居住地フリーで「はたらいて、笑おう。」を体現。利用者視点・マネジメント視点で語る、居住地フリーの真価とは
2023年4月からパーソルホールディングスがIT人材向けに導入した「もっと新しいはたらき方」。この制度によって、IT人材は日本国内のどこでも居住可能な「居住地フリー」を選択することが可能となりました。
今回は、「居住地フリー」を活用しているグループIT本部の社員2人と、その上司である2人に話を聞きました。
「居住地フリー」利用者側とマネジメント側の2つの視点から、「居住地フリー」のリアルをご紹介します。
- 「居住地フリー」とは
- パーソルホールディングスでは、2020年10月に人事制度改定を行いました。この人事制度改定によって、社員は一つのオフィスに出社することを前提とするのではなく、一人ひとりが自律的にはたらく場所を選択する「新しいはたらき方」に移行しています。
その中で、オフィスに出社する必要がない業務で自立的に業務遂行ができるIT人材を対象に、2023年4月より「もっと新しいはたらき方」として「居住地フリー」を導入することにしました。「居住地フリー」を活用することで、「自律的に業務が可能」という条件を満たした方は理由を問わず、日本国内のどこでも居住可能となります。
成長できる環境を求めて居住地フリーで新天地へ。多様なはたらき方の価値を実感する日々
―西山さんは、居住地フリーで京都のソーシャルアパートメントに住んでいるそうですね。なぜ、居住地フリーを利用しようと思ったのですか?
西山:漠然と環境を変えたい想いがありました。東京の実家から出てみたかったのですが、都心で一人暮らしするには家賃が高過ぎて…。シェアハウスにも興味はあったものの、やはり東京だと家賃が高く、プライバシー面の心配もあってなかなか踏み切れませんでした。
そんなとき、いわゆるシェアハウスではなく、「ソーシャルアパートメント」に興味を持ちました。共有スペースで仕事や住人同士の交流ができるのは従来のシェアハウスと同じですが、自室に水回りが揃っていて自室だけで生活を完結できるんです。プライベートを確保しつつ、異業種の方と交流を持てる点にとても魅力を感じました。
居住地フリーを利用すれば、全国どこでも住むことができます。都心より家賃が安く、お笑い好きの私には親しみのある関西が選択肢に挙がり、京都で今の物件が見つかったので居住地フリーを利用したという流れです。
―鈴木さんは、西山さんに誘われて同じソーシャルアパートメントに住んでいるそうですね。京都へ移住することに迷いはなかったのでしょうか?
鈴木:迷いはありました。誘われた当初は、「楽しそうだな」と思いつつ「私には無縁」と思っていたんです。私も東京の実家に住んでいて、実家から遠く離れた場所に住むことが想像できませんでした。でも、社会人4年目で周囲が転職や今後のキャリアを考える時期で、「私ももっといろんな人と関わって、視野を広げていきたい」と思い始めたんです。
ただ、実家の近くで一人暮らしやシェアハウス暮らしを始めても、関わる人たちはあまり変わらないんじゃないかと思いました。「だったら、思い切って新しい環境に行こう」と思い立ったんです。ちょうど、先に京都に住み始めていた西山さんから、「今なら空室があるよ」と教えてもらったことが最後のひと押しとなって、移住を決めました。
―居住地フリーを利用されて2〜3ヶ月経ちますが、業務上の変化は感じますか?
西山:変化はほとんど感じていません。もともと、入社以来ずっとリモート勤務だったこともあり、居住地が変わっても変わらず仕事がうまく回っているからだと思います。実家の自室で仕事をしていたときは、煮詰まってパフォーマンスが落ちることもあったのですが、今は自室とは別のワーキングラウンジで仕事をしているので、より集中できるようになりました。
都会から離れ、休日にはお寺や公園を巡ってリフレッシュしています。こんなに楽しい思いをさせてもらっているので、仕事も「もっとがんばらないと!」と気合が入りますね。
鈴木:私も業務はリモートで成り立っていましたので、特に変化は感じていません。1つ懸念していたのは、まれにオフィスにある端末を利用しなければならない業務があったことです。その業務については後輩が「私が代わるので、京都生活を楽しんできてください!」と言ってくれて。上司やチームメンバーにサポートしてもらっている分、がんばっている姿をしっかり見せていきたいと思うようになりましたね。
―居住地フリーでも変わらず業務ができているのですね。チームメンバーの反応やコミュニケーション面に変化はありましたか?
