低コスト・高打率を両立。多機能記事生成AIエージェント「Contents Craft」とは?

Profile
伊波毅尋 Takehiro Iha
パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部 データソリューション部
セールス&マーケサイエンス室
シニアデータアナリスト
2010年東北大学大学院を卒業、大手自動車メーカーの技術開発部門でキャリアをスタート。AIベンチャーや起業を経て、2020年8月にパーソルホールディングスに入社。グループ営業や法人マーケティングのデータ分析・機械学習・活用のためのデータ整備、生成AI活用など幅広く担当し、グループ横断で活用されるAIエージェント構築にも取り組む。
寺尾雅人 Masato Terao
パーソルホールディングス株式会社
グループ営業本部 法人マーケティング部
リードジェネレーション室
リードデジタルマーケター
2020年に、現パーソルビジネスプロセスデザインへ新卒入社。BPO・ヘルプデスク・ヘルスケアの営業・Webマーケティングなどを経験。2022年にパーソルホールディングスへ異動し、現在は展示会やイベントを通じた、グループにおける法人向けソリューションを対象としたリードジェネレーション施策を担当している。
内山涼子 Ryoko Uchiyama
パーソルホールディングス株式会社
グループ営業本部 法人マーケティング部
リードジェネレーション室
リードデジタルマーケター
2025年にパーソルホールディングスへ入社。BtoB領域におけるSEO・コンテンツマーケティングに従事。コーポレートサイトにおけるコラム記事やホワイトペーパーの企画・制作を一貫して担当し、データ分析に基づいた、流入拡大およびCV最大化に向けた施策を推進している。
法人顧客との接点創出を担う法人マーケティング部 リードジェネレーション室では、記事コンテンツやホワイトペーパーの制作に多くの工数とコストを要していました。この課題を解決したのが、コンテンツ制作の一連の業務をAIエージェントに代行させる「Contents Craft」の開発です。
マーケターとデータアナリストが協働し、どのように現場起点のAIエージェントを実装したのか。プロジェクトの背景や開発の舞台裏、今後の展望について、プロジェクトメンバーである寺尾、内山、そして伊波に聞きました。
マーケターとデータアナリストが開発したAIエージェント
まずはみなさん、自己紹介をお願いできますか?
伊波
普段はデータアナリストとして、パーソルグループにおける法人営業企画や法人マーケティングに関連するデータ分析、AI活用支援などに携わっています。
寺尾
私はお客さまとなりうる法人各社と接点をつくり、グループ各社に送客するリードジェネレーション室に所属しています。2026年3月まで、当社コーポレートサイトに掲載する法人顧客の獲得を目的としたコラムやお役立ち資料の企画・制作、イベント企画の立案と運営に携わっており、現在はパーソルグループとして出展する展示会やメディアイベント担当として、法人顧客の獲得を担っています。
内山
私も寺尾さんと同じリードジェネレーション室のマーケターとして、コーポレートサイトに掲載するコラム記事やホワイトペーパーなど、寺尾さんが3月まで担当していた新規法人顧客向けのコンテンツづくりを今期も引き続き担当しています。
みなさんが携わった「コンテンツ生成AIエージェント開発プロジェクト」について教えてください。どのようなプロジェクトなのですか?
寺尾
これまで私たちのようなマーケターが企画し、外部の制作会社や校正者にお願いして制作していた記事コンテンツづくりに関する一連の業務を、AIエージェントに代行させることを狙ったプロジェクトです。2025年の夏頃からここにいるメンバーを巻き込みつつ、本格的に動き出しました。2026年3月に完成したコンテンツ生成AIエージェント「Contents Craft」は、現在、月間5~10本もの記事を生み出しています。

