STRATEGY
【前編】パーソルクロステクノロジーで未来を担うエンジニアと向き合う―はたらき方やマインドの変革から日本を元気に
ものづくり・IT・研究開発など多様な領域における技術課題の解決を担うパーソルクロステクノロジーは、2023年10月にセキュリティ本部を新設しました。同本部にはサイバーセキュリティ領域に高い専門性を持つエンジニアが多数在籍し、SOC運用やアプライアンス導入、セキュリティの脆弱性診断、セキュリティ組織支援などのサービスを通じて、お客さまのセキュリティ課題解決をサポートしています。
今回は、そんなセキュリティ本部をリードする本部長の大隈とITSEC部 部長の佐藤にインタビュー。立ち上げの背景から、現在の取り組み、そしてパーソルクロステクノロジーがセキュリティ領域を通じて実現しようとする未来像まで、詳しく話を聞きました。
―前半は、お二人がセキュリティ事業を手がけるに至るまでの変遷について伺います。まずお二人のこれまでのご経歴からお聞かせいただけますか。
佐藤:会計パッケージメーカーに新卒入社した後、ソフトハウスやシステム開発会社などを経て、2008年にパーソルクロステクノロジー(旧テンプスタッフ・テクノロジー)に入社しました。
システムエンジニアとしての派遣・委託請負や、技術職のマネジメントを経験し、その後、セキュリティ領域の派遣事業に注力していくことが全社の方針として掲げられたことを機に、その推進役としてセキュリティ領域へ。以来セキュリティ部門の責任者として、コンサルティングサービスの提供やセキュリティ事業計画の立案・推進などを手がけてきました。
大隈:私は大学卒業後に異業種を2年ほど経験した後キャリアチェンジし、コールセンターでの業務やマネジメントを経て、2004年にパーソルプロセス&テクノロジー(旧ECサーブテクノロジー)に入社しました。
十数年にわたってICTアウトソーシング事業に携わり、その後2017年にはセキュリティ事業の立ち上げを任され、以来事業運営や拡大に取り組んできました。2023年10月からパーソルクロステクノロジーのセキュリティ本部も管掌することになり、現在は二つの会社で事業責任者を務めています。
―どのような背景から、セキュリティ領域でお仕事をされるに至ったのでしょうか。
大隈:私は、セキュリティ事業の立ち上げを任されるまで、この領域との接点や知見などはありませんでした。
当時、ICTアウトソーシング事業でマネジメントを担う中で、「社員をより輝かせるために、今後どの領域にビジネスを拡大すべきか」を上長とともに検討していて。社員の市場価値を高めるには、新しいこと、今後世の中でより必要とされるであろうものをやるべきだと考え、セキュリティに思い至ったのがきっかけです。誰もやったことがない領域でしたが、挑戦するしかないだろうと、私が着任することになりました。
佐藤:「セキュリティ領域の推進にチャレンジしないか」とお声がけいただいたのがきっかけです。エンジニア時代にウイルス感染の事例をさまざま見てきたことを思い起こし、また前提知識として情報セキュリティマネジメント試験受験やセキュリティ市場動向の情報収集などを行う中で、全体像が掴めてきてやってみようと決断しました。
ITエンジニアが不足していると言われ、中でもセキュリティ領域のエンジニアは特に希少な存在ですから、事業としてしっかりと育てていくことでお客さまに高い価値を提供できるだろうと、そんな感覚での挑戦でしたね。
―お二人が現在所属される「セキュリティ本部」が立ち上がった背景についても教えてください。
佐藤:パーソルクロステクノロジーは、IT・機械電気領域の派遣に注力してきたパーソルテクノロジースタッフ社(旧テンプスタッフ・テクノロジー)と、機械電子領域の委託請負を主に手がけるパーソルR&D社、そしてパーソルプロフェッショナルアウトソーシング株式会社が合併して生まれた会社です。
この合併で各社の手がける領域を“かけ合わせ”、総合ソリューションとして展開していくという考えが根底にあり、このかけ合わせ=クロス事業として、現在「IT×機械電子×〇〇」の新たな技術領域を作ろうと取り組んでいます。
そして、その象徴的なものの一つがセキュリティ領域であり、“ITと機械電子の技術者が同じ組織でセキュリティ領域に取り組む”事業を作るべく、セキュリティ本部が新設されました。
大隈:IoTのようなモデルが出て、車もインターネットに繋がって走るような時代において、今後さらにセキュリティのニーズが高まっていくだろうと。そうした状況を背景に、パーソルクロステクノロジーの中でIT×機械電子とのかけ合わせでセキュリティ領域を突出したものにし、日本のセキュリティ課題にアプローチしていきたいという意思を持っています。
―改めて、セキュリティ本部が手がける事業内容について詳しく教えてください。
佐藤:次の4つのサービスを中心に、お客さまのセキュリティ課題の解決をご支援しています。
領域としては、パーソルテクノロジースタッフが主軸としてきた「情報セキュリティ」と、製造業などにおいてプロセスや装置を制御・監視するシステムのセキュリティを指す「OT(Operational Technology)セキュリティ」、そして自動車にまつわる物理的なセキュリティとインターネット接続を前提としたセキュリティに対応する「車載セキュリティ」の3つを主に扱います。
―この事業の主な特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
大隈:まず、「アウトソーシング」の考え方でご支援を行うという点です。技術派遣として労働力をご提供するのではなく、お客さまの会社の中に入って課題や求められているものを見極め、それに対する問題提起やご提案を行いながら、チームで解決していくサービスでありたいと思っています。
佐藤:もう一つは、上流から下流まで一気通貫のサービスであることです。「製品を入れて終わり」「企画提案はするけれど実装はできない」ではなく、現実的で詳細な企画やご提案を行うコンサルティングから、実装、運用まですべてを担える存在になりたいと考えています。
大隈:「セキュリティはコストだ」という考えもしばしば聞かれますし、また情報システム部門は現場のユーザーと向き合ってシステムを運用するのに手一杯で、「セキュリティについて考えてこられなかった」というケースも多くありますから。そもそもセキュリティはどうやって進めたらよいのか、という根本的な部分から私たちが一緒に入って考えていきたいですね。
―そうしたサービスを提供するにあたって、パーソルクロステクノロジーとしてどのような点が強みになるとお考えですか?