西山:これまでは、家庭の事情以外で居住地フリーを利用した人がいなかったため、自分の意思で他の地域に住みたいという理由でこの制度が「本当に利用できるのだろうか」とやや懐疑的でした。でも、室長の畠山さんと上司の見留さんが制度利用の手続きに尽力してくれて、想像以上にスムーズに居住地フリーの利用が決まりました。おふたりのサポートには本当に感謝しています。
チームメンバーも居住地フリーをポジティブに捉えてくれて、京都に縁のあるリードエンジニアの方が京都について教えてくれたり、メンバーが夏休みに京都に遊びに来てくれたり。また、6月まで私たちが所属しているグループIT本部の本部長だった内田さんも、ご自身の地元である京都の帰省に合わせて立ち寄ってくれるなど、居住地フリーを通して、会社の人たちとの絆が深まったと感じています。
鈴木:もともと週1回のチームMTGでチームメンバーとは密にコミュニケーションをとっていましたが、京都に住んでからは、特に後輩との雑談を意識的に増やして近況を聞くようにしています。
また、東京のオフィスへの出社は、月1回交通費補助を使うことができます。その日に合わせてチームメンバーが出社してくれたり、他のチームの社員も積極的に話しかけてくれたりして、以前よりもコミュニケーションの濃度が高まったと感じています。室長の飯田さんや上司の池田さんは、オンラインで話すたびに「体調は大丈夫?」と気にかけてくれて、業務面以外にメンタル面でも気にかけてくれているのは本当に心強いですね。
―居住地フリーを利用して、ご自身の心境面の変化はありましたか?
西山:私はパーソルグループ社員のITインフラを整備する業務をしています。インフラが止まってしまうなど、万が一の際には居住地フリーを利用している自分はすぐに東京のオフィスにかけつけられないということもあり、これまで以上にインフラが止まることへの不安と、「止めてはならない」という当事者意識を持つようになったと思います。
また、居住地フリーを通して、改めてパーソルが目指す「多様なはたらき方」の価値を体感できたのは大きな収穫だったと思っています。
鈴木:私はパーソルグループ社員の携帯端末の利活用を進める業務を担当しています。自分がITの部門にいると、たとえば営業の社員がどのように携帯端末を使って仕事をしているのか、イメージしづらかったんです。でも、ソーシャルアパートメントでいろいろな仕事をしている人たちを見ることで、グループ社員にとって携帯端末が「どうだったら便利か」「どうなったら困るのか」を考える機会が増えました。
ずっと自分は関東に住むものだと思っていました。でも、勇気を出して一歩踏み出したことで、新しい出会いや発見がありましたし、もっといろんなことに挑戦してみようという気持ちが生まれました。誘ってくれた西山さんに、とても感謝しています。
居住地フリーにより醸成されたチームの絆。「はたらいて、笑おう。」を体現する姿に見た、居住地フリーの可能性
―見留さんは西山さんを、池田さんは鈴木さんをマネジメントされる立場かと思います。お二人の居住地フリーについて、どのように感じていますか?
見留:私もチームのメンバーも、西山さんとの距離が離れてしまう寂しさはありました。でも、本人が居住地フリーを使うことは前向きに捉えていて、「ぜひ楽しんできて!」とみんなで送り出しましたね。もともと、メンバー同士が協力的でコミュニケーションがしっかりとれているチームだったので、西山さんが居住地フリーになった後も支障なく業務はできています。
とはいえ、実際に距離が離れてしまうので、事前に本人とは「コミュニケーションが疎遠にならないようにしよう」と話しました。ちょっとしたことでも、「今、会話できる?」とチャットで声を掛けて会話するよう意識しています。最近、チーム内で「もっと人事制度を積極的に使っていこう」という機運が高まり、ワーケーション制度※にも応募しました。今回の居住地フリーの利用が、チームの結束力を高めるよいキッカケになったのではないでしょうか。
※ ワーケーション制度:パーソルホールディングスでは「もっと新しいはたらき方」の取り組みとして、ワーケーションの推進を掲げている。2023年度から導入されたワーケーション制度は、「チームを繋げる・深める」をコンセプトに、チーム単位のワーケーションを推進するという取り組み。会社がワーケーション施設を用意するほか、交通費・施設利用費・宿泊費を会社が負担する。
池田:私のチームでも、新たな環境でかんばっている鈴木さんを、みんなが心から応援しています。月1回の鈴木さんの東京オフィスへ出社の日をみんな心待ちにしていて、「いつ帰ってくるの?」「帰ってくる日は教えてね」というやり取りがチャットで飛び交っていますね。
鈴木さんの帰社日に合わせて全員が出社する習慣が自然にでき、みんなで顔を合わせてMTGができるようになりました。これまでは、あえて全員がリアルで集まることはなかったのですが、居住地フリーのメンバーの存在によって機会を捉えて意識的に集まるようになり、それがチームの連帯感に繋がっていると思います。
メンバーの中には、鈴木さんにいい刺激を受けて、同じようなソーシャルアパートメントを探している人もいます。今後も、居住地フリーを利用するメンバーが出てくるかもしれませんね。
―居住地フリーになってからの西山さん・鈴木さんに感じる変化はありますか?
