Future テクノロジー部門トップメッセージ
パーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員
AIを起点に、事業変革を実装する。パーソルテンプスタッフが描くテクノロジー戦略

パーソルテンプスタッフでは2026年度に組織を再編し、AIを主としたプロダクト開発や、これまでにないIT基盤の構築・整備に向けた取り組みを開始しました。
今回は、そうした取り組みの司令塔として、IT戦略から実装までを担うテクノロジー管掌の執行役員・中桐にインタビュー。攻めと守りの両面におけるAIの利活用や、3カ年にわたるパーソルテンプスタッフの中期IT計画について聞きました。
より上流から、現場に根付くプロダクトと基盤を構築する組織
中桐さんは2026年度の組織再編で、テクノロジー管掌の執行役員に着任されました。現在の組織や業務内容について、お聞かせください。
2025年度はパーソルテンプスタッフにおけるデジタル変革の実装を担う「テクノロジー本部」の本部長を務めていましたが、組織再編によってセキュリティやガバナンス、ITファイナンスといった横断機能に加え、一部事業領域の企画・設計を担う組織を管掌することになりました。
2025年度からの変化でいうと、これまでよりも戦略立案から実行までを一気通貫で進めやすい組織構造になりました。
もともとテクノロジー本部は、テクノロジーに関する攻めと守りの両輪を担う組織でした。加えて前身の組織まで振り返ると、基幹システムのQCD管理を重視してきた経緯もあり、相対的に「守り」に軸足が置かれていたと感じています。
また、2025年度は市場としては派遣業界が大きな変革期にあり、技術的にはAIが浸透していくタイミングでした。そのため、変革の必要性や危機感を組織内で共有しながら、ITやデータ基盤の整備を進めてきました。そうした取り組みもあり、組織のマインドは確実に変わり始めています。
ただ、これまでは他本部の企画や戦略を実現する立場であることが多く、自ら事業課題を捉え、価値創出をリードするという点では課題がありました。また、本当に現場で使われるか、事業成果につながるかという視点でプロダクトを磨き込む意識もまだ十分ではなかったと感じています。
そこで、2026年度には新たな部を作るなどして、もっと上流からコミットするような組織体制に刷新しましたね。
ソリューションデザイン部は、その1つですね。
そうですね。ソリューションデザイン部は、社内のメンバーに加えて、これまでグループの“戦略的ITリソース”としてグループ各社の技術支援を行ってきたCoE(Center of Excellence)のメンバーにも加わってもらいました。文字通り、パーソルホールディングスとパーソルテンプスタッフが一体となって変革の推進を担う組織として期待しています。この組織は活動量だけでなく、企画を通じて生み出した事業価値やリターンも成果指標として重視しています。
他には、新たにどんな組織が生まれたのでしょうか。
「GENESIS統括部」も4月から生まれた組織です。全社の基幹システムである「GENESIS」について、これまで開発と業務推進で部署が分かれていたのですが、これらを統合したことで、開発と業務が一体となりました。これにより、さらにスピーディーに意思決定できるようになりました。また、データ活用をより一層推進するため、これまで「室」として担っていた機能を発展させ、「データプラットフォーム部」を新設しました。
かなり大掛かりな組織再編ですね。中桐さん自身も、本部長から執行役員に新たに就任されたことで、見える景色にも変化がありましたか。
トップや他の経営層に対して、自分の意見をダイレクトに伝えられるようになったのはかなり大きいですね。
例えば、これまでは営業を含めた現場は数値も目標とのバランスもあるため、急なデジタル化に対する一定の慎重さもあるのではないかと考えていました。しかし実際には、変革の必要性について強い共通認識があり、私自身が想像していた以上に前向きに受け止めてもらっています。
皆さん変革に対する意識が強いですし、自分でも「さすがにこれはちょっとやりすぎかな」と思うようなアイデアでも受け入れてもらっています。AIの取り組みも、否定せず協力してくれていると感じますし、非常にやりやすいですね。

