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現場に寄り添い、AI活用を形にする。現場の困りごとから3つの業務でAI活用を実現。CoE組織が実践する伴走型支援

Profile

Yuki Sato

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部
プロジェクト推進部 Tech SBU推進室
シニアコンサルタント

ITベンチャー企業でのWebマーケティングや、Web制作プロダクションでのWebディレクションなどの経験を経て、2012年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。情報システム部門のマネジャーとしてアルバイト情報サービス”an”のサイト関連システムの企画・開発・保守を推進。2021年にはパーソルホールディングスに転籍し、現在はCoEにてPM、PMOなどの役割でグループ個社の様々なITプロジェクトの支援に従事。

Ryota To

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部
データソリューション部
データサイエンス室
室長

SIerに新卒入社。データ分析PoCや、AIサービス/システムの企画・開発・プリセールスに従事。2023年パーソルホールディングスに入社。業務効率化、AIによるサービスの付加価値向上を目指して、業務のAI適用を推進中。2025年10月より室長を務める。

Ryosuke Teraoka

パーソルホールディングス株式会社
グループAI本部
データソリューション部
データサイエンス室
リードデータアナリスト

2016年に川崎重工業へ入社。溶接施工監理技術者として、蒸気タービンやコンプレッサーの溶接構造物の施工管理に従事。施工計画の立案、品質管理、新規設備の立ち上げなどを担当。2020年に本社部門へ異動し、製造領域のデータ分析やAI開発を推進。作業ミスを検知するAIの開発、ダッシュボード整備などを通じて業務効率化を支援。2025年にパーソルホールディングスへ入社後は、主にPXT向けのCoE業務に従事し、データサイエンティストとして施策の企画から実装、ツール提供までを一貫して担い、業務の改善を後押ししている。

パーソルホールディングスのCoE(Center of Excellence)では、専門性を持つテクノロジー人材がグループ各社のテクノロジー活用を支援しています。今回はその取り組みの1つとして、パーソルクロステクノロジーへのAI活用支援事例をご紹介します。

現場の困りごとや課題を丁寧にヒアリングし、3つの業務に活用できるツールの開発まで伴走した裏側について、パーソルホールディングスの佐藤雄紀、藤亮太、寺岡諒祐に聞きました。

「AIは自分たちにも使える」と感じてもらうきっかけにしたかった

まずは、今回のプロジェクトを推進したCoEの役割とともに、みなさんの業務内容や所属組織について教えてください。

佐藤

CoEとはパーソルホールディングス内に設置されている組織で、パーソルグループ各社のテクノロジー活用を支援しています。グループ各社にも情報システム部門や開発部門はありますが、テクノロジー人材の採用や育成にかけられるコストや対応できる領域には差があります。そこを補いながら、グループ全体のテクノロジー活用を推進する力を底上げしていくことが私たちのミッションです。

また、私が所属するTech SBU推進室には、プロジェクトマネジメントやコンサルティングのスキルを持つテクノロジー人材が多く在籍しています。PMやPMOなどの立場で、グループ各社のさまざまなプロジェクトに携わっています。

藤

私が室長を務め、寺岡さんも所属するデータサイエンス室は、AIのモデルやプロダクトの開発・構築を担う組織です。今回の支援は、まず私と佐藤さんが中心となってプロジェクトを立ち上げ、その後、開発フェーズを寺岡さんが担当しました。

寺岡

データサイエンス室では、単にツールを開発するだけでなく、現場の課題を明確にしたうえで解決方法を提案し、AIを活用したプロダクト開発や環境構築を行っています。そして実際に現場で使ってもらうところまで伴走するのが私たちの役割です。

今回、パーソルクロステクノロジーへの支援が始まったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。

佐藤

パーソルクロステクノロジーのマーケティング本部長から「日常業務の中に手作業で対応している業務があり、より効率的に進められないか。AIを活用できる可能性を検討したい」
と相談を受けたことです。

ただ、本部長の期待は「単なる業務改善」「AIの導入」だけではなかったと思います。

今回支援した現場は、テクノロジーを専門とする部門ではありません。世の中でAIが注目されていても、「自分たちの業務にどう活用できるのか」は、まだ身近に感じられていない、具体的にイメージしにくい状況だったと思います。

