人材を最適な配属先へ導く、グループIT本部の”開かれた”新人社員研修とは?
パーソルホールディングスのグループIT本部には150名ほどが在籍しています。社内のテクノロジー組織の中では最も大きな組織で、新人社員の受け入れも多く、それに伴い研修も自ら企画・運営しています。
グループIT本部で優秀な若手を育成する新人社員研修の秘訣を探るべく、新人社員研修企画や運営を担当している牧野と林(りん)、そして実際に新人社員研修を受けた入社2年目の八木澤(やぎさわ)に話を聞きました。
ITの基礎知識を身につけ、個々人を最適な配属先へ導く
ーまずは新人社員研修の企画について伺います。毎年どのようなコンセプトのもとで、新人社員研修を企画・運営しているのでしょうか?
林:毎年変わらないコンセプトが2つあります。1つ目は新人社員に業務に必要なITの知識と基本的な技術を身につけてもらうこと。2つ目は、新人社員一人ひとりを最適な配属先へと導くことです。
加えて、年度ごとに変わる本部の方針や中期経営計画に則った施策、各部門の要望に加え、研修を受けた新人社員からの率直な感想などを毎年プログラムやカリキュラムに反映し、アップデートしています。
ー入社から配属までの研修プログラムについて、2023年度の例を教えてください。
牧野:研修期間は4月から6月と定め、3カ月に渡るプログラムを組んでいます。
4月から5月は座学中心です。まずは議事録の取り方やメールの書き方といった、ビジネスマナー研修から始まります。続いて会社についての基礎知識や各部署の仕事内容、扱っているサービスを紹介していき、ITの専門教育へと進みます。少し会社に慣れてきた6月頃には約3週間にわたって、実務研修として、配属先チームの見学会や業務体験といった実務研修を組み込んでいました。その後6月中旬に配属希望を提出してもらい、6月末には辞令が出されるという流れです。
林:実務研修以外は、ほとんどがオンラインで受けられるのも特徴です。
特別なイベントがない限り、出社日は自分で調整してもらっています。配属後もリモートワークで完結する仕事が多いので、その慣らし期間の意味もあります。例年、同期同士の仲は良いので、週に数回程度出社していることが多いようですね。
ーITの知識をしっかり身につけてもらうために、工夫されていることはありますか?
林:IT研修のタイミングを、4月中旬から下旬以降で設定していることです。まずはビジネス研修で会社というものに慣れた上で、少しずつITを基礎から学んでもらえるように構成しています。
重要なのは、ITの知識がないのを大前提として各コースを組むことですね。意外に思われるかもしれませんが、例年ほとんどの新人社員が文系出身なので、研修内容はすべて入門から初心者用です。
加えて、とにかく脱落者がいないかをウォッチしています。具体的には、毎日新人社員がつける日報を確認し、不安点がありそうな新人社員がいれば面談時間を設けるなどして、その都度プログラムが消化不良にならないようにフォローしています。
牧野:もちろん理系出身者や、IT知識をすでに持っている新人社員にとっても有意義な研修となるよう意識しています。今年度は、実際にサーバに触れる外部研修を取り入れました。技術面に関する研修は、今後もどんどん取り入れていきたいですね。
ー新人社員目線で見た際には、どのようなプログラムだと感じたでしょうか?
八木澤:私自身、経済学部卒でITとはほとんど関わらない学生生活を送っていました。入社してからはまず「ITって何なの?」という部分を一から学び、次に実際に手を動かしながら簡単なシステム開発をして提供する、ロールプレイングやワークショップのようなものもありました。その後に実務研修があり、この3段階の研修で業務に必要な知識の土壌が徐々に積み上がっていったイメージです。そういう面で新人社員の目線に寄り添ったプログラムだった印象がありますね。
新人社員と先輩社員が関わる、複数の機会を設定
ー研修中に先輩社員や近い将来上司になる社員との交流の機会も多々あるのでしょうか?