このプロジェクトにおけるみなさんの役割についても聞かせてください。
寺尾
開発期間中はこのプロジェクトの発起人として、伊波さんや内山さん、そしてもう1人のメンバーと一緒にContents Craftの仕様を検討したり、機能テスト、改善項目の検討などを担当したりしました。
内山
私も同じく、記事コンテンツの制作に携わるマーケターの立場から、AIによる文章生成から完成までのプロセスを整理し、記事コンテンツ制作に必要な機能の洗い出しや機能テスト、改善案の検討などに携わりました。
伊波
私はAIエージェントの開発担当として、マーケターのみなさんが立てた企画意図に添った記事をいかにスピーディーかつ正確に生成できるかを考え、AI実装に必要な情報収集や技術基盤や開発環境の整備、そして実際のAIエージェントの実装に携わりました。
劇的な効果をひっさげ、個人活動からプロジェクトへ
このプロジェクトはどういった経緯で発足したのでしょう?
寺尾
生成AIが急速に普及しはじめた2024年12月ごろのことでした。記事コンテンツづくりを、生成AIに任せてみたらどうなるかと思い試してみたのがきっかけです。プロジェクト化する前に、まずは1人ではじめました。
何か業務上の課題があったのですか?
寺尾
私が所属するリードジェネレーション室が集客を担当している法人サービスは、パーソルグループ全体で300以上あり、限られたメンバーで幅広い内容をカバーしなければなりません。また、記事の執筆や校正作業は外部に委託していることから、1記事あたりの制作費は十万円以上に上り、記事の企画立案やキーワード設計、構成案の検討、外注先への依頼や内部チェックや修正対応など、記事コンテンツ制作にまつわる諸業務も膨大です。
予算も人手も限られるなか、記事コンテンツを通じてパーソルグループの法人サービスをくまなく訴求したくても、なかなかできないというジレンマを抱えていました。
試行錯誤されてみて、手応えはいかがでしたか?
寺尾
当初はどんなプロンプトを書けば、どんなレベルの記事が生成されるのか、手探りからのスタートだったのですが、1カ月ほど試行錯誤したところ、ようやく公開しても差し支えないレベルの記事コンテンツがつくれるようになりました。新規顧客の獲得につながりそうな記事が20本ほど貯まったので、順次公開してみたところ思わぬ効果が出たんです。
どんな効果が?
寺尾
公開した20本のうち16本が、狙ったキーワードの検索順位の1位を獲得できました。実はこの数字、これまで制作会社に依頼していたときよりも「高打率」だったんです。もちろん、個人レベルの取り組みですから、記事生成の精度やプロセスにはまだ改善の余地は残されていたものの、制作にかかっていた予算が校正費だけになったため、9割削減でき、外注先や監修者などとのやり取りに必要な資料づくりや日程調整も不要になりました。
これは本腰を入れて取り組む価値はあると判断し、データ分析や処理に詳しい伊波さんと、マーケターとして現場の苦労をよく知る内山さんたちに声をかけ、本格的にプロジェクト化したんです。
内山さんは、どのような思いでこのプロジェクトに加わったのでしょうか?
内山
限られたメンバーで業務を回していたので、少ない予算と工数で記事コンテンツがつくれるのはかなり魅力的だと思いましたし、大きな可能性を感じました。ただ私自身、生成AIに思い通りの文章を書かせる難しさを痛感していたこともあって、コンスタントにいい結果が残せるかどうか不安はありましたね。
とはいえ、文章の生成にとどまらず、キーワードの選定や競合調査、記事の校正やファクトチェックを含めた一連の業務をAIエージェントに託せるようになれば、その効果は計りしれません。ワクワクしたのを覚えています。
伊波
私は寺尾さんが実験しはじめたあたりから、内々で相談を受けていたのですが、当初はどこまで実現できるか、確信はありませんでした。当時は特定業務に適応するAIエージェントを開発したことがありませんでしたし、ハルシネーションの問題をクリアし、独自性を持った記事をコンスタントに生成する方法を図りかねたからです。
ただ寺尾さんから、自力で生成した記事がかなりよい成果を残したと聞いて、改めて技術調査を重ねたところ、実現できそうな感触がつかめたので、俄然やる気になったのを覚えています。

