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デジタルコア基盤構築とグローバル開発を同時に実現――AI活用が支えた新たなプロジェクト推進のかたち

AIを活用した新たなプロダクト開発が広がる中、それを支えるデータ基盤の整備も重要性を増しています。こうした流れの中で、パーソルホールディングスでは、グループ会社が保有する重要なデータを安全かつ柔軟に活用するため、「デジタルコア基盤」の構築を進めました。そして、その開発の過程では、これまで実績のないグローバル開発も求められました。

海外エンジニアとの協働経験も英語での実務経験もない中、どのようにデジタルコア基盤構築とグローバル開発という二つの挑戦を並行して進めていったのでしょうか。

今回は、プロジェクトをリードした武田に、デジタルコア基盤構築の背景やグローバル開発を進める中での意思決定、そして二つの挑戦を前進させたプロセスについて話を聞きました。

AI時代を支える開発環境へ。レガシーシステムと共存するデジタルコア基盤を構築

まずは、デジタルコア基盤について教えてください。どのような課題を解決するためのプロジェクトだったのでしょうか?

今回のプロジェクトは、グループ会社であるパーソルテンプスタッフの基幹システムが持つデータを、安全かつ柔軟に活用することを目的に始まりました。

基幹システムには、はたらくスタッフや派遣先企業に関する重要なデータが集約されている一方、長年運用されてきたレガシーなシステムでもあります。

そのため、新しいプロダクトから直接利用しようとすると、セキュリティや接続面で多くの制約が生じます。さらに、そのシステムの複雑さから、小規模な機能追加や改修においても多くの時間やコストがかかり、AI活用を広げていく上で大きなハードルになっていました。

そこで、基幹システムのデータを安全に管理しながら、プロダクト側で必要なデータだけを柔軟に利用できる仕組みとして、デジタルコア基盤を構築しました。

なぜパーソルホールディングスが今回のプロジェクトに関わったのでしょうか?

デジタルコア基盤の構築は、データ基盤の設計やクラウド、セキュリティなど、幅広い技術領域の知見が求められます。特にパーソルテンプスタッフはセキュリティ基準が厳しく、データの閲覧範囲を細かく制御しながら、柔軟に活用できるようにするといった、相反する要件をシステムへ落とし込む必要がありました。

そのため、パーソルテンプスタッフだけで完結するのではなく、グループ会社への技術支援を担うパーソルホールディングスのCoE(Center of Excellence)が中心となってプロジェクトを推進しました。

単に一つの基盤を構築するだけではなく、今後グループ全体でAI活用を広げていくための土台を築くという意味でも、ホールディングスが担うべき役割の大きいプロジェクトだったと考えています。

「今は難しい」と感じたグローバル開発。チームで進める思いを伝えながら築いた協働体制

デジタルコア基盤を構築している中、グローバル開発も進める話を受けた時、率直にどのように感じましたか?

最初に話を聞いたときは、正直、「今は難しい」と思いました。

デジタルコア基盤の構築は技術的にも難易度が高く、構築するだけでも非常に工数のかかるプロジェクトです。そうした状況の中で、新たに海外メンバーを加え、英語でコミュニケーションを取りながらプロダクトを開発するとなると、かなり負荷が大きいと感じました。

それでも最終的に挑戦しようと思えた理由を教えてください。

パーソルグループはグローバル企業として海外のグループ会社も増えていますが、エンジニア同士が一緒にはたらく機会は、まだそれほど多くありませんでした。

だからこそ、今回の取り組みには大きな意味があると考えました。もしグローバル開発の進め方を確立できれば、その後に続くエンジニアも挑戦しやすくなり、グループ内でのコラボレーションも広げていけるはずです。

もちろん、不安はありました。ただ、「誰かがやらなければ変わらないのであれば、自分が先陣を切ろう」と考え直したのです。自分自身にとっても新しい挑戦になりますし、その経験を組織へ還元できれば、大きな価値があると考えました。

海外エンジニアとの協働経験がない中で、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか?

