業務とテクノロジーのコンサルティングで、はたらく体験を変える―パーソルワークスイッチコンサルティングが描くビジョン
「パーソルグループの人と組織の課題解決力を活かし、業務とテクノロジーコンサルティングではたらき方を転換する」のミッションのもと、顧客企業の“はたらき方”の変革を支援するパーソルワークスイッチコンサルティング。
今回は、アウトソーシング事業の責任者時代にビジネスコンサルティング事業を立ち上げ、現在はパーソルグループ初のコンサルティングカンパニーである同社 代表取締役を務める小野にインタビュー。パーソルワークスイッチコンサルティングのミッションの実現に向けて、事業や、事業の中で活用されるテクノロジーについて話を聞きました。
ITとコンサルティングの領域で多様な役割を経験
―まずは、小野さんのこれまでのご経歴から聞かせていただけますか。
ファーストキャリアは通信建設会社で、通信機器の設置工事現場における監督業務や、社内の情報システム部門の立ち上げ、現場業務の改善活動などを経験しました。ここでデータベースの考え方や図面の書き方など技術的な基礎を身につけた後、知人とともに起業したコンサルティング会社でのプロジェクトマネジメント業務の経験を経て、2004年にインテリジェンス(現・パーソルキャリア)にジョインしたという流れです。
―起業を決断されたきっかけとはどのようなものでしたか?
2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件によって世界の経済活動が大きく揺らぐ中、「それまで自分は日本のこと、会社のこと、通信機器のことしか知らなかった」と気付かされたのがきっかけです。一挙に視野が広がった思いで、それまで扱っていた通信の技術の世界から、そして当時身を置いていた良くも悪くも“先の見えている”環境から、新しいモノづくりの世界に飛び出してみようと決断しました。
携帯電話の開発プロジェクトに携わり、日本のメーカーとアメリカの開発拠点、マーケットである中国や台湾といった各拠点を繋いでプロジェクトを推進するという、それまでにない新しい経験ができた時間でしたね。
―その後転職を考えられ、次の活躍の場としてインテリジェンスを選ばれたのはなぜですか?
シリコンバレーでApple IIIの開発者であるウェンデル・サンダー博士に出会い、彼の技術力や、技術を突き詰め続ける姿勢に衝撃を受けて挫折を味わったことが、転換点だったと思います。プラスチックや基板、チップ、ソフト…といったあらゆるものを理解しなければいけない携帯電話開発の領域で、技術のプロとして専門性を磨くことは難しいと思い知らされた感覚でしたね。
そこからは、ITとコンサルティングにまつわる経験を活かせる仕事をと、IT企業を中心に新しいキャリアを模索し、インテリジェンスは複数内定をいただいた中の一社でした。
その他の会社はどこも事業や業務の概要が想像できたのに対し、インテリジェンスは「人材サービスの会社がITをやろうとしている」という点で当時の自分にとっては未知数だなと。よく分からないからこその面白みや、まだやり方が固まっていない中で自分がやりたいことができるのではないかという期待を感じたことが、入社の決め手になりました。
―パーソルグループでは、どのような経験をされてきたのでしょうか。現在のお役割に至るまでの変遷を教えてください。
インテリジェンスのITソリューション事業部にジョインし、プロジェクトマネジメントを中心に4年ほど現場で奔走した後、パーソルプロセス&テクノロジー(現:パーソルビジネスプロセスデザイン)のアウトソーシング事業の責任者を経て、社内での新規事業の立ち上げを担当しました。このビジネスコンサルティング事業を伸ばして後に分社化したのが現在のパーソルワークスイッチコンサルティングで、今は同社で代表取締役社長を務めています。
“現場の痛み”がわかるからこそできるご支援を
―改めて、パーソルワークスイッチコンサルティングについて概要をお聞かせください。
私たちは、“はたらき方を変える”ことを目的として存在する会社です。主に、企業のBPRを支援する「業務コンサルティング」と、AIやAutomation技術などを活用した「テクノロジーコンサルティング」の二つを手がけています。
―新規事業の立ち上げを任された小野さんは、どのような背景からこの“はたらき方の変革”というテーマに着目されたのでしょうか。
