「新卒社員」が企画立案、パーソルホールディングスが刷新したAI時代の新人研修「課題解決ハッカソン」の舞台裏

パーソルホールディングスでは、2026年度から新人研修をリニューアルしました。その目玉となったのが、「課題解決ハッカソン」です。AI時代を見据え、開発スキルそのものではなく「課題解決」に主眼を置いた新たなプログラムについて、新卒1年目で企画を立案し、2年目で自ら講師も務めたグループAI本部 プロジェクト推進部BPO SBU推進室の岩壷さんに聞きました。
AI時代や実務との「ズレ」を解消する研修にしたかった
岩壺さんは、2026年度の新人研修で6月に実施したプログラムの企画や提案、実施までを担当しました。どのような流れから担当することになったのでしょうか。
私が入社した年のパーソルホールディングスの新人研修は4月から6月まで3カ月にわたって実施していて、基本的に外部のサービスを利用していました。例えば4~5月は、社会人の基礎から要件定義・フローなどプロダクトに関すること、インフラシステム開発に関すること学び、6月は座学として外部のeラーニングサービスを受講する、といったイメージです。
いわゆる「知識を得る」のがメインですね。
これらの研修には、基礎的な内容をじっくり学べるメリットがあった一方で、時代に即した形へアップデートしていく必要もあるのでは、と感じていました。
一例をあげると、昨今はAIが飛躍的な進化を遂げて、開発のスピードも大幅に向上しています。パーソルホールディングスでは「ITコンサルタント」という業種で新卒採用を行っていますが、こうした変化を踏まえると、これから求められるのは「プロダクト開発」そのものよりも、もっと根本的な力なのではないかなと思っていました。
具体的には顧客が抱える課題を深く理解し、求められる要件を細かく分解すること。そして、真の課題解決に必要なものは何かを徹底的に考え抜く力です。
もともと同期たちとは、こうした課題感をもとに「新人研修をもっとアップデートしたい」という話をしていました。そんな中、新卒1年目の年末頃、本部長の岡田さんと食事をする機会があり、自分たちの考えや思いを率直に伝えてみました。
ありがたいことに前向きな反応をいただき、その翌日に企画書にまとめて提案した、というのが実施に至るまでの大まかな流れです。

始まったのが年末、そこから翌年の新人研修を組み立てていった、と考えるとすごいスピード感ですね。翌日に提案していたという岩壺さんの行動力にも驚かされます。
ありがとうございます(笑)。
現実的なスピード感的には、研修を刷新するとしても2027年度くらいになるだろうと考えていたのですが、想像以上に早く動き出すことになりました。また、「配属後に必要となるスキルと、研修内容の間に少しギャップがあった」という私自身の経験を踏まえた課題感もすでに感じていたので、企画自体も比較的スムーズに作れた感覚です。
企画にあたり、どんな点を意識しましたか。
ここまでお話ししたように、既存の研修が知識のインプットという側面が強かったこと。さらに、実際の業務と密接に結び付いている内容とは言い切れない部分があったこと。この2つを解消することを念頭に置き、AI時代がプロダクト開発にもたらす影響や変化を踏まえながら「自ら課題を見つけ、解決できる力」を養うことを軸に据えました。
テクノロジー活用やAI化はあくまで手段であり、目的は組織風土やビジネスそのものを変革することにあります。――こうしたマインドを新卒の皆さんにも身に着けてもらえるようなプログラムにできればと考えました。
あえて「業務に関係ないテーマ」でハッカソンを行ったワケ
実際に、研修はどのようなプログラムになったのでしょうか。
4週間をかけて、課題発見からアプリ開発までを段階的に体験できる内容にしました。このうち2~4週目はハッカソン形式にしています。
1週目は、これまで座学で行っていた内容を濃縮し、ノーコードツールの活用方法やデータ設計の仕組みなどをレクチャーしました。ただし、開発そのもののスキルを高めることが主な目標ではないので、「これさえ知っておけば、ベンダーやコンサルなど外部関係者と円滑にコミュニケーションができる」という基礎的な内容にとどめています。
続く2週目からはいよいよハッカソンの本番です。まずは1人ひとりが、自身の身近な困りごとや不便に感じたことをテーマにしてアプリ開発をしました。
テーマに対して、アイデアを発散して現状の問題を整理し理想とのギャップを洗い出し、その上で、どのようにテクノロジーを活用すれば課題解決ができるのかを踏まえ、アプリ構想を形にしていく流れとしました。こうしたプロセスをまず私が示して、特に重要な課題を深掘りについてはさまざまなフレームワークも用意しました。3週目以降は個人ワークからチーム活動へ移行し同様のサイクルを回していきました。
皆さん、どんなテーマを設定していたのでしょうか。
2つのチームに分かれたのですが、1つ目のチームは「睡眠の質が低い」という悩みをテーマにしていました。そこから「入眠前にスマホを見過ぎている」であったり、「シンプルに疲労が蓄積している」など、考えられる原因を洗い出していましたね。最終的に、寝る前にスマホを見過ぎているという点を最大課題と位置づけ、スマホの既存機能と連携し、一定時間アプリの利用を制限するようななどの機能を備えたアプリ開発していました。
もう1つのチームが取り組んだのは、高齢者の見守りに関するアプリです。学生時代に祖父母などの親族を亡くした経験を持つ人が少なくないことから、高齢者の異変にいち早く気付ける仕組みを考えました。例えば、冷蔵庫が1日を通して一度も開閉されていない場合にアラートを通知し、異変の可能性を知らせるといった内容でしたね。