既存資産の最適化を進め、事業成長を支える投資へ転換する
2026年度は、パーソルグループとして新たな中期経営計画が開始した年です。あらためて、その中核を担うパーソルテンプスタッフとして事業優位性や、反対に抱えている課題についてはどうお考えですか。
強みは、長年にわたり派遣事業をリードしてきた企業であるという点です。高い営業力に加え、蓄積してきた豊富なデータも強みであり、まだまだ勝ち続けていけるポテンシャルを有していると感じています。
だからこそチャレンジや変革にも、いかに前向きになれるかが課題になるのかなと。過去の成功体験にこだわらず、どう変革を生み出すか。いかに新しいチャレンジを増やせるか。ここがキーになるのではないでしょうか。
その上で、テクノロジー管掌としてはどんなマインドで臨む考えですか。
変革の必要性や危機感を強く発信した2025年度から一歩進めて、今年度は未来への期待感を高めるような発信・運営を意識しています。
マインド面では「自分ゴト化」をテーマに掲げています。その上で「効率化」「コスト」「ニーズ」について、常に自ら問いながら業務に当たってほしいと伝えています。
コスト面では、社内に置き去りになっている技術負債の刷新がキーになるでしょう。日常業務の中で自動化や可視化できることがないかという効率化と合わせて、2026年度は改革への種まきをしていければなと。
ニーズという点では、ベンダーのように要件をもらってプロダクトを生み出すのではなく、自分たちが巻き込んで共創していく組織になりたいです。もちろん他部署から「こういうのを作ってほしい」といわれて手を動かすことを否定しているわけではありません。あくまで「これがほしい」と言われたときに、「本当に必要なのか」「どんなニーズが隠れているのか」をしっかり考えるのが重要だということは改めて強く意識をしていきたいですね。
より具体的な戦略としては、どんなビジョンを描いていますか。
パーソルテンプスタッフの中期IT計画における戦略は大きく2つです。まずIT部門はこれまでコストセンターとみなされがちだった点を踏まえ、コストをしっかり削減すること。技術負債化しているものや使われていないプロダクト・サービスの見直しなどがその一例です。
ITコストは社内でかなり多くのウェイトを占めています。そのため、単純に予算を積み増すのではなく、既存コストを見直し、同じ投資規模の中でも成長領域への配分を高めていきたいなと。すなわち、中身を筋肉質にして、より効率的なコスト配分にしていくといった考えです。
加えて、浮いた原資を「攻め」に投じて、利益にコミットする基盤を構成すること。これらに共通するのが、当然ですが「AI」です。

AIをフル活用し、基幹システムの保守運用と基盤整備を変革する
あらためて中桐さんから見た現状のAIの可能性についても聞きたいです。
AIは単なる効率化ツールではなく、事業そのものの可能性を広げる技術だと考えています。進化のスピードは非常に速く、数カ月でできることが大きく変わる。その変化の中で、新たなビジネス機会も次々と生まれていると感じます。
例えば、これまではデータベースにデータを入れる際には意味付けを人間がやる必要がありましたが、昨今はAIがある程度は代替してくれます。データの統合でも、放り込んだら仮想的に統合してビッグデータ化してくれるなど、日々驚くばかりです。もちろんまだ課題はありますが、AIによって、異なるデータの意味や関係性を推定し、統合や活用を支援できる範囲が大きく広がってきました。
そうした進歩し続けるAIを、どのように戦略に組み込んでいくのでしょう。
まず、保守運用の効率化は大きなテーマです。特に基幹システムはAIによって10%でも代替できれば金額面でかなりのインパクトになるでしょう。
これは日本企業の“あるある”かもしれませんが、スクラッチで開発した巨大な基幹システムはリニューアルが難しく、技術負債になりがちなんです。システムの開発自体はプログラムの変更が少なくても、システムが巨大なため、影響範囲が広く、調査やテストでやることが膨大になりがちです。ここをどう自動化するかがポイントになるはずです。
ここに、AIが活きます。AIを活用し、設計書からのコード生成や、既存コードの解析・ドキュメント化を支援できるようになってきており、よりスピーディーに改善サイクルを回せるようになっています。パーソルテンプスタッフでも2026年度から本格的に取り組んでおり、すでに保守費の低減では一定の成果が出始めています。
保守運用に加え、セキュリティ面でもリスクの洗い出しにAIを活用して、スピード感と安全性を両立していければと。
利益にコミットする新たな基盤構築についてはいかがでしょう。
すでに触れたように、パーソルテンプスタッフの基幹システム「GENESIS」に関しては、これをクラウド化するとともに「二層目」のデータベースとHub機能を構築する予定です。「GENESIS」を中核に据えながら、機能ごとに柔軟に拡張できる構造へ進化させていくイメージです。
現状はAIプロダクトの開発を含め、何をするにも大掛かりになってしまっているのが課題です。そこでいくつかの機能を切り出して、もっとスピーディーにプロダクトを開発できる基盤にできればと考えています。こちらは2025年度から進めていて、少しずつ稼働も始まりました。AIとともに開発する体制が整いつつあり、従来なら1年くらいかかっていたプロジェクトを半分以下の期間に短縮できています。
AIの特性や、派遣事業の肝がマッチングであることを考えると、データ基盤の整備も大きなテーマですよね。
データの利活用には2025年度から取り組んできました。個人情報を適切に保護することは大前提です。その上で、すべてを一律に扱うのではなく、データの性質や利用目的、リスクに応じたガバナンスを整備し、安全性とアジリティを両立させる必要があります。
2026年度からは、AIプロダクト開発やマーケティングなど、事業価値が明確なユースケースを選定し、必要なルールと管理の下でデータ活用を進めていく方針です。

