き込みながら多様なプロジェクトを推進してきたこと、その中で柔軟な発想や判断力を培えたことが、私自身の強みであると自負しています。

ステークホルダーとの対話では、なかなか合意が得られず議論が紛糾することも当然あります。そうした状況をマイナスに捉えず「価値ある逆行」だと考えて、ゼロベースで発想し直す。そういった柔軟な判断で、プロジェクトを着実に推進していければと思います。

大切なのは、さまざまなステークホルダーの立場で考えられること

最後に、はたらく環境としてのデジタル横断企画本部にフォーカスして伺います。デジタル横断企画本部はどんなカラーの組織ですか?

前身のデジタル横断企画部と情報セキュリティを扱っていた情報管理室を統合する形で、4月から19名の組織としてスタートを切りました。今はまだ小規模ですが、営業職やSE、事務職と多様なバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。

組織の新たな一員として、どんな方を求めていますか?

人材派遣事業を中心に「人の成長」に興味を持ち、私たちパーソルグループの思いに共感してくれる方、ITに関する知識や経験がある方はもちろん大歓迎です。

その中で、私が何よりも重視しているのは、やはりステークホルダーのみなさまと向き合うにあたってのマインドでしょうか。お客さまをはじめとするさまざまなステークホルダーの立場に身を置き、それぞれのメリットを俯瞰的に考えながら戦略を立て、それらを実行し、最後まで責任を持って結果を追い続ける――そんな姿勢の方と、一緒に仕事ができれば嬉しく思います。

ありがとうございました!

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2025年6月時点の情報です。
※略歴内の情報は2025年4月時点での内容です。

Profile

數野惠治 Keiji Kazuno

パーソルテンプスタッフ株式会社
デジタル横断企画本部
本部長

IT商社の営業職としてERPパッケージなどの販売を手がけた後、教育業界へキャリアチェンジ。学校に対するコンサル営業から、グローバル事業の新規開発やデジタル事業・DXの推進、さらにはジョイントベンチャーの設立や不採算事業の清算など経営の領域まで、幅広い役割を経験する。2024年10月にパーソルホールディングスに入社し、2025年4月より現職。

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