まずは「何から始めればよいのか」を考えるところからのスタートでした。ただ、本質的な違いは言語だけなのではないかと思い、「海外メンバーとチームとしてはたらくにはどうすればよいのか」という問いをを起点に設計していきました。

当初は、私自身もメンバーも、英語で業務を進められる状態ではありませんでした。そこで、2〜3カ月の短期間に、毎日1〜2時間ほどメンバー全員で英語学習を続け、一気に英語力を引き上げました。

海外メンバーにとっても日本人との協働は初めてで、不安があったと思います。そのため現地へ足を運び、直接コミュニケーションを取りながらチームビルディングを行いました。

さらに、開発内容も英語でドキュメント化し、「何を実現したいのか」「どう進めるのか」を共有した上で、一緒にプロジェクトを推進していきたいという思いを伝えました。

海外メンバーとプロジェクトを進める際に、工夫した点はありますか?

海外メンバーには、国内メンバーとは異なる知見や価値観があります。それは海外メンバーだからこそ持っている強みです。その強みを活かしながら開発を進められる環境づくりが、これからのグローバル開発においては重要だと考えています。

そのため、一方的に仕事を依頼するのではなく、海外メンバーにも役割や裁量を委ね、チームの一員としてともにプロジェクトを進めてもらうことを意識しました。

加えて、現地でチームビルディングを行う際には、アジェンダや会話の流れを事前に設計し、朝会や日々のミーティングにおいても「何を伝えるか」「どのように進めるか」を整理した上で臨んでいました。

ただ、これはグローバル開発だから特別に行ったわけではありません。相手が安心して動ける環境を整えることは、誰かとともにはたらく上での基本的な考え方です。違うのは、日本語か英語かという点だけだったと思います。

人がやる仕事を見極め、AI活用で挑戦する時間を生み出す。仕事の進め方を再設計

一般的にはブリッジSEを置くケースもありますが、なぜ直接コミュニケーションにこだわったのでしょうか?

ブリッジSEを介した開発は、多くのプロジェクトにおいて有効な進め方の一つです。しかし、間に人を介している以上、どうしてもニュアンスの違いが生じることもあります。

さらに、ブリッジSEがいる前提では、今後もその体制に依存してしまい、海外メンバーと直接コミュニケーションを取る力は育ちにくくなります。

今回の目的は、プロジェクトを成功させることだけではなく、グローバル開発を進められる土台をつくることにもありました。そのため、ブリッジSEは介さず、自分たちで英語を学び、海外メンバーと直接向き合いながら開発を進めることを選択しました。

デジタルコア基盤構築やグローバル開発、英語学習など、複数の挑戦を並行して進める中で、限られた時間をどのように使い、プロジェクトを前に進めていったのでしょうか?

今回、複数の新たな取り組みが重なり、業務量が非常に多くなったことで、自分のはたらき方を変える必要があると考えました。そこでまずは、本当に自分がやるべきことを整理した上で、AIに任せられる仕事を積極的に切り分けていきました。

具体的には、毎日の朝会で使う進捗や課題の整理、ステークホルダーへ提出する報告書の作成などです。こうしたプロジェクトマネジメント業務の多くを、AIを活用して省力化・自動化していきました。

実際にAIを活用して、どのような成果が得られましたか?

これまで日々のプロジェクト状況の把握や、報告書作成に使っていた時間を大幅に削減できました。

何を把握しなければならないのか、何を報告しなければならないのかを言語化できれば、その後の情報整理や文書作成はAIに任せることができます。それによって生まれた時間は、すべて英語学習や海外メンバーとのコミュニケーションに充てました。

この経験を通じて、プロジェクトマネジメントへAIを本格的に取り入れる知見も得られました。また、自分自身が成長するための時間や余白を生み出す手段としてAIを活用することには、大きな価値があると実感しています。

