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IT部門だけではなく、パーソルグループのビジネス全体に良い影響を与えるITガバナンスの実践を

「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を目指すパーソルグループ。テクノロジー活用を積極的に行う一方で、適切にITガバナンスを実践することが求められます。

今回は、パーソルグループのITガバナンスを担う福本に、パーソルグループとして目指すITガバナンスの在り方や、パーソルグループならではの特徴を聞きました。

パーソルグループの「守り役」を担うITガバナンス部

ー福本さんのこれまでの経歴を教えてください。 

新卒でSIerに入社し、3年に渡って地方銀行の根幹を担う勘定系システムの開発・運用を担当しました。次に監査法人へ転職し、ここでは10年ほど法定監査のサポートや補助業務、J-SOX(内部統制報告制度)の対応、セキュリティやシステムの監査などを行いました。 

その後事業会社でのキャリアも積みたいと考え、大手IT企業の内部監査業務を3年担当し、縁あって2023年1月にパーソルホールディングスへ入社しました。現在は主にITガバナンスに関する業務を担当しています。 

ーパーソルグループが考える「ITガバナンス」について教えてください。 

各SBU*やグループ各社の事業サイド、およびコーポレートサイド(バックオフィス)の両面でグループ内のIT活用をモニタリングし、リスク管理を行うことがパーソルグループのITガバナンスだという認識です。合わせてその根拠となる規程やガイドを整備し、周知・定着させることがITガバナンス部の役割と考えています。 

SBU(Strategic Business Unit):意思決定の権限を委譲し、経営判断のスピードを高めて事業価値を最大化するべく組織されたビジネスユニットを指す。 

ー「テクノロジードリブンの人材サービス企業」をITガバナンスの観点で捉えると、どのようなITガバナンスの実践が必要でしょうか?  

パーソルグループの中期経営計画2026で目指す方向性として定められている「テクノロジードリブンの人材サービス企業」は、パーソルグループが抱えるテクノロジー活用に関する課題を解決し、「中長期的にテクノロジーを活用できる企業に進化する」という意志だと理解しています。 

企業を進化させる上では、IT投資によって生まれる効果やビジネスへの貢献度を検討し、IT投資が会社の方向性に沿っているか、既存のITや他の投資と大きな衝突や矛盾が生じていたりしないかを判断する必要が生じます。 

進化にあたって「攻め」を担う部門と異なり、ITガバナンスを担う私たちは「守り」の役目、言い換えれば「ブレーキ」の役割を担う必要があると考えています。「守り」と言うと「攻め」との対立軸と捉えられることが多いですが、ブレーキがあるからこそ、オーバーランや事故が起きないように運転ができ、最終的に目標に早く到達できると考えています。アクセルとブレーキのいずれも必要で、両輪であると認識しています。 

―ITガバナンスはどういった体制で実践されているのでしょうか? 

パーソルホールディングス内にある、ITガバナンス部がパーソルグループ全体のITガバナンスを担っています。

ITガバナンス部にはITマネジメント室とセキュリティガバナンス室があり、それぞれ異なる機能を持っています。 

ITマネジメント室は、パーソルグループの方針に基づくグループ各社のITマネジメント対応状況について、モニタリングすることが主な役割です。リスク管理と、それに関する規定や方針の整備、IT投資審議や投資効果の測定と結果報告をする会議体の運営も行います。 

セキュリティガバナンス室は、グループのセキュリティの維持・向上がミッションです。セキュリティ視点でのルール整備やグループ各社の情報セキュリティ対応状況について、モニタリングを行っています。 

―グループ全体のITガバナンスをけん引されているんですね。 

はい。お伝えした以外にも、ITガバナンスの取り組みをグループ各社へ伝達する複数の会議体の対応なども行っています。地道な報告や情報共有を通して活動を知ってもらうことも、ITガバナンス部の大切なミッションです。

グループ各社のITをマネジメントし、かつ社内外への説明責任を果たすのがミッション

ーITマネジメント室の具体的な取り組みを教えてください。 

ITマネジメント室では、パーソルグループ全体からの情報収集に加え、各担当者が異なる役割を担っています。 

ある担当者は、ITマネジメント状況のモニタリングをメインで担当しています。文字通りグループ各社のITマネジメントの状況について情報収集するのですが、具体的な業務としては、パーソルグループで守るべき規程・基準を反映したチェックリストを整備しています。それをグループ各社に送付してセルフアセスメントしてもらっています。その結果をこちらで確認し、SBUの管理職が集まる会議体で共有し、次年度以降の方向性を検討する流れです。 

チェックリストの一例としては、「ITに関連する予算は何に活用しているか」、さらに「システムを開発するプロセスはルールとして定められているか」「その過程は資料として残しているか」。また、システム開発を終えてリリースし、問題や障害が起きた際の「対応フローはどうなっているか」「障害発生時のルールはあるか」など、20〜30問ほどの項目があります。監査に近いものですが、趣旨としてはグループ各社が自社の状況をセルフチェックすることに重きを置いています。 

ーほかにも、ITマネジメント室の重要な業務はあるのでしょうか? 