パーソルホールディングスの業務やAIとは直接絡んでいないテーマというのが意外です。
こうした新人研修で、会社が抱えている業務課題の解決に取り組むケースは少なくないと思います。一方で、各社の事例を見ていると成果内容がやや抽象的になってしまいがちであるといった課題もあると感じています。
当たり前なのですが、新卒時代の私を含む新卒のみなさんは業務に対する解像度は高くありません。そして業務を理解することはできても、本質的な課題や原因を見抜くことは難しいと思います。その状態では、課題設定や対策も本質的なものにはなりにくいのではと考えています。
自分が実際に困った経験がないテーマでは、課題を深く考えるおもしろさを感じにくく、主体的に取り組めないとも思っていました。それならば思い切って自分たちにとって身近なテーマを扱った方が効果的だろうと考え、今回のようなテーマ設定を行いました。
AI時代だからこそ、人間同士の関係性も重視した
その他、研修の内容で工夫した点があればぜひお聞きしたいです。
「コミュニケーション」ですね。最初のアプリ開発は個人単位ですが、3週目以降からチーム活動へ移行したのも、そうしたねらいからです。
何か課題を解決するためには、自分のひとりの考えだけで完結していてはいけません。たくさんの人から、自分では思いつかないような角度・視点の意見を聞くことが重要だと考えています。また、AI時代だからこそ人間同士のコミュニケーションを密に行い、相手が本当に伝えたいことを聞き出して理解する能力が求められます。もちろん、AIに適切なプロンプトを与えるという点でも自分の考えや課題を言語化する能力は必要不可欠です。
そこで、ヒアリングするためのコンテンツはしっかりと作り込み、できるだけ多くの人を巻き込みながらハッカソンを進めるようにしました。一方で、あまりルールを厳しく決めてしまうと、研修の本来の目的である「自ら課題を見つけ、解決する力」という点からは遠ざかってしまうという点は意識しました。私を含め研修の運営側からは、週に一度フィードバック面談を実施する程度にとどめ、新卒主導で自律的に取り組んでもらえるように工夫しました。
インプットがメインだった従来の研修から、かなり変わっていますね。もう1点、従来の研修で課題として挙げていた「業務との関連性」についての改善などはいかがでしょう。
パーソルホールディングスでは、新卒社員が各部署に配属されるとメンターが付きます。2025年度までは、配属後にメンターが紹介される仕組みでした。
ただ、新卒社員は配属直後、現場業務への適応や必要な情報のキャッチアップに追われがちです。一方で、メンター側も担当する新卒社員の人柄や特性を十分に理解できていないことが多く、お互いに関係性を築きにくい状況がありました。その結果、メンター制度が十分に機能しているとは言い難い面がありました。
組織的な背景として、パーソルホールディングスは中途入社の社員が多くを占めています。その中に新卒社員が入っていくことを考えると、メンターの役割は非常に重要です。そこで今回は、研修中から課題の探索や深掘りを行う際にメンターとなり得る社員との1on1を設けるなど、積極的に接点を持てるようにしました。

