AIで変えるのは業務ではなく、意思決定。中核プロセスの進化で、事業を前に進める挑戦

テクノロジードリブンの人材サービス企業を目指すパーソルグループ。今回は、グループAI本部で事業変革を推進する下田に、役割を広げてきた歩みとAI・データを活用した取り組みの現在地について聞きました。

理想だけでは動かない――小さな成果を積み重ね、現場とともに価値を生み出す共創パートナー

まずは、2023年に入社されてから、どのような業務に取り組んできたのかを教えてください。

入社当初は、CoE(Center of Excellence)の立場から、人材派遣・アウトソーシング事業を手掛ける「パーソルテンプスタッフ」における営業領域のDX推進を中心に支援していました。

しかし、当時はまだCoE組織が立ち上がって間もないタイミングで、パーソルテンプスタッフとの関係性もこれから築いていく段階でした。ホールディングスという立場もあり、パーソルテンプスタッフ側から見ると「どのような役割・価値を提供する組織なのか」が分からず、距離がある状態だったと思います。

そのため、まずは現場ヒアリングやデータ分析等を通じて事業理解を深めながら、現場の皆さんが抱えている課題を一つひとつ解決していく形で関わり、信頼関係を築いていくことを重視しました。

小さな施策から関わる形を取られた背景には、どのような考えがあったのでしょうか?

これまでの経験から、事業や現場の状況十分に理解しないまま理想を語っても、「それは現場の実態とは違う」と受け止められてしまうことが多いと感じています。現場が本当に向き合うべき課題を捉えられていなければ、どれだけ正しそうな構想でも実行にはつながりません。

そのため、まずは現場の声を聞き、実際に何が起きているのかを理解したうえで、「ここの課題は、こう改善していきましょう」と具体的に提案していきました。現場の課題に向き合い、小さな成果を積み重ねていくことで、徐々に信頼関係を築くことができたと感じています。

そうしたアプローチを重ねることで、関係性はどう変化していきましたか?

特にこの1年で関わり方は大きく変化しました。上長がパーソルテンプスタッフのDX推進本部長を兼務する体制となったこともあり、DX戦略の構想段階から強く携わるようになり、事業への関与の度合いも一段と深まっています。

中でも象徴的だったのは、事業上の重要プロジェクトへのアサインが増えてきたことです。「是非CoEメンバーにプロジェクトに入ってもらいたい」と声をかけてもらう機会が増え、プロジェクトの中でリーダー的な役割を担うメンバーもでてきています。

こうした変化は、個別の施策の成果というよりも、事業や現場と継続的に向き合ってきた積み重ねの結果として、信頼関係が深まってきた表れだと受け止めています。

ホールディングスとして、どのような価値を発揮してきたと捉えていますか?

パーソルテンプスタッフは「人」に対する想いが強く、特に「派遣スタッフの皆さまがいかに幸せに働けるか」という視点を何よりも大切にしており、その姿勢が事業の競争力そのものになっている組織だと感じています。
私たちは、その価値観を前提として、ビジネスとしての合理性やROI、データにもとづく視点を掛け合わせながら最適な意思決定の形を探ってきました。双方の強みがかけ合わさり、より実効性のある意思決定につながってきたと感じています。

営業とマッチングの意思決定を再設計する、事業戦略とデジタルを接続したプロセス変革

現在取り組んでいる変革の全体像を教えてください。

現在は、営業領域とマッチング領域を中心に、事業のコアプロセスそのものを見直す取り組みを進めています。これまでのような個別の業務改善ではなく、デジタル戦略を事業戦略と接続する、より大きな領域の変革です。

事業変革に直結するテーマになるため、一つひとつの取り組みに時間はかかりますが、この1年間で進めてきた施策を順次リリースしながら、実際の価値へとつなげていきたいと考えています。

営業領域では、具体的に何をどのように変えようとしているのでしょうか?

営業における意思決定のあり方そのものを変えることで、生産性の向上を目指しています。

これまでの営業活動は個々の経験や知見が強みとして発揮される一方で、ターゲット選定等が属人的になりやすい面もありました。

そこで、社内にあるデータを確実に蓄積・整備しつつ、社外のデータについても幅広く収集し、AIを活用してそれらを整理・分析するだけでなく、要点を整理したり判断材料となる示唆を生成したりできる状態をつくることに取り組んでいます。

こうした取り組みを通じて、営業活動における意思決定や行動の質を高めるとともに、本来価値を発揮すべき顧客接点に、より多くの時間を使える状態を実現していきたいと考えています。

マッチング領域における取り組みも教えてください。

マッチングにおいても、これまでコーディネーターの経験や目利きが大きな役割を果たしてきており、その積み重ねによって高い精度のマッチングが実現されていました。
一方、扱う情報が増える中で、人の目だけでは把握できる範囲にどうしても限界があり、選択肢の広がりや対応スピードに制約が生じやすいという側面もありました。

そこで、コーディネーターの判断を置き換えるのではなく、案件の情報やスタッフの情報など、さまざまなデータをAIを活用して整理・分析し、より幅広い選択肢の中から最適なマッチングを検討できる状態をつくることに取り組んでいます。また、24時間稼働できるAIの特性を活かして、プロセスの自動化を進めることで、これまで発生していたボトルネックを解消し、スピードアップも図っています。単なる効率化が目的ではなく、人の強みを活かしながら、派遣スタッフの皆さま一人ひとりにとってより可能性の広がる選択肢を、安定的に提供できる状態をつくることが重要だと考えています。

構想で終わらせない。戦略から実装までやり切る、事業変革を加速させる新体制の本質

下田さんは4月からグループAI本部の「StaffingDX部」と「StaffingITソリューション部」の両組織の部長に着任しています。今回の体制変更について、どのように受け止めていますか?