2008年のリーマンショックや、その後のインテリジェンスとテンプホールディングスの経営統合などによって会社や経営の状況が大きく変化し、当時私が管掌していたアウトソーシング部門でも事業価値を高めるためのターンアラウンドが喫緊の課題になりました。
このとき特に力を注いだのが、はたらく環境を改善し、より健全なはたらき方を作っていくこと。生活の一部である“はたらく”とは何かから改めてしっかり考えよう、という視点や取り組みが、今のパーソルワークスイッチコンサルティングの原点になっています。
―パーソルワークスイッチコンサルティングとして掲げる、長期的なビジョンについてお聞かせいただけますか。
私たちは2028年に向けた長期ビジョンとして、「“はたらき方の転換”によって“はたらくWell-being”を創造する唯一のコンサルティング会社」を掲げています。
業務コンサルティングを受けても、良いシステムを導入しても、そこではたらいている方々にとって環境や体験が良いものにならなければ意味はありません。この前提に立ち、利益率の向上やシステム導入などをゴールとするのではなく、“はたらき方をより良くする”ことに主眼を置いてお客さまをご支援していきたい、という思いをビジョンに込めました。
そうしたご支援によって、労働人口の減少や生産性の低下など、今の日本が抱える課題を解決していきたいと考えています。
―どのようにビジョンを実現していこうとお考えですか? 描いている戦略について教えてください。
“はたらき方の転換”の実現に導くビジネスモデルとして次の6つを設定しており、これらを通じて、はたらく方々に直接関係するルール・制度、ガバナンス、業務システムなどをより良くすることに取り組んでいきます。
- ナビゲーション:世の中に“はたらくWell-being”を広め、業務やテクノロジー、組織開発におけるスタンダードを提言する
- 業務・テクノロジーコンサルティング:テクノロジーを用いたコンサルティングで業務を変革する
- リセール:先進的でお客様の業務にフィットするAI・オートメーションプラットフォームやERP製品群などを販売する
- ソリューション:AI・オートメーションプラットフォームやERP製品群などを開発・導入する
- 組織開発コンサルティング:リスキリングや最適配置などによる組織づくりを支援する
- 内製化支援・アウトソーシング:はたらく方々への教育による内製化支援、パーソルグループのサービスを活用したアウトソーシングなどを推進する
―どのような体制でこの長期的なビジョンを実現しようと考えていますか?現在の組織体制について教えてください。
現在は、お客さまのニーズに合わせて幅広くご支援を行う「コンサルティング」と、技術開発を手がける「ソリューション」という二つの役割の組織があります。
ソリューション側からコンサルティング側へ「こんな技術が新たに出てきた」「この技術についてPoCをやってみた」とフィードバックや教育を行うなど、両組織で連携しながらお客さまへの支援を行っています。
常に好奇心を持って、技術のキャッチアップや実装に取り組み続ける
―お客さまへの支援のあり方の前提として「テクノロジー活用」が挙げられていますが、このテクノロジー活用についてはどのような構想を持たれていますか。
まず前提として、どのような領域でもテクノロジーは必要不可欠なものだと捉えており、常に好奇心を持ってソリューションの進化をキャッチアップし、最新の技術をご提供できるよう取り組み続けていくことを重視しています。
技術的な知見をふまえて「最近これが出てきました」「このソリューションはいいですよ」とレコメンドさせていただくことはありますが、基本的な姿勢としては「絶対にこれがいい」というものはなく、それぞれのお客さまごとに適したものがあるというフラットな視点で、“そのお客さまにとって一番良いもの”をご提供していきます。
―特に注力していきたい領域があれば教えてください。
やはり生成AIについては特に注力しており、現在は技術開発やPoCを進めている段階です。その過程では、多くのAIエンジニアを擁する外部のパートナーさんとアライアンスを組んでおり、「日本で活用するならこういうものを作った方がいいのでは」などと議論を交わしながら、ともにマーケットやプロダクトを作っていくという姿勢で取り組んでいます。
―そうしたテクノロジーをどのように活用して、“はたらき方の転換”に繋げていこうとお考えですか?