試行錯誤を重ね、指数関数的に高まる出力精度
正式に「コンテンツクラフトContents Craft」の開発に着手してからはいかがでしたか? スムーズに開発は進んだのでしょうか?
伊波
プロジェクト組成当初は予算がついていなかったので、まずは作業時間の確保に苦労しましたね。技術的な面では、7月ごろから定例ミーティングを開始し、11月から本格的に開発に取り組み出したのですが、とくにアーキテクチャの設計が大変でした。業務フローをAIに正しく認識させ、次のプロセスに渡さなければならないのですが、なかなか思い通りに動かないことが多かったですね。
たとえば校正ルールを定義してLLMに渡しても、思うように処理しなかったり、ときには処理自体を無視されたりすることも珍しくありません。また記事コンテンツを生成後、記事チェックを経て、文章校正、ファクトチェックの各プロセスは人間が介入せず、AIが判断して次のプロセスに回すこともあって、とくに調整に時間がかかりました。
どうやって技術的課題を解決したのですか?
伊波
ある程度、プロジェクトの先行きに目処がついたタイミングで上長に相談し、予算をつけてもらってからは、AI実装技術を持つ会社に支援を依頼して一つひとつのトラブルを解決していきました。業務をよく知るみなさんからのフィードバックもPDCAサイクルを回す上で、かけがえのないものだったと思います。1カ月ほどテストと改善を繰り返した結果、ある日を境に指数関数的に精度が高まっていくのを目の当たりにして驚きましたね。AIのポテンシャルを改めて思い知りました。
内山
とはいえ、そこまでいくのが本当に大変でしたよね。どうしても文章のニュアンスに違和感を覚えたり、言葉選びや文脈に不自然さやわかりづらさが残ってしまい、微妙なさじ加減を調整するのにかなり時間がかかった記憶があります。
寺尾
実際、出力結果を校正サービスに出すと、文章の8割方に赤が入って戻ってくるほどでしたからね。それでも都度新たなルールを定義しては、伊波さんに直してもらっているうち、ようやく満足いくレベルになったんです。
内山
最近では、競合ひしめくビッグワードを交えた記事コンテンツが、検索結果の上位を占めることも増えましたし、キーワードの選定から競合調査を経て企画や構成に落とし込むまでの時間についても、1記事あたり5~6時間は削減できた気がします。結果的に企画から公開までの期間も約2カ月から1週間程度にまで短くできましたから、質だけでなく量の面でもいい効果が出せていると感じます。以前より多くの記事を回しているのに、早く帰れる日が増えたのは個人的にもありがたいですね。

寺尾
2025年12月に満足できるレベルのAIエージェントが完成し、翌年3月にまとめて20本ほど記事をリリースしたところ、試作時を超える打率で検索結果1位を獲得できました。上々な滑り出しでしたね。
今回のプロジェクトはマーケター3人に対してエンジニアは伊波さん1人だけ。伊波さんには「あの機能がほしい、この機能がほしい」とたくさんお願いしたので、どこまで実装すべきか線引きが難しかったと思います。いつ寝ているのか心配になったこともありましたね(笑)。
伊波
自分でいうのも何ですが、かなり頑張りました(笑)。でもそれだけの価値はあったと思います。新しい技術をキャッチアップしたおかげで、技術レベルは以前にも増して上がりましたから。それができたのもリードジェネレーション室のみなさんの熱意と協力があったからだと思っています。
PoCを通じて広がりはじめたグループ各社での活用
今後については、どのような展望を抱いていらっしゃいますか?
寺尾
かつての私たちがそうだったように、グループ各社でも人手や予算が足らず、なかなか思うように記事コンテンツづくりができない課題を抱えている部署やチームは少なくありません。こうした状況を踏まえ、2026年2月からグループ各社に呼びかけて、7社10事業部、総勢20名ほどのメンバーでPoCに取り組みはじめました。今後は各社のニュースリリースの生成などで、Contents Craftの利用が広がる見込みです。
内山
今回のプロジェクトを通じて、AIエージェントを有効に活用すれば、業務工数やコストを大幅に削減できることがわかったので、今後は過去に制作した記事コンテンツに手を入れて、より効果の出る記事にアップデートしたり、コンテンツ設計や企画の練り込みにより多くの時間を割いたりするなど、マーケターのコア業務に注力しながら各事業の成長に貢献できたらいいですね。
その実現のために、乗り越えるべき課題はありますか?
伊波
現状では、ユーザーの指示を適切に処理するためタスクを分解し、各処理に特化したAIエージェントをつくり連携処理させているのですが、意図しない答えが返ってくるケースは残されています。指示の仕方やタスクの切り分け方には一考の余地があると思っているので、今後も引き続き改善していくつもりです。
寺尾
私はすでに担当を離れてしまいましたが、Contents Craftがグループ全体のマーケティングコストの最適化や、効率的な働き方を実現するためのきっかけになってくれたら、企画者としてこれ以上に嬉しいことはありません。
内山
個人的には、チェックを終えた記事コンテンツをそのままCMS(コンテンツ管理システム)で入稿できるようにしたり、数値の集計やAIによる改善案の提示など、まだまだ実現したい機能がたくさんあります。伊波さんにはこれまで以上に頑張っていただくことになりそうです(笑)。
伊波
そういわれると逆に燃えてきますね(笑)。開発者の立場としては、Contents Craftの改善に加え、たとえば、オーガニックで流入した見込み客に対し、最適な商材を提案したり、ウェブ商談から成約につなげたりするようなAIエージェントがつくれたらと思っています。事業貢献にも直結しますし、AIエージェントの可能性を探る意味でも、ぜひ挑戦したいですね。

取材・文=武田敏則(グレタケ)/撮影=山口修司(ファーストブリッジ)
※所属組織および取材内容は2026年6月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年6月時点での内容です。