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テクノロジーを活用した非連続的な成長を目指して―パーソルグループが一丸となって取り組むクラウドシフト

現在パーソルグループでは、国内グループ企業が標準利用するデータセンタ下にある全システムをすべてクラウド上に移行する、「クラウドシフト」に取り組んでいます。しかし、パーソルグループのビジネスを支える1,000台を超える規模のシステムをクラウドに載せ替えるにはさまざまな困難と向き合わねばなりません。今回はこのクラウドシフトプロジェクトの責任者を務める塚本に、取り組みの意義と難しさについて話していただきます。  

国内グループ企業が標準利用するデータセンタ下にある全システムをクラウド上へ 

—現在パーソルグループはグループを挙げてクラウドシフトに取り組んでいると聞きました。塚本さんの役割と立場を教えてください。 

2020年から、クラウドシフト、オンプレデータセンタの廃止を掲げ、推進する立場を担っています。 

—パーソルグループにおけるクラウドシフトは、どのような体制で推進されているのでしょう? 

パーソルグループのグループIT本部にて、複数の部門を横断する形で推進しています。 

私が部長を務めるビジネスコアインフラ部配下には、AWSの共通基盤を提供する部門やデータセンタのファシリティやプライベート仮想化基盤、データベース基盤などを展開するデータセンタ部門があり、このほかに社員にPCやスマートフォン、コミュニケーションツールを提供する部門や、グループ共通のサイバーセキュリティ施策を実施する部門などとも連携しながらクラウドシフトに取り組んでいます。このようなグループIT本部配下の各部署が各SBUのIT部門と連携を取った上で、各SBUのIT部門がそれぞれ主体性を持ち、自社に適した方法でクラウドシフトを推進しています。 

—なぜこのタイミングでオンプレ環境を廃しクラウドシフトに取り組むのでしょうか?その理由を聞かせてください。 

パーソルグループは、2016年から「クラウドファースト」を掲げ、これまで順調にクラウド率を高めてきました。しかし詳しく内訳を精査してみると、クラウド活用が広がりを見せるなかにあっても、自社で管理するサーバやネットワーク機器などの数は減るどころか、むしろ増えているような状態でした。 

クラウド率を高める「クラウドファースト」が、必ずしもオンプレシステムの削減につながらないことがわかったため、将来的なデータセンタの廃止を念頭に「クラウドシフト」を打ち出すようになったわけです。2023年に発表した中期経営計画2026において「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を目指すことが強く謳われていることに加え、グループのトップがクラウドシフトの価値を理解してくれています。このように状況にも恵まれていることが、クラウドシフトを加速させることができている理由だと捉えています。

クラウドシフトへ向けて、立ちはだかるいくつもの課題

—クラウドシフトによって得られるメリットにはどんなものがあるのでしょう? 

クラウドシフトがもたらす効果はさまざまです。たとえば、オンプレ環境下では難しかった爆発的な利用者の増減に対応しやすく、不具合解消やAIなど、最新テクノロジーを実装するまでのリードタイムも大幅に短縮できるようになるでしょう。またサーバやネットワーク機器の管理から解放されれば、それに費やしていた時間とコストを別の用途に振り分けられますし、パンデミックや震災下における事業継続性も格段に高まると見込んでいます。クラウドシフトは事業の生産性向上に寄与するのはもちろん、社員へよりよいサービスを展開でき、ビジネスの拡大に貢献する重要施策なんです。 

—数あるメリットのなかで、もっとも重視しているのは? 

「Anywhere,Anytime,AnyDevice」という言葉通り、「あらゆるデバイスから、いつでも、どこからでもアクセスできる」世界観を目指したいと思っています。そのなかでも「Anytime(爆発的な利用者の増減にも柔軟に対応できる環境)」の実現にはクラウドシフトが必要不可欠であり、事業として非連続の成長・進化を目指す過程で、ITリソースがビジネスのボトルネックとなることを回避できると考えています。 

COVID-19の影響や昨今の社会情勢の変化により、物理機器の調達時間が大幅に延びています。例えば、オンプレの仮想化基盤を増強するには、リソースが不足する1年前から数年先のキャパシティを見極め増強を計画しないと間に合わない状況であり、オンプレ環境のままで事業が求めるスピードに応えるのは至難の業です。 

このような状況下においても、パーソルグループとしてセキュアなIT環境を整備することは大前提ですが、そのうえではたらく社員のストレスを少しでも軽減し、生産性が高められる環境を整えたいと思っています。そのためには、あらゆる制約・制限を可能な限り無くすことが重要になってくるのではないでしょうか。 

—グループ全体で抱えるシステムをすべてクラウドシフトするのは難易度がかなり高いのでは? 

