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UAT準備を65.8%削減――CoE組織の若手2人がAI活用で切り拓いたWorkflow移行プロジェクト

Profile

Tatsuya Nakayama

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部 プロジェクト推進部
BPO SBU推進室
コンサルタント

2020年にパーソルプロセス&テクノロジー(PPT/現PBD)へ新卒入社。
BE事業部に配属し、顧客先常駐を通じたtoB/toC営業および社内ヘルプデスク業務に従事。
営業業務では基地局設置のために、候補地の選定から土地・建物オーナーとの交渉~契約締結までを行いながら対面コミュニケーションおよび関係構築力を強化。ヘルプデスク業務ではクラウドベースのコンテンツ管理、キッティング、FAQ整備、業務改善対応などを通じて各種サービスの運用・保守スキルを習得。2023年10月より公募型異動制度「キャリアチャレンジ」にてパーソルホールディングスに転籍。

Takumi Iwatsubo

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部 プロジェクト推進部
BPO SBU推進室

2025年、パーソルホールディングスに新卒入社。大学時代は複数のIT企業でインターンを経験し、事業変革の現場に立ち会う中で「テクノロジーの力が既存事業を変える」と確信。卒業後は、IT企業ではなく、人材サービス業界をテクノロジーで変革しようとしているパーソルホールディングスへ入社を決意。2025年度新人成果発表会「Step」にて、新人賞を受賞。現在はパーソルビジネスプロセスデザインの経営基盤刷新プロジェクトに参画。BPO事業の基盤変革に、入社1年目から挑んでいる。

生成AIの活用が広がる一方で、「実際のプロジェクトでどう活用すれば成果につながるのか」と悩む現場は少なくありません。特に、期限や品質が厳しく求められるプロジェクトでは、AIを業務へ組み込む難しさを感じる場面も多くあります。

そうした中、パーソルグループのある事業会社で進行していたWorkflow移行プロジェクトでは、ITプロジェクト未経験だった若手メンバー2人が、生成AIを活用してUAT(ユーザー受け入れテスト)におけるテストシナリオ・テストケース作成のプロセスを見直し、大幅な工数削減を実現しました。

今回は、プロジェクトを推進した中山さんと岩壷さんに、未経験から挑んだプロジェクトの裏側や試行錯誤のプロセス、そしてAIを実務へ落とし込むための考え方について話を聞きました。

限られた期間で業務基盤を刷新、業務影響を許さないプロジェクトの全体像

まずは、Workflow移行プロジェクトの概要を教えてください。

中山

今回の取り組みは、既存のWorkflowシステムを新しい基盤へ移行するプロジェクトです。当時利用していたWorkflow環境のサービス終了が決まっていたため、一年以内に新しい環境へ移行しなければなりませんでした。

移行が間に合わなければ、申請業務そのものに影響が出る可能性もあります。そのため、期限を延ばすという選択肢はなく、限られた期間の中で要件定義から設計、テスト、リリースまでを完了させる必要がありました。

プロジェクト全体としても難易度が高く、業務への影響を出さずに移行を完遂することが求められていました。

そうしたプロジェクトに、お二人はどのような立場で参画したのでしょうか?

岩壷

私は新卒1年目で、配属後初めてアサインされたプロジェクトがこのWorkflow移行プロジェクトです。大学では情報系を専攻していたためITの基礎知識はありましたが、実際のプロジェクト経験はありませんでした。最初に担当する案件がグループ会社に大きな影響を及ぼす大規模プロジェクトだったので、正直驚きました。

ただ、それ以上に「新卒1年目からここまで任せてもらえるのか」という気持ちの方が大きかったです。経験豊富な中途入社のメンバーも多くいる中、同じように仕事を任せてもらえることに大きなやりがいを感じていました。

中山

私も、プロジェクト経験者ではありません。もともとはグループ会社でバックオフィス業務や営業業務に携わっており、その後「キャリアチャレンジ制度*」を活用して異動してきました。

そのため、ITプロジェクトという観点では岩壷さんと大きく変わらない立場だったと思います。プロジェクトの進め方やマネジメントについては学びながら進める状態であり、非常にチャレンジングな案件でした。

*キャリアチャレンジ制度:グループの全社員を対象にした公募型の異動制度

本プロジェクトではどのような役割を担っていましたか?

