• HOME
  • CONTENTS
  • 【前編】CoEの1年を振り返って―パーソルテンプスタッフとの協業スタートまでの裏側

【前編】CoEの1年を振り返って―パーソルテンプスタッフとの協業スタートまでの裏側

パーソルグループでは、2023年4月に“テクノロジー人材・組織の進化”のテーマのもとパーソルホールディングス内に「CoE(Center of Excellence)」を立ち上げ、事業やサービスにおけるテクノロジーの実装・活用を強化するべく、グループ各社への技術支援を進めています。

今回は、パーソルホールディングスのCIO/CDOとしてグループのテクノロジー戦略を担う柘植、パーソルホールディングスのCoE戦略の実行をけん引する中桐、CoEが重点的に支援を行ったパーソルテンプスタッフのデジタル推進担当である藻谷に話を聞きました。

前編となる本記事では、パーソルテンプスタッフ×パーソルホールディングスのCoEプロジェクトが始動に至る、協業の土台づくりの過程に迫ります。

パーソルグループのテクノロジー活用推進に向けた“戦略的ITリソース”

―まずは、改めてCoEの概要からご紹介いただけますか。

中桐:CoEは、多様な専門性やバックグラウンドを持つテクノロジー人材による組織で、パーソルグループの“戦略的ITリソース”という位置付けになります。

現在パーソルグループではテクノロジー活用を推進するべく、国内35社を超えるグループ会社がそれぞれに戦略を掲げて多様な施策に取り組んでいます。(2024年6月時点)

その中で、グループとしての広い視点で見た際に特に注力すべき事業領域や施策において、優先的にテクノロジーリソースを活用し、私たちパーソルグループにとって重要なデジタル化を実現するために、各事業や施策に入り込んで技術支援を行うことがCoEの主な役割です。

―CoE戦略を形にしていくにあたり、どのような経緯で中桐さんが実行組織のリーダーを担われるに至ったのでしょうか。

柘植:立ち上げ時、採用や異動によってCoEの組織規模を急速に拡張していく計画でした。その過程では、業界や経験がさまざまな人材を受け入れ、評価し、モチベーションを維持していくという大きな苦労があると考えられます。そうした中でも、中桐さんならしっかりと人と組織を育んでくれるだろうという信頼から、リーダーをお願いするに至りました。

また、中桐さんから以前より「事業に触れたい」という思いを聞いていたことも決め手の一つです。パーソルホールディングスの中では主に社内システムに携わるキャリアを築いてきた中桐さんが、事業での経験を積むことで、“社内IT”と“事業IT”の両方が分かる人材になることへの期待がありましたね。

中桐:2020年に入社して以来、COVID-19対応や、EOLを迎えたシステムのリニューアルなどに追われてなかなか事業に直接的に携われずにいたため、このお話をありがたく受け止めました。事業の知見や経験がない自分にできるだろうかと不安もありましたが、せっかく人材サービスを事業の柱とする企業に入ったからには前向きにチャレンジしよう、と思ったことを覚えています。

―CoEの始動に際して、中桐さんが持たれていた課題意識などがあれば教えてください。

中桐:CoEという初めての取り組みにおいて、「グループ会社の皆さんとどう距離を近づけていくか」「いかに一体となってプロジェクトを進めていくか」が特に課題となる部分だろうと感じていました。

またコンセプトとして「ITコンサルティングやエンジニアリングだけでなく、IT企画やデータサイエンスなどさまざまな武器を持ったメンバーを揃え、幅広い取り組みによってデジタル化を進める」ことを描いているものの、その実現に向けた細かな道筋は当初まだ見えておらず…そこは走りながら作っていくイメージでスタートを切った感覚です。

CoEのサポートで新たなことに挑戦できる“期待”と、事業理解の難しさへの“不安”

―ここからは、パーソルテンプスタッフのデジタル推進の責任者を務める藻谷さんも交えて、パーソルテンプスタッフ×CoEの協業についてお話を伺っていきます。まず、CoEがパーソルテンプスタッフへの技術支援に注力されている背景を教えてください。

中桐:Staffing SBU*の中核会社であるパーソルテンプスタッフは、事業規模の大きさからテクノロジー活用による変革のポテンシャルが高く、それに伴って必要となるテクノロジー人材や投資の規模が最も大きい存在でもあります。

そんなパーソルテンプスタッフに重点的に技術支援を行うことで、グループの基幹事業の一つである人材派遣事業を伸ばしていきたいという思いで取り組みを進めています。

*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

―CoEとの協業が決まって、藻谷さんとしては率直にどのような印象を持たれましたか?

藻谷:派遣事業の構造やプロセスは非常に複雑ですから、技術支援という形で来てもらってすぐに事業を理解してもらえるだろうか、といった不安要素は正直多々ありました。

ただ、事業規模が大きい分、法対応をはじめとして日常的にやるべきことも多く、テクノロジー活用に向けて新たな一歩を踏み出すことの難しさを感じていましたから、CoEの皆さんに支援してもらうことで新しいことにチャレンジしていける、という期待も非常に大きかったですね。

―取り組みはどのように進められたのでしょうか。

中桐:まずは「どのような人材にどのようなポジションで活躍してもらうのか」といった企画、組織づくりをしてから、実際にCoEのメンバーが事業メンバーとのミーティングなどにも参加し、そこからさらに準備を経て具体的なプロジェクトが始動していったという流れです。

事業を見つめる視点と、パーソルグループ全体を見通す視点のすり合わせ

―企画・組織づくりのフェーズにおいて、特に難しさを感じられた点などはありますか?