林:「配属前から新人社員との接点をもっと持ちたい」という各部門からの声を受け、2023年度の新人社員新人社員研修はグループIT本部全体で新人社員を育てる「開かれた研修」をコンセプトに加えました。部長陣とは、研修の最初に行われる各部の紹介や配属希望前の面談など、複数回関わる機会を用意しました。
さらに、2023年度からの新たな取り組みとして、「先輩アワー」を企画しました。
組織への理解が進み、配属面談に向けて自身のキャリアを具体化したい段階にいる6月に、先輩社員複数人と新人社員が熱く語り合うコンテンツです。これまで波瀾万丈なキャリアを積んできたり、産休育休から復帰したりして活躍する先輩社員の話を聞くことで、自身のキャリアを検討する要素にしてほしいという思いを込めて機会を設定しました。
ーメンター制度も毎年採用されているんですね。
林:はい、毎年メンターには協力してもらっています。年次が一番上の社員で入社7年目と、比較的新人社員と年が近く相談しやすい人材を、できるだけ偏りがないようさまざまな部門から選出しています。研修事務局は、我々とメンターをひとつのチームとして定義しており、日々情報共有や相談をしながら共に研修をより良くするために活動しています。
メンターの具体的な活動内容としては、新人社員からの質問への対応や、研修の企画・オペレーションのサポートなどが含まれます。メンター制度を通して、メンター自身にも1つの短期プロジェクトを遂行し、成長できるポジティブな影響があれば良いなと期待しているところです。
牧野:とはいえ、所属するチームでの通常業務もありつつ、研修中は全面的に協力してもらっているため、相当大変だと思いますね。本当に感謝しています。
補足するとグループIT本部のメンター制度では、マンツーマンではなく、グループ対グループでサポートしてもらっているのが珍しいかもしれません。5人の新人社員に対して5人のメンターという具合に、です。
複数人と関わることで視点を広げ、さまざまな人材と関わってもらいたいという意図でこの形をとっています。いろいろな人からオープンに話を聞きたい時にも、個別で踏み込んだ話をしたい時にも対応できる仕組みになっているのがポイントです。
ー八木澤さんは新人社員として、メンターとどのような関わりを持たれていたのでしょうか?
八木澤:メンターには、今思い返しても本当にガッツリお世話になりました。朝会、夕会として日々声をかけてくださったほか、別で時間をとって面談してもらうこともありました。研修で不明点が出てきたら個別で指導してもらったり、配属先選びの相談に乗ってもらったりすることもありましたね。
研修期間中のみならず、配属後もメンターがサポートしてくださるのですが、1年目の集大成となる成果発表会の準備は特にお世話になりました。メンターのみならず、室長も毎週1 on 1を設けてくれたため、何度も練習を重ねることができましたね。
また、初めて話す先輩の人となりについては、メンターに丁寧に教えていただきました。もともとグループIT本部では、ざっくばらんに本部内の人材がワイワイ、ガヤガヤと話しながら交流する「ワイガヤ」と呼ばれるイベントが定期的に開催されています。「ワイガヤ」で同じグループになるメンバーは事前に把握できるため、先輩との会話の引き出しをたくさん用意するべくメンターから情報をいただいたりしていましたね。
実務研修で学びを自分ごと化、会社への理解を深めて配属希望へ
ー何度か実務研修が話に上がりましたが、どのような取り組みなのでしょうか?
牧野:グループIT本部の組織構成は、本部内に部があり、そのなかに室があり、さらに室が複数のチームを抱えている構成です。新人社員は少人数で複数の班に分かれ、約3週間かけて2〜3日ずつ各チームを回り、実際の業務を体験するというコンテンツです。机上だけではわからないことを、実際の仕事を体験することで「このチームではこういう人がこんな仕事をしているんだ」という理解を深めてもらいたいという意図があります。
林:2023年度は7チームで新人社員を受け入れてもらいました。各チームで研修内容はさまざまですが、チームで行っている仕事内容やサービスの説明、あとは実際にプロジェクトの打ち合わせに参加できることもあります。チームによっては、独自にワークショップを組んでくれるところもありますね。
ー八木澤さんも、実務研修は印象に残っていますか?
八木澤:私自身も一番印象に残っているのはやはり実務研修です。少人数で研修に挑めたので、一層先輩方との距離が近く、気兼ねなく聞きたいことを質問できた時間でした。
グループIT本部は約150人もいる組織で、扱っている業務は本当に幅広く、かつパーソルグループ全体のインフラやサービスの根幹を支える仕事がほとんどです。……ということは座学でもちろん説明を受けたものの、実務体験を通して改めて実感が湧いたのが正直なところでした。
ーこういった研修を経て、新人社員の皆さんが配属先へと羽ばたいていくわけですね。配属先希望はどの程度叶うものなのでしょうか?