StaffingDX部とStaffingITソリューション部の前任の部長がパーソルテンプスタッフの執行役員に就任したことに伴い、その後任として両組織を兼務する形で引き継ぎました。正直に言うと驚きはありましたが、それ以上に、事業変革の重要なタイミングでこの役割を任せていただいたことに強いやりがいと責任を感じています。

これまでは構想や企画のフェーズに主に関わってきましたが、今後は実装や定着、成果創出まで一気通貫で見ていく立場になるため、関与の質が大きく変わると感じています。

両組織の役割の違いについて教えてください。

どちらもパーソルテンプスタッフに対して、テクノロジーを軸に事業変革を支援する組織ですが、関与の仕方が異なります。

StaffingDX部は「何を実現するか」を描く、事業戦略や機能戦略の策定支援、企画構想を中心に担う組織です。一方で、StaffingITソリューション部は「どう実現するか」を担い、プロダクト開発やデータ基盤の構築などを推進します。

これまではこの二つが分かれていましたが、一体で見ることで、構想と実装の間に生じるギャップを埋めていけると考えています。

構想と実装を一体で見る意義はどこにありますか?

構想としては正しく見えるものでも、実際に実装する段階では、既存のシステムや業務、組織の制約など、さまざまな壁に直面します。その過程では、当初の構想を修正せざるを得ない場面も少なくありません。

だからこそ、構想と実装を切り分けるのではなく、最初から最後まで一貫して関わり、現実に即した意思決定を重ねていくことが重要だと捉えています。

組織をまたぎながら複数部門が関わる体制ですが、どのように運営していくのでしょうか?

パーソルテンプスタッフとの一体運営の体制を前提としています。企画段階から営業や事業企画のメンバーとともに進め、開発段階では開発メンバーも加わり、一つのチームとして推進しています。

そうした体制のもと、デジタルを前提とした施策ではなく、事業をフラットに捉えたうえで、最適な手段としてテクノロジーを活用する。そのプロセスをともに進めることで、実際に現場で使われ、成果につながる形に落とし込んでいきたいと考えています。

支援する組織から、価値を生み出す組織へ。事業変革の中核を担う組織の進化

パーソルテンプスタッフへの関わりが深まる中で、どのような役割や進化が求められていると感じていますか?

私たちは、単なる支援にとどまらず、組織を横断しながらシナジーを生み出し、それを事業としての価値につなげていく役割が、これまで以上に求められていると感じています

そのために今必要なのは、事業全体を俯瞰しながら戦略を設計できる力と、システムやデータのアーキテクチャを全体最適の視点で描ける力です。複数施策が同時に進む中で、それらを横断して最適化していく必要があります。部分最適ではなく、全体最適を前提に設計できる人材が重要になると考えています。

そうした力や人材を強化しつつ、私たち自身の存在意義を改めて問い直しながら、専門性をさらに磨いていきたいと思います。

どのような人材がこの環境で価値を発揮できると考えていますか?

まずは変化を楽しめる人だと思います。パーソルホールディングスは、市場やテクノロジーの変化に適応するため、組織や役割も柔軟に変わります。そのため、これまでのやり方や立場に固執せず、新しい前提を受け入れながら動ける姿勢が必要です。

あわせて、課題を指摘するだけで終わらせず、自ら提案し、実行までやり切れることも重要です。自分の役割を限定せず、周囲を巻き込みながら前に進められる方にとっては、非常に挑戦しがいのある環境だと思います。

変化の激しい時代に必要な姿勢はなんだと思いますか?

「仮説をアップデートし続けること」が重要だと考えています。たとえば、AIの進展が人材派遣ビジネスにどのような影響を与えるのかについても、一度立てた仮説に固執するのではなく、状況の変化等をふまえながら常に考え直していくことが必要だと思います。もちろん仮説は外れることもあります。しかし、都度仮説を見直し、思考を止めずに更新し続けることで、次の打ち手や新たな方向性も見えてくると感じています。

最後に、下田さんが感じるパーソルホールディングスの魅力について教えてください。

事業変革のど真ん中に当事者として関われる点が一番の魅力です。単にあるべき姿を描くだけでなく、実現していく過程で生じるさまざまな課題と向き合いながら、成果につなげるところまで関われる経験は大きな価値があります。

また、パーソルテンプスタッフとの一体的な運営によって、現場と密接に連携しながら変革を進められる点も大きな特長です。組織として本気で変革しようとしている環境の中で、自ら考え、動き、価値を生み出していきたい方にとって、非常に挑戦機会の多いフィールドだと思います。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=長坂佳宣(PalmTrees)
※所属組織および取材内容は2026年4月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年4月時点での内容です。

Profile

下田雄介 Yusuke Shimoda

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部
StaffingDX部・StaffingITソリューション部
部長

2010年に大手通信会社に新卒入社し、代理店営業や営業企画に従事。その後、大手総合コンサルティングファームにて、業務改革やテクノロジーを活用した全社変革プロジェクトを推進。2023年3月にパーソルホールディングスへ入社。グループ会社のDX推進において、企画立案から実行までを一貫して担う。2026年4月より現職。

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