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パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 執行役員

AIは目的ではない――パーソルビジネスプロセスデザインが挑む「AI時代のBPO」

パーソルグループでは、中期経営計画FY28のもとAI活用を推進しています。その中で、BPO事業を担うパーソルビジネスプロセスデザインは、多種多様な業務現場を生かした「AI活用の実験場」としての役割を担っています。

AIは何のために活用するのか。そしてAI時代にBPOはどのような価値を発揮できるのか。執行役員の植田に話を聞きました。

3000超の現場でAIを試す。BPOを「実験の場」にできる理由

パーソルグループではBPO領域について、2023年にBPO SBUを設立したのち、2024年に3社を統合する形でパーソルビジネスプロセスデザインが発足しました。組織体制が大きく変わった印象ですが、どのような変化がありましたか。

以前新しいウィンドウ又はタブで開きますは複数の会社でBPOを手掛けていたため、お客さまからするとどこに頼むべきかが分かりにくい状況でした。グループ内の複数社から営業をかけられる、といったケースもあったのではないでしょうか。

その問題が3社を統合したことで解消し、規模の面でも存在感を示せるようになったと感じています。以前より大きな案件のコンペにも入りやすくなるなど、ビジネス面での好影響が出ています。

植田さんはBPO SBUの設立当初、IT責任者に就任しました。現在はパーソルビジネスプロセスデザインの執行役員です。この間、役割やミッションはどのように変わりましたか。

正直、大きなテーマ自体はそれほど変わっていません。ミッションの1つ目は、社内システムの基盤づくりです。3社の統合もあり、それぞれが使っていたアプリケーションやシステムがバラバラな状態なので、ここを再編して、業務の標準化とコストバランスを最適化していく必要があります。

もう1点がAI活用です。こちらの考え方は、この2年でかなり変わったかもしれません。以前は「AIで何ができるのか」「どう使えるのか」という技術起点の議論が中心でしたが、今は「AIによってビジネスにどんな価値を生み出すのか」といった観点を意識するようになっています。

中期経営計画FY28では、パーソルグループ全体でAI活用を進める方針が明確に示されました。パーソルビジネスプロセスデザインとしては、どのような役割を担えると考えていますか。

私たちの主戦場であるBPO領域は、AIによる業務変革を“実験”する場として非常に適していると思います。ある程度標準化された業務と向き合うことが多いグループ各社と比較して、私たちBPOはお客さまの業務をお預かりして代行させていただくため、お客さまの数だけ異なる業務があると言えます。

プロジェクトは常時数千単位で動いていますし、同じコールセンターのBPOでも、お客さまによって業務内容や求めるものは違います。コールセンターの例を続けると、一見すると問い合わせ対応という点ではどこも同じに感じますよね。しかし、お話を聞いていると「とにかく応答時間を短くしたい」というニーズもあれば、「電話をかけてきた方の意図を丁寧に理解して、対応することを重視したい」というニーズもあり、お客さまによって課題は千差万別です。

そうした多岐にわたる業務でAIを試し、現場からフィードバックを得て改善する。そして別の業務やグループへ展開する、といったサイクルを進める。私たちのミッションは、この点にあるのではないかと。

AIは手段にすぎない。業務全体を設計することの価値

業務の幅が広いことは強みである一方、個別具体的な内容がほとんどであることから「どのように共通するノウハウを見つけて横展開するか」という点では、難しさもありそうです。

そうですね。例えば経費精算を一つとっても、お客さまごとに決裁までに必要な承認の数や業務フローは違います。そこで、業務をどのようなプロセスとして分類するのか、どこまでを共通のナレッジとして扱えるのかなどを整理して、標準化するための仕組みづくりを一部で進めています。

BPOの現場から得られる知見は大きな資産ですが、集めるだけでは価値になりません。また、お客さまの情報を含むことから扱いには細心の注意を払う必要があります。この点を意識して、それこそAIも活用しながら改善や提案につなげたいと考えています。

やはり最近は「AIで何とかしてほしい」という依頼が多いのでしょうか。

相談の起点は、必ずしも「AIを導入したい、AIで何とかしてほしい」といったものではありません。例えば、最近多いのが人材不足に起因するご相談も増えています。ベテランの人材が退職して業務を担える人材が足りなくなった、急に多くの対応が必要になった――といった現場の差し迫った課題からのご依頼です。

加えて、以前は「10人でやっている業務を、7人でできるようにしてほしい」という依頼が多かったのが、「7人でできるようにして、さらにPERSOLであればどんな付加価値を生み出せるのか提案してほしい」というニーズも増えています。

こういったご相談について、すべてAIで置き換えればバラ色の未来が待っている、という単純な話ではありません。AIを入れて自動化するよりも、人間が判断した方が良い部分もあるはずです。

当たり前ですが、AIが適した領域と、そうではない領域があると。

おっしゃる通りです。AIやテクノロジーは、業務やビジネスを良くするために必要であれば使うもの。あくまで手段です。「業務やフローのどこが重要で、どこなら削減や効率化して良いのか」を見極め、業務全体として成り立つように設計すること自体が、私たちがBPOを担う意味だと思っています。

ここ数年はAIに注目が集まっていますが、さらに新たなテクノロジーが登場することは十分に考えられます。その時々の“武器”を使い分けるには、課題を見つけ、適切な技術を選び、業務に実装するという基本的なスキルが必要です。ビジネスとITの両方を理解して改善につなげられる人材を1人でも増やしたいですね。

PoCは失敗してもいい。課題発見こそ最大の成果

すでにAI活用で大きな成果が出ている事例はありますか。

正直に申し上げると、現時点ではAIによって劇的な成果が出ているわけではありません。AIには「一気に人材や工数を減らせるのではないか」という期待がありますが、私はそこまで単純ではないと思っています。

