AI時代だからこそ“人”の価値が高まる現代、テクノロジー人材の価値を再定義するパーソルの人事制度とは

テクノロジー人材の専門性や挑戦を、評価や報酬、キャリアへどのように反映するか。パーソルホールディングスでは、テクノロジー人材に特化した「プロダクト・エンジニア人事制度(PE制度)」を2023年に導入し、社員一人ひとりが前向きにはたらき、自分らしいはたらき方を主体的に選択するための環境づくりを進めてきました。
今回は、テクノロジー人事企画室の宮本に、制度導入から3年を経て見えてきた変化や、AI時代に求められる人材の専門性と挑戦をどのように評価しているのか、また制度運用における難しさについて聞きました。
導入から3年。専門性と挑戦に報いるPE制度が、社員と組織にもたらした変化
まずは、PE制度が導入された目的と背景を、改めて教えてください。
パーソルグループは「グループ中期経営計画2026」で「テクノロジードリブンの人材サービス企業への進化」を経営の方向性として掲げました。PE制度はその方針を組織づくりや人材戦略へ落とし込む施策の1つとして導入したものです。
PE制度の目的は、一人ひとりが前向きにはたらき、能力を最大限に発揮できる環境をつくることです。そのために、1. 評価と報酬が市場に即したものであり続けること、2. 挑戦とその成果が、ダイレクトに評価へ反映されること、3. グループ共通のはたらく環境を整え、キャリアパスと機会の幅を広げること——この3つを柱に設計しました。
グループ会社であるパーソルキャリアで運用していたテクノロジー人材向けの制度を参考にし、パーソルホールディングスの組織体制や人材特性に合わせて、改めて制度を設計しました。
PE制度の概要を教えてください。
まずテクノロジー人材を6つの職種に分類し、それぞれの専門性やスキル、市場での水準を踏まえて、職種ごとの報酬レンジを設定しています。

また、職種や職位、グレードごとに求められる役割や能力も明確に定義し、それらがどの程度発揮されているかを絶対評価で判断しています。さらに、本人が設定した目標の達成度や、新たに習得したスキルも評価します。

また、本制度では管理職相当グレード(PE4)以降はマネジメントコース・エキスパートコースのいずれかの中から、自身の目指すキャリアにあったコースに進むことができます。

マーケットに即した報酬であること、社員がチャレンジした結果を、成果だけでなく、スキル・能力の伸長と行動を含めて評価すること、それにより能力を最大限発揮してもらうことが、PE制度の根底にある考え方です。

制度の運用開始から3年を経て、どのような変化が表れていますか?
最もわかりやすい変化は、パーソルホールディングスのテクノロジー組織の規模です。制度導入時は200名を超える程度でしたが、現在は400名規模となり約2倍に拡大しています。ここまで人材を拡充できたことは、制度整備も後押しの一つとなったのでは、と考えています。
採用を後押しした要因の一つが、報酬設定の柔軟性です。PE制度ではグレードだけでなく職種によって報酬レンジを定めており、その報酬レンジを幅広に持たせることで、専門性や市場水準に応じた報酬設定が可能になりました。
一人ひとりの経験やスキルに合った条件を提示できることは、採用力を高めるうえで大きな意味があったと考えています。
採用人数だけでなく、活躍・挑戦する層にも変化はありましたか?
テクノロジー人材が活躍できる環境を整えることで、高い専門性を持つ方を迎えるだけでなく、戦略を描き、組織を動かしながら実行へつなげ、AI領域をはじめとする新たな挑戦をするための後押しにもつながったと考えています。
「中期経営計画FY28」の新たなテクノロジー戦略のゴールとして、「AIファーストな事業モデルへの転換」という方針を掲げられるようになったのは、着実に戦略を実行できる組織づくりを進めてきた積み重ねがあるからだと感じています。
一律の基準では捉えきれない。専門性と挑戦を見極める評価運用
導入当初、目標設定や評価の基準を現場へ落とし込むうえで、どのような難しさがありましたか?
最初は、目標の設定方法や達成度の評価について、現場も人事も手探りだったと聞いています。
PE制度では、社員一人ひとりがチャレンジングな目標を設定します。しかし、目標の難易度は職種や役割によって異なるため、共通の数値指標だけで評価することはできません。
人事にて明確な指標や判断基準を設ける手段もあると思います。ただ、人事だけで基準を細かく決めても、職種ごとの専門性や実際の業務を十分に理解していなければ、現場で機能する制度にはなりません。
そのため、人事が制度を示し現場が従うという一方向の関係ではなく、双方が連動しながら運用をつくる必要がありました。そうした認識の差を埋めることが、導入時の大きな課題だったのではないかと思います。
PE制度を実際に運用するうえで、特に難しいのはどのような点ですか?
PE制度は、目的に沿って柔軟性を持たせた設計にしています。現状のスキルや能力より一段高いチャレンジングな目標を立て、どれだけ自らをストレッチさせ達成に近づけたかが問われます。そのため、評価する側もされる側も意識変革を求められます。
だからこそ、本人のスキルがどれだけ向上したのか、それが実際の行動や成果にどう結びついたのかを、上長が一人ひとり見極める必要がある点が、難しさだと感じています。

