CoEをけん引するマネジメント層から見た、CoE初年度の成果と今後の展望

Profile

Yuta Tsuge

パーソルホールディングス株式会社
執行役員 CIO/CDO

2006年同志社大学を卒業、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に新卒入社。法人営業を経て、事業企画部門にて人材紹介、dodaなどの主要事業の事業戦略を担当。その後、事業におけるデザイン活用・デジタル技術活用に積極的に取り組み、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの三位一体で事業開発に臨む新鋭的な組織編成に注力。時代に先駆けた体制で既存事業・新規事業の開発に挑む。現在はホールディングスで執行役員CIO/CDOとして、グループ経営およびグループ全体のIT/デジタル化の推進を担当。

Yuriko Asahina

パーソルテンプスタッフ株式会社
執行役員 CIO

外資系プロジェクトマネジメントソリューションベンダーにてプロダクト開発、導入を中心に担当。外資系ITセキュリティ会社2社でコーポレートIT部門のリーダーシップを執った後、2014年にパーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。2021年よりパーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長としてグループ全体のデジタル変革を推進。2025年より現職。
 
2024年度(第42回)IT賞(マネジメント領域)受賞、第9回HRテクノロジー大賞人的資本経営部門優秀賞、JAPAN HR DX AWARDS 2024特別賞 受賞。

パーソルグループでは、中期経営計画2026で掲げた「テクノロジードリブンの人材サービス企業」の実現に向けて “テクノロジー人材・組織の進化” をテーマとした取り組みを進めています。


この取り組みの中核となるのが、テクノロジー人材による「CoE(Center of Excellence)」です。事業やサービスにおけるテクノロジーの実装・活用を強化するべく2023年4月に組成され、現在グループ各社への技術支援を行っています。


今回はCIO/CDOとしてテクノロジー戦略を牽引する柘植と、CoEの組織づくりや取り組みのマネジメントを担うグループデジタル変革推進本部 本部長の朝比奈にインタビュー。CoE組織の1年間の歩みと現在地、そして今後の展望を聞きました。

この1年を経て、本当の意味での“スタートライン”に辿り着いた

グループ各社との協業の土台となる 体制・仕組みづくりに奔走

CoE組織とはどのような組織なのか、概要を教えてください。

朝比奈

CoEは、パーソルグループ全体の、事業・サービスでのテクノロジーの実装・活用を強化するため、2023年4月にパーソルホールディングス内に組成しました。まずは、ITコンサルタント、データサイエンティスト、エンジニアなど、多様なバックグラウンドや専門性を持つテクノロジー人材をホールディングスで新たに採用し、組織をつくるところからスタートしました。

朝比奈

もともと、ホールディングスに在籍していたテクノロジー人材、新たに採用した70名ほどのテクノロジー人材をあわせて、現在のCoE組織は80名ほどの規模になっています。(2024年6月現在)

この1年間で組織はどのように成長していったのでしょうか?

朝比奈

急速に組織拡大が進みましたが、ほとんどのメンバーが離れることなくコンディションやモチベーションを保って活躍してくれており、まずはグループ各社との協業の土台となるしっかりとした組織づくりができたと捉えています。

現在は、変革のポテンシャルが大きく、必要とするテクノロジー人材の数も多いパーソルテンプスタッフに50名ほど、その他のいくつかのSBU*にも優先順位をつけてメンバーをアサインし、それぞれの事業の一員として事業推進や技術支援を行っています。


*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位

グループ各社との新たな協業をスタートするにあたって、感じた難しさなどはありましたか?

柘植

グループ全体でのテクノロジー活用を前に進めていくために、「CoE」としての取り組みが有効であると開始したものの、実際にやり始めてみるとさまざまな難しさがありましたね。

朝比奈

初めは、グループ各社の現場の方々からすると「経緯を知らないホールディングスの人々に口を出される」と思えてしまうこともあったでしょうし、「CoEメンバーにどのような業務を任せるか」などの観点で目線が合わず、半年ほどは形にならずもどかしい期間がありました。CoEも、入社したばかりのメンバーが多く、事業自体への理解がまだ深くない中でプロジェクトに入り、難しい立ち回りが求められました。

そうした中、一つひとつの取り組みで素早く価値を発揮して私たちのケイパビリティや本気度を示し、“ホールディングスの人々”ではなく一緒に価値をつくっていく仲間であるということを示し、23年下期頃からは現場の皆さんとの関係値が変わっていきました。CoEメンバーも今ではチームに溶け込み、 “なくてはならない存在”として頼られ、メンバー自身もそれを強く実感できるまでになりました。

柘植

そうしたCoEの組織づくりや、グループ各社との協業・コミュニケーションを進めながら、他にもグループ各社との人事制度の統一や、事業の人件費負担を抑えるための「戦略予算」の設定など、 “仕組み” の部分でも協業の土台を築いた1年でした。

課題を乗り越えて協業を実現し、“ナイストライ”を積み重ねた1年間

これまでの1年間を振り返って、事業に対する支援の成果としてはいかがでしたか?