そもそもBPOは、数%の改善を積み重ね続けることで価値を生み出す事業です。だからこそ長くご支援を任せていただけるお客さまも多く、中には20年近くお付き合いが続いているケースもあります。

AIは、何かを一気に変える魔法ではなく、そうした現場の知見や改善活動をさらに加速させるためのものだと考えています。長年培ってきた業務理解とAIを組み合わせることで、お客さまに提供できる価値をより大きくしていく。それが私たちの目指す姿です。

AIに関連するプロジェクトで意識していることはありますか。特に、PoCから実装までどうつなげるかは気になる読者も多そうです。

最も大事なのは、お客さまの課題をきちんと理解できているかです。特に最近は、PoC以前の段階から「本当にこの会社と一緒にやるべきか」を見られている感覚があります。AIの技術だけであれば、ツールを導入するだけで良いケースもありますからね。

誤解を恐れず表現すると、そもそもすべてのPoCが成功しなければいけないわけではない――と考えています。 なぜかと言えば、失敗が結果的にお客さまの課題を浮き彫りにすることもあるからです。先ほどもAIはあくまで手段とお話ししましたが、使うものがAIであれ何であれ、その前段がカギを握ります。基本的なことですが、お客さまの困りごとを把握できるかどうか。ここに尽きるのではないかと。

AIは「何でもできそう」だからこそ、チャレンジしたのは良いものの後に続かないと悩む人も多いのではと感じます。

PoCを始めるときには「何が成果なのか」「どこまでできれば継続なのか、どの程度なら撤退すべきなのか」を最初に決めるべきです。例えば既存業務を20%改善できれば続ける、とかですね。PoCそのものに加えて、後工程まで含めて判断基準を考えておくわけです。そこを考えると「そもそも何が課題なのか」にも目が向いて、より本質的な業務改善につながるはずです。

AI時代のBPOは「代行」を超える。リスキリングと価値創出へ

今後さらにAIが進化すると、BPOというビジネスはどう変わっていくでしょうか。

お客さまが「AIを使えばBPOに頼らず自分たちでできる」と考えるケースは間違いなく増えていくでしょうね。現にそうなりつつありますが、実は私たちへの引き合いは大きく減っていません。これには、大きく2つの背景があると考えます。

まずは、そもそも人材が減っていることです。転職もそうですし、ベテランの退職などがあると、その方が持っていた知識まで失われます。この部分は、単に業務をAIや新しい人に置き換えるだけでは埋められません。もう1点は、AIを導入しようとしても実際にはうまくいかないケースです。もちろん、この状況がずっと続くとは思っていません。私たち自身も新しい領域へ移っていく必要があります。

その一環として進めているのが、オンラインBPOサービスの「StepBase新しいウィンドウ又はタブで開きます」です。従来のBPOでは対応が難しかった月に10時間や30時間といった小規模業務にも対応できるようにし、お客さまの業務実態を把握・整理しながら、将来的なAI活用や業務改善につなげられるサービスとして展開しています。

以前のインタビューでは、BPO事業は雇用機会の創出という価値を生み出せる、というお話がありました。AIが進化した今も、その思いは変わりませんか。

変わりません。この点はむしろAIの効果が生きてくると考えています。

コンサルタント業が分かりやすい例ですが、これまでであればいわゆる「ジュニア」と呼ばれる経験が浅い人材は、資料集めや先輩のサポートをしながら知識を増やして経験を積み、少しずつお客さまの前に出ていました。

それが今や、AIを使えば知識を得やすくなりました。若いうちから主力としてプロジェクトに参加して、価値を出せる可能性も高まっています。実際、若手のプレゼンテーションなどを見ていて以前よりレベルが上がっていると強く感じます。

この変化を私たちの事業領域と組み合わせると、業務のアウトソーシングだけではなく、リスキリングを支援するという形もあり得ます。冒頭で説明したように、私たちは日々、非常に多くのプロジェクトに携わっています。リスキリングを求める方々と一時的に一緒に業務運営させていただき、AIを駆使しながら新たな業務と触れる機会を作る。そんな構想も思い描いています。

最後に、パーソルビジネスプロセスデザインが「AI時代のBPO」として目指していく方向性についてお聞かせください。

常に目指しているのは、テクノロジーとともにお客さまのビジネスや業務を進化させることです。さまざまな現場から得たナレッジを再利用し、お客さまに新しい付加価値として返していく。その循環をテクノロジーでつくることが、これからのBPOに必要だと考えています。

例えば、「御社ではこの業務に20のプロセスを踏んでいますが、他社ではその半分、10のプロセスで完結していますよ」という情報があれば、どのお客さまもすごく興味を持たれます。こうした具体例があれば、業務改善のイメージがしやすいのは間違いありません。AIを含めたテクノロジーによって、こうしたお客さまの“気付き”はもちろん、新たな付加価値の創出に貢献していければと思います。

ありがとうございました!

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年9月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年9月時点での内容です。

Profile

植田一哉 Kazuya Ueda(ZaK)

パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
執行役員

2003年、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)へ新卒入社。インフラ、アプリケーション開発、IT戦略策定とIT部門の運営全般を経験。2012年、パーソルホールディングスへ異動し、グループ全体のIT運営に関与。その後APAC事業拡大に伴い、2017年よりAPAC-SBU PERSOLKELLYへ出向。シンガポールにてAPAC-IT部門の強化を支援。2023年、BPO-SBU設立に伴い 日本に帰国。IT責任者とし、重点PJTの推進、SBU IT組織の立上を推進中。