導入のスタンスとしてはカスタマイズで作り込むよりも「Fit to Standard」で、ルールやプロセスを柔軟に変えながら、テクノロジー活用の目的である“生産性向上”を実現していきます。
また基本はあるべき姿を描いてソリューションをご提案していきますが、例えば組織規模の大きなお客さまにとっては、システムを入れ替えることは簡単ではありません。そのため、「既存のシステムをどうすれば上手く使えるか」という視点も併せ持ち、既存システムの上にある従業員が触れる部分をより良いものにするというアプローチも行っていきたいと考えています。
―パーソルワークスイッチコンサルティングならではの強みは、どのようなところにあるとお考えですか?
大きな強みは、私たちがパーソルグループの一員であることです。人や組織の課題解決にさまざまな形で取り組むグループ各社の知見やサービスを活かすことができますし、お客さまが「日本企業らしい風土や慣習を理解したコンサルティングを行ってくれるのでは」と安心して任せてくださっているという点で、グループとして国内でしっかりと認知いただけていることが魅力の一つになり得ていると実感しています。
自信を持ってお届けするサービスを、より多くのはたらく方々に体験してもらいたい
―お聞きしてきた戦略や方針のもと ビジョン実現に向けて取り組んでいくにあたり、課題だと捉えられていることはありますか?
人材不足がさまざまな企業にとって経営課題となる中、従業員の皆さんの“はたらく体験や環境”を重視する考えは徐々に広まりつつあるものの、まだ過渡期にあると捉えています。今後も引き続きその重要性を提言しながら、より多くの経営者の方々に私たちの提供価値をご理解いただける状況を作っていきたいところです。
また、私たちが自信を持ってお届けするサービスの価値を、客観化していくことも一つの課題です。サーベイを通じて「“はたらき方の転換”を私たちがどれだけ実現できているのか」「コンサルティングを受けて本当に“はたらく”が変わったのか」を従業員の皆さんに問い、スコアとして可視化していきたいなと。そしてそういった情報を起点に、より多くのお客様に私たちのサービスを体験していただけるようになればと思います。
―今後どのような組織を作り、どのようにお客さまに価値をご提供していきたいですか?事業を率いる小野さんとしての思いをお聞かせください。
私たちの手がけるご支援は、理想の絵だけを描いてその実行をお客さまにお任せするものでも、言われた通りのものを作ってただ納品して終わるものでもありません。
「どんなシステムを作りましょうか」という対話から、その実現まですべてを手がける。だからこそ、現場で変革を形にしてその後運用していく過程にある、“現場ではたらく人の痛み”が分かる。そんな現場の痛みが分かるからこそできるご支援を、お届けし続けたいと思っています。
またそういった価値をお客さまにご提供するために、組織を変革できなくなったらマネジメントを担う立場を退くべきだという覚悟で、私たちの組織の変革にも取り組み続けていきたいと思います。
―最後に、パーソルワークスイッチコンサルティングとしてパーソルグループにどのような影響を与えていきたいか、今後の展望をお聞かせください。
パーソルグループの社員であっても、パーソルグループにビジネスコンサルティング機能があるということを知らない方々もまだまだ多いので、まずはグループ内でのプレゼンスを高めていきたいと思っています。その先で、グループ各社のケイパビリティを広げるために、うまく私たちのサービスを活用していただけるようになれば嬉しいなと思います。
―ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年10月時点の情報です。)
- 小野隆正Takamasa Ono
- パーソルワークスイッチコンサルティング
代表取締役社長 - 通信建設会社におけるエンジニア経験を経て、コンサルティング会社を起業し活動拠点を海外へ。その後インテリジェンスグループへ入社し、2014年、現パーソルプロセス&テクノロジーでコンサルティング事業を新規に立ち上げ。2016年に同社執行役員、2018年に同社事業部長に就任。2023年10月から現職。