はい。ある担当者はIT委員会の運営事務局を担当しています。IT委員会は投資審議と投資結果報告といった2つの内容があります。投資審議はプロジェクトや維持管理などのITへの投資が適切かどうかを話し合います。もう一つの投資結果報告は、プロジェクトを終え、半年後から1年後にどのような効果がもたらされたか、あるいは効果が思うように出なかったなどといった情報を共有しています。パーソルグループ全体のIT委員会が月に2度、ホールディングス内の案件に関しては毎週開催しています。 

このほか、ITに関する規程・基準の整備と周知も担当しています。既存文章の見直しや修正、改善を半年に一度ほど行っています。もちろん文字だけの修正であれば半日の作業ですが、ホールディングスの方針をベースにグループ各社で方針を策定していることを忘れてはいけません。些細な変更・修正であっても、「この変更でどのような影響が起こりそうか?」を協議し、必要に応じてグループ各社へ直接説明に行き、調整することもあります。 

ーパーソルグループ全体のITをウォッチするとなると、調整ごとも多く、さまざまな人材とのコミュニケーションが求められそうですね。 

はい。入社してみて、パーソルホールディングスだけで決められることは、思った以上に少ないと実感しています。それだけパーソルホールディングスで決定することは影響範囲が大きいので、当然ですよね。 

現状把握に協力してもらうので、それにかかる工数やコミュニケーションの時間はある程度必要です。そのなかでも、ITマネジメント室では「グループ各社の本来の事業を必要以上に止めない」ことをモットーにしています。グループ各社にとっては、自社のサービスを提供し、顧客に価値提供することが第一目的だからです。 

一方で、パーソルグループがIT分野でガバナンスの意識を持って事業活動を行っている事実を、社内外へ正しく発信しなければなりません。そのために監査が存在するので、今のITガバナンス部の業務は、監査と社内を取りまとめる、ちょうど間の業務です。 

こういった意味で、グループ各社が事業に注力できるように配慮しつつ、守るべきルールを的確に整備して危ない橋は渡らせないようにマネジメントし、かつ報告・説明責任も果たせるように、そのバランスを常に意識しています。

ITの側面でのスムーズな情報共有の仕組みが、中長期的なグループの価値向上につながる

ー今、ITマネジメント室として挑んでいることはありますか? 

パーソルグループのなかには、海外のグループ会社が複数あります。海外のグループ会社については日本のグループ会社とはまた別のシステムやIT活用が行われているので、どのようにITをビジネス貢献につなげているかを、パーソルホールディングスとしてさらに正確に、さらに詳細に、把握を進めていきたいと考えています。 

ーその先のフェーズで検討していることはありますか? 

今は、パーソルホールディングスのさまざまな部署からグループ各社の担当者に、いろいろな形で連絡が入り、情報共有されていると認識しています。そういった情報共有の方法を整理したり、取りまとめができたりすれば、お互いにもっと効率良く業務にあたれると考えています。 

そのためITガバナンス部としては、いかにフラットに相談できる仕組みを構築できるかが重要です。ITガバナンス部に情報共有できる場所があれば、全体を見なければならない立場の人材や経営層にも都度インプットできるようになりますからね。 

ー最後に、パーソルグループとしてどのようにITガバナンスを構築していきたいですか。 

「お見合い」を防ぎたいと思っています。お互いが「自分たちの領域はここです」と主張し、くっついたり、重なったり、離れたりする。離れていると、その間に落ちるものは必ず生じますよね。それを1つずつなくすためにも、パーソルホールディングスとグループ各社がお互いにもう一歩踏み込める仕組みづくりや関係性が欠かせないと思います。 

これが実現できれば、より一層グループとして同じ方向を見て進んでいける組織に成長し、IT部門だけではなく、パーソルグループのビジネス全体に良い影響をもたらすはずです。ITガバナンス部としては、それをITの面から支え、中長期的なパーソルグループの企業価値向上に貢献したいと考えています。

取材・文=ファーストブリッジ 宮口佑香
(2024年3月時点の情報です。)

福本崇志Takashi Fukumoto
パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部 IT企画部
ITマネジメント推進室 兼 ITガバナンス部 ITマネジメント室
室長
SIerにて地方銀行の勘定系構築プロジェクトに参画し、開発・運用を担当。その後、監査法人およびWeb系企業にてシステム監査・情報セキュリティ監査・プロジェクト監査等を経験し、2023年1月にパーソルホールディングスへ入社。以降はパーソルグループ全体のITガバナンス向上に向けた取り組みに従事。

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