一人ひとりを評価する難しさに加え、管理職間で評価基準をそろえる難しさもあったと思います。判断の目線は、どのようにそろえてきたのでしょうか?
難しい要素ではあるのですが、このチャレンジングな目標を設定し評価するのはPE制度の肝ともいえる部分です。管理職同士が集まる会議体を設け、目標の内容や難易度を確認しながら、「この職種やグレードであれば、どこまで求めるべきか」を議論していきました。
現場で目標や成長について話し合う際の共通認識づくりにもつながったと考えています。
現在も評価会議の場で、目標の難易度や評価の妥当性を議論し、目線をそろえ続けています。
管理職の見識やマネジメント能力が問われる制度でもあるので、評価研修やマネジメント研修などを通じて、マネジメント力のさらなる向上にも取り組んでいかなければと考えています。
挑戦を適切に報いるために、評価・報酬・キャリアを一体で動かす
社員の活躍をキャリアや報酬へ反映するため、制度をどう整えてきたのでしょうか?
本人の思うキャリア、自身の能力・スキル、会社としての期待役割、それぞれのギャップをいかに埋めるかも大切だと考えています。
制度を運用する中では、採用・役割変更時の期待を上回る活躍を見せる方もいる中で、より市場水準を意識した報酬のチューニングが出来るよう、2025年に入社後・期待役割変更後、市場水準との整合性を評価時昇給とは別に調整できる「特別昇給ルール」が設けられました。
当初設計した制度をそのまま運用し続けるのではなく、実態に応じて改善を重ねることが、制度を形骸化させないために重要だと考えています。
テクノロジー人材の市場水準や、適切な報酬水準はどのように見極めているのでしょうか?
公開されている求人情報や外部の報酬サーベイを活用しています。複数の情報を組み合わせ総合的に確認しつつ、職種ごとの専門性や個別のスキルの違いについては、採用実態などの現場へのヒアリングも行っています。
市場の動向を見誤れば、採用だけでなく、在籍社員の報酬との間にもずれが生じかねません。だからこそ、社外のデータと現場の実感の両方を踏まえながら、適切な水準を見極めていくことが重要だと考えています。
制度の運用を重ねる中で、社員の意識や行動に変化を感じることはありますか?
ここ1〜2年で、マネジメント職やエキスパート職への昇格に挑戦する方が大きく増えました。あわせて、女性の管理職登用も2023年度当時6名から2026年度初めには15名と、大きく進められています。
「自分らしいはたらき方」を主体的に選択できる仕組みがあることで、会社から役割を与えられるのを待つのではなく、自ら専門性を高め、次のキャリアへ挑戦する意識が広がっているのだと思います。
制度の狙いを適切に反映するために、人事にはどのような役割が求められますか?
こうした仕組みが整っていても、運用が形骸化してしまえば、制度の価値は十分に発揮されません。だからこそ、日々の運用の場面にこそ、人事が介在する必要があると感じています。
繰り返しになりますが、PE制度は、社員が前向きにはたらき、自分らしいはたらき方を主体的に選択するための環境整備の一環です。
報酬がマーケットに即したものであり続け、社員がチャレンジし、能力発揮し、それをダイレクトに評価反映すること、どうすればテクノロジー人材の価値を最大化することが出来るか、今もなお検討を重ねています。難しさはありますが、そこにこそ人事として介在する価値があり、私自身も強い思いを持って制度運営に取り組んでいます。

