【登壇レポート】Microsoft Modern Work Executive Briefing Summit 「パーソルグループの生成 AI への取り組み」
2023年12月7日、AI新時代を見据えたマイクロソフトの市場戦略や、Copilot for Microsoft 365の最新動向をテーマに日本マイクロソフト社主催「Microsoft Modern Work Executive Briefing Summit」に、パーソルホールディングス株式会社 グループIT 本部 本部長 渡辺良夫が登壇しました。
「パーソルグループの生成 AI への取り組み」と題し、「テクノロジードリブンの人材企業」へと舵をきるパーソルグループの取り組みや、いち早く導入したCopilot for Microsoft 365の活用についてお話をさせていただきました。今回は、当日お話しした内容を一部抜粋・編集の上でご紹介します。
皆さん、お疲れ様です。パーソルホールディングスの渡辺です。
本日は、パーソルグループにおける生成AI利活用の取り組みを中心に、お話しさせていただこうと考えています。
生成AIによって事業も、業務も大きく変わっていく状況の中、パーソルグループでも生成AIの利活用にはかなり力を入れて取り組んでいるところです。その中で、我々が現在できていること、まだできていないこと、その両面についてお話させていただきたいと思います。
現在の私の責任範囲としては、パーソルグループ全体のインフラ/セキュリティ/ITガバナンス/セキュリティガバナンスを中心に、生成AIの利活用推進も一部を担っている形となっています。AI利活用の推進役でもあり、ブレーキ役でもあり、その両方の視点をもって携わっています。
パーソルグループにおけるテクノロジー戦略
パーソルグループの今期中計では、経営の方向性として明確に「テクノロジードリブンの人材サービス企業」に向かうことを明示しています。
そして、テクノロジー戦略として、テクノロジーの力で顧客体験と従業員体験を向上させていくことを掲げています。
この中の3番、環境のデジタル化の推進について。テクノロジーを推進していくとき、様々なものを積み重ねながら進めていくことが多いんですが、ガバナンスという土台ができていないと、当然上に何を乗せても崩れてしまうというわけで、IT/セキュリティガバナンスにおいて、しっかり土台をつくったうえでやっていきたいと考えています。
そしてAIですね。顧客体験を上げていくのも、新たな事業を創っていくのも、業務を効率化していくのも、AIの活用というのは必要不可欠になっていくだろうと思っています。
ここからはパーソルグループにおける生成AIの取り組みについてです。パーソルでは、3つの領域に分けて推進をしています。
一番上の「事業変革」は、これまでできなかった事業を、AIの力を活用して将来的に生み出していくようなことをイメージしています。
その手前でできることとして、我々グループ内にはすでに様々な事業がありますので、それぞれにあわせた形でAIを活用していくのが「業務活用」です。
そして、一番下の部分は、「共通利用」として、グループ全体で業務効率化や生産性向上をしていきます。今日のテーマとなっているCopilot for Microsoft 365(以下「Copilot」)もこの部分に大きく関わります。
ここまで聞いていただいてお気づきかなと思うんですけれども、パーソルグループはこのようにAIに対してとても前向きです。経営ボードも含めて、AIや生成AIをどんどん活用していこうという考えを持っています。
では、我々はそれをどのような筋道を立ててやってきているかという部分です。
一番最初に取り組んだことは、ガイドラインの制定です。まず5月にグループ社員全体に共通ガイドラインを示しました。その後は、パーソルグループ内でバラバラにやるのではなく、グループ全体のAIに関する情報や活用事例をまとめていこうと7月にGenerative AI Hub室を設立しています。
8月には社内版GPT「PERSOL Chat Assistant」を内製で構築しました。「PERSOL Chat Assistant」はAzure OpenAI Serviceを使って、より安全によりセキュアに使えるように整備しています。
そして、現在は、社員が生成AIを使いこなしていけるように、高度な知識を身につけられる技術者・企画者向け研修や、楽しく参加してプロンプトを学べるイベントなど様々なレベルの研修計画を策定し、社員向けに提供をしています。
先程、パーソルグループはAIに非常に前向きですという話をいたしましたが、Copilotの導入についても同様に前向きでした。
パーソルグループにおいては、グループのテクノロジー戦略および関連する経営リソースについて審議を行うテクノロジー委員会をCIO/CDOのもとで開いており、その会議の場でまずはクイックに使ってみよう、という話が進みました。一度乗り遅れたら、事業で遅れをとってしまう可能性もある、そんな危機感もありました。
導入に向けて、Copilotによってどんな価値創出ができるのか、コスト・スピード・展開範囲が主な論点となりました。
しかし、新しい製品ですし、どんどん機能がアップデートされていくものなので、検討を始めた段階では価値創出は未知数です。クイックに使ってみるというアクセルを踏みながらも、検証は薄く広く、狭く深くの両面で、冷静に見極めをしています。ここは、Copilotだけでなく、どんなテクノロジーでも共通の論点かなと思います。
導入はまず300アカウントから、国内パーソルグループ各社のIT部門、管理部門、営業部門などを対象に、新しいはたらき方や業務有用性を検証することにしました。
左側のEveryday AIの領域だけでなく、右側のGame-changing AIの領域についても見極めていきたいと考えています。
300アカウントの利用者選定については、ある程度の仮説を持って進めていきました。どの職種の社員が、どういった業務で活用していけるのか、専門的な業務ではこのように使えるのではないか、など、推進プロジェクトチームで一気に整理をして展開を始めました。
この方法は正しいのかと言われると、正しいかもしれないし、正しくないかもしれない。しかし、その正しさを検証している間に貴重な1週間、1ヵ月という期間が失われるのは嫌だったので、スピード感をもって進めることを優先しました。もし違っていたら修正すればいいだけの話なので、この利用者選定の検討ではブレーキをかけずに進めました。
まだまだ検証中ではありますが、Microsoft 365 Copilotの全社展開については、適用領域を見極めた上で判断しようと考えています。
特に、事業提供価値向上/新たなビジネスチャンスの創出については、挑戦をしない事には生み出せないので、テクノロジードリブンの人材企業を目指すパーソルとしては、しっかりと挑戦をして行きたいなとそんなふうに思っています。
これまでお話しさせていただいたことについて、今日この場にいらっしゃる皆さんも同じように悩むポイントだったのではないかなと思っております。
王道がないところでもありますし、地道に積み重ねなければいけないところもあります。そして最終的には経営としても納得感のある、事業価値を上げられるものだということを確認するためのデータを示すことが、ITを推進していく者の役割なんだと思っています。
以上もちまして私からの共有を終わりにさせていただきます。
どうもありがとうございました。
(2023年12月時点の情報です。)
※ Copilot for Microsoft 365は、Microsoft Corporationが提供するサービスの名称です。
- 渡辺良夫Yoshio Watanabe
- パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
本部長 - 2000年早稲田大学大学院を卒業、米系投資銀行のIT部門でキャリアをスタート。日系の証券会社を経て、2017年11月にパーソルホールディングスに入社。IT戦略やIT予算、海外子会社を含むグループ全体のITガバナンスの設計など幅広く担当。2020年より、システム・スキル軸の組織から価値ドリブンの組織への変革を目指し、アジャイルマインドの浸透や、アジャイル組織運営を実現するためのプロセスの構築に取り組んでいる。2023年7月より現職。