業務を再設計し、“体験をつくる組織”へ進化させる。組織横断で挑む「AIファーストな事業変革」

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指すパーソルグループ。今回は、4月より新たにグループWork Style本部 ワークスタイルテクノロジー部とグループAI本部 エンジニアリング部を率いる畠山に、両組織を横断して推進する課題と狙い、そして各組織の役割について聞きました。

技術基盤の刷新から価値実装へ。二つの組織を接続し、事業変革を加速する

まずは、これまで部長を務めてきた、セキュアアクセスインフラ部で取り組んできた「次世代インフラの構築」について、この2年間でどのような変化や成果があったのかを教えてください。

以前のパーソルグループのインフラ環境は、すべての通信がデータセンターを経由する構造でした。セキュリティは担保できる一方、アクセスが集中すると業務のスピードに影響が出るリスクがあり、ポリシーも一律に適用されるため、事業ごとの特性に応じた柔軟な運用が難しいといった課題を抱えていました。

そこで、ゼロトラストモデルのアーキテクチャを導入し、端末から直接インターネットに接続する構成へと移行しています。ポリシーもデータセンター単位ではなく、個人単位で適用できるようにすることで利便性も向上しました。

完全にデータセンターを脱却したわけではないものの、この2年間で、従来と同等のセキュリティを維持しながら、スピードと柔軟性を両立するインフラ環境が実現できたと考えています。

新体制により管掌領域が変わりましたが、今回の役割の変化をどのように捉えていますか?

4月より「グループWork Style本部 ワークスタイルテクノロジー部」と「グループAI本部 エンジニアリング部」の両部長に着任し、インフラ中心の領域からAI活用を含む領域へと管掌範囲が変わりました。

一見すると大きく領域が変わったように見えますが、コミュニケーション基盤の整備やセキュリティ基盤の刷新など、これまで担当してきた領域はいずれも、社員が安心して効率的にはたらける環境をどう実現するかというテーマに向き合ってきたものです。今回のAI活用も、その延長線上にある取り組みだと捉えています。

これまでは環境を整備し、安定的に提供することが主な役割でしたが、今後はその基盤を前提に、事業や業務に接続しながら、実際の体験につなげていく役割を担います。

二つの組織を横断して担う体制になった背景には、どのような狙いがあるのでしょうか?

ワークスタイルテクノロジー部は新設された部署ですが、もともとインフラエンジニア中心の組織を移管しています。以前はプロダクト開発を外部に委ねるケースも多く、内製で価値をつくる力に課題がありました。一方で、エンジニアリング部は開発を主軸とした組織で、要件に応じて設計から実装まで担える技術力を持っています。

またAIについても、これからは外部サービスを導入するだけでは十分とはいえず、業務に合わせた活用や新たなシステムの構築まで踏み込む必要があります。

そうした背景から、両組織のケイパビリティを掛け合わせ、業務理解から開発・実装までを一気通貫で進められる体制としました。これにより、価値創出の精度とスピードを高め、「AIファーストな事業変革」を着実に推進していきたいと考えています。

AIを業務プロセスに組み込み、社員の“熱狂”を生む体験へと変える

ワークスタイルテクノロジー部の役割を教えてください。

これまでは、グループ全体のはたらく環境を支えるインフラの整備と運用を主軸としてきました。しかし現在は、AI活用が前提となる環境に変わりつつある中で、単にインフラを提供するだけでは価値につながりにくい状況です。

そのため今後は、「インフラエンジニアではなく体験クリエイターになる」ことを掲げ、インフラの先にある業務体験や業務の質をどう高めていくかに軸足を移していきます。

インフラを整えること自体をゴールにするのではなく、その先にある価値創出までを見据えて、自ら設計し関与していく役割へと進化させていきます。

体験価値を重視する組織へと変わるために、どんな価値観が必要だと考えていますか?

まずは、どのような価値を生み出す組織になるのかを改めて言語化するために、マネージャーやエキスパートとともにMission・Vision・Valueについて議論を重ねました。その中で出てきたのが「社員の熱狂を生む」というキーワードです。

これまでの安心・安全のインフラを前提に、社員の心が動き、「これなら使いたい」「これによってはたらき方が変わった」と感じてもらう必要があります。どれだけ機能的に優れていても、使われなければ意味がありませんし、使われたとしても行動や意識が変わらなければ価値は限定的です。

体験クリエイターが生み出す価値は、単なる利便性ではなく、その先で生まれる熱狂だと捉えています。ただ、この考え方はまだ組織全体に浸透しているとは言えません。

一人ひとりが主体的に関われるように、単に方針として共有するだけでなく、対話を重ねながら理解と納得を深めていきます。このマインドの転換こそが、今もっとも優先度の高いテーマだと感じています。

ワークスタイルテクノロジー部の、今後の取り組みについて教えてください。

AI活用をどのように業務の中に定着させていくかが、大きなテーマになります。複数のAIツールはすでに導入していますが、日常的に活用されているのは一部にとどまっており、全体としてはまだ業務の中に入り込んでいる状態には至っていません。

その背景には、AIを使うために「わざわざアクセスする」必要があるという構造があります。既存の業務プロセスはすでに最適化されているため、新たにAIを組み込むと一時的に生産性が下がる場面もあり、結果として積極的に使われにくい状況です。

今後はこの前提を変え、AIを個別のツールとして使うのではなく、業務フローの中に組み込み、意識せずとも活用される状態を目指します。そのためには、トップダウンで利用を促すのではなく、仕組みとして自然に使われる状態を設計していくことが重要です。

最終的には、AIが社員に対して提案してくるような体験も含めて、日常業務の中で当たり前に活用される状態を実現していきます。

“請け負う開発”からの脱却。課題解決を主導するエンジニアリング組織への転換

エンジニアリング部の役割は、今後どのように変わっていくのでしょうか?