問いを立て、領域を越えるテクノロジー人材を、働く環境整備から支える
制度を3年間運用してきて、現在はどのような見直しが必要だと感じていますか?
制度は、一度つくれば完成するものではありません。市場と現場の変化を捉えながら、見直すべき部分を見極め、実際の運用へ反映し続けることが重要と考えています。その中で、いくつか検討していることがあります。
職種定義については、導入時に定めた6つの職種が、現在の市場や実際の業務実態にも合っているか。テクノロジーを取り巻く環境は変化が速く、職種やスキルの定義も固定したままにはできません。
また市場水準との連動も重要なテーマです。職種やスキルの価値が変化する中で、その動きを制度や報酬へどのように反映していくのかを継続的に検討しなければなりません。
今後も、テクノロジー人材が力を発揮できる環境を広げ、最適な配置と価値の最大化を実現していきたいと考えています。
AI時代において、パーソルホールディングスでは、テクノロジー人材にどのような力を求めていますか?
私たちのテクノロジー組織では、AI時代に求めるテクノロジー人材として、専門性はもちろんのこと、自ら問いを立て、AIを活用して答えを導き出したうえで、最後は自分で意思決定することが求められます。また、自らの専門領域に閉じず、周囲と協働しながら領域を越えていく力も必要です。
専門性としても、幅広く領域をつなぐ人材と、専門性を深く突き詰める人材の両方が必要だと捉えています。
そうした人材の挑戦を、PE制度によってどのように支えていきたいと考えていますか?
PE制度は一人ひとりが前向きにはたらき、能力を最大限に発揮できる環境をつくることを目的としています。環境整備を進めることで、自ら問いを立て、AIを活用しながら新しい領域へ踏み出す人の挑戦を後押ししたいと考えています。
グループ各社へもはたらく環境整備を広げていくことが、会社の枠を越えた異動・配置・キャリアの選択肢が広がると考え、テクノロジー人材がさまざまな機会を得られる状態を目指しています。
ただ、制度だけで求める人材が育つわけではありません。今後は、AI時代に求められる行動や成果をより適切に制度に反映できるよう、運用をさらに進化させていきたいと考えています。
最後に、AI時代に自らの専門性やキャリアをさらに高めていきたいと考えるテクノロジー人材へ、メッセージをお願いします。
私たちは、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンのもと、人の可能性を広げていくことを大切にしています。AIと人の力を掛け合わせてこれまでにない役割への挑戦・新たな価値創造を担っていただける方に、ぜひ仲間になっていただきたいと思っています。
はたらき方は時代とともに変わりますが、このビジョンは不変だと考えています。
これからも、自分のキャリアを自ら切り開く人に、選択肢のある環境を用意し続けたいと考えています。

ありがとうございました!
取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=山口修司(ファーストブリッジ)
※所属組織および取材内容は2026年7月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年7月時点での内容です。
Profile
宮本雅子 Masako Miyamoto
パーソルホールディングス株式会社
グループテクノロジー
テクノロジー人材戦略部
テクノロジー人事企画室
室長
2009年に現パーソルキャリアへ入社。人材派遣サービス法人営業として従事後、人事本部へ異動し、労務として規程改定/同一労働同一賃金対応/福利厚生企画/パーソルキャリア健保設立を対応、HRBPとしてテクノロジー関連本部のPE制度を中心とした評価、人事イベント運営に携わる。2025年にパーソルホールディングスへ異動。テクノロジー管掌におけるPE制度改定、組織再編PJに携わる。2026年4月より現職。