ビジネスにおけるAI活用の重要性が高まる中で、「AIは特別なものではなく、自分たちの仕事にも使える。そして実際に業務改善につながる」と実感してもらうきっかけにしたい。お話を伺う中で、そうした思いを強く感じました。

藤

「どんなに小さくても良いから、まずは目の前の業務を改善したい」という意欲が現場に強くあったのも印象的でした。「困っている業務」と「実現したいこと」がある程度具体的だったので、私たちとしても動き出しやすかったですね。

データサイエンス室は、これまではパーソルテンプスタッフを支援する機会が多かったんですが、ちょうど他の事業領域にも活動の幅を広げたいと考えていたタイミングだったので、「ぜひやらせてください」とこのプロジェクトに参画することになりました。

数千件のデータを手作業、目視……煩雑過ぎる作業を、どうにか楽にしたかった

すでに先方にアイデアがあったところからのスタートだったということですが、そこからどのように具体化していったのでしょうか。

藤

「こういうことをしたい」というビジョンはありましたが、どう実現するかは、まだ具体化されていませんでした。そこで、現場へのヒアリングと実現性の検討を重ねながら、できるだけコストを抑え、スピード感をもって進められる方法を考えていきました。

最初に取り組んだ勤怠データの確認業務では、業務に使用しているExcelデータを開きながら実際の作業を説明してもらいました。30分から1時間ほどの説明の中で、かなり多くのデータを行き来しながら作業を進めていることが明らかになっていきました。勤務データの膨大なセルを1つずつ確認する作業もあり「これは大変だろうな」と感じたのを覚えています。

寺岡

実際の業務を見て、「AIを活用して、少しでも現場の負担を減らしたい」と思いましたよね。

藤

今回のプロジェクトに限らず、私たちは支援に入る際には表面的な課題や要望だけでなく、日々の業務で感じている負担や率直な思いも含めて、できる限り話してもらうことを意識しています。どんな作業がつらく、何に困っているのか。どんな作業が負担なのか。そこに業務改善の本質があると確信しているので、今回もとにかく根掘り葉掘り聞き、システムで解消できる課題を整理していきました。

取り組んだ3つの施策を、簡単にご紹介ください。

寺岡

パーソルクロステクノロジーは、IT・機電領域を中心とした人材派遣や、技術支援などの事業を展開しています。今回は、こうした事業を運営するなかで発生する社内業務を対象に、3つの施策に取り組みました。

1つ目は、派遣スタッフの勤怠データ確認業務です。派遣就業先ごとに形式が異なる勤務表の内容を社内システムへ登録する作業の一部を、AIで自動化しました。

2つ目は、担当営業からの派遣スタッフの交通費に関する問い合わせメールの管理です。AIがメール内容を読み取って自動登録することで、業務負荷の軽減や登録漏れの防止を図っています。

3つ目は、パーソルクロステクノロジーが出展する外部の展示会来場者情報の取り込みです。AIを活用して来場者データを整理・補完し、社内システムへ取り込める形式に変換できるツールを開発しました。

現在の進捗や、現場からの反応はいかがですか。

佐藤

勤怠データと交通費問い合わせの2施策は、すでに現場で運用されています。現場からは「これまで時間がかかっていた作業の負担が減った」「かなり助かっている」という声をいただいています。

実は展示会の来場者情報を扱う施策は別の部門から依頼を受けたものです。当初は外部ベンダーへの依頼も検討していたそうですが、先行して進めていた上記2つの施策の成果を評価いただき、相談いただきました。こちらもすでにツール開発は完了していて、現時点では最終テストを進めています。

「正論」ではなく、「共感」と「現物」で相手の納得感を高める

いずれの施策も好評を得ているんですね。今回、スムーズにプロジェクトが進んだ要因はどんな点にありますか?

