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BPO SBUを“テクノロジーを武器にできる組織”にするべく、ビジネスに踏み込むIT部門をつくる

今回は、BPO領域に特化した「BPO SBU*」において、IT責任者としてIT組織の立ち上げと重点プロジェクトの推進をリードする植田にインタビュー。植田が今見据える、BPO SBUを取り巻く課題と今後の展望について聞きました。

*1 SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

人のキャリアや人生を、ITの領域から支える

―まず、植田さんのこれまでのご経歴を教えてください。

2003年に新卒でインテリジェンス(現・パーソルキャリア)に入社し、社内のシステム開発と運用保守を10年弱担当しました。その後、パーソルホールディングスでグループ全体のIT運営を、シンガポールの子会社でIT部門強化のサポートを行う経験を経て、BPO(Business Process Outsourcin) SBU設立に伴って2023年に帰国し、今に至ります。

―ファーストキャリアとして人材業界での仕事を選ばれたわけを教えてください。

人のキャリアや人生を支えられる仕事がしたいとの思いで、営業やコンサルタントとして人材業界ではたらくことを思い描いていました。IT部門への配属は、実は当時自身が望んでいたものとは異なる思いがけないものでしたね。

―希望通りに配属されたわけではなかったIT領域で、その後もキャリアを築いていこうと思われたのはなぜでしょうか。

当時ITインフラ担当としてサーバーやネットワークなどを支える仕事をしていた中で、先輩にかけられた「たとえ夜中であっても、絶対にシステムを止めてはいけない」という言葉が思い出されます。「私たちの転職サイトを見てくれている方々の中には、仕事で嫌なことがあって希望を失ってしまっている方もいるかもしれない。なんとか現状を変えなければとサイトを訪れたときに、システムが止まってしまっていたら?」と。

その言葉にITのインフラを支えるという仕事の価値を教わった感覚で、私がなりたかった営業職やコンサルタントとは “支え方が違う” だけだと思えたことが非常に大きく、現在につながっていると感じます。

自分のミッションのために、“今何ができるか”を考える

―異動・出向先では具体的にどのようなご経験をされたのでしょうか。

インテリジェンス(現・パーソルキャリア)とテンプスタッフ(現・パーソルテンプスタッフ)が経営統合するにあたって、組織や事業の融合をうまく進めていくために、IT部門やネットワーク、インフラなどの機能をすべてパーソルホールディングスに集めていく必要がありました。このPMI*2の過程において、インフラ統合を任せいただいてパーソルホールディングスに異動し、取り組みをリードする役割を担いました。

その後、パーソルグループとしてAsia Pacific地域での事業拡大に注力し始めたことを受け、新たに設けられるAPAC(Asia-Pacific) SBUの立ち上げに参画するべく2017年にシンガポールに渡りました。それまでと同様、PMIのプロセスにおけるIT機能のデザインをサポートするとともに、今後事業をさらに拡大するためにもホールディングスメンバーがAPAC SBUの状況をしっかり理解しておくべきだという意味で、この経験をさせていただいたのだと捉えています。

*2 PMI: Post Merger Integrationの略称で、M&A(合併・買収)後の統合プロセスを指す

―シンガポール子会社への出向は植田さんのキャリアにおいて非常に大きな変化だったのではと推測しますが、どのような思いで参画を決められたのですか?

決断したきっかけは、出向について打診を受けて検討していた頃、当時一緒にプロジェクトを推進していた仲間が突然の病気で亡くなってしまったことです。前日まで普通に話し、夜間も一緒に議論をしていた方の急逝に人間の命の淡さを思い知り、自分がやれることをやり切るべきだと背中を押された思いで、チャレンジすることを決めました。

―実際にチャレンジされてみて、いかがでしたか?