研修を社内に開くことも意識されたのですね。
パーソルグループ内の複数のグループ会社から講師をお招きして、事業説明の機会も設けました。
パーソルホールディングスに入った後はグループ内の各社と連携しながら仕事を進める機会も多くあります。一方で、私や同期、先輩たちも含め「入社前に、グループ内の事業について十分に理解、研究できていなかった」という人も少なくありませんでした。研修が終わると、手元のプロジェクトで忙しくてキャッチアップする機会を持つのも簡単ではありません。
あくまで学生向けの説明会内定者向け研修で話すような内容ではありますが、それでも配属前に知っておくだけで業務のしやすさは大きく変わると確信していましたので、ハッカソンとともにこちらも試験的に導入してみました。
これまでとはガラッと変わった新人研修でしたが、反響はどうでしたか。
研修後のアンケートでは、全体としてポジティブな意見が集まりました。コンテンツが大幅に違うためこれまでのものと相対的な比較は難しいですが、「2027年度以降継続したい」という声もいただいています。
また新卒たちの変化も感じていますね。配属後、自分が所属している組織外へ積極的にコミュニケーションを取る姿も見かけます。
私自身が1年目のとき「学びたい意欲はあるけれど、誰に聞くべきかが分からないし、何をすべきかも見えない」と悩んだことがあります。今回の新卒たちは、研修中から多くの人へヒアリングする機会があったこともあり自然とそうしたコミュニケーションの場にも入り込めている印象です。いわば、“場慣れ”している状態で、きっと即戦力として活躍してくれるのではないかと期待しています。
デジタルの知識が豊富で、アプリ開発のスキルが高い人材ももちろん大切です。一方で、これからの時代に求められるのは「周りを巻き込んで課題解決できる人材」であると確信しており、今回の研修をきっかけにそうした人材が増えていくとうれしいなと思います。
「若手に裁量がある」に偽りがない、チャレンジできる環境
岩壺さん自身としては、今回の研修に携わってみていかがでしたか。
私自身の学びとしては、フィードバックをいかに行うかという点で経験を積ませていただいたと感じています。10人の新人たちと向き合い、1人ずつの「やる気」や次のアクションにつなげるにはどんな会話をすべきかを考えながら過ごした1カ月は、非常に楽しかったです。
また、研修の土台となる目的やゴールがぶれないよう企画を作り上げる過程では、私自身、先輩方から多くのフィードバックをいただきました。企画の根底に据えるべき考え方や、目指すべきアウトプットについて学ぶ機会も多く、今回の企画・運営を通じて非常に大きな学びを得られたと感じています。
お話を聞いていると、年次などにかかわらず非常に大きな裁量を与えられているのがパーソルホールディングスの大きな特徴ですね。
「若手に裁量がある」と掲げる会社は多いと思いますが、パーソルホールディングスは本当にその通りだと感じます。これほどの規模の企業で、若手がここまで大きな挑戦の機会を任されるのは、決して当たり前のことではありません。そういう意味で、自ら手を挙げてチャレンジしたい学生や若手社員にとっては、とても魅力的な環境だと思います。

ありがとうございました!
取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年8月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年8月時点での内容です。
Profile
岩壷拓真 Takumi Iwatsubo
パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部 プロジェクト推進部
BPO SBU推進室
2025年、パーソルホールディングスに新卒入社。大学時代は複数のIT企業でインターンを経験し、事業変革の現場に立ち会う中で「テクノロジーの力が既存事業を変える」と確信。卒業後は、IT企業ではなく、人材サービス業界をテクノロジーで変革しようとしているパーソルホールディングスへ入社を決意。2025年度新人成果発表会「Step」にて、新人賞を受賞。現在はパーソルビジネスプロセスデザインの経営基盤刷新プロジェクトに参画。BPO事業の基盤変革に、入社1年目から挑んでいる。