AIとデータで事業を変える。会社を変革する「当事者」へ
具体的なプロダクトやプロジェクトとして、今後計画しているものがあればお聞かせください。
パーソルテンプスタッフの強みは営業力にあります。その強みをさらに高めるためにも、営業のデジタル化は重要です。
この領域では、問い合わせ対応から商談管理までをデータでつなぎ、営業活動そのものを高度化していきたいと考えています。例えば、一次対応をAIエージェントが担い、情報を構造化する。さらに商談の音声も自動でデータ化し、SFA(営業支援システム)に蓄積される。そうしたサイクルを実現できればと思っています。
社内に眠っているデータをいかにマッチング精度の最適化へと応用するかにも取り組みたいですね。
ただ、これは「データをどう得るか」と背中合わせだと考えていて。データはEnd-to-Endで、どう収集して、蓄積して、活用するかを考える必要があるのではないかと思うんですよ。これまではシステムが重厚長大すぎて「どこにどんなデータがあるのか分からない」「どう活用すればいいのか分からない」といった課題があったはずで、基盤の構築や刷新において解決したいテーマです。
最終的なゴールとして、どんな組織を目指していきますか。
一言で表現すると、会社を変革する当事者です。社内のシステム導入やAI化に上流からコミットして、共創しながらとにかく利益を含めた「成果」を追い求めていく。これまでの「実装=モノをつくる」にとどまらず、技術をいかに現場へと根付かせていくかを考えられる組織を目指します。
AIやデータの利活用が進むと、派遣事業にはどんな影響がありそうでしょうか。
マッチングの最適化が進んで、はたらく人たちが自分の新しい可能性に気付くチャンスを増やせるのではないかと考えています。例えば、これまで事務の派遣としてはたらいていた方に対して、これまで経験もないし考えてもいなかった仕事に適性があると、こちらから提案できるようなイメージです。
AIが人間の仕事を奪うという視点もありますが、こうした形で新たな仕事を見つけたり創出したりするお手伝いを、パーソルテンプスタッフとしてできればうれしいです。
ありがとうございました!

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年10月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年10月時点での内容です。
Profile
中桐亮 Ryo Nakagiri
パーソルテンプスタッフ株式会社
執行役員
2006年ベネッセコーポレーション入社。販売管理システムやマーケティングシステムの責任者、顧客データ分析のためのデータ基盤開発PMなどを経て、2020年にパーソルホールディングスへ入社。コロナ禍でのデジタル化推進やコーポレートシステムの刷新企画プロジェクトに従事した後、グループ全体の基幹システム管掌部門・部門長を経て、2026年4月より現職。