牧野:グループIT本部では、全室が新人社員の配属対象になるわけではなく、毎年あらかじめ配属先候補をいくつか選定しています。新人社員はそのなかから、第一から第三希望まで配属希望を出すことが可能です。限られた選択肢ではあるものの自身で選択できる環境にあるので、配属後のミスマッチは減ってくるのかなと思います。
最終目的は新人社員それぞれを適切な配属先へ導くことなので、できる限り本人の希望に沿った配属先を決定するようにしています。適正を鑑み、最終的には配属先の部長陣が決定するのですが、新人社員同士で希望が被らないかぎりは基本的に第一希望に配属となります。
ー八木澤さんも希望通りの配属になりましたか?
八木澤:私も今所属しているクラウド推進室を当初から希望していましたし、私の同期たちも全員希望通りに配属されました。配属希望を提出する前に実務研修で具体的な業務が体験できるので、今振り返るととてもありがたかったと感じます。
反省と改善を繰り返し、本部一丸となって優秀な人材を育てていく
ーずばり、毎年優秀な新人社員が育つのはなぜだと思われますか?
林:私たちの企画する新人社員研修では、あくまで基礎体力をつけるのが目的です。だから、一番は本人たちの努力の賜物、あとは現場で指導する上長や先輩方の力だと思います。チャレンジすることを応援するカルチャーもグループIT本部らしさではないでしょうか。
牧野:そうですね。パーソルホールディングスの特徴として、2年目くらいからはある程度規模感が大きなプロジェクトや責任感が伴う仕事を担当する人材が多いと感じます。先輩たちのフォローはありつつも、本人たちが主体的にやろうとしていることが自己成長につながっているのではないでしょうか。
ー最後に、来年度の研修に向けての課題感や取り組んでいきたいことについて教えてください。
牧野:必要な知識や技術を習得してもらうのが第一なのは大前提で、新人社員はそれぞれに個性もやりたいこともさまざまなので、最適な配属先へ導くサポートを、我々だけでなく本部全体でこれからも引き続きやっていきたいと思います。
全体を通して、本部の皆さんは本当に協力的で、新人社員研修企画段階から無事に終えるまでの各段階でさまざまな意見とアドバイスをもらいます。もちろん新人社員に対しても研修プログラムごとにアンケートをとっていて、率直な感想をもとに評価の良いものは継承し、芳しくないものは次年度に改善する、そういう流れを作ってこれからも進めていきたいと思います。
林:情報を自らたくさん収集できる時代です。その分自分で選択して正解を出さなければならないと、プレッシャーに感じる新人社員も多いと今年の研修を終えて学びました。来年に向けては、新人社員それぞれの特性に合わせて、失敗を遠慮しないよう、そういった観点でのフォローもできればと思っています。
八木澤:これから私は、新人の実務研修を受け入れる立場になります。私のように初めて受け入れを行う身からすると、過去の実務研修の成功あるいは失敗事例などが共有できていたり、簡単なマニュアルのようなものがあったりするとより良いものにできるのではないかと考えます。年々プログラムをアップデートしてくれているので、こういった部分も本部全体で協力し合って充実した内容にできればと思います。
取材・文=ファーストブリッジ 宮口佑香
(2023年10月時点の情報です。)
- 牧野貴志Takashi Makino
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 IT企画部
サービス統括室
サービスマネジメントオフィス
シニアコンサルタント
- 2021年、パーソルホールディングスへ入社。ITガバナンス部でITアセスメント業務を担当。前職にて新卒採用や育成に携わった経験から、現在は、IT企画部でグループIT本部の人材育成業務を担っている。
- 林玉梅Yume Lin
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 IT企画部
サービス統括室
サービスマネジメントオフィス
シニアコンサルタント
- 2022年にパーソルホールディングに入社。前職でITコンサルティング企業の新卒採用業務の経験があり、現在はIT企画部でグループIT本部の人材育成業務を担っている。
- 八木澤琢海Takumi Yagisawa
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ビジネスコアインフラ部
クラウド推進室
C-MAC基盤チーム
- 2022年、パーソルホールディングスへ新卒入社。クラウド推進室のC-MAC(Co-Managed AWS Cloud)開発チームにて基盤の機能改善・開発業務に従事。2022年度新人成果発表会「Step」にて「飛躍賞」を受賞。