英語が全く話せないところからの挑戦で、非常に大変でした。日本で勉強をしてから渡ったとはいえ、慣れない言葉で言いたいことを自由に伝えるのは難しく、バリューを出せていないことにもやもやした思いを抱えて「もう日本に帰った方がいいんじゃないか」と毎日考えていたのです。

それでも思いとどまって踏ん張れたのは、尊敬する出向先の上司からの言葉のおかげでした。

「君を受け入れたのは、子会社の現状を本社の人がしっかりと見なければいけないから。今後グローバルへ事業を拡大していくなら、いかに今このAPAC SBUのITシステムが課題だらけなのかを君が見て本社に伝え、グループ全体を良くしていかなければいけない。そのミッションのために、今何が “できない” かではなく、何が “できる” かを考えよう」

そんな言葉に、グループ全体のことを考える彼の視座に驚かされ、残って自分の仕事をやりきろうと決めました。

―そんな中、「BPO SBU」のIT責任者として日本へ戻ることになったと伺いました。道半ばでの帰国について、どのような思いを抱かれていたのでしょうか?

インフラやサイバーセキュリティなど当時APAC SBUになかった機能を立ち上げ、道半ばではあるものの、一定の成果を出せたという手応えは感じています。

当時、自分の成長の実感があり、シンガポールに残って新たなキャリアを歩んでみたいという思いもありましたが、上司と話したAPAC SBUのITシステムの現状を本社に伝えるという私のミッションを達成するために、そしてシンガポールで育ててもらった恩を返すために、帰国を決めました。

元々BPO事業の伸びしろは感じており、グループとしてしっかりと投資して踏み込んでいくという意味で大きな変革になります。BPO SBUへの異動に声をかけてくれた尊敬する上司と一緒に仕事をしたい、そして海外で学んできたことをグループに還元したいという思いで取り組みはじめました。

“運営”のプロフェッショナルから、“変革”を担えるIT部門へ

―BPO SBUについての概要と、現在の役割について聞かせてください。

BPO SBUは、企業の業務プロセスを一括して委託する「BPO(Busuiness Process Outsourcing)」をサービスとしてご提供する事業体です。大きな成長が見込まれるこのBPO領域について、パーソルグループ内の機能や知見を集約してさらに注力していくべく、2023年4月にSBUとして新たに立ち上げられました。

現在は、「BPO SBU」のIT責任者として、SBU内にIT組織を作ってビジネスを前進させていくことに取り組んでいます。

―BPO領域をさらに発展させていくにあたって、今見えているIT部門の課題としてどのようなものがあるのでしょうか。

課題となるのは、“変革” や “新たなチャレンジ” といった要素を伸ばしていくことだと捉えています。

BPO領域のIT部門は決められたことをやり切る力に長けた組織で、運用保守を高い水準で担うことができていますが、価値発揮の幅をこの “運営” のみにとどめてしまってはもったいないなと。ビジネス戦略に基づいたIT企画を行い、そのために必要なITソリューションを見極めてご提案し、それを用いてビジネスを変革していくという部分まで担えるよう、組織や仕組みを変えていくことが重要だと考えています。

今のIT部門がさらにこうした企画やビジネスの視点を持ち合わせていくことで、これまで蓄積してきた運用保守の知見を活かして大きな価値を発揮できるのではという期待がありますね。

―どのように変革を進めていこうと考えていますか?

取り組むべきは、今IT部門が担っている業務を整理して運用系の業務を外部のパートナーさんにお任せしていくという、シンプルなことです。そのために、「自分たちがどのようなサービスを運営しているのか」「どこを自分たちがやり、どこはやらないのか」を一つずつ切り出して可視化していくことが必要なのだと思います。大きな課題だけに時間はかかりますが、それをすれば必ず良くなりますから、一つひとつ積み重ねていきたいところです。

またIT部門とは別にフロント側でITチームを作る動きもあるため、両組織でタッグを組んで「お客様に何が届けられるか」という視点や知見を共有していければと考えています。

テクノロジーを武器にするための、仕組みと戦略をつくっていく

―BPO SBUのIT部門として目指すあり方とはどのようなものですか? 今後の展望を教えてください。

現在はBPO SBUのビジネス戦略を具体化する途上にあり、IT部門としての戦略やゴールはまだ描けていませんが……まず大前提として、“ビジネスのKPIとITのKPIを結びつけること” は大切にしたいと考えています。