中山

プロジェクト全体に関わりながら、その中でもUATフェーズの管理を担当していました。

UATは、システムをリリースする前に実際の利用者が業務目線で確認する工程です。システムとして正しく動くだけでなく、現場で問題なく利用できるかを確認する重要なフェーズになります。

岩壷

私も、総務や経営管理 をはじめとする業務部門へのヒアリングや認識合わせをしながら、中山さんのサポート役として、UATに向けた準備も担当していました。

手作業では間に合わない。プロジェクト終盤で直面した工数とスケジュールの壁

UATではどのような課題に直面したのでしょうか?

岩壷

UATでテストを実施するためには、「テストシナリオ」と「テストケース」を準備する必要があります。

テストシナリオは業務全体の流れを整理したもので、テストケースは実際の操作手順や確認項目をまとめたものです。申請や承認の流れを一つひとつ確認できるレベルまで定義する必要があります。

当初は、業務をもっとも理解している業務部門の方々に作成いただく想定で進めていました。ただ、UATの実施時期が業務部門側の繁忙期と重なったことで対応が難しくなり、限られた期間の中でどのように準備を進めるかがプロジェクト終盤の大きな課題になりました。

工数やスケジュールはどの程度逼迫していたのでしょうか?

中山

Workflow移行プロジェクト全体の期間は約1年でしたが、UATの準備期間は実質2カ月ほどしか残っていませんでした。その後には UATも リリース準備も控えています。

つまり、このタイミングでテストシナリオやテストケースの作成が遅れると、プロジェクト全体にも影響が出てしまう状況でした。

岩壷

対象となるWorkflowは25種類ありました。それぞれに対してテストシナリオとテストケースを作成する必要があるため、成果物としては50ファイル前後になります。

それらを、業務を理解しながら作成しなければいけません。他のタスクも並行して進めていたためプロジェクト側のリソースも足りず、手作業だけで乗り切るのは現実的ではないという感覚がありました。

そうした中で、この状況をどのように解決しようと考えたのでしょうか?

岩壷

まず考えたのは、「工数をどうやって減らすか」でした。そこで上長にも相談したところ、AIを活用して効率化できないかという話になり、「テストシナリオやテストケースの作成に活用できないだろうか」と考えたのが出発点です。

中山

もともとAIは、議事録の要約や情報収集など、日常的に活用していました。ただ、テストシナリオやテストケースを生成させるような使い方は経験がなく、本当にできるのかという不安はありました。それでも、スケジュールを考えると試さないという選択肢はありませんでした。

幸いにも設計書やUAT計画書など、活用できる資料は揃っていたため、まずはそれらをAIに読み込ませて試してみようと、取り組みが始まりました。

AIを作業者に変える。業務分解と仮説検証で再現性のあるプロンプト設計へ

AIを活用した際は、どのような結果でしたか?

中山

最初は関連する資料をまとめて読み込ませて出力を試しました。ただ、結果としては全然うまくいきませんでした。

私たちが求めている内容とは大きく異なり、実務でそのまま使うには難しい出力になっていたのです。大量の情報を一度に処理しようとして、AIがうまく整理できていない状態だったのだと思います。

どのように改善していったのでしょうか?

中山

まずは、工程ごとに出力させる方式に変えました。どこまでは正しく出力できていて、どこから崩れているのか。一つずつ切り分けながら確認していきました。

具体的には、最初にUATの計画書を読み込ませて、テストシナリオとテストケースの違いを理解させ、その次に設計書をもとにテストシナリオだけを生成する。そして最後にテストケースへ落とし込むという流れに変更しました。

最初は一括でやろうとしていましたが、工程を分けたことで精度は大きく変わりました。その後、上司や岩壷さんと、どうすればうまく生成されるかを何度も議論しながら修正を繰り返しました。

この最初の型を作るところはかなり試行錯誤しましたが、一度できてしまえば、他のWorkflowにも横展開できるようになりました。

その後はどのように精度を高めていったのでしょうか?