パーソルグループには国内だけでも38社のグループ会社があります。当然のことながら事業内容や事業規模は異なりますし、ITの活用レベルや守るべき情報の質や量についても各社さまざまで、利便性と安全性を両立させつつクラウドシフトを推進するのは確かに容易ではありません。 

もちろんクラウドシフトによって、IT活用やDXに伴う困難をすべて解決できるわけではありませんが、クラウドシフト抜きにこうした課題に対処できないのもまた事実です。責任を持ってやり遂げなければならないと思っています。 

—現在の進捗状況についてはいかがでしょうか? 

現在のプロジェクトは全体的にスムーズに進行しており、すでにクラウド率は75%ほどに達しています。しかし、クラウドに移行するべき多数のシステムと、特に大規模なシステムが残されている状況を考慮すると、目標達成への道のりは容易ではありません。我々は継続的な危機意識を保ちつつ、このプロジェクトに全力で取り組んでいます。

目標達成には、採用を含む支援体制強化が急務 

—クラウドシフトを取り巻く周辺環境についてはわかりました。技術面での難しさについてはいかがですか? 

パーソルグループは成長の手段としてM&Aを積極的に行ってきました。それに伴ってシステムも「増改築」が繰り返され、複雑極まりない構成を持ったシステムは少なくありません。また移行の難易度はシステムの状況を精査してみなければわからないため優先順位をつけるだけでも一苦労です。システムのアーキテクチャや採用している技術スタックによってはクラウドリフトに留め、その後状況を見ながら徐々に最適化とモダナイズしていかざるを得ないケースなどもあるため「システムをクラウドに載せておしまい」というわけにはいかない難しさがあります。 

—クラウドに完全移行するには手間と時間がかかるのですね。 

はい。現行のオンプレ環境についても同じことがいえます。クラウドシフトが間近に控えているからといって、ネットワークが逼迫すればボトルネックとなるネットワーク経路を特定し増強が必要になりますし、ハードやソフトウェアのEOSLに合わせてシステムのリプレースを検討する必要もあります。パーソルグループのように1,200台を超える規模の物理機器で構成されたオンプレ環境上で、基幹システムが作りこまれた状態から、クラウドシフトを完了させるのは容易ではありません。 

—なるほど。では、実際にビジネスの最前線で事業を動かしているグループ各社からはどんな反応が? 

幸い、グループ各社の経営陣や事業責任者からいただく声は前向きでクラウドシフトに対する理解の高さがうかがえます。その点は非常に心強いですね。この機に乗じて一気にクラウドシフトを推し進めたいところですが、結論を急ぐあまり技術やサービス選定を疎かにしてしまっては、かえって貴重な時間と予算を無駄にしかねません。グループ各社の事情に応じた手厚い支援の必要性を感じています。 

—これまでお話しいただいた数々の課題を克服するために、いま何が必要だと思われますか? 

申し上げたようにグループ各社の動きを加速させつつ手厚い支援を実現するには、社内外からクラウドのみならずインフラ領域全般に通じたテクノロジー人材を集め、支援体制の拡充を急ぐ必要があります。とはいえ、いくらクラウドに詳しいだけでは適切な支援は提供できません。パーソルグループの事業特性や事業内容への関心がなければ有効な解決策を導き出せなかったり、適切な技術選定ができなかったりするかもしれないからです。人材ビジネスへの興味、関心を持つテクノロジー人材をいかに集め、育てるかがクラウドシフトの成否を分けるカギになると思います。 

—クラウドシフトはパーソルグループの将来を左右する大プロジェクトなのですね。 

そうですね。パーソルグループと同じくらいの規模で期限を区切りクラウドシフトの実行を明言している企業グループは国内を見渡してもほとんどない状況です。数十年に一度あるかどうかの大変革期にしか得られない貴重な体験ととらえ、パーソルグループの未来を積極的に切り拓いていきたいと思います。

取材・文=グレタケ 武田敏則
(2024年3月時点の情報です。)

塚本陽太Yota Tsukamoto
パーソルホールディングス株式会社
グループIT本部
ビジネスコアインフラ部 グループテクノロジー推進本部 部長
兼 テクノロジー横断部 インフラ横断室 室長
2000年に現パーソルプロセス&テクノロジーへ入社。グループ外の企業に対して、アプリ・インフラ案件の企画提案、プロジェクトマネジメント、設計構築、運用などをプライムで実施。2015年に現パーソルテンプスタッフへ異動。基幹システムの刷新、PMI対応、サービスデスクのアウトソース化、ノートPC導入、その他多数の改善活動などを実施し、2018年にパーソルホールディングスへ異動。変化に強いインフラ環境の実現を目指してグループ全体のクラウドシフトとオンプレデータセンタの廃止を推進中。

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