日々取り組む目の前のプロジェクトや作業が「誰の力になっているのか」「何に貢献しているのか」に紐づかなければ、メンバーがモチベーションを高く保ってはたらくことは難しいはずですから。3人のレンガ職人の話を例に挙げれば、「あなたたちは “レンガを積み上げている” のではなく、“壁を作っている” のでもなく、“大聖堂を作っている” のだ」と示すことがリーダーの役割だと自覚して、メンバーが手応えを感じられる仕組みや戦略を作っていきたいと思います。

―そういった仕組みができ、一人ひとりが自身の発揮する価値を実感しながらはたらく文化が醸成された先で、どのようなことが実現できると思われますか?

IT部門がもっとビジネスに踏み込めるようになり、それによってテクノロジーを活用してビジネスプロセスを改善したり、新たなサービスを生み出したりできるようになる、つまり “テクノロジーを武器にする” ことができるようになるのだと考えています。

パーソルグループが「テクノロジードリブンの人材サービス企業」になるために欠かせない、その土台を作っていきたいですね。

未経験から挑戦する方のキャリア形成や活躍を、BPO事業ならサポートできる

―パーソルグループにおいて、BPO SBUとして、またそのIT部門として今後どのような役割を果たしていきたいとお考えですか?

BPO SBUが2026年度の中期経営計画において「グループの中長期的な成長の柱」の一つとして挙げられていることをふまえ、まずはこのBPO事業をグループの柱と言える存在にまで育てていくこと、つまり先を見据えて毎年売上の成長を続けていくことが一つのテーマです。

またその中で、BPO事業の事業としての価値をさらに高めていきたいと考えています。

―植田さんが考える “BPO事業の、事業としての価値” とはどのようなものでしょうか?

大きな価値の一つは、雇用機会の創出に貢献できることではないでしょうか。

BPO事業においてはお客様から業務を請け負い、チームを組んでそれを推進します。チームとして価値発揮していくスキームですから、その中で未経験の方やスキルを磨く途上にある方がメンバーの一員として経験を積み、キャリアを形成していくこともできる。それこそが、BPOらしい魅力なのかなと考えています。

今パーソルキャリアでテクノロジー組織を本部長として率いている上妻は、BPOのヘルプデスク業務に未経験で参画したところからITキャリアを築き上げました。そういったキャリア形成や活躍を可能にする土壌を持っているのがBPO事業だという考えに立ち、未経験から挑戦したいと思う方々をサポートできるようなモデルを確立していければと思います。

―最後に、パーソルグループの注力領域の一つであるBPO SBUにおいてIT部門を率いていくという、大きな役割を担うにあたって、大切にしたいことを教えてください。

常に大切にしているのは、「I never say it’s not my job.(“それは私の仕事ではない” と絶対に言わない)」ということです。どんな仕事でも問題でも、必ず自分に関与するものとしてオーナーシップを持ってコントロールし、解決するか、誰かに渡すこと。これをやっていかなければ、会社は問題だらけになってしまいますから。こういった姿勢は常に心がけていたいですし、組織の皆さんにもそうであってもらえたら嬉しいなと思います。

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年9月時点の情報です。)

植田一哉Kazuya Ueda(ZaK)
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
IT本部 IT統括部 統括部長
2003年、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)へ新卒入社。インフラ、アプリケーション開発、IT戦略策定とIT部門の運営全般を経験。2012年、パーソルホールディングスへ異動し、グループ全体のIT運営に関与。その後APAC事業拡大に伴い、2017年よりAPAC-SBU PERSOLKELLYへ出向。シンガポールにてAPAC-IT部門の強化を支援。2023年、BPO-SBU設立に伴い 日本に帰国。IT責任者とし、重点PJTの推進、SBU IT組織の立上を推進中。

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