藤

誰が何を担うのかが明確だったことが大きかったと思います。パーソルクロステクノロジーの現場は困りごとや業務の実態を共有し、データサイエンス室はAI・ツールの設計開発を担う。佐藤さんはその間に立ち、関係部門との調整や社内調整・進捗・課題管理などプロジェクト全体を推進する。小規模かつスモールスタートだったこともあり、意思決定や実行のスピードは、これまでの支援と比べても速かったのではないでしょうか。

逆に、難しかったことはありますか。

寺岡

最初はどんな提案が相手に響くのかを見極めるのが難しかったですね。特に私の説明は技術寄りになりやすいのですが、佐藤さんが「これって、こういうことですよね」と、先方にも分かりやすい言葉で補ってくれて助かりました。

佐藤

とにかく目線合わせやコミュニケーションは徹底しましたね。というのも、現場は「AIで何ができるか」に詳しいわけではない方が多いので、「AIでこうしたい」という明確な依頼は出にくいんです。むしろ「こういうやり方だとミスが起きやすい、作業負荷が高くて、何とかしたい」といった形で相談を受けることが多いんですよね。

そうした際に、一方的に「それはできません」と突っぱねたり、「こう改善すべきです」と正論だけを伝えても、納得感にはつながりません。相手が本当に実現したいことは何か、どうなれば価値を感じもらえるのかを理解し、最適な支援を提案する必要があります。

最終的に理想の状態までは届かなかったとしても、「ここまでなら改善できて、こういう点が良くなる」と具体的なゴールを示し、一緒に着地点を探っていく。そこはいつも大切にしていますし、今回も同じでした。

説明だけでは、完成したツールのイメージを共有しにくい場面もありそうです。

佐藤

そこは寺岡さんの開発の速さが光りました。何か先方からの要望があれば、次の打ち合わせまでにモックアップを作ってくれて。実際に見せながら説明できるので、現場にも「こういうものになるんだ」というイメージが膨らみやすかったと思います。それが、今回のプロジェクトを前向きに進められた理由の1つだと思います。

寺岡

これまでグループ横断でさまざまな支援に携わってきた経験が、素早くツールを提案する上で生きていると思います。一方、開発に集中するとどうしても視野が狭くなりがちです。そうした中で佐藤さんの現場視点での補足説明もそうですし、藤さんが広い視点でアドバイスをしてくれたことはとてもありがたかったですね。

「点」の支援を「線」「面」へと広げつつ、さらなる自走を支援したい

今回のプロジェクトを通じて、今後にも生かせると感じたことはありますか。

藤

今回、モックアップを見せることの効果をあらためて実感しました。ツールを素早く形にして、現場の皆さんに実際の活用イメージや効果を体感してもらうことで、新たなアイデアが生まれやすくなります。

私たちからも頻繁に「ほかにやりたいことはありますか」と聞いていましたが、プロジェクトがスピード感をもって進み、アイデアが形になっていくことで、現場からも「次はこういうこともできるのでは」「こんなこともやってみたい」という声が上がるようになりました。こうした進め方が、AI活用に対する意欲や前向きな発想につながったのだと思います。

大目的であった「現場での自走」も始まっているんですね。

佐藤

そうですね。長期的な視点では、いずれ私たちが支援から離れたあとも継続的に活用できる状態を目指しています。そのため、情報システム部門との連携をさらに強化し、将来的な運用・保守の移管も含めて検討していきたいと考えています。

藤

得られたノウハウを社内やグループにどう広げるかも重要なテーマですね。ドキュメントを蓄積する場所や仕組み、プロジェクトの成功・失敗事例を共有する機会はあるので、そうした場も活用しながら知見を横展開していきたいです。

寺岡

まずはこうした事例があるということを知ってもらうことが大事ですよね。「隣の部門でこういうことをしているらしい」と伝えることで、新たな相談や横展開につながる。そのサイクルを回していきたいと思います。

佐藤

今回は「勤怠管理」「問い合わせ対応」「展示会データの整理」という3つの業務におけるAI活用で一定の成果を出すことができました。一方で、それは業務全体から見れば個別の「点」でであると考えています。

今後は、それぞれの業務だけでなく、その前後のプロセスや関連業務への理解も深めながら、
支援の範囲を「線」そして「面」へと広げていきたいですね。個別作業の効率化にとどまらず、業務全体のつながりを踏まえた提案を行うことで、CoEとして提供できる価値をさらに高めていければと思います。

ありがとうございました!

取材・文・撮影=合同会社ヒトグラム
※所属組織および取材内容は2026年10月時点の情報です。
※略歴内の情報は2026年10月時点での内容です。

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