これまでエンジニアリング部は、主にグループ会社に対する開発支援という形で関わるケースが中心でした。今後はそうした関わり方にとどまらず、CIO/CAIO配下のエンジニアリング組織として、グループ全体の中で優先度の高いテーマに対して、適切なタイミングで開発リソースを投入していく役割へと変わっていきます。

特定の組織に紐づいて継続的に支援するというよりは、課題のある領域に入り込み、解決まで伴走し、その後は次のテーマへと移っていく。そうした役割を担うことで、グループ全体の変革を支える機動力のある組織にしていきたいと考えています。

そのような組織にするために、どのような取り組みが必要だと感じていますか?

既存の業務を維持しながらも、関わり方そのものを段階的に変えていく必要があります。従来のように開発を請け負う形にとどまっていては、組織としての役割は大きく変わりません。

そのため今後は、より上流の領域に入り、グループ会社のメンバーと協働しながら課題を定義し、解決まで一貫して関与していく関わり方へとシフトしていきます。

そして、私たちが関与しなくなった後も各組織が自走できる状態をつくることが理想です。そのためには、開発スキルを基盤としながらも、立ち上げや組織への浸透、運用まで含めて支援できる体制へと強化していく必要があると考えています。

そうした変化の中で、ほかにも注力するテーマはありますか?

今後の組織のあり方を考えるうえで、グローバル対応は重要なテーマの一つです。グループ全体で事業のグローバル化が進む中、日本国内だけで完結するのではなく、海外の案件にも直接関わり、価値を発揮できる組織であることが求められています。

実際に、昨年からグローバル対応を一つのテーマとして掲げ、英語でのコミュニケーション機会を意識的に増やす取り組みを進めています。その結果、継続的に学習を重ねる中で、通訳を介さずに海外メンバーと業務上のやり取りができるメンバーも出てきました。

こうした変化に対して前向きに取り組み、自ら学び続ける姿勢が、この組織の強みでもあります。今後はその強みを活かしながら、グローバルも含めた領域で価値を発揮できる組織へと進化させていきます。

意思決定の近くで事業を動かす。試行錯誤を重ね切り拓く、変革の最前線

組織運営において、畠山さんが大切にされていることを教えてください。

メンバーが自律的に仕事に向き合える状態をつくることを意識しています。自ら取り組みたい、ここまでやり切りたいと思える内発的動機がなければ、組織としての力は十分に発揮されません。

そのため、一方的に方針を伝えるのではなく、対話を通じて意思決定していくことを大切にしています。考え方や背景を共有しながら、メンバーの視点や意見を取り入れていくことで、単なる理解にとどまらず、納得や共感につながっていきます。

そうして一人ひとりが自分ごととして捉えられる状態をつくることで、主体的な行動が生まれ、結果として組織全体のパフォーマンスも高まっていくと考えています。

テクノロジー人材にとって、現在のパーソルホールディングスにはどのような魅力がありますか?

はたらき方の柔軟性は、大きな魅力の一つです。テクノロジー人材は居住地に制約がなく、日本国内であればどこでもはたらくことができます。実際に東京から地方へ移住した社員もおり、はたらく場所に縛られずにパフォーマンスを発揮できる環境が整っています。

また、経営層との距離が近く、日常的にコミュニケーションが取りやすい点も特長です。同じフロアで自然に会話が生まれる環境があり、意思決定の前段階からすり合わせられるため、スピード感を持って物事を進められます。

加えて、AI活用が経営の重要テーマとして位置づけられ、事業戦略の中にも組み込まれています。意思決定の近くで、AI活用を通じて事業に直接影響を与えていけることが、パーソルホールディングスではたらく大きな価値だと感じています。

最後に、AI活用による変革が求められている今、その最前線に関わりたいと考えている方に向けてメッセージをお願いします。

パーソルホールディングスでは、あらかじめ正解が用意されている仕事は多くありません。どうすればより良くできるのかを自分たちで考え、試行錯誤しながら形にしていくことが求められます。

特に今は、AI活用も組織のあり方もまだ発展途上の段階です。そのため、完成された仕組みに乗るのではなく、自ら課題を見つけ、仕組みそのものをつくっていくフェーズにあります。また、複数の会社が集まっているからこその複雑さもあり、その分だけ改善の余地が大きく、挑戦する面白さがあります。

まだ整っていないからこそ、自分たちの意思で方向性を描き、実際に形にしていける。その変化の最前線に関わり、自ら手を動かしながら価値を生み出していきたい方と、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思います。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=長坂佳宣(PalmTrees)
※所属組織および取材内容は2026年5月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年5月時点での内容です。

Profile

畠山惇 Atsushi Hatakeyama

パーソルホールディングス株式会社
グループWork Style本部 ワークスタイルテクノロジー部
兼 グループAI本部 エンジニアリング部
部長

2008年にSIerへ入社し、官庁向けの業務システム開発や保守・運用に従事。2009年からはインフラエンジニアとして、インフラ構築や保守などを経験。2018年にパーソルホールディングスへ入社後は、コミュニケーション基盤の整備やセキュリティ基盤の刷新に携わり、現在は業務へのAI活用の推進を担う。2026年4月から現職。

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