挑戦を組織の力へ。デジタルコア基盤構築とグローバル開発を通じて、組織に残した新たな価値

プロジェクトを通じて得られた成果について教えてください。

まずは、デジタルコア基盤を予定どおりリリースできたことです。技術的な難易度が高いプロジェクトでしたが、セキュリティガバナンスを担保しながら、利用者側の開発生産性と柔軟性を両立できる基盤を構築できました。

現在は、この基盤を活用したプロダクト開発も始まっており、グループ全体でAI活用を推進していくための土台を築けたことは、大きな成果だったと感じています。

もう一つは、グローバル開発の進め方を組織に残せたことです。今回、海外と国内の混成チームを立ち上げ、デジタルコア基盤の動作検証用プロダクトを約2カ月で開発しました。

パーソルホールディングスとして初めて、海外メンバーと協働できる土台を築き、今後のグローバル開発へと展開できる知見を残せたことに大きな意味があったと考えています。

実際に挑戦してみて、グローバル開発に対する考え方はどのように変わりましたか?

最初は、このタイミングでグローバル開発を始めるのは難しいのではないかと考えていましたが、実際に挑戦してみると、想像していたほど特別なものではありませんでした。プロジェクトの進め方や考え方は日本での開発と大きく変わらず、本質的な違いは言語だけです。

また、実際に協働したメンバーの中には、10年目のエンジニアに匹敵する経験やスキルを持っていると感じられる若手エンジニアもいました。グローバルに目を向けることで、より優秀なエンジニアとチームを組み、新しい価値を生み出せる可能性があることを実感できたことも、大きな収穫でした。

今回のプロジェクトを通して、海外メンバーや国内メンバーが得たものは何だと感じていますか?

海外メンバーは、作業を依頼される立場になりやすく、モチベーションを保ちにくいケースもあると聞いていました。そのため、お互いが安心して意見を言い合える環境をつくれるよう、あえてスケジュールに余裕を持たせ、コミュニケーションの時間を十分に確保しました。

その結果、国内と海外という立場を意識することなく、一つのチームとして自然に協働できる関係を築けたのだと思います。実際、プロジェクト終了後には、海外メンバーから「とても快適にはたらくことができた。最大の成果を出すことができた」という声もありました。国境を超えて、それぞれがいきいきと力を発揮しながら成果を生み出せたことは、パーソルグループの理念である「はたらいて、笑おう。」を体現できた貴重な経験だったと感じています。

そして、今回のプロジェクトでは、難易度の高い技術領域にも取り組むことができました。メンバー一人ひとりにとって技術面で得られたものは大きく、グローバル開発を経験できたことを含め、今後のキャリアにおける大きな財産になったと感じています。

最後に、これから新しい挑戦へ踏み出そうとしているエンジニアへメッセージをお願いします。

AIの進化によって、さまざまな仕事がAIに置き換わると言われています。ただし、「何をAIに任せるのか」「どのような仕組みをつくるのか」を考え、周囲を巻き込みながら新たな価値を生み出していくのは、これからも人の役割です。

だからこそ、エンジニアの価値は今後さらに高まっていくと考えています。そして、パーソルホールディングスには、自分の成長だけでなく、会社や事業の未来につながる挑戦ができる環境があります。

もし今、「自分にはまだ難しいかもしれない」と感じている方がいたら、ぜひ一歩踏み出してみてください。挑戦する前に見えていた景色と、挑戦した後に見える景色は、きっと大きく異なるはずです。

ありがとうございました!

取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/撮影=長坂佳宣(PalmTrees)
※所属組織および取材内容は2026年7月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年7月時点での内容です。

Profile

武田真行 Maiki Takeda

パーソルホールディングス株式会社
グループ AI 本部エンジニアリング部
Technical Alliance 室
シニアエンジニア

2015年、SIerに入社し、業務システム開発に従事。その後、飲料メーカーにて音声認識や生成AIを活用し、DX推進を主導。2025年4月にパーソルホールディングスへ入社し、基幹システムのデータ活用基盤の開発やグローバル開発チームの立ち上げを牽引。

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