朝比奈

1年間でCoEとして関わってきたプロジェクトは数十件におよんでおり、これだけのトライができたことは初年度の成果として非常に大きなものだなと。私たちの取り組みの意義や価値を、現場の皆さんはもちろん、経営層に対してもしっかりと示すことができたのかなと思っています。

柘植

CoEから大勢のメンバーが関わったパーソルテンプスタッフについては、これまでにない規模で人材派遣事業のDXを考え、実行し、大きな進歩を生み出せたと捉えています。

そのほか、感じられている取り組みの効果があれば教えてください。

朝比奈

グループ全体の動きを把握している立場として、「ホールディングスでこんな取り組みをしています」「グループでこんなことが起きているから、ここに手を打ちませんか」と、SBUをまたいで情報を提供できる強みがCoEにはあります。

この1年間でビジネスのことはもちろん、人事や経営戦略、コンプライアンスといったさまざまな観点で、各SBUからCoEに相談をもらい、グループ全体の状況やそれぞれの立場の考え方などをふまえた乗り越え方を一緒に考えてこられたことは、当初想定していなかった価値発揮の形でしたね。

取り組みをリードする立場として、1年間の手応えをどのように感じていますか?

柘植

上期は、予想していた以上の協業の難しさを感じましたが、そこで諦めたり、取り組みが下火になって終わったりすることなく、より良い協業のあり方を掴み、今に至れたことに、大きな山をひとつ乗り越えたような手応えを感じています。

時間はかかりましたが、土台となる仕組みをしっかりとつくり、たくさんの仲間を得て、グループ各社の皆さんとのよい関係を築くために必要な時間だったのかなと。ようやく本当の意味でスタートラインに立てるところまできたという感覚です。

グループの大きな変革を力強く牽引する存在を目指して

今ある取り組みをさらに加速させ、インパクトある事例を生む1年に

“本当の意味でのスタートライン”に立たれた今、2024年度をどのような1年にしていこうと考えていますか?

柘植

今年も多くの新しい仲間を迎え、今取り組んでいるプロジェクトをさらに加速させていきます。協業の土台はできあがっており、また昨年以上に踏み込んだテーマ設定もできていますから、それらを形にして「インパクトのある成果に繋げられた」という事例を多く生んでいきたいですね。

中でも人材派遣事業の変革はパーソルグループが掲げるとても大切なテーマの一つなので、これまでの良さを守りつつ、CoEの新しい視点を取り込みながら、成果に繋げていければと思います。

朝比奈さんの立場ではいかがですか?

朝比奈

昨年から考えてきたさまざまな取り組みを推進して、法人・個人のお客様に「便利になった」「パーソルを選んでよかった」と思っていただきたいなと考えています。

そのために、CoEとしてのメンバーの育成、成長支援をしっかりと行って “求心力” を高めるのはもちろんですが、今年からはメンバーに各事業の皆さんとともに、現場で事業を最大限に磨くことに “遠心力” を持って取り組んでもらえるよう、意識して組織運営を行っていきます。

「はたらいて、笑おう。」の世界を、一つでも多く・早く実現するために

CoEの最終的なゴールとして目指す、組織のあり方とはどのようなものですか?

柘植

新たなテクノロジーを使いこなし、新しいプロダクトを生み出せる方や、その可能性を持った人材が集まっている。多様なバックグラウンドに裏付けられたノウハウや知見、アイディアを持っている。ホールディングスという立場で、グループ内の情報や事例を知っている…そんなCoEならではの強みを活かして、グループ内のさまざまなところに飛び込み、一社では進められないような大きな変革をリードする存在になってもらいたいと思っています。

朝比奈

バックグラウンドや専門性の多様さ、それによって増える引き出しの数は、組織としての大きな強みですよね。そういった多様な視点を活かしながら、テクノロジーに専門性を持つ人材がビジネスのことを真剣に考え続けるからこそ、マーケットの激しい変化にもアジリティ高く向き合っていけるはずだと思いますし、そんな組織であり続けたいなと思っています。

また私たちは今、CoEという仕組みを通じて“グループ横断でのマトリクス組織”にトライしているとも言えます。私たち自身がモデルケースとなって、これからもはたらき方をアップデートしていきたいところです。

そうした組織像の実現によって、パーソルグループにどのような影響を与えていきたいでしょうか?

朝比奈

ビジネスのことを真剣に考えるテクノロジー人材が増え、取り組みのボリュームが増えた先で事業にとってよいインパクトが生まれること、また私たち自身のはたらき方がアップデートされていくことが、グループとして目指す「はたらいて、笑おう。」の世界を一つでも多く、そして早く実現していくことに繋がればと思います。

柘植

何より大切なのは、より多くの方に長く使っていただける、パーソルグループのお客さまの成長のきっかけになるようなサービスを増やしていくことです。そしてそのためには、人が介在して丁寧にご支援を行うだけでなく、テクノロジーを活用してあらゆる接点で人の力を超えるサポートまで実現していくことが重要になると考えています。

そうしてテクノロジーの力でサービスの価値を高めることによって、今よりも圧倒的に収益率や生産性の高いビジネスモデルに進化させること、ひいてはパーソルグループが掲げる「テクノロジードリブンの人材サービス企業」の像を実現することにしっかりと向き合っていきたいと思います。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=合同会社ヒトグラム
(2024年6月時点の情報です。)

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