大隈:一つの企業体の中に、機械電子領域のエンジニアとITエンジニアが数千名規模で在籍し、車作りと情報セキュリティにまつわる豊富なノウハウが蓄積されているという点が、強みの一つになり得ると考えています。
佐藤:分社化して互いに行き来しながら一つの事業を作っていくのが一般的な中で、一社ですべて手がけるというのはユニークですよね。この強みを、さらにパーソルグループの持つ大規模な人材ネットワークとかけ合わせて、お客さまへの価値に還元していければと思います。
―このセキュリティ事業はどのような組織体制で運営されているのでしょうか。
佐藤:現在は、情報セキュリティを扱う技術者と、育成を始めたOTセキュリティを扱う技術者が在籍しています。
―「IT×機械電子×セキュリティ」の知見を深めていくために、どのような教育や組織作りの取り組みを行われていますか?
佐藤:現在は、機械電子の技術者に対するセキュリティの教育について、PoCを行っています。オンラインでレクチャーを受けて「理解できた/できなかった」「もう少しレベルを上げるべき/下げるべき」などのフィードバックをしてもらい、それをもとに教育の内容やレベル感の微調整を進めていく予定です。
また現在情報セキュリティ領域においては、例えば脆弱性診断をずっと同じメンバーが担当するなど偏りが生まれつつあるため、組織内でのスキルトランスファーにも挑戦し、一人ひとりの知見の幅を広げていきたいと思っています。
―セキュリティ本部としての、今後の展望をお聞かせください。
大隈:お客さまの最も大きな課題の一つは、“作ったものや組織を維持、運用していくこと”ではないかと思いますが、広く世の中を見渡すと、人材不足や収益性などの観点から、ここに支援の手が及んでいないケースが多く見られます。この“ラストワンマイル”を埋められる存在に、私たちがなっていきたいと考えています。
常駐のアウトソーシングというパーソルクロステクノロジーならではの強みを活かして、上流から下流まで一気通貫で手がけ、業界を牽引する立場を目指していきたいですね。
―このサービスを通して、今後お客さまにどのような価値を提供していこうとお考えですか?
大隈:私たちがお客さまの守りたい情報資産を特定し、それを守るためのツールや仕組みをすばやくご提案することで、お客さまはセキュリティの進め方を考えるのに時間をかけずに済む。適切な対策の実装と運用によって、セキュリティ事故でお客さまの事業や生産が止まってしまったり、信頼が損なわれたり、復旧や対応に多くのリソースが必要になったりするのを防ぐ……こういった観点で、“生産性の低下を防ぎ、維持・向上できるような基盤”をご提供していきたいと考えています。
対策に少しでも隙が生まれるとすぐに事故が起きかねませんから、「セキュリティはコストではなく必要経費だ」と思って投資していただけるような提案をしていかなければと思います。
―最後に、このセキュリティ事業を強化していく中で、パーソルグループに対してどのような影響を与えていきたいと思われますか? お二人の思いを聞かせてください。
佐藤:セキュリティはなくてはならない“保険”のようなものだと思いますから、パーソルグループの一員という意識のもと、「ONE PERSOLで取り組んでいます」と外に向けて発信できるような組織体でありたいと思っています。
その過程で、さまざまな情報を得て方針を形づくるパーソルホールディングスと、その声を受けて現場で取り組むグループ各社の担当者のギャップを解消して両者を繋いでいくような、ここでも“ラストワンマイル”を担う存在にパーソルクロステクノロジーがなっていければと思います。
大隈:私たちが培ってきた育成ノウハウやナレッジをパーソルグループが手がけるサービスの利用者の方々にもご提供して、みなさんがご自身の市場価値を高めること、幸せになることに貢献したいなと。それが、人々の“はたらく”に影響を与えることを生業としている パーソルグループでこの事業を推進する意義であり、価値なのではないかなと思います。
―ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年3月時点の情報です。)