見留:もともと積極的に仕事に取り組んでくれていましたが、居住地フリーになって新鮮な環境に身を置くことで、さらに前向きになったと感じます。週1回、1on1で西山さんと話すのですが「今日、○○へ行ったんです」「京都でこういうお祭りがあったんです」と楽しそうに話していて。プライベートが充実したことで、はたらくモチベーションが活性化されているように思いますね。
池田:私も、本人の仕事のモチベーションが非常に上がったと感じています。離れている分、「ミスを減らそう」「後輩にしっかりした姿を見せよう」と努力しているのが伝わりますね。私たちのチームは関西にある関連会社との仕事も多いのですが、鈴木さんが関連会社に足を運んで、関係性強化に努めてくれています。とても頼もしいですし、本人にとっても、関西での人脈が広がったのはとても良かったと思います。
―居住地フリー利用者をマネジメントする立場として、当制度をどう評価していますか?
見留:西山さんがモチベーション高く仕事をしている姿を見て、居住地フリーはまさにグループビジョンの「はたらいて、笑おう。」を体現する制度だと感じています。今後も、希望するメンバーがいれば、ぜひ居住地フリーを活用して楽しくはたらいてほしいですね。居住地フリーはどの会社でもできる制度ではないので、パーソルホールディングスの優位性として、雇用促進に寄与していけると考えています。
池田:自分の好きな場所で仕事ができるのは、非常に大きなメリットです。その点は、当社の強みとしてステークホルダーにも評価いただけるポイントではないでしょうか。現在はメンバークラスの利用が中心ですが、マネジメント層にも利用者が広まるなど、居住地フリーの裾野がどんどん広がることを期待しています。
取材・文=ファーストブリッジ 宮本智美
(2023年10月時点の情報です。)
- 西山友梨Yuri Nishiyama
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ワークスタイルインフラ部
コミュニケーションインフラ室
M365チーム
コンサルタント
- 2020年、パーソルホールディングスへ新卒入社。新規Microsoft サービスの社内展開やTeamsの機能拡張、Power Platformの利活用推進を行っている。2023年6月より、「居住地フリー」制度を活用して京都へ移住。
- 鈴木明日香Asuka Suzuki
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ワークスタイルインフラ部
ユーザーインフラ室
エンドポイントSec.チーム
コンサルタント - 2020年、パーソルホールディングスへ新卒入社。パーソルグループの従業員が利用するシステムのクラウド化検討などを実施し、現在はIntune・EMS関連の企画・展開を担当。2023年7月より、「居住地フリー」制度を活用して京都へ移住。
- 見留和也Kazuya Mitome
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ワークスタイルインフラ部
コミュニケーションインフラ室
M365チーム
PO/シニアコンサルタント - 2008年、大手IT企業の子会社に入社。金融業向けの基盤システム開発エンジニアを経て、2021年11月よりパーソルホールディングスに入社。パーソルホールディングス入社後は、M365領域のプロダクトオーナーを担当。
- 池田和俊Kazutoshi Ikeda
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ワークスタイルインフラ部
ユーザーインフラ室
室長
- 2008年からSIerでプロジェクトマネージャーとして幅広く活動し、2020年にパーソルホールディングスに入社。現在、グループ社員が利用するスマホの管理システムのプロダクトオーナーを担当。スマホを活用した安全な業務環境の実現と大規模なシステム展開に従事。