藻谷:「こんなスキルを持った方々にサポートしてもらえるんだ」という嬉しい驚きがあった一方、一度にこれだけ多くの方を採用してアサインするという経験が私たちにはありませんから、一つひとつ慎重に検討し調整していかなければならない難しさがありました。

中でも特に難しさを感じたのは、“視点の違い”でしょうか。事業を見てその延長線上で「このプロジェクトでリソースを必要としている」「先のことを考えると、このプロジェクトを経験してもらいたい」と考える私たちに対し、中桐さんはグループ全体や未来を見据えた考えを持っています。そういった中桐さんの視点に刺激も受けながら、お互いに苦労しつつ両者の考えを少しずつすり合わせていった感覚ですが、中桐さんとしてはいかがですか?

中桐:そうですね。事業目線で直近のニーズがないと思われるところに、「もう少し先を見て、新しい価値を生むためにこんな人材を入れませんか」と提案することもありましたよね。その背景には、藻谷さんの言う通りCoEとして描く戦略や思惑があり、またスピード感を持って始動するためにすでにCoEの採用を進めているという事情もあって。

とはいえ最初はなかなかうまくニーズと提案が噛み合わず、パーソルテンプスタッフの立場からの考えに難しさを感じることもあったなと振り返ります。

柘植:たとえ将来を見据えて必要なことだと両者の思いが一致しても、パーソルテンプスタッフの皆さんの立場に立って考えると「どんな人が来てくれるか分からないから、まずは協業しやすいところからステップを踏んでいきたい」という思いもあったはずですから。そういったところで、初めての取り組みだからこその葛藤も生じたのだと思います。

―そういった初期の難しさをどのように乗り越えていかれたのでしょうか。

中桐:泥臭い話ですが、藻谷さんや現場の本部長の皆さんと非常に密に連携をとって、何度も何度も提案と対話を重ねてきました。「パーソルテンプスタッフを良くしたい」という思いは、私たちもパーソルテンプスタッフの皆さんもきっと同じですから。ただその登り方に一つの正解がある訳ではないので、「こうやっていきたい」「こうすることでもっと成果が出るのでは」と対話することが大切だったのかなと。

藻谷:対話の中で事業のことも知ってもらって、CoEの皆さんのことも知って、少しずつ相互理解が深まっていきましたね。

中桐:そういった理解が進む中で、「皆さんに受け入れられやすく成果を出していける人材とは?」と改めて求める人材像を見直したり、「この領域はリソースが不足しているし成果も出そうだから採用強化を」「このフェーズはエンジニアの採用を抑えよう」など新たに方針を立てたりと、並行してCoEの組織づくりの方向性をアジャストしていけた感触もあります。

―中桐さん、藻谷さんともに挙げられていた「事業理解」の懸念については、どのような対策を考えられたのでしょうか?

中桐:派遣事業についての勉強会をパーソルホールディングスが主体となって実施するなど、事業理解を深めるための活動をCoE内で行いました。小さな活動ではありますが、少しでも自分たちのレベルを高めて信頼を得られるように、少しでも力になれるように、という思いで積み重ねていましたね。

―対話や工夫を重ねて少しずつ土台を築きながら、協業がスタートしていったのですね。後編では、パーソルテンプスタッフ×CoE組織で実際に取り組んだプロジェクトについて詳しくお聞きします。

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年6月時点の情報です。)

柘植悠太Yuta Tsuge
パーソルホールディングス株式会社
執行役員 CIO/CDO
2006年同志社大学を卒業、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に新卒入社。法人営業を経て、事業企画部門にて人材紹介、dodaなどの主要事業の事業戦略を担当。その後、事業におけるデザイン活用・デジタル技術活用に積極的に取り組み、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの三位一体で事業開発に臨む新鋭的な組織編成に注力。時代に先駆けた体制で既存事業・新規事業の開発に挑む。現在はホールディングスで執行役員CIO/CDOとして、グループ経営およびグループ全体のIT/デジタル化の推進を担当。
藻谷裕二Yuji Motani
パーソルテンプスタッフ株式会社
執行役員 機能管掌(デジタル管掌)
2001年4月テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)入社。人材サービスの法人向け営業部門にて、マネージャー、部長を歴任。2018年4月より第一営業本部本部長、2020年4月より執行役員に就任。2023年4月より現職。
中桐亮Ryo Nakagiri
パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部
データソリューション部/デジタル推進部/デジタル開発部 部長
2006年ベネッセコーポレーション入社。BtoC通信教育を支える販売管理システムやマーケティングシステムの責任者、顧客データ分析のための分散処理技術を用いたデータ基盤開発PMなどを経て、2020年よりパーソルホールディングスに入社。コロナ禍でのデジタル化推進やコーポレートシステムの刷新企画プロジェクトに従事。グループ全体の基幹システム管掌部門・部門長を経て、2022年より現職。テクノロジードリブンな人材企業を目指してグループ各社のDXやデータ利活用を推進。

―― 合わせて読みたい記事

CoEをけん引するマネジメント層から見た、CoE初年度の成果と今後の展望

CoEの魅力は、パーソルグループの変革の最前線に携われること

クラウドシフトの加速を目指し、パーソルホールディングスとパーソルテンプスタッフがともに取り組む「インフラCoE」 

参加者1,500人越え!パーソルグループの生成AI活用を推進し、「PERSOL生成AIマスター」輩出を目指す研修・イベントとは?

ページの先頭へ