岩壷

初期の型の作成は中山さんが担当し、その後の精度を高める工程は私が担当しました。

Workflowにはさまざまな分岐があり、複雑なほど一度の生成ではうまく出力されません。そこで業務フローを追加で読み込ませたり、分岐条件をテキスト化して渡したりしながら改善を進めました。

また、どのボタンを押していくのかという、操作手順の精度にも課題がありました。こちらは、既存のテストケースを読み込ませたうえで、新しいWorkflowに対する出力結果を一つずつ確認しながら改善していきました。

仮説検証を繰り返すことで、最終的には操作手順の粒度や記載形式も揃うようになり、実務で利用できるレベルまで精度を高められました。

試行錯誤の中で見えてきた、AI活用のポイントを教えてください。

岩壷

AIは一度指示して終わりではありません。何度も対話しながら改善していくことで、アウトプットの質が上がっていきます。

途中からは、「この情報を追加したらどうなるだろう」「この指示を変えたら改善するのではないか」と考えながら試すこと自体が楽しくなっていました。その積み重ねによって、徐々に実務で使えるレベルへ近づいていったと思います。

中山

私も同じ感覚です。最初はうまくいきませんでしたが、AIがどこでつまずいているのかが見えてくると、今度はこちらが改善策を考えられるようになります。

AIを使いこなしたというより、AIが作業できるように仕事を分解していった感覚に近いです。成果につながったのも、その積み重ねだったと思います。

未経験でも価値は生み出せる。AI活用を組織の資産へ変える実装力

最終的にどのような成果につながったのでしょうか?

中山

AIを活用してテストシナリオ・テストケース作成を自動化したことで、手作業で実施した場合と比較して65.8%の工数削減につながりました。

結果として、限られた期間の中でもUATを予定通り実施し、プロジェクト全体も期限内に完遂できました。工数削減だけでなく、期限と品質の両立を実現できたことに価値があったと考えています。

岩壷

加えて、私たちが所属しているCoE(Center of Excellence)は、グループ会社を支援する立場の組織です。そのため、個人や一つのプロジェクトだけでノウハウを抱えるのではなく、組織へ還元していく文化があります。

今回の取り組みも、単に目の前の課題を解決して終わりにはしませんでした。作成したプロンプトや進め方を整理し、他のメンバーや別のプロジェクトでも活用できる形でナレッジ化しています。

一度きりの取り組みではなく、組織として再現できる形にできたことも大きな成果だったと思います。

今回の経験で、お二人自身は何を得たと思いますか?

岩壷

一番大きかったのは、自分の中で武器ができたことです。ベテランの方たちは、それぞれ専門性や経験を持っていますが、その中でAIという領域では自分なりの強みを持てるようになった感覚があります。

また、「こういうことにもAIは活用できます」と自分から提案できるようになったことも大きな成長だと捉えています。

中山

私は、経験が浅くてもプロジェクトに貢献できる方法はあると実感できたことです。プロジェクト管理や推進の知識については、まだまだ経験者の方たちから学ぶことが多くあります。一方で、AI活用については、まだ誰もが正解を持っているわけではありません。

だからこそ、AIという領域では、新卒や未経験の私たちでも十分に価値を出せるという自信を持てましたし、経験者とは違う角度からプロジェクトへ貢献できると感じています。

最後に、今後挑戦していきたいことを教えてください。

岩壷

AIはあくまで手段ですが、これからの仕事の進め方を大きく変える可能性を持った技術だと感じました。だからこそ、まずは実際に触ってみることが大切です。使ってみることで、「この業務にも活用できるかもしれない」という発見があり、その積み重ねが新しい価値につながっていくのだと思います。

今回の経験を一つの成功体験で終わらせるのではなく、今後もさまざまなプロジェクトでAI活用に挑戦しながら、人や企業により大きな価値を提供できる人材になりたいと考えています。

中山

AI活用そのものも大きな学びでしたが、それ以上に、課題に向き合い続けることの大切さを実感しました。最初は思うような結果が出ませんでしたが、なぜうまくいかないのかを考え、試行錯誤を繰り返したことで成果につながったのだと思います。

今後はプロジェクト全体を管理できる人材を目指し、今回得たAI活用の知見も活かしながら、より良いプロジェクト運営や価値提供につなげていきたいと考えています。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影==鳴嶋由紀
※所属組織および取材内容は2026年6月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年6月時点での内容です。

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